波乱のレース、明暗分かれる

ヨット

 7月2、3日に、江の島沖で関東学生個人選手権470級が行われた。今大会で上位14位までの艇が、9月に行われる全日本学生個人選手権(全日本個選)に駒を進めることができる。ワセダからは4艇が出場し、うち2艇が全日本個選への通過を決めた。

 荒れたレースとなった。第1レースから何度もスタートをやり直した結果、BFD(※1)で半数近い艇が失格。上位入賞を見込まれていた関東の猛者たちがここで多く脱落し、不穏な空気が漂う。しかし、その中でも周囲に惑わされず冷静なスタートを切ったのが岡田奎樹(スポ3=佐賀・唐津西)・岩井俊樹(基理3=東京・早大学院)組だった。「自分自身の調子はあまり良くない」と語った岩井だったが、前週ドイツで行われたジュニア世界選手権470級の金メダリスト・岡田奎との息の合ったコンビネーションを見せ、そのままトップでフィニッシュ。続く第2レースでも2位と、圧巻の優勝を決めた。市川夏未(社4=埼玉・早大本庄)・深田龍介(政経3=東京・早大学院)組も6位、8位と安定した順位。「コミュニケーションをうまくとれていた」(市川)と冷静なレースを展開し、全日本個選への切符を手にした。

 2日目のレースは強風のため中止。そのため前日に行われた2レースの成績で順位が確定し、その時点で15位であった元津志緒(スポ2=長崎工)・中島捷人(スポ4=神奈川・逗子開成)組は無念の敗戦となった。そして期待の新人である田中美紗樹(スポ1=大阪・関大第一)・永松瀬羅(スポ4=大分・別府青山)組も、第1レースでのBFDが響きまさかの38位。実力を出しきれない悔しい結果で今大会を終えた。

 文字通り波乱の大会であった。天候に左右されるヨットという競技の難しさを改めて痛感させられる。全艇が全日本個選出場とはならなかったが、今回のレースから新たな課題や改善点を見つけられたのではないだろうか。また、世界王者・岡田奎の活躍に少なからず刺激を受けている選手もいるだろう。次なる舞台に向け、常に上を目指し続ける470チームの今後の成長に期待せざるを得ない。

(記事 三浦遥)

(※1)規則30.3(Black Flag Rule)に対する違反のこと。そのレースは失格となる。

結果

岡田奎樹(スポ3=佐賀・唐津西)・岩井俊樹(基理3=東京・早大学院)組 1位 3点

市川夏未(社4=埼玉・早大本庄)・深田龍介(政経3=東京・早大学院)組 4位 14点

元津志緒(スポ2=長崎工)・中島捷人(スポ4=神奈川・逗子開成)組 15位 56点

田中美紗樹(スポ1=大阪・関大第一)・永松瀬羅(スポ4=大分・別府青山)組 38位  105点

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コメント

市川夏未(社4=埼玉・早大本庄)

――今大会を振り返って

風もだんだん強くなってきたり、気候の変化だったり風の変化だったリがあって、何回もスタートを繰り返す感じだったんですけど。そこで自分がいかに冷静になって周りの状況とかを見て1レース1レース冷静に臨んでいくっていうことを気をつけてやっていたんですが、自分のペアとしてはしっかりコミュニケーションがとれていたのでそこは良かった点かなと思っています。

――ペアの深田龍介(政経3=東京・早大学院)選手とのコンビネーションは

去年は同期の永松瀬羅(スポ4=大分・別府青山)と乗っていて、ことしペアが変わることがあって長く(ペアを組んで)乗っているというわけじゃなかったので、まだまだ動作やコンビネーションとかはうまくできるだろう点は多いんですがその中でも大きなミスやトラブルを起こさないことは、コミュニケーションをとることで改善できる、ということいままで学んできたので、コミュニケーションを大事に、クルーと常に話して同じ方向に向かって1レース1レースできるようにっていうのを確実に。コンビネーションというか、コミュニケーションをうまくとれていたからという部分が大きかったかなと思います。

