アイスホッケーの本場、アメリカ。早大にも、本場アメリカのアイスホッケーを体験してきた選手がいる。FW寺井敏博(国教3=チョートローズマリーホール高)とFW高橋寛伎(国教1=東京インターハイスクール)だ。アメリカ出身という共通点があるお二人に、日本学生氷上選手権(インカレ)への展望を語っていただいた。
※この取材は12月9日に行われたものです。
アメリカ出身の『17』と『88』
寺井
――まず、お互いの印象を教えてください
高橋 としさん(寺井)は、面白くて明るい。でも学校では真面目で、たぶん成績も優秀だと思うんですけど。練習でも面白く盛り上げてくれますし、試合とかになると3年生としてリーダーシップもとり、真面目な部分も出てくる。そういう人だと思っています。
寺井 (高橋選手は)私生活とか寮とかの生活面だったら、印象は「いびきがうるさい」。
高橋 (笑)。
寺井 部屋隣なので、もう工場の現場みたい。初日に「すごい音がするな」と思ったらいびきで(笑)。ホッケーの面では、今1年生ですごく頑張っている。最近とか上のセットで試合出ていますし。一生懸命やっているっていう、ハードワークの面もあります。まあ他の面だと、結構変わっていますね。いろいろ。僕も最初寮入ったとき、あんま日本語わかんなかったんですけど、彼は僕よりやばいなって。そんな感じですかね。
――具体的にそう感じたエピソードはありましたか
寺井 彼は1年生の仕事の役割で、監督が入ってくるときに(部員の)人数がいるか数える係なんですけど。監督が来て、います、いないっていう報告で、数えていって、たまに「いると思います」って。そういうのはちょっと面白いなって…。
――ご自身やお互いは、部内においてどのような役割を担っていると思いますか
高橋 としさんは面白くて、盛り上げてくれる。自分はとりあえず1年生なので、やる仕事はできるだけちゃんとやろうと頑張っています。チームを引っ張っていこうとかは、上級生の方だと思うので…。そういうのはないです。
寺井 僕は私生活の面でもホッケーやっているときでも、上級生としてチームを引っ張っていくって意識はすごくしています。私生活の面は、やってないときは明るく、ムードメーカー的な役割。練習とかやるときはちゃんとやって。そういう部分で引っ張っていけているかなあとは思います。
――オフとリンク上で人格が変わるという意識はありますか
寺井 やっぱオフのときはチームメイトでふざけたり、楽しんだりするんですけど。まあホッケーやっているときは、練習でも激しいスポーツなので、お互いぶつかり合ったり喧嘩したりとか。そうしないとお互い上達しないので。そういう部分で切り替えっていうのもありますし。普通のホッケーやってないときにもがみがみ真面目だとストレス溜まっちゃいますし、そういうバランスが大切かなと。
高橋 結構同じですね。たぶんどの選手も切り替えるところは切り替えたりとかしていると思うし。氷上はふざけたりしないで、勝ちにいこうとしているので、上手くもならないし上達しないので。オフもカチカチやっていてもみんなストレス溜まるし、そこは切り替えたほうがうまくいくと思うのでそうしています。
――チーム内で意識する選手はいますか
寺井 うーん。あんまり考えたことない。いる?
