ついにやってくれた。昨年、福岡・小戸の舞台で全日本の頂を極めたものの、今季はずっと勝てていなかった早大ヨット部がついに勝利を挙げた。9月の全日本個人選手権(全日本個選)で各艇が好成績を残し、今度は団体として臨んだ関東学生選手権。天候の関係で初日はレースが行われなかったが、2日目終了時で首位に立つと、最終日は470級が素晴らしいレースを展開し両階級で優勝。2位慶大に大量109点差をつけ、堂々の完全優勝を果たした。
470級は2日目、岡田奎樹(スポ2=佐賀・唐津西)・岩井俊樹(基理2=東京・早大学院)組が4、1、4位と好スコアをたたき出すも、小泉颯作主将(スポ4=山口・光)・原海志(創理4=東京・早実)組は20番台を2度取ってしまい、また市川夏未(社3=埼玉・早大本庄)・永松瀬羅(スポ3=大分・別府青山)組も一度もシングルに食い込めず116点で終了。この時点で首位の日大とは8点差の3位につけ、最終日の逆転にかけることになった。一方で、スナイプ級は2日目に2レースほど実施されたが、圧巻の走りを披露する。第1レースでは永松礼(スポ2=大分・別府青山)・花岡航副将(創理4=京都・洛北)組のトップフィニッシュだけでなく、平川竜也(スポ3=神奈川・逗子開成)・服部勇大(基理3=東京・早実)が3位に入るなど、9点でまとめる上々のレースを展開する。2日目終了時で37点と2位の中大を18点ほど引き離した。
4レースで10点の好成績でMVPとなった平川(奥)・服部組
最終日、470級はこの日最初となる第4レースで大躍進を果たす。岡田奎・岩井組、市川・永松瀬組、小泉主将・原組の順で123フィニッシュを飾ってみせたのだ。これは前日のスナイプ勢を上回るこれ以上ないレースとなり、この時点で3位から一気に首位へと躍り出る。また、スナイプ級も平川・服部組が1位、島本拓哉(スポ4=千葉・磯辺)・堀田芽ノ世(法2=東京・早大学院)組が4位でレースを終えるなど前日から守ってきた首位は譲らない。そして迎えた互いの最終レース。470級は3組とも苦しんだが、小泉が主将の意地を見せなんとかシングルに食い込むと、今大会絶好調のスナイプ級勢が3艇ともシングルに入る上出来のレースで大会を締めた。『完全優勝』。海の上で6艇が寄り添い合い、喜びを大きく爆発させた。思えば今季の早大は、団体戦のレース後に喜びという感情をあらわにしたことがない。ひとりひとりがもがき苦しみ、夏のトレーニング期間からの長く暗いトンネルを抜け出した今大会、ようやく光をつかんだ瞬間となった。
優勝した瞬間、小泉主将(右)はこぶしを高く上げた
2年連続でこの大会を制したが、同じ優勝でも昨年とは比べられないほど内容は良いものになっている。また、全日本個選のときよりも安定して良い順位が取れている。そして、何より今季負け続けた慶大に勝てたことが大きい。「慶大とはいろんなレースで勝ったり負けたりを繰り返しているので、負けたくないという思いは強かった」(平川)。慶大に勝つことを、半ば関東を制することとして臨んできた早大にとって、この勝利の価値は大きく、また全日本へ向けての大きな自信となった。今大会ではスナイプ級勢が好調でチームを引っ張ったが、470級も第4レースで123フィニッシュを飾るなど、各艇がそれぞれエース艇になれるほどの実力もつけてきた。「誰が1番手だとかわからないくらいにみんなが速くなっている」(小泉主将)。6艇すべてがエースであるエンジのセーラーたちは、11月、江ノ島の舞台でも、きっと先頭を切って走り続けてくれることだろう。
(記事 菖蒲貴司、写真 谷口駿太)
完全優勝を果たし、4年生はみな賞状と盾を持った
結果
▽470級 ※5レース開催
岡田奎・岩井組 24点
小泉主将・原組 62点
市川・永松瀬組 71点
合計 157点 (優勝)
▽スナイプ級 ※4レース開催
平川・服部組 10点
島本・堀田組 29点
永松礼・花岡副将組 37点
合計 76点 (優勝)
▽総合
233点 (完全優勝)
コメント
470級スキッパー小泉颯作主将(スポ4=山口・光)
――優勝おめでとうございます
最後は危なかったのですが、今まで負けていた慶大に対して1勝できてよかったということと、秋の関東インカレは全日本インカレ前のいちばん大きな大会なので、それをしっかり両クラス優勝して全日本に臨めることになって非常によかったと思います。
――今季初の団体での勝利ですが
やはりうれしく思いますね。
――今シーズンここまで勝利がなかった慶大に大差をつけての優勝となりましたが、慶大に対して特別な意識はありましたか
特別意識をしているわけではなく、また今大会は日大も速かったので意外と慶大と一騎打ちというわけではなかったのでどこがというよりかはワセダが優勝できてよかったという思いが強いです。ただ負け続けてきたので勝ててよかったですね。
――ご自身の成績も徐々にではありますが良い方向へ向かっていると思います
きのう(2日目)、20番台をふたつ取っているので、そこはまだまだですね。スナイプが走れているので、その分今大会では470級が助けられたと思います。スナイプに助けられている中で、奎樹(岡田、スポ2=佐賀・唐津西)のところはしっかり走れていて、今後はぼくと市川(夏未、社3=埼玉・早大本庄)がしっかりすれば、チーム全体としてさらに成績がよくなると思うので、個人成績はまだまだ納得できません。足を引っ張らないように・・・
――これまでヨット部を引っ張ってきた小泉さんが足を引っ張るとおっしゃられるとは思いませんでした
