激闘の日本学生氷上選手権(インカレ)から約1週間。ついに4年生の引退試合となる早慶定期戦(早慶戦)が東伏見のホームリンクで行われた。序盤から強気の攻めを見せるも相手も気迫のプレーで応戦し、同点に追いつかれる場面も何度か訪れる。最大の危機は第2P終盤、3-3の同点の場面。ペナルティが相次いでしまうが相手の攻撃をしのぎ、さらにはFW青木優之介(スポ3=埼玉栄)のカウンター攻撃で逆転に成功した。最終第3Pでは3点を追加し、終わってみれば7-4と点差をつけての勝利。最後まで戦い抜いた姿勢が有終の美へとつながった。
響き渡る両校の応援歌と、満員の客席。熱気を帯びた雰囲気に包まれ、伝統の一戦は幕を開けた。第1P開始直後、FW坂本龍平(スポ4=青森・八戸商)が狙いを定め先制点を挙げる。続けて青木が隙間を狙ったシュートで1点を追加。しかしその後は2点を返され、2-2の同点に。しかしワセダの切り替えは早く、すぐさま青木が返し3-2で第1Pを終えた。続く第2P、はっきりとした好機に持ち込めないなか、ミスから相手に1点を返され3-3。ケイオーのスタンドは総立ちに。この状況を抜けだしたいところでペナルティが相次ぎ、数的不利なキルプレーに突入した。しかしGK中川悠輔(教4=東京・早実)中心になんとか耐えた直後、青木がすばやいドリブルでフリーのまま左からシュートを決め逆転。「ゴールを決めることだけを考えていた」(青木)。1点のリードを得ることに成功した。
この日大活躍の青木
第3Pの序盤、真正面からのシュートを阻むことができず失点、4-4の同点になってしまう。しかし、攻撃陣は一つでも多くのチャンスを作り出そうとし、中川から交代したGK遠藤秀至(社3=東京・早実)をはじめとする守備陣はパックを寄せ付けない。その姿勢が実を結び、開始から約9分。DF新井遥平(スポ2=北海道・駒大苫小牧)がチャンスをものにして同点の状況から抜け出した。ここからワセダは勢いに乗り、その直後のパワープレーで青木、FW鈴木ロイ(教1=北海道・駒大苫小牧)が立て続けにシュートを決め7-4。そして最後は4年生6人全員でセットを組んだ。「やっと卒業するんだな、引退するんだなという思いがありました」と石川貴大主将(スポ4=埼玉栄)は振り返る。攻めの姿勢を貫き、41年にわたる連勝の記録を守った。
伝統の一戦を制した
三度追いつかれても三度突き放した。「このシーズンを作り上げてきたチームに自信を持ってやり続けたことが勝利につながった」と中川が語るように、ラストゲームでも逆境でこそ粘り強さをみせるワセダらしいホッケーが見られた。さらに今回ハットトリックを達成しMVPを受賞した青木をはじめ、後輩の活躍も光る。全力プレーを貫いた4年生の背中を受け継いだ後輩たちは、来季はどのような戦いを見せてくれるのであろうか。
(記事 加藤佑紀乃、写真 川浪康太郎、又坂美紀子)
早慶定期戦 | ||
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早大 | ピリオド | 慶大 |
3 | 1st | 2 |
1 | 2nd | 1 |
3 | 3rd | 1 |
7 | 計 | 4 |
得点経過 | |||||
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チーム | 時間 | ゴール | アシスト1 | アシスト2 | PK/PP |
早大 | 02:26 | 坂本龍 | 松本 | 金子聖 | - |
早大 | 07:20 | 青木 | 金子立 | 新井 | - |
慶大 | 07:38 | 永田 | 江口 | - | - |
慶大 | 15:27 | 阪本 | 江口 | - | PK |
早大 | 15:47 | 青木 | 寺井 | - | - |
慶大 | 33:44 | 鈴木 | 金村 | - | - |
早大 | 37:42 | 青木 | - | - | PK |