高橋 やっぱセンターとしてのポジションなら、一番チームを引っ張ってくれたりもして、スキルのある選手としてはFW金子立樹さん(スポ3=北海道・駒大苫小牧)とか。やっぱり上手いと思うので。憧れたりするのは金子立樹さんかな。スキルとか、見習いたいというところはありますね。
寺井 うーん。まあほんとチーム内ではみんなリスペクトしあっていますし。みんな朝早く起きているからそれは尊敬していて(笑)。チーム内で意識とかは特にしてないですね。
――高橋選手は高校時代、学校のチームではなくクラブチームでプレーされていましたが、ワセダに来てから違いなどは感じますか
高橋 東京のクラブチームだったのでスキルも低いほうだし、練習内容とかもレベル違ったりしていたので、すごい差を感じますね。全体的に言えばプレースピート。力の強さとか、もう全部比べものにならないぐらい差があって。高校のクラブチームは週2で1時間半だけ氷上練習があっただけで、それしか練習できなかったので。それから(ワセダの)毎日練習あるのに切り替えるのは大変ですけど、高いレベルのあるとこでプレーするのも楽しいと感じますね。
――日本ではまだアイスホッケーはマイナーなスポーツという認識がありますが、アメリカでの経験があるお二人はどう感じられますか
寺井 現状だと、やはりアイスホッケーは日本においてマイナースポーツだと思いますけど、原因としては環境とかが一番の問題なのかなと。リンクの数とか、あっちだとリンクはどこにでもあって。あとは高いスポーツですし。ユースのプログラムから支援とか、いろんなチームがあったりだとか、そういう部分で日本はまだ少ないので。マイナーなスポーツですけど、アジアリーグとか日本の大学でも、リーグで盛り上げて、小さい子にアイスホッケーの魅力を知ってもらって、東京とかで広まって、下から強くなっていけたらいいなと思います。
高橋 比べるといっても国が違うし、簡単に言えば面積とかも違うし、リンクの数も日本で少ない理由は分かります。混んでいる東京にリンク何個も入れるのはしょうがないと言えばしょうがないですけど、これから広まっていけばいいなと思いますかね。
高橋
――寺井選手の背番号『88』と、高橋選手の背番号『17』はご自分で希望されたのですか
寺井 希望です。僕が選んだときは当時アメリカにいて、4年生の勝田さん(貴之、平26国教卒)と話していて、番号何がいい?みたいなやりとりをしていて。最初は24、17とか21とか挙げて。1から30の間って言われていたので。それが全部取られてるということで、どうしようって。そこで当時の監督の草島さん(武彦、昭62教卒)が「いや、番号なんでもいいよ」って。「じゃあたとえば88とかでもいいんですか」って聞いてみたらいいよって言われて。それで(日本に)着いたら88が用意されていました(笑)。
――『88』自体に意味はあったのですか
寺井 今NHLで、シカゴブラックホークスのスター選手でパトリック・ケインっていう選手がいるんですけど。プレースタイルとか魅力的で好きなので。88付けたことなかったですし。付けたら面白いかなって、それでずっと付けています。
――高橋選手はいかがですか
高橋 としさんの言ったように1から30まで数字出されて、そこにたまたま17があって。見た目や響きとかから考えて、17がいいかなってことで17を付けています。
「東洋大戦はワセダの底力を見せられた」(寺井)
――3位となった関東大学リーグ戦(リーグ戦)ですが、振り返ってみていかがですか
寺井 全体的に振り返ったら、きょねんより順位が1個上がったっていうのがとても良かったと思います。一次リーグからいい流れに乗っていて、中大と東洋大戦を一次リーグで落として、日大と引き分けちゃって、明大と最終的に同点になっちゃったんですけど、そこから中大に負けて。東洋大戦は第3ピリオド(P)1-4のビハインドで厳しい状況だったんですけど、最後同点に追いつけたのはインカレに向けていい流れに乗ったかなとは思います。全体的に振り返って1点差の試合とかが多かったので、そういう部分の反省点は多かったですし、そういうとこはキルプレーとかで失点したり、パワープレーで決められなかった部分とか、反省点。勝敗を決める部分だったと思うので、そういうとこは改善していかないとな、と思いますし。でも全体的には、きょねんは一次リーグ首位で折り返して、そこから3位に落ちちゃったんですけど、ことしはあんまり落ちないでずっと上がっていっている状態なので。チームもまとまってきていますし、ここからインカレに向けて優勝できればいいなと思っています。
