「14試合の中で一番いいゲームができた」(工藤哲也監督、昭63社卒=青森・八戸)。関東大学リーグ戦(リーグ戦)最終節の東洋大戦を終え、指揮官は納得の表情を浮かべた。試合前に4位は確定していたが、日本学生氷上競技選手権(インカレ)に弾みをつけるためにも勝ちたかった一戦。3-3で引き分け白星を挙げることはできなかったが、最後の最後に『ワセダらしいホッケー』を体現した。
第1ピリオド(P)は序盤から積極的な攻撃を展開したが、後半に相次いだペナルティーからリズムを崩す。GK遠藤秀至(社4=東京・早実)を中心に数的不利のキルプレーをしのぐが、3人対5人の局面では相手の術中にはまってしまった。追う展開となった第2P、開始早々にFW寺井敏博副将(国教4=米国・チョートローズマリーホール高)が仕掛ける。ディフェンスをかいくぐりゴール前に抜け出すと、正面から鮮やかなシュート。試合を振り出しに戻した。しかし、直後に失点すると、再び東洋大のペースに。さらに1点を加えられ、1-3でこのピリオドを終えた。
GKと1対1の局面で寺井が魅せる
リーグ戦の集大成を見せたのは第3Pだった。数的有利のパワープレーでのスタートとなったこのピリオド、全てのセットが果敢に攻め込みシュートを連発する。だが相手GKの好セーブに阻まれ、突破口を開くことはできない。そんな中、後半に入ってようやくゴールネットを揺らすことに成功する。53分34秒、DF堰合芳貴(社4=青森・八戸工大一)のロングシュートにFW矢島雄吾(スポ2=北海道・駒大苫小牧)が合わせ、1点差とした。残り1分31秒、ここでワセダがタイムアウトを取る。選んだ戦術は、今季一度も成功していない6人全員による攻撃。リスクを背負ってでも、『1点』が欲しかった。チャンスを作り、堰合が動く。「ここしかないな」(堰合)。思い切って振り抜いたパックが、ゴールに吸い込まれた。『1点』への執念が実り、歓喜の輪ができる。その後は相手の反撃を振り切り、同点のまま試合は幕を閉じた。
6人攻撃に成功し、喜びを分かち合う選手たち
苦しいリーグ戦だった。なんとか4位は死守したものの、今季の成績は5勝7敗2分。勝ち点では上位3校と大きく差を広げられた。それでも、この最終節、特に第3Pの戦いは間違いなくインカレにつながるはずだ。「一番欲しいのは優勝」(DF松本逸輝、商4=滋賀・光泉)。インカレ優勝を知る最後の代である4年生を中心に、現体制での最終章が始まろうとしている。
(記事 川浪康太郎、写真 冨田千瑛、佐々木一款)
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関東大学リーグ戦 | ||
---|---|---|
早大 | ピリオド | 東洋大 |
0(9) | 1st | 1(18) |
1(13) | 2nd | 2(15) |
2(11) | 3rd | 0(5) |
3(33) | 計 | 3(38) | ※( )内はシュート数 |
得点経過 | |||||
---|---|---|---|---|---|
チーム | 時間 | ゴール | アシスト1 | アシスト2 | PK/PP |
東洋大 | 17:53 | 川口 | 田中 | 阿部 | PK |
早大 | 20:47 | 寺井 | - | - | - |
東洋大 | 22:31 | 所 | 坂本 | 長原 | - |
東洋大 | 26:01 | 川口 | 人里 | - | - |
早大 | 53:34 | 矢島 | 堰合 | 鈴木 | - |
早大 | 58:51 | 堰合 | 青木 | - | - | ※PKはキルプレー、PPはパワープレー、PSはペナルティショットを指す なお、PK/PPの表記は早大にとってPKに当たるかPPに当たるかを表記するものとする |
早大メンバー | |||||
---|---|---|---|---|---|
セット | FW | FW | FW | DF | DF |
1 | 飛田 | 寺井 | 青木優 | 羽場 | 新井 |
2 | 鈴木 | 青木孝 | 矢島 | 堰合 | 格地 |
3 | 田中 | 高橋 | 佐藤 | 松本 | 坂本 |
4 | 加賀美俊 | 瀬戸 | 加賀美太 | 志村 | 大崎 | GK遠藤 |
関東大学リーグ戦ディビジョンIグループA順位表(最終順位) | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
