蒲郡の地で開催された全日本学生選手権(全日本インカレ)から約半年が経ったこの日、新体制初の団体戦である関東学生春季選手権(春関東インカレ)が行われた。関口功志監督(平18人卒=愛知・半田)が「新しいチームでやってきた半年間の成果を図るレース」と位置付ける今大会。早大は470級、スナイプ級ともに3艇ずつを送り出した。初日は降りしきる雨の中で1レースのみが行われ、2日目の4レースと合わせて計5レースで順位が決定。早大は第4レースまで慶大に次ぐ2位であったが、最終レースで逆転。3年ぶりの優勝を果たした。
悪天候の中でのレースとなった1日目。雨は次第に強くなる一方で、風はなかなか吹かず、1レースのみの消化となった。岡田奎樹主将(スポ4=佐賀・唐津西)が「視界がほとんどなく、陸が見えなかった」と振り返るように、予想外の霧の発生に上手く対応できず、470級は4位と出遅れる。それでもスナイプ級は底力を見せ、総合2位で初日を終えた。
岡田奎主将(右)は新体制初の団体戦でチームをうまくまとめ上げた
前日とは一転、天候の回復した2日目は前回王者・慶大の背中を追いかける。スナイプ級エースの永松礼(スポ4=大分・別府青山)・神宮泰祐(政経3=東京・早大学院)組を中心に手堅いレース展開を進めるも、点差を縮めることはできず。第3レース終了時に慶大とは59点差。ことしも春の王座奪還はならないかと思われた。しかし、ここからエンジのセーラーたちが奮起する。第4レースでは470級で岡田奎・秦和也(基理2=東京・早大学院)組、元津志緒(スポ3=長崎工)・永島慶也(政経3=神奈川・逗子開成)組がワンツーフィニッシュ、スナイプ級でも2、5、6位と追い上げを見せる。28点差まで詰め寄り、チームには逆転ムードが漂い始めた。続く第5レースでも早大は冷静なレース展開を見せる。470級で21点、スナイプ級で19点と全艇が安定して順位をまとめあげた。慶大の470級2番艇の失速にも助けられ、逆転に成功。これが最終レースとなり、早大の優勝が決まった。岡田奎主将が「2、3番艇が予想以上に走ってくれてよかった」と評価したように、絶対的エースである1番艇だけでなく、チーム全体で大きなミスをせず安定した順位を取り続けたことが勝因であろう。また、松尾虎太郎(スポ1=山口・光)・坂上宗輝(政経4=東京・早大学院)組は全レースでシングル(※1)を獲得するなど、1年生ながら終始安定した活躍を見せた。即戦力ルーキー加入を追い風に、覇権を奪回した早大。この勢いで、学生日本一への航路を突き進む。
ルーキーながら終始安定した走りを見せた松尾・坂上(右)組
3年ぶりの春の王者に輝いたが、選手たちは、「内容はまだまだ詰めていけるところがある」(岡田奎)、「反省点がたくさん見つかった」(松尾)と課題を口にした。昨年の主力が多く抜け戦力ダウンが予想されていた慶大だったが、きょうのレースを見る限り、ことしも早大の脅威になることは間違いない。「結果以上に内容、どういったレースができたのか、今後につながる課題設定がどうやってできるかが重要になってくる」(関口監督)。ヨット部の1年間の活動もちょうど折り返し。ここから半年、今大会を通して得た収穫を生かし、日々の練習に励む。そうすれば、自然と全日本インカレ4連覇は見えてくるだろう。
(記事、写真 松澤勇人)
(※1)10位以内の順位を取ること。
総合優勝の表彰を受ける岡田奎主将(右)、深田龍介(政経4=東京・早大学院)
結果
▽470級
早大(岡田奎・深田/秦組、元津・永島組、田中美紗樹(スポ2=大阪・関大第一)・岩井俊樹(基理4=東京・早大学院)組) 120点(1位)
▽スナイプ級
早大(永松・川上健太(創理4=東京・早大学院)/神宮組、入江裕太(スポ2=神奈川・逗子開成)/岩月大空(スポ3=愛知・碧南工)・三宅功補(商3=東京・早大学院)組、松尾・坂上組) 110点(2位)
▽総合
早大 230点(1位)
コメント
関口功志監督(平18人卒=愛知・半田)
――監督から見て、ことしのチームはどんなチームでしょうか