高橋 実際何を求めればいいか分からなかったので。過去の経験もないし。とりあえず次にある試合に向けて準備して勝って、一つ一つこなしていこうっていう考えしかなかったんですけど。結果的に3位っていうのは、結構いい順位だと思いますし。チームとしては1位もとれたらっていうところも僕は思っています。簡単にはとれないですけど、可能なところではあるので、悔しい気持ちもありました。まだインカレも残っているので、そっちでとれたらいいっていうところもあります。
――リーグ戦で得た収穫と課題はありますか
寺井 反省点はすごく多かったと思います。上位のチームに対してシュート数が少なかったり、打たれすぎたりとかあったので。そういう意味ではGKにすごく助けられましたし、もうちょっとシュート打てたら入る確率も増えていたんじゃないかなって。パワープレーとかキルプレーに関してはどのチームも精度を上げないとだめだなと思っていると思うので。そういう部分では5-5でイーブンの試合だったら、一人有利な部分とかで勝敗が決まるので。精度を高めないとだめだなっていう課題です。
高橋 としさんも結構言ってくれたのですけど、監督に言われたのはシュート数を増やし、打たれるシュート数とか、無駄なペナルティーとか少なくしたり。上位のチームはすごいので。一人いなくなるだけで点が入ったりして試合が決まらなかったりするから、逆にもっと自分が足を動かして相手のペナルティーをひいてくるとか。そういう課題はありました。
――ワセダのプレースタイルは何でしょうか
寺井 ワセダのスタイルは、チームワークを重視しているって僕が1年の頃からよく言われていて。個人個人のロールをちゃんと自覚して、そこで初めて一つのチームになるっていうコンセプトなんですけど。ワセダは他の上位の大学に比べたら、北海道とかすごい上の高校の選手とか少ないかもしれないですけど、そのぶん足を動かして走ったりとか。そういう部分で負けないように他の大学よりはまとまりがあると思いますし、そこでみんなバラバラになっちゃうとどのチームにも負けちゃうぐらいになっちゃうと思うので。優勝目指せるポジションにいますし、ちょっと崩れたら下になっちゃうというチームだと思うので、チームワークの部分を重視しています。
高橋 自分は1年生だしあまり経験してないですけど、思ったのはチームワークと、足動かすとことか。ワセダは仲いいほうだと自分では感じているので、仲いいところを表情とか試合でも出して、チーム一つとして点を取って守って。ワセダは3Pが強いと言われているんですけど、そこは辛いディクトレとか、朝起きてから毎日走ったりとかして体力つけて、第3Pを勝ち抜けるチームだと思います。
――今季印象的な試合はありましたか
高橋 ワセダで初ゴールしたのが中大戦で。やっぱり印象強いですね。スコアするのはけっこう難しいので、次のゴールも結構印象的だったんですけど。自分の中では一つ一つのゴールが、印象的に残っています。
寺井 僕は最後の東洋大戦ですかね。リーグ戦を締める試合でしたし、第3Pの最後のほうに1-4っていう不利な状況で、そこから追い返して同点っていう。東洋大には春にも負けていましたし、一次リーグでも負けていたので。結果的には勝てなかったのですけど、そこからいつでも点とって追い返せるっていう、ワセダの底力みたいなのを見せられたのが印象的です。
――お互いのプレーに関してどのような印象がありますか
寺井 彼はやっぱ、ご存知だと思うんですけどフルフェイスなので、結構怖いもの知らずで。チームの中でも体で行くほうだと思いますし、フィニッシュチェックだったり、シュートブロックするポイントからもシュートをからだで止めたりとかも、チームの流れとかチームに影響するとても大切なプレーをしている印象があります。春から秋リーグにかけてプレーも上達していると思うので、最近とかは試合に出ていますし、チームに貢献しているので。頑張っている印象があります。
高橋 僕のとしさんの印象は、スコアにつなげていくプレーをしてくれる。普通だったら遠い場所から打たない選手が多いと思うのですけど、遠い場所から打ったり、ネット向かったり。一人できれいに抜いていってスコアするとかじゃなくて、点にどんどんつなげていくプレーをよくしてくれていると思うし。チームの盛り上げ具合とか、体でいくところ。たぶんチームの中でもチェックするほうだし。そういうところでは、ホッケー楽しませてくれていますね、僕にとっては。そういうプレーが好きなので(笑)。
