絶対的守護神が抜け、チームの最大の穴となったGK。草島邦彦(社4=東京・早実)と谷口嘉鷹(社2=東京・早実)の先輩後輩コンビがその座を争い、切磋琢磨(せっさたくま)を続けている。チーム浮上のカギを握るポジションを担う二人が、高校時代から知っているお互いの素顔を明かしてくれた。
※この取材は6月30日に行われたものです。
「氷上で声を出すのは誰にも負けていない」(草島邦)
草島邦
――まずお互いの第一印象をそれぞれ教えてください
草島邦 高校の時は僕が高3で(谷口が)高1で、僕は主将を務めていたのですが、ほとんど関わることはなかったですね。
――やはり同期の方が関わりは多かったですか
草島邦 そうですね。関わるのはほとんど同期か1つ下の学年でした。あとクラブチームあがりだったので、推薦4人組はなめていました(笑)。
谷口 いや、なめてはないでしょう。
草島邦 みんなクラブチームあがりだったので、まあ…第一印象は悪かったです(笑)。
――谷口さんはいかがですか
谷口 怖かったです。高校にあがると、中学と全然違って。部活としてだったので、より先輩らしいというか…。入った時に雰囲気が違って、年齢も2つ離れているし結構大人だったし、高校3年生というのは正直怖かったですね。
草島邦 高校の時は怖いキャラだったんですよ。
――今はいじられキャラとお伺いしているのですが…何があったのですか
草島邦 僕ほんと高校の時は…お前から話し掛けるなんてなかったよな絶対。
谷口 ないですね。
草島邦 結構僕高校の時は1番怖かったので。1番かは分からないですけど。
谷口 いや、1番怖い。
草島邦 お前ら…ここ並べ、って感じで。まあ今では考えられないですけど(笑)。
――今はいかがですか?
谷口 今は…(笑)。
草島邦 こんな感じなんですよ(笑)。手のひら返しちゃって…。昔は今では想像もつかないようなキャラでした。
――続いてアイスホッケーを始めたきっかけについて伺いたいのですが、草島さんはやはりお父様の影響ですか
草島邦 それだけですね。気付いたらやっていたので、父の影響でしかないですね。
――谷口さんはいかがですか
谷口 そんなに覚えていないのですが、小さいときにリンクに連れて行かれてアイスホッケーを見させられて、そこで自分がやりたいと思ったのがきっかけです。
――アイスホッケーを続けていく上で、辞めたいと思った時期はありましたか
草島邦 僕はありましたね。小学校2年生の時かな。
――何かあったんですか
草島 僕は最初プレイヤーをやっていたのですが、チーム事情でキーパーをやらなくてはいけなくなって、それが嫌で…。それで辞めたくなりました。
――そうだったんですね。谷口さんは自らGKをやりたいと思ったのですか
谷口 いや、最初はチームにGKがいなくなって、次誰がやる?となったときにみんなでGKの体験をやったんです。そこで楽しいと思ったので…。
――GKを始めたから気付いた魅力などはありますか
草島邦 やっていく中で楽しかったということしかないですね。誰々を見てかっこ良いと思ったとか、そういうことはないですね(笑)。
――具体的にどこが楽しいですか
草島邦 シュートが飛んでくるのを止めるのは完全に1対1じゃないですか。そこが楽しいです。自分にしかできないというか。
――谷口さんはいかがですか
谷口 僕は、楽しさとかは小学生の時に忘れました。
草島 確かに今はもう練習中楽しいとかは…(笑)。
――ことしトレーナーが代わりましたが、練習内容も変わりましたか
草島邦 僕が1年生の時が1番楽で、年々辛くなっていくという…。体も老いていくのに…(笑)。
――反比例していってるんですね(笑)
草島邦 体はぼろぼろです。
――成長したなと実感する部分はありましたか
草島邦 体つきは変わりましたね。入部当初着ていた服が着られなくなったりとか、体重は減るんですけど筋肉量がアップしたから体脂肪率が減ったりとか…。体重は5kgくらい減りました。
谷口 僕は多分走れるようにはなってますね。
――1年の時と比べると、やっぱり厳しいですか
谷口 厳しいですね。1年生の時は1年生の時で練習以外の仕事とかもあってつらいと思っていたんですけど、2年生になってもトレーナーが代わってメニュー自体がつらくなって、結局つらさは同じぐらいだと思います。
――今の主将はこれまでの主将と比べてフレンドリーだとお聞きしたのですが、実際のところはどのような感じですか