そうですね。ただ、「足を引っ張らないと」と言ってしまうくらい、チームのみんなが速いので、それは今までにない全体のレベルが高いチームになれているのだと感じますね。誰が1番手だとかわからないくらいにみんなが速くなって、今思えば理想のチームができていると思います。
――スナイプ級勢がここのところ好調ですが
きょねんとメンバーがほとんど変わっていないことが強みですね。きょねんの全日本インカレで優勝して、そこからまた1年かけてそれぞれの苦手な風域での練習をしたり、他の基礎的な練習も積めたりと、きょねんは強風だと強いという感じでしたが、ことしはどんな風でも強いと思えるスナイプ級だと思います。スナイプが走っているから、470も気負わずに楽に走れるという感じです。
――全日本インカレでは西日本のチームも参戦しますが、どこが強いなと感じていますか
同志社大と関西学院大ですかね。全日本インカレがチームの最大の目標なので、そこでしっかり勝ち切れるように、それぞれの課題と向き合って、江ノ島では優勝できるようにやっていきます。
スナイプ級スキッパー島本拓哉(スポ4=千葉・磯辺)
――優勝おめでとうございます。今の率直な感想をお聞かせください
うれしい気持ちと、もう少し頑張らないといけないなという気持ちの両方があります。
――改めて、きょうのレースを振り返っていかがでしたか
きょうのレースは風が不安定でした。ワセダはずっと強風では速いけど、きょうのような海面では遅いと言われてきました。しかし、きょう結果が出せたことで自信になりましたし、自分たちがやってきたことを証明できてよかったと思います。
――今シーズンここまで勝利がなかった慶大に対して特別な意識はありましたか
慶大に対してはずっと負け続けていたので、特別な意識はありました。しかし、個人戦や社会人の試合でワセダが上位にくることもあり、それほどガチガチに意識するということはありませんでした。
――第4レース後、「20艇ぐらい抜きました」と海上でおっしゃっていましたが、そのレースを振り返っていかがでしたか
そのレースはスタート自体は上手くいったのですが、風が大きくシフトしてしまい、自分がそれと逆の方向に行ってしまいました。正直焦っていたのですが、前を見たら平川(竜也、スポ3=神奈川・逗子開成)と礼(永松礼、スポ2=大分・別府青山)の艇が上位にいたので、それによって自分たちも落ち着いて、しっかりと順位を上げることができました。
――今大会、スナイプは3艇とも好調でしたが、スナイプリーダーとしてそのあたりはいかがですか
スナイプリーダーとしてはとてもうれしいです。礼がきょねん、平川がその1年前に入学してきました。それから、ずっと一緒にやってきて、勝ったり負けたりを経験してきました。ここにきて、全艇が良い調子で来ているので、この2年間の集大成を全日本インカレで見せられたらいいなと思います。
――最後に全日本インカレへの意気込みをお聞かせください
全日本インカレでは、ワセダは過去2回江ノ島で負けています。前回の江ノ島インカレでは4連覇をかけて戦ったのですが、負けてしまいました。監督である関口さん(功志、平18人卒=愛知・半田)も最後の江ノ島インカレで負けてしまっているので、そういう人たちの思いも含めて、頑張りたいと思います。
スナイプ級スキッパー平川竜也(スポ3=神奈川・逗子開成)
――優勝おめでとうございます。今の率直な感想をお願いします
ほっとしています。
――改めて、きょうのレースを振り返っていかがですか
きのうは良い形で折り返せたのですが、きょうは風がすごく不安定でした。いかに崩さないかが勝負だったと思います。
――今シーズンなかなか勝てなかった慶大に対しては、特別な意識はありましたか
慶大は僕の同期だらけで、仲良くさせていただいています。慶大とはいろんなレースで勝ったり負けたりを繰り返しているので、負けたくないという思いは強かったです。
――スナイプ級は3艇とも好調でしたが、それについてはいかがですか
4年生の島本さんが常にチームのことを考えて行動してくださいました。チームとして最高の状態でやれたことが結果につながったなと思います。
――最後に全日本インカレへの意気込みをお願いします。
絶対優勝します。
470級スキッパー岡田奎樹(スポ2=佐賀・唐津西)
――優勝おめでとうございます。今の率直な感想をお願いします
ただうれしいです。
――改めて、本日のレースを振り返っていかがでしたか
きょうは2レースやって、北風と西南西くらいの風の2種類がありました。1レース目の北風はよく走れたと思うのですが、2レース目の西風でスタートに対して、少し臆病になってしまいました。消極的なスタートで展開を苦しくしてしまったので、もう少し度胸が必要だと感じています。
――今シーズンここまで勝利がなかった慶大に大差をつけての優勝となりましたが、慶大に対して特別な意識はありましたか
特にありませんでした。自分が夏の間に練習してきたことを発揮する、ただそれだけでした。
――第5レースは14位でしたが、後半は素晴らしい追い上げもありました。そのレースを振り返っていかがでしたか
スタートが悪かったせいで、取れるコースの幅が狭くなってしまいました。練度が低い選手が前にいて、運良く抜けたという感じでした。すごい追い上げをしたというより、自分の実力をしっかり発揮したという感じですね。
――最後に全日本インカレへの意気込みをお聞かせください
総合優勝で。