順位 | 校名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | |||
1 | 中大 | 37 | 14 | 12 | 1 | 1 | |||
2 | 明大 | 34 | 14 | 11 | 1 | 2 | |||
3 | 東洋大 | 31 | 14 | 9 | 4 | 1 | |||
4 | 早大 | 17 | 14 | 5 | 2 | 7 | |||
5 | 日体大 | 14 | 14 | 4 | 2 | 8 | |||
6 | 法大 | 14 | 14 | 4 | 2 | 8 | |||
7 | 日大 | 7 | 14 | 2 | 1 | 11 | |||
8 | 慶大 | 5 | 14 | 0 | 5 | 9 |
コメント
工藤哲也監督(昭63社卒=青森・八戸)
――東洋大に引き分けという結果についてどのように受け止めていますか
東洋大というよりも秋リーグの最後の試合ということで、今まで準備をしてきたワセダのホッケーをしようということを共有してやりました。そこに関しては、結果は引き分けでしたが、全体的な動きは14試合の中で一番いいゲームができたのではないかなと思っています。
――内容的にはいかがですか
点数的には取られたりとか、(ワセダの)反則で向こうに流れがいったりとかがありましたが、総じて60分間足を使ったホッケーができていますし、ゴールに向かう姿勢というのは一番良かったと思います。
――6人攻撃がリーグ戦で初めて成功しましたね
そうですね。練習ではああいう6人攻撃を準備するようなことはしていないんですけど、最後は4年生中心に意地で決めた得点だと思っています。
――リーグ戦を全体的に振り返っていかがですか
結果として4位で、上位校と勝ち点をかなり離されましたし、それが今のうちのチームが置かれている立ち居地なのかなというのは思っています。ただその中でも一人一人が役割を考えたプレーをやってくれたと思います。色々と課題も見つかりました。次残されたのはインカレだけなので、そこ向けてきちんともう一回準備していければいいかなと思います。
――課題とは具体的にどういったことが挙げられますか
一番大きなところは、決めきれなかったところです。チャンスはいくつかつくれていたと思うのですが、そこで決めきれなかったことや余計なところでの反則がきょねんに比べたら少し多かったなと思います。きょうの試合は違いますが、全体的にはゴールに向かう姿勢が弱かったり、シュートの数が少なかったり、細かいプレーが多かったなと思います。そういった点は改善できると思うので直していきたいです。
――インカレまでにどういったチームをつくっていきたいですか
点を取れるところで取るという決定力を上げるために、シュートを打ってしつこくリバウンドを叩いたり、シュートの精度を上げることが重要だと思います。一つの練習でシュートを正確に打つという基本的なところをチームで共有した上で、決定力を上げることを重点的にやっていきたいです。
――インカレに向けた意気込みをお願いします
目標は一つで、優勝することだけです。優勝するためには何が必要かというところはチームとしても共有できていると思いますし、春(関東大学選手権)や秋リーグでそれぞれ優勝を目指していたけども届かなかったところ、最後ワセダの意地を見せるといったところで泥臭いホッケーになると思いますが、残された5試合を全部勝ちにいって、優勝を目指していきたいと思います。
FW金子立樹主将(スポ4=北海道・駒大苫小牧)
――この試合をご覧になっていかがでしたか
先制点を取られたり、ビハインドで折り返す場面が多かったですが、最後第3Pで全員が力を合わせて2点取って同点に追いつけたというのは、インカレにつながるいい収穫だったかなと思います。
――ベンチからどのような言葉を掛けていましたか
具体的な指示だったり、あとは選手のモチベーションを上げるための声掛けというのを、けがをしてしまったので積極的にやろうかなと思っていました。
――引き分けという結果についてはどのように受け止めているのでしょうか
最後勝ち切れなかったというのは悔しい部分ですが、第3Pは失点ゼロで2点取れたというのはすごく大きいなと思います。
――リーグ戦を全体的に振り返っていかがですか
