先の470級で『個』の力を見せつけたワセダだったが、このスナイプ級では初日から厳しい展開となった。2日目第5レース終了時点で、全日本学生個人選手権(全日本個選)へ進出できる14位以内に入ったのは6艇中2艇のみ。しかし第6レースから状況は変わる。平川竜也(スポ1=神奈川・逗子開成)・三ツ木駿(スポ4=東京・明学東村山)の操るヨットが風を捉え、順位を一気に浮上させた。平川・三ツ木組はそのまま好成績を維持し、見事ワセダの3艇目として全日本への切符を勝ち取った。
臨戦する桐岡(右)・櫛田組
大会1日目は、先週の470級に引き続き「チームで走ろうという意識があった」と桐岡洋平副将(社4=東京・早大学院)は語る。しかしその言葉とは裏腹に、序盤から艇ごとに明暗分かれる展開となった。初日に行われた3レースで、桐岡・櫛田佳佑(社3=東京・早大学院)組は5位、島本拓哉(スポ2=千葉・磯辺)・花岡航(創理2=京都・洛北)組は8位と全日本個選圏内に入る。その一方で、「負のスパイラルに陥った」という平川の言葉に表されるように、注目の平川・三ツ木組は21位にとどまり、さらに高橋友海(教2=神奈川・桐蔭学園)・溝口芽(教3=アメリカ・Paul Laurence Dunber)組は16位、小槻翔(政経4=東京・早大学院)・渡辺盛大(人3=埼玉・川越東)組は17位と、全日本まであと一歩となる結果に終わった。
2日目も不振は続く。最初の第4レースで、平川・三ツ木組は30位に転落し絶望的な状況になった。しかし、「逆に吹っ切れた」(三ツ木)と切り替え、第5レースから怒涛の反撃を見せる。復調の原因を平川は、「自分の走りを取り戻せた」と振り返った。その後のレースも順調に成績を上げ、5位の桐岡・櫛田組、6位の島本・花岡組に次いで、平川・三ツ木組は12位で全日本個選進出決定。一方で高橋・溝口/大門弘和(政経4=東京・早実)組は16位、小槻・渡辺組は22位と、惜しくも大舞台には届かなかった。
劇的な逆転を見せた平川・三ツ木(右)組
今大会のスナイプ級全体として、カギは『切り替え』にあったといえるだろう。選手たちは不調の中でも、他の仲間の躍進によって良いプレッシャーを与えられ、一つ一つのレースに集中することができた。全日本個選は、11月の全日本学生選手権(全日本インカレ)へ向けての貴重な一戦となる。ワセダのセーラーたちは今大会で見つかった課題を克服し、さらなる強豪との戦いへ挑んでいく。
(記事 丸山美帆、写真 細矢大帆)
結果
5位 桐岡・櫛田組 51点
6位 島本・花岡組 57点
11位 平川・三ツ木組 100点
※上記の3ペアは全日本個選出場決定
16位 高橋・溝口/大門組 117点
22位 小槻・渡辺組 172点
◆コメント
スナイプ級クルー三ツ木駿(スポ4=東京・明学東村山)
――全日本個選出場おめでとうございます
ありがとうございます!
――1日目のご自身の走りを振り返って
初日は20位だったので、全日本個選出場が14位以上なので、本当に追い詰められていたというのはありました。
――2日目はいかがでしたか
最初のレースで30位を切ってしまって、これは手が届かないなという位置まで落ちてしまったと思ったので、逆に吹っ切れて、スタートからしっかり思い切って走ることができたと思います。それが結果につながったのかなと思っています。
――今大会にむけてのご自身の目標は
目標としては、8位というものを掲げていたのですが、実際には11位という結果になってしまいました。春を終えて早稲田が優勝したのですが、そこから他大のチームがしっかり取り組んできているということが今回のレースを通して分かったので、これからやはり、もっと基本動作やハンドリング練習を土台として、このような社会人と練習できるような環境をコーチ陣がくださっているので、それをフルに生かして、社会人の方々と一緒に練習していきたいと考えています。
――スナイプリーダーとしてスナイプチーム全体を振り返って
1日目は、自分たち以外は、4番艇・5番艇も走っていたので、すごく嬉しかった反面、自分が通らないとだめだなというプレッシャーはありました。結果的に4番艇・5番艇も16位と22位という結構良い結果を出してくれたと思います。全日本インカレを目指すには、4番艇・5番艇というレギュラーではない選手たちの実力があがって、ボトムアップがないと、レギュラーのメンバーもプレッシャーを感じないですし、これからも頑張ってもらいたいと思います。
――全日本個人選手権にむけてのご自身の抱負は
目標順位はまだ明確ではないですが、内容としてはしっかりスタートを第1線で出て、そのままのばして走れるような位置で走れればと考えていて、それを実行するためには、基本動作やハンドリング練習などのボートのコントロールが向上しないとできないなというのを実感したので、それらの課題をクリアしていきたいと思っています。
――チーム全体では
チームで3艇出場するということで、この結果で、全日本インカレまでの練習方法であったりとか、プランがたてやすくなる、やはり指標となるようなレースだと思うので、とりあえず関西水域がどれくらい速いのか、同大であったり関学大であったりがどれくらい走るのかというのをこの目で確かめてきたいなと思っています。
スナイプ級スキッパー桐岡洋平副将(社4=東京・早大学院)
――全日本個選出場決定、おめでとうございます!
