ようやく慶大から勝利を飾った。11月に行われる全日本学生選手権(全日本インカレ)での3連覇達成に向け、最後のチーム戦に挑んだ早大ヨット部。今季ここまで最大の壁として立ちはだかった慶大と相対する。両校とも国民体育大会に出場していた選手が復帰し、ベストメンバーを揃えた真っ向勝負となった。両クラス4艇ずつの勝負と、普段の団体戦とは異なる今レース。初日で確かなリードを奪うと、2日目にもその差を広げる。最終レースを終え、167-188。伝統の早慶戦に勝利し、ついに全日本インカレ優勝を視界に捉えた。
今回もまた、風の吹かない大会となった。初日からレースを行えるほどの風速は計測されず、待機時間が続く。午後1時ごろ、ようやく風が吹き込み、戦いの火ぶたが切って落とされた。関東随一の戦力を抱え、微風のコンディションにも強い470級が、まず先手を取る。第1レースで手堅く6点差をつけると、第2レースでは慶大艇の失格もあり、1位から4位を独占。一気にリードを広げた。特に、関東学生選手権(関東インカレ)でレギュラーメンバーから外れた元津志緒(スポ2=長崎工)・中島捷人(スポ4=神奈川・逗子開成)組は、他メンバーをも上回るスコアで初日を終え、慶大との点差をぐんと広めた。対するスナイプ級は、関東インカレで大差をつけられた慶大に、初日からがっぷり四つの互角勝負。トップ通過こそ相手に譲るものの、しっかりと順位を固め、わずか2点のビハインドにまとめる。結果、470級で大きなリードをつくり、14点差のリードで初日を折り返した。
大器の片りんを見せ始めている田中美紗樹(スポ1=大阪・関大第一)・永松瀬羅(スポ4=大分・別府青山)(左)組
2日目、またも風は吹かず、しばらく待機となる。しかし、「オンとオフの切り替え」(入江裕太、スポ1=神奈川・逗子開成)、「『紺碧の空』を皆で歌って切り替える」(平川竜也主将、スポ4=神奈川・逗子開成)との言葉通り、環境に集中力を乱されることはなかった。出艇後、470級は「波がすごく高い中での北風だったので、そこで苦戦した」という中島の言葉の通り、前日の勢いを失うものの、地力の強さで着実にリードを奪っていく。スナイプ級も、順位が激しく入れ替わる中で、平川竜也・三宅功輔(商2=東京・早大学院)組が安定して上位フィニッシュを決め、ビハインドを3点にとどめた。最終5レース目が終了し、21点差。理想の試合運びで早慶戦勝利を決めた。
どんなコンディションにも対応した平川・三宅組
「ぼやけていた全日本インカレの優勝というものがより現実味を帯びてきた」(平川)。今季ベストメンバーの慶大には未勝利、前々週の関東インカレでも僅差の2位に終わっていた早大にとって、この一勝の価値は計り知れない。航路にかかった霧が晴れるがごとく、全日本インカレ優勝への、最後の壁を乗り越えた早大ヨット部。11月、愛知県蒲郡市、歓喜の瞬間は、近い。
(記事 喜田村廉人、写真 菖蒲貴司)
結果
▽470級
岡田奎樹(スポ3=佐賀・唐津西)・岩井俊樹(基理3=東京・早大学院)組 10点
田中美紗樹(スポ1=大阪・関大第一)・永松瀬羅(スポ4=大分・別府青山)組 15点
市川夏未(社4=埼玉・早大本庄)・深田龍介(政経3=東京・早大学院)/須賀偉大(教3=大阪・高槻)組 22点
元津志緒(スポ2=長崎工)・中島捷人(スポ4=神奈川・逗子開成)組 28点
○早大75-99慶大
▽スナイプ級
平川竜也(スポ4=神奈川・逗子開成)・三宅功輔(商2=東京・早大学院)組 14点
永松礼(スポ3=大分・別府青山)・川上健太(創理3=東京・早大学院)組 17点
入江裕太(スポ1=神奈川・逗子開成)・坂上宗輝(政経3=東京・早大学院)/堀田芽ノ世(法3=東京・早大学院)組 28点
岩月大空(スポ2=愛知・碧南工)・服部勇大(基理4=東京・早実) 33点
●早大92-89慶大
▽総合
○早大167-188慶大
コメント
スナイプ級スキッパー平川竜也主将(スポ4=神奈川・逗子開成)
――勝ちました
うれしいという思いと、やっと全日本インカレでの優勝が見えてきたという思いがあります。今季のケイオーが強いことはわかっていて、全日本での優勝争いをするならケイオーだろうと。春の関東インカレ(関東学生春季選手権)も秋の関東インカレ(関東学生選手権)も負けましたが、全日本インカレ前の最後のケイオーとの試合で勝てたので現実的に日本一が見えてくる結果になったと思います。
――チームとしてもこの勝ちは大きいですが
例年と時期が違ってインカレのすぐ前なので、負けのイメージというものを絶対につけたくなくて、自分たちがやってきたものの積み重ねが、優勝を狙えるレベルまでにチームが成長したこととして分かったのが良かったです。それが自信にもなっていると思います。皆の中にあったぼやけていた全日本インカレの優勝というものがより現実味を帯びてきたと思います。
――2日間を通して風待ちの時間が長かったと思いますが
オンとオフの切り替え、これだけですね。気張っていても疲れるだけなので、ワセダとしてはオフのときは抜いて、出艇前には『紺碧の空』を皆で歌って切り替えるというか。そこで『紺碧の空』がオンとオフのスイッチになるようにということは心がけながら出艇前には意識していました。
――個人成績については