きょうみたいに上位校にもいい試合ができるときもあれば、下位チームに苦戦して同点になったりと、14試合を通して波のあるチームだったかなと思います。インカレはそういう波があると、トーナメントで負けて終わってしまうので、そういう波をなくせるようにしたいなと思いました。
――特に、けがをされた後に行われた格上3校との対戦をどうご覧になっていましたか
自分がけがでチームに迷惑をかけて、キャプテンで出られなかったというのは本当に申し訳ないと思いますけど、チーム一丸となって上位校にもいい戦いができていたなとベンチに入って思いました。
――4位という順位についてはいかがですか
当初目標としていた優勝というものは、一次リーグが終わったあたりで途絶えてしまったんですけど、そこから5連敗したけど4位という結果になって。満足している訳ではないですけど、最低限の4年生ができる秋リーグ最後の仕事としては良かったかなと思います。
――インカレまでの短い時間でどういったことを強化したいですか
チーム力を上げるというのは第一にして。本当に残り少ないので、一回一回の練習を大事にして優勝に向かって頑張っていきたいと思います。
FW寺井敏博副将(国教4=米国・チョートローズマリーホール高)
――試合全体を振り返っていかがですか
きょうの試合は最後まで諦めず、ビハインドから同点に追い上げたという点はすごく良かったと思います。
――本日はリーグ最終戦ということでしたが、そのことは意識されましたか
アップアンドダウンのリーグ戦だったので、最後は締めで、秋リーグ最終試合ということで絶対勝つという気持ちで臨んでいたので、すごくチームの気持ちは高まっていたと思います。
――ご自身は第2Pで得点もされていますが、得点シーンを振り返っていかがですか
相手のアタッキングゾーン攻めている時のクロスサイドパスを一歩読んで、インターセプトしてブレイクアウェーで肩口で決めることができて。すごくターニングポイントの得点だったので、入れられて良かったなと思います。
――3-3という結果についてはどうお考えですか
自分も含めてペナルティーが多かった試合だなと思っていて、そこをなくして5対5でやっていればもうちょっといい結果でつなげれたんじゃないかなと思うので。そういうステックの反則とかは減らしてやっていきたいと思います。けど、チーム力がすごくきょう良かったなと思うので、そこは満足しています。
――お話の中にもありましたが、チームのペナルティーが多いように感じます。そこに関してはどう思われていますか
選手が一生懸命やった結果なんですけど、足が動いてなくて引っ掛けちゃったりとか。よく分からないコールもいっぱいあるんですけど、フッキングとかスラッシングとかは防げると思うんで、その点はもっと足を動かしてもっといいポジショニングをしないといけないなと思いました。
――リーグ戦全体を振り返っていかがですか
4年生としてすごく嵐のようなリーグ戦でした。とりあえず、勝ちはできなかったんですけど、ビハインドから6人攻撃最後成功して追い上げて、すごくチームが団結したいい状態なので、インカレに向けてこのまま継続していければいいかなと思います。
――現在のチームのリーグでの順位に対してはどのようにお考えですか
優勝を狙っていたので、最初から見たら不満でしかないんですけど、二次リーグの途中からベストの結果が4位ということで。らいねんの組み合わせにもかかってくるので、4位は絶対取ろうという目標を途中から立てていて、それが達成できたことに関しては良かったかなと思います。
――インカレに向けて意気込みや、チームとして調整していくことがあれば教えてください
チームとして調整していくことはいっぱいあると思うんですけど、そこは12月のインカレ合宿でチームで集まって調整していって。インカレは自分を含めて4年生最後の大会になるので、チーム一つになって必ず優勝して帰ってきたいと思います。
DF堰合芳貴(社4=青森・八戸工大一)
――東洋大と引き分けたという結果についていかがですか
僕たちが目指していた4位になるためには引き分けか勝ちしかなかったので、最低限でも引き分けにすることができて、いい試合ができたと思います。
――6人攻撃が成功したシーンを振り返ってください