慶大 | 42:29 | 江口 | - | - | - |
早大 | 49:05 | 新井 | 青木 | 金子立 | PP |
早大 | 54:37 | 青木 | 寺井 | - | PP |
早大 | 54:57 | 鈴木 | - | - | - | ※PKはキルプレー、PPはパワープレー、PSはペナルティショットを指す なお、PK/PPの表記は早大にとってPKに当たるかPPに当たるかを表記するものとする |
コメント
工藤哲也監督(昭63社卒=青森・八戸)
――きょうの試合を全体的に振り返っていかがですか
最初に、寒い中多くのお客様にご来場いただいたというのは非常に感謝しています。この早慶戦の準備をしてくれた両校のマネージャーや主務に心から感謝したいと思います。
――試合内容を振り返ってみていかがですか
シーズンの締めの試合で、このチームでの最後の試合だったので、一年間かけて作ってきたワセダのホッケーを、ご来場いただいた父兄の方、OBの方、関係者の方々にお見せするという目的でやりました。そこは達成できたのではないのかなと思います。
――この一年間はどういったシーズンになりましたか
全体的には勝っても負けても接戦で追いついたりとか逆転したりといったことがシーズンを通して続いたのですが、一人一人が最後まで一生懸命足を動かして勝ちに向かった結果だと思っています。そういったチームを作れたのは良かったと思います。
――引退する4年生にどういった言葉を掛けてあげたいですか
まず、「お疲れ様、ありがとうございました。」と言いたいところですね。一年間4年生が中心となってこのチームを作ってきてくれたので、思うような結果は出なかったかもしれないですが、それでも4年生がいつも苦しい時もいい時も全部引っ張ってくれたので、4年生の選手6人と林徳トレーナー(スポ4=福井・藤島)には感謝したいと思います。
――来季への抱負をお願いします
今シーズンは結果が出なかったので、結果が出せるように、また新しい4年生、キャプテン、アシスタントキャプテンを中心にまた1からチームを作っていきたいと思います。
GK石川貴大主将(スポ4=埼玉栄)
――いまの率直なお気持ちは
こういった舞台を用意してくれるOB、協賛各社の方々にすごく感謝しているのとともに、ホッケーができてとても幸せだと思います。また最後は自分のミスで同点に追いつかれて、その後最終的に後輩の力や同期の力を借りて勝つことができてよかったと思います。
――何度か同点に追いつかれた場面もありましたが、そのときチームはどのような雰囲気でしたか
同点に追いつかれて慌てる部分もありますけど、ハードワークして最後まで一生懸命走り続けよう、そういった言葉をかけながら一生懸命頑張った結果が残りの3点につながったんじゃないかなと思っています。
――第2Pの終盤、人数が4対6となり不利な状況が続きましたが
ペナルティが続いてしまって、すごく流れは悪かったのですが、中川中心に厳しい時間帯でこそ失点することがなく、すごくよかったんじゃないかなと思っています。
――最後は4年生全員でのプレーになりました
ここ何年か最後4年生でプレーする早慶戦の定番になっていたのですが、本当に波に乗れるというか自分たちもそのようなプレーができてやっと卒業するんだな、引退するんだなという思いがあってすごく嬉しかったです。本音を言うのであれば、本当は僕の中で村上に最後、早慶戦でゴールを決めさせてあげたかったのですが、それはちょっと叶わなくて、そこだけは本当に同期として心残りだなあというのがあります。
――石川選手にとってきょうの試合はどのようなものになりましたか
4年間早慶戦やってきましたけど、やっぱり自分たちが卒業する、引退するっていう早慶戦はまた一味違ったもので、終わった時に目頭が熱くなるような思いでいたので、本当にこういった舞台を用意していただけて感謝です。小さい頃からの夢だったワセダでキャプテンもやらせてもらってすごくうれしく思います。
FW坂本龍平(スポ4=青森・八戸商)