草島邦 本当にそうですね。今までの主将は1人で突っ走っていくタイプだったんですけど、ことしはどちらかというと調和をすごく大切にする主将です。みんなに絡んで1つになってやっていこうというスタイルですね。
谷口 (新井)遥平さん(スポ4=北海道・駒大苫小牧)はチーム全員と仲良く話してくれるので、こっちとしてもチームになじみやすいです。1年生もチームの輪に入りやすい環境を作ってくれているのは、遥平さんだと思います。
――具体的にチームの雰囲気が変わったと思う部分はありますか
草島邦 下級生がみんなの前で発言する機会は多くなりましたね。結構今まで萎縮していたというか、特に僕が1年生の時は4年生が絶対的だったので…。今はそうでもないです。それが良いのか悪いのかは分からないですけど。
――谷口さんは発言などなさりますか
谷口 僕はそういう感じじゃないので、おとなしくしています。
――次に、春の試合の振り返りをしていただきたいと思います。関東大学選手権(選手権)は7位に終わりましたが、この結果はどう感じていらっしゃいますか
草島邦 絶望ですね。数十年ぶりに準決勝まで行けなくて、前代未聞みたいな感じなので、言うことはないですね。
谷口 納得していないですね。
――今の実力的には物足りないと
草島邦 自分たちのホッケーがうまくできなかったというのもありますし、あまり思うようなチームプレーができなかったのかなと思っていますね。今までの負けたパターンだと崩されて…というのが多かったと思うのですが、今回はラッシュやカウンターばかりで、誰がいけないというよりは6人全員の責任かなと思いますね。
――GKとしてはことし遠藤秀至さん(平29社卒=東京・早実)が抜けてしまったと思うのですが、それによる意識の変化はありましたか
草島邦 ワセダだけでなく他大学からも遠藤が抜けたと言われますし、ずっとそれは自分自身でも感じています。プレッシャーと言いますかなんとかしないと…という気持ちは、僕だけではなく谷口や他のチームメイトも感じていると思います。
谷口 僕も同じですね。でも逆にそれをプラスに考えれば、周りからはそんなにマークされていないということなので、変なプレッシャーもかからず自分がやりやすいようにできるのではないかなあと思います。
――GKとしてのプレースタイルの互いの相違点はなんだと思いますか
草島邦 僕らはまず体格が違うので…僕らというか僕が同じぐらいの体格の人がいないので…。
谷口 ポジションじゃないですか。
草島邦 身長に余裕があるキーパーって、シュートが飛んできた時に足をついて止めるのが、1番止める確率が高いと思うのですが、僕がそれをやってしまうと上が空いてしまうので…。そこが他のキーパーとは1番違うのかなあと思います。それを前提として動いていないので。
――ではお互いここだけは誰にも負けていないと思う部分はありますか
草島邦 僕は氷上で声を出すのは誰にも負けていないなと思います。谷口にも遠藤さんにも負けていないと思います。遠藤さん自体あまり声を出さないキーパーで、多分それはディフェンスに助けを求めなくても自分でできる実力があるからだと思うのですが、僕はそれほど実力が無いので、声を掛けて助けてもらえるように自分から働きかけるというのは負けていないと思いますね。
谷口 僕は焦らないことです。失点してもそんなに焦らないです。
GK二人のプライベートは?
――部内で仲の良い選手はいらっしゃいますか
草島邦 僕は同部屋の新井ですね。今も一緒に(ランニング)行ってきましたし。あとは後輩ですと、1年だと生江(太樹、スポ1=北海道・釧路江南)とか篠田(純希、スポ1=北海道・苫小牧東)だったりですね。
――お二人の仲はいかがですか
草島邦 まあ、昨日とかは授業一緒に取ったりしてるんで。
谷口 取らされたよね。
草島邦 俺が無理やり取らされました。
谷口 無理やり取らせられました。
一同 (笑)。
――谷口選手は仲の良い選手はいらっしゃいますか。同室の前田悠佑選手(社1=東京・早実)はいかがですか
草島邦 親友ですね。
谷口 いや、違います。
――加湿器仲間ですか?加湿器にはこだわりがあるそうで
谷口 まあ加湿器には。喉弱いんで。
草島邦 この時期も?
谷口 いや、いまはさすがに梅雨なんで。
――遊びに行かれるのはチームメイトが多いですか?