今回は初日の調子が良くなかったです。いつも通りのレースをしようと思っていたつもりでしたが、心のどこかでケイオーを意識してしまっていました。それで順位を落としてしまったのですが、2日目は切り替えて自分のやるべきことができたので上位でフィニッシュできたと思います。順位が良くないレースもありましたが、それも(チームで戦う上で)仲間を助ける走りという面もあったので、自分がやりたいレースは展開できていたと思います。
――最後に、インカレに向けての最後の1カ月が始まります。意気込みをお願いします
全日本インカレで優勝を争えるチームにはなってきていると思います。ここからは全日本インカレを何回やっても優勝できるチームに成長できるようにやっていきたいです。今までやってきたことをそのまま全日本インカレでもできるかどうか、できないこともあるというのがスポーツの醍醐味というか、難しいところだと思うので、全員が100パーセントの力で、本番でパフォーマンスを発揮できるように、常に練習と本番のギャップを縮めながら練習していきたいなと思います。
470級クルー中島捷人(スポ4=神奈川・逗子開成)
――勝ちましたが
素直にうれしいです。
――この勝利は理想の勝ち方ですか
そうですね。470級はワセダが優位でスナイプ級はケイオーのほうが優位という中で、スナイプであまり差をつけられないように全体としては470級で大きくリードをして勝つということが実現できたかなと思います。
――いつも組まれている元津志緒選手(スポ2=長崎工)の調子が非常によかったと思いますが
そうですね。きのうは練習通りのことができていたと思います。ただきょうは、イレギュラーな海面で、波がすごく高い中での北風だったので、そこで苦戦して成果が出せなかったように思います。
――4年生として運営する立場でもあったと思いますが、早慶戦は無事に終了しました
とりあえずは大きな問題もなく2日間を終えられたことはよかったと思います。役員であったり、プロテスト員の方であったり、しっかりと教育していただいたスタッフの方々の支えで、しっかりと運営ができました。
――これからに向けて
全日本インカレまであと1カ月を切ったので、時間がない中でできることを一つ一つやっていって、最後はチームで最高の結果で終われるようにしたいと思います。
470級スキッパー田中美紗樹(スポ1=大阪・関大第一)
――早慶戦に勝利しました
すごくうれしいです。4艇対4艇での対戦でライバルであるケイオーに勝てたことはうれしいです。
――最後のレースは1位でした
序盤はコースの見え方が悪くて、ああどうしようかなあって思っていたのですが、そこから良い感じの風をつかんで前に出られたのでよかったです。
――ガッツポーズも出ていましたが
そうですね。早慶戦ということもあって皆で喜びました。
――昨年の小泉颯作前主将(平28スポ卒=山口・光)の穴を埋めるかたちでの試合出場となっていますが
春は大負けをしてしまい自分が颯作さんの穴を埋めるだなんてことを思う余裕もなかったのですが、夏合宿の中盤あたりで試合経験をたくさん積めたことで秋の大会では470級はケイオーに勝つこともできて自信になりました。
――自信がついてきたと
そうですね。あと、瀬羅さん(永松、スポ4=大分・別府青山)に頼っている部分も多いので、もっと自分でカバーできるようにしていきたいですね。
――最後にインカレに向けての意気込みをお願いします
まだまだ自分は荒削りで、突き詰めていけば成長できると思っているので、一日一日を大切にしていきたいです。それと、まだまだミスが多いので、ミスを少なくして確実に良い順位を取っていきたいです。
スナイプ級スキッパー入江裕太(スポ1=神奈川・逗子開成)
――早慶戦に勝ちました
4艇での試合ということで、レギュラーで出させていただき、自分自身のスコアは納得のいくものではありませんが、チームの勝利のために貢献できた点では良いレースができたのかなと思います。
――個人成績には納得していないと
落とさなくてもいいところで落としてしまいました。ミスが多かったのでそこは修正していきます。
――2日間を通して風待ちの時間が長かったですが、そのときに意識されていたことは
オンとオフの切り替えですね。オフのときはしっかりとくつろいで、「海に出るよ」となればすぐに準備をしてと、いつもの練習と同じような緊張感を持って臨めました。
――第4レースのスタート失敗については
最終レースではスタート位置を気にするあまりにコース取りを忘れていた面がありました。近くにいたケイオーの2艇の位置がいまいち把握できずに引き込みが遅れてしまったことが失敗の原因です。スタートするまでの時間を上手く使えなかった点で反省をしています。
――クルーが度々替わることについては
クルーとして組んでいる坂上宗輝さん(政経2=東京・早大学院)と堀田さん(芽ノ世、法2=東京・早大学院)で体重差があるので、風の強弱によって替わっているところがあります。両方の方とも上手くやれています。
――最後にインカレに向けての意気込みをお願いします
残り少ない練習期間ですが、そこで気持ちを切らさずにいきたいです。今は4番艇ですが、3番艇以上を脅かせる存在になってチームの力が上がっていけばいいなと思っています。