決戦の幕開けだ。昨年無情にも敗戦を喫し涙をのみ、ことしの春、内容的に日大に惨敗をした屈辱を晴らすためにリベンジを誓った早大ヨット部は夏の期間厳しい練習に耐えてきた。そして迎えた今大会。リコール(※1)や反則があったもののクラス間でカバーし合い、走りでは他を圧倒する。そして手にした2年ぶりの関東王者の栄冠は選手たちに自信を与えるものとなった。
台風18号の影響から2日間で10レースを行った今回の関東学生選手権。初日は早大が得意の強風域でのレースとなりスナイプ級が好レースを展開する。永松礼(スポ1=大分・別府青山)・櫛田佳佑主将(社4=東京・早大学院)組が全レースをシングル(※2)でフィニッシュすると、エース・島本拓哉(スポ3=千葉・磯辺)・清原駿(創理2=東京・早大学院)組が上位でまとめる走りを見せる。第3レースで平川竜也(スポ2=神奈川・逗子開成)・花岡航(創理3=京都・洛北)組が反則を取られ、大きく失点してしまうもその後は修正し、スナイプ級は1位で折り返した。逆に470級は安定していなかった。「いくら1位を取っても反則をしてしまうと意味がない」(小泉颯作、スポ3=山口・光)と、カットレース(※3)がない状況下で小泉・江畑陽太(法4=神奈川・浅野)組が第2レースでリコール。岡田奎樹(スポ1=佐賀・唐津西)・原海志(創理3=東京・早実)組も艇のトラブルなどもあり、第5レースで大きな点数をたたいてしまった。しかし、スナイプ級の健闘もあり総合2位で暫定首位に立った日大の背中を追う形で初日を終える。
初日に苦戦が続いた470級
天候にも恵まれた2日目。「反則をしなければ49点はすぐ返せる」(小泉)。470級は前日とはうって変わり安定したレースを展開する。大きな失点をすることなく470級でトップに立ち総合得点で日大に迫る。だが、初日好調だったスナイプ級の調子が悪い。軽風域の中でのボートスピードで他艇と差をつけることができなく、なかなかシングルでフィニッシュできない。しかし、470級の奮闘もあり最終レースを前に逆転し31点差をつけ迎えた第10レース。「日大を意識せずに自分たちの走りをする」(山口優副将、スポ4=佐賀・唐津西)と、早大らしい走りを見せ、見事総合優勝を果たした。
総合優勝を決めガッツポーズを見せる櫛田主将
2年ぶりの関東王者に返り咲いたとはいえ、レース内容は決していいものではなかった。まだ要所でのミスが痛手になり苦しい状況になっている場面がある。このままでは全日本学生選手権での優勝が厳しい。だが、まだ残り1か月ある。「ノーケース、ノートラブル、ノーリコールを徹底する」(島本)。しっかりと調整を行い、総合力をつけ決戦の地、福岡へ――。4年ぶりの『王者ワセダ』復活向け、エンジのセーラーたちは突き進む。
(記事、写真 近藤廉一郎)
集合写真
(※1)スタート信号前にスタートラインを越えてしまうこと。
(※2)10位以内の順位を取ること。
(※3)大会の既定のレースを行うと、最も悪いレースの点数を除くことができるというルール。
結果
▽470級
早大284点(優勝)
▽スナイプ級
早大292点(2位)
▽総合得点
早大576点(優勝)
コメント
スナイプ級クルー櫛田佳佑主将(社4=東京・早大学院)
――2年ぶりの総合優勝おめでとうございます
ありがとうございます。
――率直な感想を聞かせてください
ホッとしたなというところが正直な気持ちです。春は結果的に優勝にはなりましたが実力では日大には負けて、秋ではどうしても勝ちたいと思っていたので夏の練習の成果が出たのかなと思っています。
――今回のレースの総括は
今回は総合力で勝てたレースだったのなと一番感じています。初日は470級チームがなかなか前を走れなかったときにスナイプ級チームがしっかり稼いでいて、逆にきょうはスナイプ級チームが点を稼げない中で470級チームがしっかり稼いできてくれたというところでチームの力がだんだんと上がってきているのかなと思っています。
――初日、スナイプ級チームが走れたという一番の要因は
得意な強風のコンディションだったので、体力的にも技術的にも他の大学よりはアドバンテージがあったのかなと思います。
――2日目は逆に点数が伸び悩んだレースが続きましたが
やはりまだ、だれでも走れるような風域でのボートスピードやコース取りにアドバンテージがないのはなかなか前に出られない要因になっていると思うので、これから全日本学生選手権(全日本インカレ)の期間までに克服していきたいなと思います
――夏の期間にアメリカに遠征を行っていましたがそこで得たものは
やはり海外のセーラーと走ることで世界には自分よりもはるかにうまい人がいるということを感じることができましたし、自分のいまの立ち位置に甘んじているということも感じることができたことが良かったと思っています。
――チームとして総合力が上がってきているとおっしゃいましたが残りの期間でさらに詰めていきたい部分はありますか
スタートでヨットレースは決まってきてしまうのでスタート練習であったり、コース取りの練習であったりをさらに重点を置いてやっていきたいです。
――最後に4年ぶりの『王者ワセダ』復活へ向け抱負をお願いします
僕が入ってから優勝できていないので何としても自分たちの代で優勝して、後輩たちに優勝とはどういうものかを味あわせてあげたいと思います。
470級スキッパー山口優副将(スポ4=佐賀・唐津西)
――総合優勝おめでとうございます
ありがとうございます。
――率直ないまの気持ちを教えてください