ありがとうございます!
――1日目を振り返って
個人選手権という大会でしたが、まずチームで走ろうという全体の意識がありました。艇同士でコミュニケーションを取って、風の情報などを共有しながら前を走ることができたので、それが良いレースにつながりました。
――2日目についてはいかがですか
1日目に5位という良い位置につけていて、さらに上を狙いたいなということもあったので、攻めていきました。しかし、その結果第4レースで少し順位を落としてしまって、そこで少し順位に対し固執しないようにしようと考え、次のレースから修正しました。結果、シングル(1桁)の順位を取ることができたので、良かったと思います。
――高校時代から共に戦ってきた、櫛田佳佑選手(社3=東京・早大学院)とのペアで臨みましたが
実はきょねんのこの大会で僕は20番台後半という位置でしたが、櫛田と組んで全国出場圏内、入賞圏内に入ることができたので、櫛田には本当に感謝しています。本当に信頼できます。
――4年生として迎えるラストシーズンとなりましたが
最後なので、自分の走りを見ていただきたいなと思います!
――今後への抱負を
全日本個選は通過点に過ぎないので、全日本インカレにしっかり照準を合わせて頑張りたいです!
スナイプ級クルー花岡航(創理2=京都・洛北)
――全日本学生個人選手権出場おめでとうございます
ありがとうございます。
――1日目の走りを振り返ってみて
1レース目にたたいていまって、雰囲気にものまれてしまい駄目だなと思ったのですが、2,3レース目で1レース目の流れをずるずるとひきずることなく、良い位置まで持っていくことができたので良かったと思います。
――2日目についてはいかがですか
全体的に良かったです。2日目になってまた切り替え、お互い2年生であることもあって、そこまで気負うことなく気楽に走ることができて良かったと思います。
――今大会の目標は
3位以内という目標だったのですが、結果的には6位となってしまい少し残念です。
――課題は見つかりましたか
ボートスピードが速い時と遅い時があって、それは気持ちに依存していたりするのですが、スピードの違いの原因が分からないとだめだなと思いました。
――全日本個選にむけての抱負を
入賞できたらと考えています。まだ年齢も若いので頑張って入賞したいと思います。
スナイプ級スキッパー平川竜也(スポ1=神奈川・逗子開成)
――大きく順位を上げての全日本個選出場おめでとうございます。
ありがとうございます。
――1日目を振り返ってお聞かせください。
初日は正直ちょっとプレッシャーが大きくて、全然自分のペースで走れなかったです。もう本当に、負のスパイラルに陥るというか。全然切り替えられなかったです。
――2日目はいかがでしたか。
きのう23位という成績で、14位までしか全日本へ行けないのですが、ジタバタしてもしょうがないなと思いました。一個一個、やるべきことをやって、他が落ちてくるのを待つというか。自分がミスをせずにチャンスをうかがわなきゃいけないなとずっと思っていました。それで、今日の2日目の1レース目に、また失敗してしまって、メンタル的に本当にボロボロだったんですけど…。もう全日本個選出場を意識せずに自分の走りをしようと思うことができて、そこから4レースまとめられました。
――6ラウンド目のレースに、順位が浮上されましたが、好調の原因はどこにありましたか
ちょうどそのレースの前に、結構吹っ切れました。今日は1レース目失敗して、2レース目が中途半端な成績で。確か、12位だったんです。そこで、結構自分の走りを取り戻せて、攻めるところを攻められたのが良かったのかな、と思っています。
――スナイプリーダーであり、一緒に戦われた三ツ木さんへの印象をお聞かせください。
三ツ木さんは僕、本当に大好きで。もうひたすらに好きで。本当に仲良くしてもらって。僕は2月に、ワセダに参加したんですけど、一切走れなかったんです。そのため多分セレクションミスだみたいな、空気が流れていて。その時でも、僕を信じて、一個一個やっていこうって言ってくれて。本当にもう三ツ木さんの存在がなかったら、全日本個選も絶対通ってないです。本当に感謝しています。
――平川さんにとっては、初の全日本個選になりますが、それに向けての抱負をお願いいたします。
全日本個選で、全日本インカレ前の個人戦なので、エースの島本さん(拓哉、スポ2=千葉・磯辺)に迫る走りをできればいいと思います。