「トロフィーを見てほしい」(高橋)
――インカレでのチームとしての目標をお願いします
寺井 こないだインカレに向けてミーティングしたばっかりなんですけど、絶対優勝して、そこから…。
高橋 ご飯食べにいくかんじ。歌って…。
寺井 ああそうだ。僕1年生のときやったんですけど。リンクの真ん中で、みんなで、ワセダの(『紺碧の空』)…僕全部歌えないんですけど(笑)。半分ぐらいしか。
高橋 みんなでトロフィーと写真撮って。
寺井 そういうプロセスをイメージしろと、監督が。イメージは大事だと思いますし、インカレはトーナメント形式なので、一発勝負で何が起こるか分からないんで、絶対優勝するっていう気持ちでチームではいます。
対談に臨むお二人
――インカレではどのように戦っていきますか
寺井 一戦一戦気を抜かないで、まず1回戦をちゃんと勝って。2回戦と3回戦を…慶大に勝ったら中大なんですけど、そしたらダブルヘッダーになるんで、その週に関していかにコンディションをキープするかっていうことが大切だと思うんです。練習が終わったらすぐストレッチとか、コンディショニングの部分をちゃんとして次につなげていかないと、長いピリオド、3Pとか持たないですし、最後までいけばですが4日間で5試合、とか持たないんで。メンタルでも体力でも、気持ちだけは負けないようにしたいですね。
高橋 コンディションをずっとキープするのは重要だと思いますし、試合の面ではリーグ戦でできなかったことや反省したところを、ちゃんと後悔ないようにプレーできたらなと思いますね。
――インカレに向けてどのような練習をされていますか
寺井 今週は本当にスケーティングが多くて。リーグ戦のあとの1週間こうやって、ハードなんですけど、スケーティングとか個人のスキルアップで1対1とか2対2とか、そういう基礎の練習からやって、そのあとの陸トレとかもすごく走らされているので。今週はそういう体力とか戻して、来週からはスキルアップという部分で練習試合入ったりとか、セット組んで練習したりすると思うので。いつもの通りパワープレー、キルプレーとかそういうチーム方式の練習をして、インカレに向かっているんじゃないかなと思います。
高橋 個人では疲れが溜まらないようにしたりとか、簡単に言えばプロテインを飲んだりストレッチをしたりとか、氷水とお湯に交互に浸かったりとか、短い間で練習とか関係なく、100パーセント毎回練習できるようにしたりとかはしていますね。
――インカレで「ここを見てほしい」というところはありますか
高橋 トロフィー。
寺井 (笑)。前向きな気持ちでいいと思います。僕は、インカレは一戦一戦大切で一発勝負ということで、早い段階で得点したいなという気持ちで、ネット向かっていくプレーとか、積極的にフォアチェックとか、体でチェックにいくプレーを見てほしいですね。
高橋 インカレに向かって走りきれる練習、例えば今だとスケーティングや陸トレが多かったりするので、そういうつらいのに今慣れといて、あとで走り切って最後までプレーして勝てるっていう目的でやっているんですけど。評価するとしたらそこが一番ワセダとしては評価しやすいかなと思うので、いい走りを見せたいと思いますね。
――最後に、インカレへの意気込みをお願いします
寺井 インカレは早慶戦を除いて、チームとして最後の大会で、ことしは春と秋タイトル獲れてないので、チームのため、4年生のため、スタッフとか応援してくださっている方のためにも絶対優勝して、気持ちよく終わりたいです。
高橋 サポートしてくれた人たちみんなに、1位をとって(恩を)返したいところがあるので、チームのためにみんな一人ひとり頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 廣田妃蘭)
祝杯をイメージした一枚です
◆寺井敏博(てらい・としひろ)(※写真右)
1993(平5)年2月19日生まれ。173センチ、80キロ。米国・チョートローズマリーホール高出身。国際教養学部3年。「お腹がちょっと弱いんです」という寺井選手。冷蔵庫には栄養ドリンクのほか、飲むヨーグルトがストックされています。
◆高橋寛伎(たかはし・ひろき)(※写真左)
1996(平8)年5月3日生まれ。169センチ、68キロ。東京インターハイスクール出身。国際教養学部1年。「冬になって、お風呂がすごい気持ちいいんです」と高橋選手。同部屋の金子聖選手の誕生日に、みんなで銭湯に行かれたそうです。