谷口 ちょっと…
草島邦 お前正直に答えろよ。
一同 ああ〜
草島邦 まあ、まあまあっていう相手です。
――朝からずっと練習していると生活は大変ですか。夜とかすぐ寝ちゃいますか
谷口 いや、でも朝練が終わってすぐ眠くなって。そっから寝て昼まで寝て。もちろん夜は寝れないですよね。
草島邦 僕も何もない時は、日曜は基本オフなんですけど基本的に起きるまで寝て、テレビ見るなりなんなりして。
――休養日ですね
草島邦 そうですね。他には僕は実家が気軽に帰れる距離なので車取りに帰ってちょっと遊びに行くみたいな。入間にコストコあるじゃないですか。そこにしょっちゅう行ってます。僕は仲のいい友達が部活生なのでそこが遊べないってのはありますね。
――他は日曜日練習やっているところが多いですもんね
草島邦 まあ僕はそんな個人的な相手もいないんで。彼と違って。
一同 (笑)。
――食事制限などはありますか
草島邦 シーズン中は特にないですね。
谷口 気にしたことないです。
草島邦 今が制限中ですね。今はトレーニング強化期間なんで。そこで一気に絞ります。
谷口 筋肉量増やしたり。
草島邦 今はもう昼飯ヨーグルトだけとか。僕はもともと食欲ないので、その点は他の選手より楽かもしれないですね。
――谷口選手はお腹すきますか
谷口 僕はもうサラダチキンとか。女子大生でも油そばとか食べてますけど。僕はそんなに食べないですね。それよりもサラダチキン一択です。
――今年の1年生はいかがですか。面白い人とかいますか
谷口 個人的に結構好きなのは生江ですね。この前も2人で焼肉行きました。結構「(焼肉)行きましょう!」みたいな。
――かわいい後輩ですね。前田選手は…
谷口 あいつはもうずっと一緒にいるんでもういいです。(前田選手は)なんかずっとヘラヘラしてますね。
――草島選手は弟さんが入部されたそうで。選手としてはいかがですか
草島邦 まあ、氷上では一番きつく言っちゃいますね。
――弟さんだからこそですかね
草島邦 そうですね。容赦なく言える、ってこともありますし身内ってことでどうしてもやっぱり言い方がきつくなってしまうのはありますね。
――弟さんもアイスホッケーを始められた理由はやはりご両親の影響ですか
草島邦 もう決められてたみたいなもんなんで(笑)。僕が始めたときからリンクサイドで遊んでて、いつ始めんの?みたいな感じで。
――中高と(学年の影響で)離れてしまっていて、また大学で一緒になれて嬉しい気持ちなどはありますか
草島邦 正直ありますね。かわいい弟ですね。まあ彼が早実受かった時が一番うれしかったですね。同じカテゴリでやったことがなかったんで。
「僕らが止めれば負けることはない」(谷口)
谷口
――次はこれからのことについて質問していきます。夏の合宿で強化したいことや練習内容はもう決まってますか
谷口 まだ決まってないですね。
草島邦 とりあえず走る、それだけは決まってますね。
――チームとして、個人として強化していきたい部分とかありますか
草島邦 どこを強化っていうか全体的にですね。総合的に個人的にもチーム的にもレベルアップしていかなければと思いますし。春の反省や今までの反省をちゃんと理解した上で練習をしていく必要があるのかなと。日々淡々とやるんじゃなくて、目標をもってやっていきたいです。
――谷口選手はいかがですか
谷口 個人的だったら集中力ですね。春の大会では課題になったと思っているので。まあそのためにはまず体力を。体力があれば集中力が途切れることはないんで。そのためにまずは体力をアップして秋以降に臨みたいです。
――では、その前のサマーカップの目標はありますか
草島邦 サマーカップは去年3位だったので、最低でも3位には。最低ラインですね。
――春の課題となった、連携の乱れをどうやって改善していきますか
草島邦 同じようなパターンでのピンチが多かったので。それこそラッシュで相手が2人でこっちがディフェンス1人だったりというシチュエーションが多くて。そこは意識の問題ですよね。一人一人の、あと一歩でどっちに行くかで大きく変わってきちゃうんで、そこの意識付けがポジション関わらず重要なのかなと思います。
――では最後にその後の関東大学リーグ戦に向けての意気込みをお願いします
谷口 チームはもちろん優勝を目指しています。個人としては優勝にふさわしいキーパーになるということと、まあ簡単な話、僕らが(ゴールを)止めれば負けることはないんで。セーブ率は意識していきたいですね、毎試合。
草島邦 団体としてはもちろん優勝です。去年は後半失速してしまいましたし、ただ漠然と優勝を目指すのではなくて後半まで持ちこたえられる集中力と精神力が大事かなと。個人としては同じようなミスをしない、連続失点をしない。そういうようなことが重なれば自ずと結果もついてくるのかなと思っているので、優勝に向けて頑張りたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 藤岡小雪、松本一葉)
取材翌日の海合宿で使うお菓子とお酒を手にしています!
◆草島邦彦(くさじま・くにひこ)(※写真右)
1995(平7)年9月16日生まれ。157センチ。東京・早実高出身。社会科学部4年。写真では日本酒の瓶を持っている草島選手。しかし実際のところ、お酒は飲めないそうです。
◆谷口嘉鷹(たにぐち・かよう)(※写真左)
1997(平9)年8月13日生まれ。171センチ。東京・早実高出身。社会科学部2年。初対談とは思えない落ち着きぶりだった谷口選手。草島選手との掛け合いから仲の良さが伝わってきました。最近はまっているものは海外ドラマ『ウォーキングデッド』。部屋でひたすら見ているそうです!