4年生に両クラスの絶対的エースがいるチームですね。そこを中心に全体の技術面の向上を図っているというところです。4年生は人数が多く個性も強いので、4年生と3年生以下の下級生との間に技術面でもキャラクター面でもギャップができやすい状況を懸念していて、4年生がどうやって下級生をまとめていけるかが大きな課題かなと思います。
――春関東インカレ(関東学生春季選手権)はどういった位置付けの大会だと意識していますか
ヨット部の1年間の活動の中で、ちょうど折り返し地点に当たるレースです。大きな目標である全日本インカレ(全日本学生選手権)優勝に向けて、新しいチームでやってきた半年間の成果を、良くも悪くもその成果を図るレースだと思います。結果以上に内容、どういったレースができたのか、今後につながる課題設定がどうやってできるかが重要になってくると思います。
――初日、2日目のレースをそれぞれどのように振り返りますか
初日、2日目はとくに変わらないんですが、全体としては反省点の多いレースだったと思います。結果は優勝できたんですが、先ほども言ったように内容の部分を見たときには、今後に向けた問題点、そして何をしていく必要があるかが明確になったと思います。そうやって見ると結果以上に収穫の多いレースになったと捉えています。
――スナイプ級、470級でそれぞれどういった課題が挙げられますか
470級は、スタートですね。スタートの精度を上げないといけない。それからこれはスナイプ級にも言えることですが、3番艇のレベルアップが求められるということですね。スナイプ級に関しては、ボートスピードが慶大にまだ劣っている部分があるので、それをターゲットにしていきたいと思います。良い競争環境ができていると思うので、それは続けていって欲しいです。早大はこの半年間、慶大などに比べるとなかなか練習時間が取れていないので、残り半年で取り返して、まずは夏、良い過ごし方をして、全日本インカレ優勝に向かっていきたいと思います。
――岡田奎主将の働きをどう見ていますか
もともと圧倒的な技術、実績、経験を持っているので、主将としてのプレゼンスは申し分ないです。この半年間でチーム全体のことや、どうやって下級生を動機付けるかを考えて、彼なりに悩みながら、トライアンドエラーを重ねながらやってくれていると思います。徐々に主将らしくなって来たと思います。
――ルーキーの松尾選手が公式戦初出場となりましたが、どう評価しますか
もともと高校時代は高校生の中では飛び抜けた存在だったので、大学でもすぐ通用すると期待していました。実際きょうも良いレースをしてくれました。このレースで言うと、コースの展開、艇の走らせ方に関しては非常に良かったんですが、ボートスピードというのはまだ改善の余地があると思いました。高校時代と違う船に乗っているのもあって、今乗っている船で安定した速度を出すというのが課題だと思うので、そこは注意して見ていきたいと思います。トータルで言えば、期待通りの活躍をしてくれていると思います。
――来月に控える同志社定期戦に向けて、意気込みをお願いします。
同志社大は長年のライバルであり、ことしも全日本インカレ優勝を争うライバルであるので、結果はもちろん、収穫を得られる機会にしたいと思います。特に同志社大とやるというのは全国のレベルを図る良い機会なので、学び合い親睦を深めながら、ことしは早大のホームなので、良い環境を提供したいと思います。
岡田奎樹主将(スポ4=佐賀・唐津西)
――新体制が本格的に始動しましたが、主将から見て、ことしのチームはどういったチームでしょうか
カラーと言いますか、みんな元気があって、おのおので自己判断ができていると思います。団結力もあるときはあるんですけど、それよりは春は個人の能力を高めようという目標でやってきたので、各自が自分で考えて行動できていると思います。
――春関東インカレは個人の能力を高める大会という位置付けでしょうか
そうですね、はい。
――初日のレースを振り返っていかがですか