プレーの詳細を言うと、コーナーにパックが出て、僕が詰めるか詰めないか迷ったんですけど、最後「ここしかないな」と思い切ってデュースパックに詰めました。そしたら、いい感じで点数につながったので成功したと思います。思い切っていけて良かったです。
――決まった瞬間のお気持ちはいかがですか
狙いすましたシュートではなかったんですけど、気持ちでシュートを打ってその気持ちが勝ってゴールにつながったと思います。
――リーグ戦を4位で終えたという結果についてはいかがですか
優勝を目指しいてたので、4位になってしまって残念な気持ちもありますが、リーグ戦の途中に最高で4位だと分かった時からずっと目標は4位だったので、そこはしっかり達成できて良かったです。
DF松本逸輝(商4=滋賀・光泉)
――引き分けという結果をどのように捉えていますか
優勝がなくなってからは4位をチームの目標としてやってきたので、最後の試合ということで思い切りやろうと全員で戦いました。正直勝ちたかったのですが、ビハインドから追いつけたという点では良い試合だったと感じています。
――きょうの試合を通して、守備陣の出来はいかがでしたか
相手チームのチームカラーがアグレッシブなプレーなので、それに負けないように僕たちもアグレッシブにやって、自陣に持ってこられないようにチェッキングをかけた結果、うまく機能したなと思います。結果としてはどのセットも役割は果たせていました。
――特に第3Pは理想的な展開に見えました
そうですね。最終的に第3Pで2点追いつけたということは、これからインカレで優勝を目指していく上で良かったと思います。一回成功体験があったということをチームで共有していって、インカレにつなげたいです。
――リーグ戦は4位で終えましたが、振り返っていかがですか
個人としての調子の波もあると思うのですが、それを最小限に抑えようという努力は体調管理からしてきました。一番意識してきたことは、チームの波が上下した時にどれだけ自分が頑張れるかということで、そういう面では最後の引き分けという結果を見たらできたのかなと思います。ですが最終的に4位という結果だったので、もっと上を目指したかったというのが正直な気持ちです。
――上位3校から白星を挙げることはできませんでしたが、差はどこにあると思いますか
1点差というタイトな試合で点数が入って試合が動いた時に、層の厚い攻撃ができていたのは上位3校だったなと思います。僕たちも中盤から、点を取った後、点を取られた後は連続失点がないようにとか、そういった意識をチームで共有してきたので、チーム力としては大きな差はないかなと思っています。
――インカレに向けて取り組んでいきたいことはどんなことですか
一番欲しいのは優勝です。というのも、優勝を経験している代が僕たちの代だけなので、後輩に残してあげたいという気持ちが大きいです。それのために僕たちができることは、いかにチームとして上に上がっていけるかということで、他のチーム以上に4年生全員が引っ張っていって、下級生もそれについてきてほしいなと思います。
FW矢島雄吾(スポ2=北海道・駒大苫小牧)
――きょうの試合全体を振り返っていかがですか
序盤反則が重なって失点してしまったのですが、第3Pで2点ビハインドから追いつけて、流れを自分たちで変えることができたのでいい試合だったかなと思います。
――3-3という結果についてはいかがですか
勝ち切れなかったということは課題ではあるんですけど、それよりも追いついたということの方が大きいかなと思います。チームのメンバー的にも何人かけがで抜けていたりするので、そういう状況の中で団結して、結果は引き分けですけど、追いつけたのは良かったかなと思います。
――ご自身は第3Pで得点もされていますが、得点シーンを振り返っていかがですか
DFがシュートを打ったらゴール前に入るっていうのは徹底的にやってきたので、その結果かなと思います。
――第2Pと第3Pの間でチームで話したことはありますか
秋リーグ最後の20分ということで、「ワセダの意地見せてやるぞ」という気持ち的な話をしていました。
――現在のチームのリーグでの順位に対してはどのようにお考えですか
きのうの日体大と法大の試合が終わるまで何位になるか分からないという状況の中で、結局4位だったんですけど。一応1部Aの中では上位ということで、最初目指していたものとは違いますけど、途中から気持ちを切り替えてそこに到達できたのは良かったかなと思います。