5連覇を狙い伝統の一戦に臨んだ早大。今大会はブラジルで行われている国際ジュニアワールド大会の影響で、スナイプ級の主力選手を多数欠く中で行われた。初日は実力に定評のある470級で次々とミスが続くも、不安視されていたスナイプ級が善戦を見せ対抗する。しかし、序盤に広げられた点差を最後まで埋めることができず敗戦。課題の残る内容で宿敵の前に屈する結果となった。
美しく帆が並ぶ470級早慶戦
全3レースが行われ、微風域でのレースとなった早慶定期戦(早慶戦)初日。第1レース、470級の小泉颯作(スポ2=山口・光)・槌谷祥吾(商3=東京・早実)組、山口祥世(スポ4=長崎工)・谷口柚香(スポ4=長崎工)組が圧巻の走りを見せ、期待通りワンツーフィニッシュを決めたかのように思われた。しかし両艇共にリコール(※)の判定を取られ、まさかの失格。序盤から大きなリードを許してしまう。流れを完全に奪われたかに見えた早大だったが、ここで4番艇の市川夏未(社1=埼玉・早大本庄)・大堀裕太郎(文構2=東京・早大学院)組が輝きを放つ。リコールを受けた2艇に代わって第1レース1着でフィニッシュすると、デビュー戦を飾った大堀が「自分たちの走りを展開できた」と自負するように、第2レースでも好調を維持。レース終盤に前を走る慶大の艇を捉え、トップゴールを決めた。第3レースも山口優(スポ3=佐賀・唐津西)・石原裕太主将(文構4=東京・早大学院)組がトップフィニッシュを決めるなど、全員でリコールのミスをカバーしついに慶大に並ぶ。またスナイプ級も「思い描いていた通りに自分のチームの船を前に行かせることができた」と桐岡洋平副将(社4=東京・早大学院)が振り返るように、主力を欠く圧倒的不利な状況の中、『チーム力』で宿敵に食らいつく。第2レースでは先日の全日本学生個人選手権で準優勝、5位入賞などの好成績を残した慶大スナイプ陣からリードを奪う健闘。第3レースは再び慶大に先行を許したものの、わずか5点ビハインドで初日を折り返した。
何としても最終日に逆転したい早大であったが、前日とは打って変わって高くうねる波に苦戦を強いられる。小泉・槌谷組が1着となるも後続が続かず、期待の470級がまさかの4点差をつけられてしまう。スナイプ級も強風域での経験の差が出たか、4、5、7、8位と厳しいレース展開に。結局最終日はこの1レースのみしか行われず、470級、スナイプ級共に敗れる完敗。強い志を持って臨んだ伝統の一戦、荒れ狂う葉山の海を背景に選手たちからは涙があふれた。
トップゴールを決め、喜ぶ市川(右)・大堀組
「細かいミスが多かった」(桐岡)。自らのミスで点差を広げられた印象の強い今大会。大舞台での活躍のためには、ベストな走りをすることが絶対条件だ。しかし反省すべき点がある一方で、「レギュラーに助けてもらった」と大堀が語るように、チームレースならではの走り方ができていたのも事実。スナイプ級も主力を欠く中で粘りの走りを展開し、層の厚さを見せつけた。今季初めてチームレースでの敗戦を喫した早大。「(4年生に)勝って笑顔で終わってほしい」(小泉)――。悔しさを胸に、そして勝利の『紺碧の空』を歌い上げるために。敗北を知ったエンジのセーラーたちの真価が問われるのは、これからだ。
(記事 細矢大帆、写真 丸山美帆)
結果
▽470級
小泉颯作・槌谷祥吾組 17点
山口祥世・谷口柚香/谷口諒介(文構4=東京・桐朋)組 19点
山口優・石原裕太組 23点
市川夏未・大堀裕太郎/江畑陽太(法3=神奈川・浅野)組 17点
470級総合得点 ●早大76-72慶大
▽スナイプ級
高橋友海(教2=神奈川・桐蔭学園)・大門弘和(政経4=東京・早実)組 28点
桐岡洋平・三ツ木駿(スポ4=東京・明学東村山)組 15点
小槻翔(政経4=東京・早大学院)・服部勇大(基理1=東京・早実)組 16点
瀧下雄介(創理2=東京・早大学院)・杉本大(商4=神奈川・横須賀)組 22点
スナイプ級総合得点 ●早大81-64慶大
▽総合得点 ●早大157-136慶大
コメント
(初日のコメントを掲載いたします。)
スナイプ級スキッパー桐岡洋平副将(社4=東京・早大学院)
――きょうは早慶戦という特別な試合にどのような意識で臨みましたか
自分がきょう1番艇で出場することになったのですが、自分がいい順位を取るだけでなく、周りがどうしたら前に出られるのかということを常に意識していました。
――きょうのご自身の走りを振り返って
第2レースは自分のレースプランで思い描いていた通りに自分のチームの船を前に行かせることができましたが、第3レースでは自分の決定的なミスによってフィニッシュを4位に落とすことになってしまって悔しい限りです。
――きょうの走りで良かったところや見つかった課題は何でしょうか
課題は細かいミスが多かったことです。きょうは初めて組んだコンビでしたが、動作のミスなどについて二人でコミュニケーションが取れないで、そこで順位を落とすということもたびたびありました。悪かった点としては判断ミスとコミュニケーションが取れなかったことです。良かった点は、あまりありませんでしたが、強いて言うならチームが思ったよりも接戦を演じられたのは良かったと思います。