――市川選手ご自身の調子はいかがでしょうか

調子は、特にすごい船のスピードが良いとかいうわけでもなくて、課題も多い中で、風の弱いときよりも強いときのほうが気持ちとして余裕を持てる部分があったので、中風域では心の余裕があったんですけど、(レースの)最初のほうは微風で…。風が弱い中での課題が結構多いのでまだまだ練習してもっとうまくならないといけないなと。調子はそんなに抜群に良いというわけではなかったです。

――4年になってご自身が変わったと思われる点は

常に、チームのこともそうですし、ヨット部全体のことや470チームのことを、以前から考えてはいたのですが、もっとさらにそれを考えることが多くなったということと、もっともっとチームのために考えていこうという意識が強くなったというのはあります。

――最後に、全日本個選への意気込みをお願いします

時間は限られているのですが、まだまだ練習時間はあるので。岡田(奎樹、スポ3=佐賀・唐津西)が海外で良い成績を残してきて、彼自身も海外で得たものをどんどんチームに伝えていってくれていて、そういうもっともっとうまくなる部分を彼からも吸収していって、去年より良い成績を残せるように頑張っていきたいと思います。岡田からできるだけ多くを盗んで成長できるように頑張っていきたいです。自分自身が吸収するっていうこともそうなんですけど、470チーム全体として、他のスキッパー同士でも切磋琢磨してチーム全体の実力が上がるように練習していきたいと思っています。

470級クルー岩井俊樹(創理3=東京・早大学院)

――今大会を振り返っていかがですか

2か月ぶりくらいの強風で乗ったということもあって、苦労しました。でもスキッパーが安定して走らせてくれたので、自分がやるべきことをやると第一に考えて取り組みました。

――ご自身の調子は

僕の調子は、あまりいいとは言えないですけど、この夏にもっと強風で乗っていかないとだめだなと思います。春のインカレ(春季関東学生選手権)でも強風が吹いて沈をしてしまって、ワセダの優勝を逃してしまったということがあるので、今後も夏の練習で強風を乗り込んでいって、全日本(全日本学生選手権)に備えたいと思います。

――海外遠征から戻られた岡田さんとのペアでしたが

連携面に関してはきょねんずっとペアを組んでいたので大丈夫だったんですけど、僕の動作の正確性が、最近乗っていなかったので欠けていて、そこがちょっと心残りですね。

――課題を挙げるとすれば

強風面で安定した動作をすることと、ランニングっていう風を背中に受けて走るときに、岡田の走らせ方に僕も上手く合わせられるようにしたいです。

――全日本個選への意気込みをひとことお願いします

もちろん優勝を狙います。いいスキッパーと乗らせて頂いてるので、頑張りたいと思います。

470級クルー深田龍介(政経3=東京・早大学院)

――今大会を振り返っていかがですか

組んで長いペアではなくて、今までは岡田奎樹と乗っていたんですけど、それとは違ったところだったり、自分が頑張らなければいけないところや、補わなければいけないところが多かったので、そこを夏未(市川)さんとコミュニケーションをとって、とりあえずこの全日本個選出場というのをひとつの目標にしていたので、達成できて嬉しいです。

――強風でのレースになりましたがそれについては

自分も身体が大きくて、強風には強いと思っていて、スピードで他大学に走り負けるということはなかったんですけど、ワセダの中で、ひとつ岡田奎樹という目標に向かって、これから、強風、中風と、帆走スキルを上げていかなければいけないなという風に思います。

――初の全日本個選出場ですが

ひとことで普通に嬉しいですし、同志社定期戦で、僕らの艇が一番足を引っ張っていて、そこからどうやって実力を上げるかということを二人で話し合っていた中での出場なので、関東個選以上にいい結果を出せればいいと思います。

――ご自身の中で一番成長したと思うことは

クルーとしての動作はまだまだ改善できるところがあるんですけど、クルーとして、冷静に、海面だったり、練習だったり、試合のコースの取り方であったりをスキッパーと話していけるように、お互いにコミュニケーションを取っていけるように、艇の雰囲気を持っていけたことは、自分の中でも考えながらヨットに乗れているという、成長したポイントだと思います。

――全日本個選への意気込みをひとことお願いします

せっかく頂いたチャンスなので、470級で出られなかった2艇の思いも受け継いで、優勝を目指して頑張っていきたいと思います。