全日本学生選手権(全日本インカレ)4連覇を狙う早大ヨット部の今シーズンが、ついに開幕。新体制となって初めての公式戦である関東学生春季選手権女子レースが行われた。早大からは470級、スナイプ級ともに1艇ずつが出艇。初日は昼過ぎに天候が悪化したため、行われたのは第1レースのみ。2日目の3レースと合わせて計4レースで順位が決定した。470級では仲美南(スポ1=茨城・霞ヶ浦)・田中美紗樹(スポ2=大阪・関大第一)組が序盤のミスを取り返せず10位に終わる。一方のスナイプ級では元津志緒(スポ3=長崎工)・松岡嶺実(先理3=東京・国学院久我山)組が安定した走りを見せ4位入賞。しかし総合では4位に終わり、表彰台を逃す結果となった。
470級は4月に入学したばかりの期待のルーキー・仲がスキッパー、本職はスキッパーである田中がクルーという急造ペアで臨んだ。初日は風が安定しており、クルーとしては小柄な田中でも走りやすいコンディションであったが、「コンビネーションが上手くいかなかった」(田中)と振り返るように、上手く艇を運ぶことができず10位に終わってしまう。お互いに意思疎通を深め臨んだ2日目だったが、順位を伸ばすことはできず。仲にとってはほろ苦デビューとなった。しかし、この結果に二人は、「普段と違うポジションを経験して色々なことに気づかされた」(田中)、「初めてのレースとして得たものは大きかった」(仲)とあくまで前向きだ。早大が誇る若き女子セーラーの、ますますの成長に期待したい。
急造ペアとなった仲(左)・田中組
優勝を目標に臨んだスナイプ級の元津・松岡組は、順風だった第1レースで良い走りを見せ、初日を2位で終える。しかし、強風となった2日目は「二人とも余裕がなくなっていた」(松岡)と話すように、第2レースではマーク際でのミスで順位を落とし、6位。それでも第3、4レースでは集団に飲み込まれることなく安定した走りをみせ、スナイプ級総合4位となった。「苦手な部分が明らかに出た」(元津)、「悔しい部分が大きい」(松岡)。優勝を狙っていた、狙える位置にいただけに悔しい結果となっただろう。しかし、「スナイプ級で得たことは470級でも生かせる」(元津)と収穫もあったようだ。今大会での経験を生かして、1週間後に始まる関東学生春季選手権(春季関東インカレ)ではより前で走る姿を見せてほしい。
元津(右)・松岡組は安定した走りを見せた
総合4位。新体制初戦として、決して良い結果とは言えないが、おのおのが課題と収穫を得た大会となったであろう。そしてチームはもうすでに春季関東インカレを見据えている。「絶対的な2番艇になる」(田中)、「早大を引っ張っていける存在になる」(元津)という今季の目標を達成するためにも、まずは春から結果を残したいところだ。全日本インカレ4連覇へ向けた1年が、ついに始まった。ことしもヨット部の軌跡から、目が離せない。
(記事、写真 松澤勇人)
結果
▽470級
仲・田中組 39点(10位)
▽スナイプ級
元津・松岡組 16点(4位)
▽総合
早大 55点(4位)
コメント
470級スキッパー仲美南(スポ1=茨城・霞ヶ浦)・470級スキッパー田中美紗樹(スポ2=大阪・関大第一)※今大会は470級クルーとして出場
――今大会は急造のペアでしたが、どういった経緯で決まったのですか
田中 今大会のペアリングについては、女子部員でどうやったら総合優勝できるかを話し合って決めました。それでもあまりこのペアで練習時間が取れなかったので、そこは不安でしたね。
仲 総合で効率的に点数を取るにはどうしたらいいかを話し合った結果、私が470級のスキッパーで、美紗樹さん(田中)がクルー、というのが一番いいという風になりました。
――仲選手は高校時代の専門種目は
仲 高校ではFJ級に乗ってました。470級に乗り始めてからはまだ日が浅いです。
――初日のレースを振り返っていかがですか
田中 私はクルーとしては小さいので、なかなか走れないというのは分かっていたので、それに対してどう対応していくかが重要でした。初日は風が安定していたので走りやすかったです。
――仲選手は初めての学生大会でしたが、感想は
仲 公式戦は初めてで、女子だけという大会も初めてだったので、周りがどういう走りをするのか全く分からなかったんですが、初めてのレースとして得たものは大きかったと思います。本来スキッパーである美紗樹さんにテクニックやコースのことを教えていただいて、とても勉強になりました。
――2日目は3レースが行われましたが、全体的に振り返っていかがですか
田中 自分が普段スキッパーとして乗っているときは感覚的にやっていることが多かったので、それを今回クルーとしてスキッパーに言葉で伝えるのがとても難しくて、レース中に改善するのが遅れてしまったかなと思います。1レース目はコンビネーションが上手くいかなかったんですが、そのあとにお互いに話し合っていくなかで改善できたのは良かったです。普段とは違うポジションを経験して色々なことに気づかされました。
仲 今大会を通じていろいろなことを経験できたので、これを練習や次の大会に生かしていきたいです。
――最後に、ことし1年間の抱負をお願いします