初日は思った以上に僕自身が全然走らなかったですね。というのも、ペアを固定して乗っていなかったので、連携面がまだまだだったのと、あとはシンプルに風が全然掴めていなかったですね。きのうは雨が強くて霧がかかっていて、視界がほとんどなく、陸が見えなかったんですよ。普段は風の振れとかを陸を見ながら合わせていたんですけど、見えない中で、風の予測とかが曖昧になっていたかなと思います。これは全員に言えることで、今後修正していかないといけないなと思います。
――2日目は接戦となりましたが、振り返っていかがですか
結果としては良かったかなと思います。内容はまだまだ詰めていけるところがあるので、そこをもうちょっと変えていかないと全日本インカレでは勝てないと思います。
――470級は初日の4位から巻き返しての1位となりましたが、470級全体を振り返っていかがですか
結果としては良かったと思うんですけど、内容としては僕を含めて全員がまだまだ力を出し切れていないと思います。みんな持ってる力は強いので、それをどう出していくかが課題だと思います。全体的には良かったんじゃないですかね。
――今大会を通じて収穫はありましたか
ありましたありました。練習レースでは僕が勝ち続けている状況で、これ本番やばいんじゃないかなと思っていたんです。でもいざ始まってみるとみんな良く走ってくれて、僕が失敗したときでもみんなが上位にいてくれて、僕としては思いの外の結果で、驚いていると同時に、練習から成長したんだなと思うと、予想以上の結果を出してくれて嬉しいです。2、3番艇が予想以上に走ってくれて良かったです。
――主将として、今シーズンはどのようにチームを引っ張っていきたいですか
結果を出して引っ張っていきたいと思います。今回全然結果出せてないですけど(笑)。またやり方を変えるか、しっかり自分を振り返って、僕が結果を出して(チームの)士気を高めていきたいと思っています。
――今シーズンのチームとしての目標、そして個人の目標をお聞かせください
チームとしては間違いなく全日本インカレ優勝です。まずはその過程において一人一人が努力していくことが重要で、毎日の努力って目に見えないのでとても辛いんですけど、それをやり切って欲しいと思います。個人としては、ジュニアワールドがことしは江ノ島であるので、まずはそのタイトルをとりあえず取っとこうと思います(笑)。それから国体は大学で2回優勝してるので、大学最後の年で3回目取りたいなと思います。あとはクルーがそれほど乗りこんでない選手なので、育成にも力を入れたいと思います。
松尾虎太郎(スポ1=山口・光)
――早大ヨット部はいかがですか
高校の頃から憧れでずっと入ってみたかったので、実際に今この春関東インカレで僕もレギュラーとして戦って、優勝することができてすごく嬉しいです。いつも写真とか動画でしか見たことがなかったところに自分が入って戦えて、すごく嬉しいです。
――初めてのレースでしたが緊張されましたか
みんな年上の方達ばかりなんですけど、自分たちは一番下というのかな、ペアの方は4年生なのですが、常に挑戦する気持ちで。緊張と言うよりは毎レース楽しみでわくわくしていました。
――2日間のレースを振り返ってみていかがでしたか
結果は優勝することができたのですが、僕の中では反省しなければならないこと、もっともっとこうしていかなければいけないとか、反省点がたくさん見つかったので、そういう意味ではこれからのためにも内容の濃い2日間でした。
――スナイプ級のチーム全体を振り返って
みんなすごく元気があって、先輩の方ばかりなんですけど、とても頼りがいがある人たちばかりで、(今回の)レースでもすごく苦しいレースだったのですが、みんな支え合いながら戦うことが出来ました。
――今年1年の目標と今後4年間の目標をお願いします
1年間の近い目標は、まず全日本インカレがこれからあるので、全日本インカレで確実に優勝できるようになること。あと、今年1年で世界でも活躍できるような選手、高校の時からずっと世界で一番を獲ろうとしてきたんですけど、大学で1年生のうちからそうやって世界を視野に入れた活動をしていって、まだちょっと早いかもしれないのですが、いずれ4年後の東京オリンピックで世界に通用する選手になって8年後、12年後のオリンピックにつなげられるような選手になることを早大にいるうちになれたらいいな、と思います。