――きょうの試合振り返っていかがですか
後輩に助けられたっていうのが正直なところで、自分自身プレーで引っ張れたかどうかはわからないんですけど、悔いの残らないように全力プレーは貫けたと思います。
――先制点を決められましたが、その時の気持ちは
正直に嬉しかったですね。パックが来る前から、「あ、これあるんじゃないか」と思ってずっと構えていました。
――4年生としてのこの一年間はいかがでしたか
アイスホッケーのプレーの面では、後輩に引っ張ってもらったところがあって、僕自身何ができたかちょっとわからないのですけど。そんな中でも、常に全力でプレーしているっていう姿勢は、後輩たちに見せられたんじゃないかなと思います。役職面では、僕は寮長で、みんなの私生活を正していました。例年よりちょっと厳しめにやっていたので、住みやすい寮にできたかなと思います。
――競技は今後続けられますか
機会があればやろうとは思っているんですけど、いまのところないですね。きょうで最後っていう気持ちで臨みました。
――最後に、後輩と4年生それぞれにメッセージをお願いします
この4年間、いつも同じ寮でほとんど生活を共にしてきて、色々僕自身成長させてもらいました。ほんとにいいやつらばっかりで、最後このメンバーでプレーできて嬉しかったです。後輩たちには、来年僕ら以上にいい成績を残せるように、常に全力プレーで頑張ってほしいと思います。
GK中川悠輔(教4=東京・早実)
――7-4での勝利となりましたが、今のお気持ちはいかがですか
第1、第2P僕が出て、緊張もあったんですけど、楽しんでプレーすることができました。同点になったり追い付かれたりしたのですが、このシーズン作り上げてきたチームで自信を持ってやり続けたことで勝利につながったと思います。
――本日は早慶戦ということで、ギャラリーも多く華やかな試合となりました
こんな中でプレーすることは今後人生でないと思うので、一番は楽しむこと、それができたので良かったと思います。
――ご友人もたくさん会場にいらっしゃったようでしたが
きょう来てくださったみなさんの応援があったからこそ最後まで一生懸命プレーすることができたし、その応援が力にもなりました。とても感慨深いものがあります。
――最後、4年生でセットを組んでプレーされていましたが、そのときのお気持ちはいかがでしたか
泣きそうって言ったら嘘になるんですけど、今まで4年間やってきた仲間と一緒にリンクの上で勝利して終われたっていうことで、なかなかない経験だと思うので、同期にありがとうと言いたいです。
――これで引退となります
5歳からアイスホッケーを始めて17年やってきましたが、特に大学生活が楽しくて引退するのが寂しいと思う反面、これからの人生朝3時起きはしなくていいんだなっていううれしさもあるので、半々ですけど、やはりホッケーから引退するということで、最初に言いましたけど悲しいものがあるんですけど、今後とも何かしらホッケーに携わっていきたいなというふうに思っています。
DF斜森敬太(教4=東京・西)
――最後の早慶戦でしたが、どんな気持ちで臨みましたか
40年負けていなかった試合なので、とりあえず勝つことを目標にしていました。
――終わったいま、率直にどのような感想を持っていますか
3時起きしなくていいんだという思いが一番ですね。
――独特な雰囲気だったと思いますがいかがですか
きょうはここ数年の中でも一番お客さんが入ったと思いますし、応援団の方々も力強く応援してくださったので普段の試合とは全然違う試合の雰囲気で、早慶戦しかこの雰囲気を味わえないので、そういう意味では独特な雰囲気の中でやれたのはよかったです。
――チームは4失点でしたが、守備面はいかがでしたか
3失点目の原因を作ってしまったのが自分だったので、それに関しては非常に申し訳ないです。4失点は率直に言うと多いですね。来季からはもっと失点の少ない試合をしてほしいです。
――ご自身はこれで引退ということですが、最後のプレーはいかがでしたか