田中 これまでは上級生と組んで引っ張っていってもらうことが多かったんですが、ことしは同学年の秦(和也、基理2=東京・早大学院)と組んでいて、逆に引っ張っていく立場になったので上手くいかないこともあるんですけど、それをしっかり改善して、岡田さん(奎樹主将、スポ4=佐賀・唐津西)に次ぐ絶対的な2番艇になることを目標に頑張ります。
仲 今はとにかく先輩に引っ張ってもらっているので、自分からもっといろんなことを聞いて知識や技術を磨いていって、レギュラーになりたいと思います。
470級スキッパー元津志緒(スポ3=長崎工)・スナイプ級クルー松岡嶺実(先理3=東京・国学院久我山)※元津は今大会スナイプ級スキッパーとして出場
――今大会にはどのような意気込みで臨みましたか
元津 優勝を目標にしていました。また、私は普段470級に乗ってるので、それに生かせる動きを(今回スナイプ級に乗って)学ぶというのも意識しました。470級でもスナイプ級でもコース取りだとかタクティクスは変わらないので。今大会は一つのレースとして、収穫のあるレースにしようという意気込みで臨みました。
松岡 元津と一緒で、目標は優勝でした。自分は昨年の全日本学生女子選手権で悔しい負け方をしたというのもあって、その反省を生かして、女子のレースで良い結果を残したいと思っていました。この大会を通して、普段あまりできないレースの経験というのを積んで、自分の成長の糧にしたいと思って臨みました。
――初日のレースを振り返っていかがですか
元津 きょう(2日目)のように風が上がることもなかったので、レース前に気を付けておくことを共有できていたので、良い面も悪い面も出たんですが、収穫のあるレースだったと思います。
松岡 風が安定していてちょうどいい順風だったので、艇を走らせることと、周りの艇の動きを見て自分たちがどういった動きをしたらいいのかなどを二人で話し合いながらできたので、2位という成績になったのかなと思います。
――2日目は3レースが行われましたが、全体的に振り返っていかがですか
元津 自分の苦手な部分、タクティクスであったり、マーク際であったりの部分が、スナイプに乗っても現われてしまいました。そういった点を470級に乗るときも改善していかないといけないなと思います。逆に良かった点としては、集団に飲み込まれないように風を見て、自分のコースを引くことができたと思います。そういった良い点も次に生かせると思うので、全体的に見て収穫のある、良い大会だったと思います。
松岡 風が上がってくると二人とも余裕がなくなっていたので、もう少し声を掛け合って、もっと広い視野を持って周りの動きを冷静に分析できればよかったと思いました。自分は軽風クルーで、最近は強風時に乗ることが少なくなっていたなかで久しぶりの強風のレースだったので、ミスが目立ち悔しい部分が多かったです。
――関東学生春季選手権(春季関東インカレ)への意気込みをお願いします
元津 今大会で自分の苦手な部分が明らかに出たので、改善しなければいけないと思います。スナイプ級に乗って得たことは470級でも生かせると思うので、残りの練習期間で今回の反省を一つ一つ潰していって、春季関東インカレでは前を走れるように頑張ります。
松岡 出場するかどうかは風によるんですけど、いつでも出れるように、きょうの反省を生かして日々練習していきたいと思います。
――ここからは新体制についてうかがいます。新体制となって、チームの雰囲気はいかがですか
元津 毎年早大は全員で合宿をしていくなかで、下級生が部を支えてくれているという思いを全員が持って、練習や大会に臨んでいます。レースに出るメンバーも出ないメンバーも、サポートも含めてチーム一丸となってできていると思います。なのでチームの雰囲気としては、チームとして活動しているという意識が強いので、その良い雰囲気を今年も変わらず続けていきたいなと思います。
――今季新たに主将に就任した岡田奎樹(スポ4=佐賀・唐津西)選手の印象はいかがですか
松岡 いろんなことに挑戦しているなと感じます。失敗することも多いんですけど(笑)、それを恐れずいろんなことに挑戦していて、それに対して周りを上手く巻き込んでいくことができる人だと思います。全日本学生選手権(全日本インカレ)3連覇しているなかで、これまでと同じことをしていても4連覇は難しいと思うので、いかにいい意味でこれまでとは違うワセダを作っていくかというのを日々試行錯誤(しこうさくご)して、失敗を成功に変えていっているので、いろいろ考えているんだなとすごく感じます。
――最後に、ことし1年間の目標をお願いします
元津 チームとしては全日本インカレ優勝です。個人としては、ことし1年しっかり470級で走って、来年以降早大を引っ張っていける存在になるということです。今の段階では奎樹さん(岡田主将)との差を感じていて、その差を埋めるというのはことしの全日本インカレでも生きてくると思うので、とにかくことし1年間は、自分が少しでも前を走れるように、一日一日の練習をしていきたいと思います。
松岡 自分は来年のことを考えると、全力でヨットに打ち込めるのはことしが最後だと思っているので、レギュラーとして全日本インカレに出場して、少しでも4連覇に貢献できる人材になりたいと思います。