――きょうの早慶戦を今後の大会や全日本インカレ(全日本学生選手権)へ向けてどのようにつなげていきますか
あしたレースがあるかどうか分かりませんが、あしたがあればしっかり勝って、この勢いをそのままに全日本インカレまで負け知らずのチームとして臨みたいと思います。
470級クルー槌谷祥吾(商3=東京・早実)
――早慶戦へどのような意識で臨みましたか
ケイオーはどのスポーツでもワセダのライバルという関係なので、絶対ケイオーには負けたくないという気持ちで臨みました。
――きょうのご自身の走りを振り返って
きょうはスピードが良かったので、それを武器に相手に対するコースを取ってレースをしました。
――きょう見つかった課題は何ですか
良かったところはレース中のボートスピードです。悪かったところは相手を完全に見切れていなかったところです。自分と相手だけでなく味方と相手というところを見切れていないところがあって、そこをチームとして共有できていなかったのが課題になります。
――きょうの試合を以降の試合にどのように繋げていきますか
ケイオーは全国的にも強い相手なので、そこに勝つことは関カレ(秋季関東学生選手権)や全日本インカレへつながると思います。必ず勝って、これを糧に以降のレースに臨んでいきたいです。
470級クルー大堀裕太郎(文構2=東京・早大学院)
――きょうの試合を振り返って
きょうの試合は、風が弱い中で行われました。今回は4番艇だったのであまり気負いせずにレースに臨むことができて、全体を通して(3番艇までの)レギュラーに守ってもらいながら自分の役割を果たせたのではないかなと思います。
――初レギュラーでしたが、プレッシャー等はありましたか
前日までレギュラーになるかどうか分かっていなくて、すごく緊張はしましたが、とにかく声を出してチームを明るくしようと心がけました。それが自分の結果にもつながったと思うので、良かったと思います。
――レース前に特に意識した点は
自分はチームレースに初めて出場しました。チームレース独特の走り方がある中で、チームに迷惑をかけないようにしようという意識は持っていました。
――第1レース、第2レースは素晴らしい走りでした
第1レースも第2レースもレギュラーの山口祥世さん(スポ4=長崎工)や小泉(颯作、スポ2=山口・光)や山口優さん(スポ3=佐賀・唐津西)に助けてもらって、自分たちの走りを展開できたので、本当に感謝しています。
――反省点は
第3レースで慶大からのマークがかなりきつくなって、辛いレースの中で視野が狭くなってしまいました。あしたからもう一度修正していきたいと思います。
――早慶戦に対する思い入れはありますか
2年生で早慶戦に出られて、すごくいい経験ができました。おそらく早慶戦は最も勝ち負けにこだわる大会の一つでもあるので、やるからには絶対に勝たなければいけないという気持ちで戦いました。
――接戦となりましたが、あすの決戦に向けて
ぶち上げていきます!
――今後の目標を
とりあえず残りのシーズンは全日本インカレに全力を注いでいくことです。そして個人的にはらいねんのレギュラーを確実なものとするために、日々努力したいです。
瀧下雄介(創理2=東京・早大学院)
――レースを振り返っていかがですか
いままでは、早大ヨット部の順位としてはあまり関係のない艇としてレースに出場していて、今回初めてレギュラー艇として出ました。もともと僕は470級に乗っていて、2日間しかスナイプ級で練習してなかったので、慣れない部分もありました。そんな中で第2レースの2位という結果は本当に良かったと思っています。しかし最終レースは8位だったので、反省すべきところもあります。日頃乗っている470級と比べて、いろんな発見とか、ヨット全体に通じる知識が得られたので、非常に良かったかなと思います。レースに出られたことも光栄だし、貴重な経験でした。少しでも勝ちに貢献できたら良かったかなと思います。
――2位になった第2レースの勝因は何だと思いますか
クルーの杉本さん(大、商4=神奈川・横須賀)のおかげですね。僕はスナイプ級に慣れていなくて、まっすぐ走らせることに精一杯だったので、クルーの人に周りを見てもらったり風を見てもらったりしました。また、慣れていないので相手を意識せず、ただ速く走らせることだけを考えていました。それも勝因の一つかなと思います。
――早慶戦は特別な思いがあると思いますが、いかがですか
やっぱり勝ちたいですよね。この早慶戦のレース副委員長をやっていた今井さん(充、平23商卒=東京・早大学院)に、僕が早大学院でお世話になっていた高校3年生のときの最後の早慶戦で、「高校で3連敗しても大学で4連覇すれば勝ち越しだから」という言葉をいただきました。大学4年間は4連勝できたらいいかなって思っています。早慶戦は勝ちたい戦いの一つだと思います。
――きょう見つかった課題を教えてください
高校から始めたので、他のスキッパーよりもヨット経験が圧倒的に少ないです。艇と艇の接点でパニックになり、平常心がなくなってしまいました。船の接点で強くなれるようにならなければというのが反省点です。
――あしたのレースへ向けて一言お願いします
強風で厳しいことが予想されますが、セイフティーに、自分のできる走りをしたいと思います。