悔いの残らないように全力でできたと思います。
――最後勝ち越した場面では、チームの雰囲気はいかがでしたか
みんな盛り上がっていましたし、僕自身は引き分けに終わらずにほっとした感じでした。
――最後に、来季に向けて後輩に一言お願いします
一つでも多くのタイトルを取れるように、全員がケガなく終えてほしいです。
DF村上晃平(先理4=東京・早実)
――今回の試合に向けて意識したことは
今の同期とも後輩ともやれる最後の試合で、僕は大学に入ってゴールしたことなくてその一点を後輩たちも取って欲しいって言ってくれていたので、なにがなんでも取っていこうという気持ちで臨んでいました。
――試合全体を振り返っていかかでしたか
出だしは先制点も追加点も取れていい流れだったんですけど、自分たちのミスから相手に点を与えてしまって、点を取ってもまた同じように点を与えてしまってというシーソーゲームだったのですが、最後でワセダの意地をしっかり見せることが出来た。そんな試合だったかなと思います。
――ご自身のプレーを振り返っていかかでしたか
僕が主に出たのは最後の二分くらいだったんですけど。監督の方から点差が続いたら出すよって言われていて、正直途中の試合経過を見て今日は出られないかなと思ったのですが、後輩たちが最後三点とって点差つけてくれてチャンスをもらえて、その中で僕自身もワセダのユニフォームを着てプレーするのは最後だったので、思いっきり楽しんで出し切ろうというようなプレーをしました。
――第3Pの最後は四年生だけでのプレーでしたが
もう泣きそうでしたね。出た瞬間から。やっぱり四年間楽しいこと辛いことも共にしてきた同期なので、その同期と最後の学生生活でのホッケーを出来る時間を与えてもらって、一瞬だったと思うんですけど色んなことを考えた、本当に二分だったのかなというような時間でした。
――大学生活最後の試合でしたが今のお気持ちは
正直なところを言えば悔しさしか残らなかったです。というのもやっぱり自分の力不足であまり試合にも出られず、結局出られたのも後輩たちの力のおかげ、意気込みとしていた一点も取れず、正直何も達成できなかった試合だったんですけど、やっぱり物事そんなにうまくいかないのかなと、自分の望む通りにはすべていかないかなと感じました。
――後輩へのメッセージなどは
今日試合が始まる前に同じようなことを考えていて、最後の試合でうまくやれば悔しさが晴れるんじゃないかと思ったのですが、やっぱり自分の力が足りなくて、その最後の試合ちゃんと出られるかどうかというのも自分の実力だったんだなと思って。後輩たちに残したいことは、四年間どういう姿勢で取り組んでも終わりというものは来るので、その終わった時に何が残るかっていうのはそれまで自分がやってきたことのすべての現れだと思います。自分の中では後悔の無いように全力でやってきたつもりなんですけど、それでもやっぱり後悔が残ってしまったので、後輩たちには自分で自分のマックスを決めないでここまでやったのだからとかじゃなく、もっともっとやれることを突き詰めていって、最後終わった時に自分はここまでやり切ったんだと自信をもって引退できるように、日々積み重ねていってほしいと思います。
FW青木優之介(スポ3=埼玉栄)
――MVPおめでとうございます。試合後の率直なお気持ちをお願いします
きょうが4年生と最後にできる試合だったので、勝利に貢献することができて本当によかったなと思っています。
――ノンアシストでのゴールがありましたが、あの場面では何を意識されましたか
もうとりあえずゴールを決めることだけを考えてやっていました。
――ハットトリックも達成されましたが、最初から狙っていましたか
いいえ、そういう得点とかよりも、チームの勝利に貢献することを第一に考えていたので、ハットトリックは自分でもびっくりしました。
――最高学年となる来シーズンに向けて、抱負をお願いします
来シーズンは三冠を目指して、チーム一丸となって頑張りたいなと思っています。