春は内容的には惨敗だったので、全員でここまで練習して総合優勝まで結びつけることができたことは嬉しく思っています。
――レースの総括は
初日に470級のほうで反則を2つしてしまったということでかなり苦しい状況になることが多かったんですけど、一人一人、サポートメンバーを含め全員で最後まで気持ちを切らさずに戦えたということがこの結果につながったと思っています。
――初日の470級チームの走りとしてはいかがでしたか
反則をしてしまったんですけど、走りの内容はあまり悪い点はなかったのかなと思っています。反則をしてしまったことにより点数的に厳しくはなっていましたが、ボートスピードに関しては他艇に比べて優位性があったと感じました。また、スナイプ級チームに助けられた場面があったので、2日目は470級チームでもそういう状況をつくり出したいと話し合っていました。
――2日目のレース展開はいかがでしたか
49点差がついていたんですけどあと5レース残っているということで両クラスでコツコツ返していけば必ず点数を返せると思っていたので、クラス間で声をかけ合いながらできたので良かったと思います。
――最終レース前で日大に点差をつけた中での最終レースはどのような気持ちで
あまり日大を意識せずに自分たちの走りをするということを心掛けていました。
――残り1か月となりましたが修正すべき点は
両クラス共通することですがスタートで前に出られているときは上位でフィニッシュできることが多いので、まずはスタートの精度を高めるということが残り1か月の課題になってくるのかなと思っています。
――全日本インカレへ向け意気込みをお願いします。
入学してから全日本インカレでは負けているので大学最後となることしは全員で同じ気持ちを持って優勝をしたいと思います。
470級スキッパー小泉颯作(スポ3=山口・光)
――総合優勝おめでとうございます
ありがとうございます。
――いまの率直な感想は
1日目に自分がリコールをして、チームも3つ反則を犯していて優勝できて嬉しいですが課題が多すぎました。
――今回のレースの総括としては
自分はリコールをして、1艇は艇のトラブルで、もう1艇は審問で、反則になることをチームとして全てやってしまいました。走りに関しての実力は他艇に勝っているなと思うんですけど、反則というところで無駄に接戦にしてしまったことが反省点です。
――カットレースがない状況でリコールをしてしまったことに関しては
春のレースのときもやっていて今回もリコールをしてしまって、スタートはだんだん良くはなっているとは思うのですが、たまに出遅れることもあるのでそういうところがまだ甘い部分であるのと、チームとして大きい失点をしてしまっているので、いくら1位を取っても反則をしてしまうと意味がないので、大きい失点がないようにしたいと思います。
――2日目はどのように気持ちを切り替えましたか
初日終わった時点の総合得点で49点差あったんですけど5レースあった中での49点だったので、きょうも5レースあるということで、初日は反則を3つ犯してついた49点差だったので、反則をしなければ49点はすぐ返せると思っていたので、自分自身はリコールなどの大きい失点をしないようにすることと、まだ半分あるという思いで逆転に向け気持ちを高めていきました。
――最終レース前にして日大を逆転して迎えた最終レースの気持ちの面ではいかがでしたか
しっかりと3艇とも走って、できるだけ前を走ることを意識して走りました。
――全日本インカレまで残り1か月を切りましたが
チームとしてはしっかり前を走るレース展開ができていると思うので、反則や艇のトラブルというところなどの無駄に失点をしないようなことを徹底していきたいです。そして残りの期間でもレベルアップをして全日本インカレに臨みたいと思います。
――4年ぶりの日本一奪還へ向け抱負をお願いします
僕たちは日本一を経験していない代なので、日本一を経験してみたいので頑張りたいと思います。
スナイプ級スキッパー島本拓哉(スポ3=千葉・磯辺)
――総合優勝おめでとうございます
ありがとうございます
――いまの気持ちは
嬉しい気持ちもあるのですが多く出たレースだったと思います。
――課題が多く残ったとおっしゃいましたが
初日は内容としてはかなり良かったのですが、反則を取ってしまったりして結果がついてこなかったです。2日目は内容自体も良くなく、とても課題が残るレースだったと思います。
――そのような課題が出てくる中で、どのように改善しようとしましたか
しっかり、風が弱い時に艇団に対してエンドに出るということを意識いました。それは外から風が入ってくるので中にいたときに前を走っていたとしても抜かれてしまうのでそれを気をつけようとしました。
――夏の期間アメリカのほうで遠征をされていましたがそこで得たものとは
かなりレベルの高いレースで、自分がいままでいかに楽にヨットレースをやってきたのかということを痛感しました。特に混戦になる場面が多くて、その中でいかに順位を上げていくのかということを学びました。今回も混戦の中から順位を上げることができた場面があったので良かったと思います。
――残り1か月となりましたがどのように修正していきたいですか
ノーケース、ノートラブル、ノーリコールを徹底するということと、軽風域でまだまだ日大に劣っているので軽風域でいかに日大に迫れるかということを意識して練習していきたいと思います。
――4年ぶりの日本一に向け抱負をお願いします
必ず一番前を走って、早大の日本一に貢献できるように頑張ります。