3年生ながらDFリーダーという重責を担い、冷静なプレーで守備陣を率いるDF石川貴大副将(スポ3=埼玉栄)と、持ち前のスピードを生かし多彩なホッケーを見せるFW青木優之介(スポ2=埼玉栄)。今回の対談では埼玉栄高の先輩後輩であるお二人に、関東大学リーグ戦(リーグ戦)で見えた課題や日本学生氷上競技選手権(インカレ)への抱負を伺った。
※この取材は12月10日に行われたものです。
課題の多いリーグ戦
笑顔で質問に答える青木(右)と石川
――リーグ戦を振り返って、4位という結果についてどのように受け止めていますか
青木 1位を目標にやってきていたので、4位という結果はチームとしても個人としても納得のいかない結果だったと思います。
石川 前半戦でワセダは首位という位置にいて、そこから失速してしまったというのはチームとしてもすごく悔しいことですし、DFリーダーとしても後半戦に失点が増えてしまったということは、DF陣やGKの慢心なのかなというのが印象にあります。
――リーグ後半戦で失速した理由としてどのようなことが挙げられますか
石川 やっぱり前半戦はしっかり決められるところは決めていたし、GKやDFとしては本当に失点の少ない試合を重ねて勝ち進めていたところがありましたね。ですがパワープレーの精度が、全体的に見ては高い方だと思うんですけれど、後半になるにつれて下がってきてしまって。相手校からも対策されて、それにワセダが対応し切れなかったのかなと思います。
青木 前半戦は良いスタートを切れましたし良い結果だったのですが、その後は慢心があったというのが理由かなと思います。
――では、リーグ戦で一番印象に残った試合は何ですか
石川 僕は、リーグ後半戦で逆転負けを喫した東洋大ですね。第2ピリオド(P)で勝ち越したにも関わらず、第3Pで逆転負けしてしまいました。第3Pで失点が少ないというのがワセダの強みでもあるのですが、それが東洋大戦に関してはできませんでした。
青木 僕はリーグ戦前半の法大戦です。その法大戦の前の日体大との試合は引き分けというかたちだったので、チームの雰囲気があまり良くありませんでした。でも、その良くない中で切り替えて強豪の法大に勝てたというのはチームの追い風となり、切り替えがうまくできたことも証明されたのでとても印象に残っています。
――リーグ戦では第1Pの立ち上がりの悪さを指摘されることが多かったと思いますが、試合を重ねる中で改善していくことはできましたか
石川 改善できていないと思います。結果的にみると、リーグ後半戦で上位チームと対戦したときは、必ず第1Pで失点をしていました。何でそうなってしまったのかと言えば、スタートから足が動いていなかった、つまりは基礎基本的なことができていなかったのだと思うのですが、それをみんなが分かっている中で改善できなかったというのが問題で、この問題についてみんなが深く考えられていなかったのではないかと思います。
青木 自分たちのプレーをするのではなく、まず相手の様子を見てその後スタートしていることが、毎回スタートが悪い理由かなと思っています。
――他に課題を挙げるとすればどこですか
石川 後半のパワープレーですね。これに関しては前半戦に比べて精度が下がっていましたし、新しいバリエーションをやっておけば良かったのかなという思いは少しあります。パワープレーは決められるとう自信が僕らにあったので、そこの気持ちの部分と実際やってみたときのギャップがありました。
青木 不必要な反則が多かったかなと思います。いらない反則で自分たちを苦しめるような展開で、後半戦はそれが多くなっていましたね。
――リーグ戦の中でワセダらしい良いプレーができたと思う試合はありましたか
石川 前半戦の明大との試合は4-2とすごく理想的な試合だったと思います。ロースコアの中で勝てるというのが自分たちの理想だと思っているので、明大戦みたいな試合をいつもできればっていうのはありますね。
青木 僕は一巡目の法大戦です。ワセダは駄目だと言われている中で第1Pに4点取れましたし、スタートから良い動きで大量得点できたので、こういう試合を毎試合続ければ、インカレ優勝というのも達成できると思います。チームの一人一人がスタートからしっかり動けていたという面で法大戦です。
――試合の中でのご自身の役割はどのようなものだと思いますか
石川 3年生になって、DFを引っ張っていく上でリーダーシップを発揮してほしいと卒業した先輩方から託されたと思っているので、やっぱり個人としては自分がプレーしている最中には失点をしたくないし、失点しちゃいけないという気持ちを持ってプレーしています。ですがそれがうまくいっていなくて、逆に失点してしまうことがあるのが悔しいです。自分のプレーでDFを引っ張っていくというのもそうですし、指示を出しながら連携を取って司令塔としての役割を担っていくのが自分の責任だと思います。
――司令塔という立場はプレッシャーも大きいのではないですか
石川 嫌なプレッシャーではなくて、良い意味でのプレッシャーはあります。きょねんは銘さん(羽刕銘、平26スポ卒=現日本製紙クレインズ)について行けばいいみたいな感じだったんですけど、ことしは司令塔という立場になって、自分の気持ちをかき立てるような良いプレッシャーになっていると思います。
DFの要である石川
――青木選手はご自身の役割についてどのようにお考えですか
青木 ポイントを稼ぐのが自分の役割だと思っています。自分はゲームメークできるわけでもないですし、器用でもないので、ただ一生懸命にフォアチェックやバックチェックといった基本的なことをしっかりやって、ゴールに向かっていくということを意識しています。
――第1セットでプレーしていて緊張することはありますか
青木 きょねんも一応第1セットでやらせていただいたので、そういう緊張というのはいまはないですね。
石川 何も感じてないだけでしょ(笑)
一同 (笑)。
青木 第1セットでプレーすることによって良い刺激を受けています。一騎さんにしろ立樹(FW金子立樹、スポ2=北海道・駒大苫小牧)にしろ、高校のときからトップでやっていた二人なので、組んでいても勉強になります。
――今季から監督が変わりましたが、環境面での変化をどのように感じていますか
石川 監督が変わったというのは、春(関東大学選手権)が駄目だった中で自分たちが変わるきっかけにもなったはずなので、そういう部分ですごく大きなことだったのではないかなと思います。
――きょねんと比べてことしのチームの強みは何だと思いますか
石川 きょねんは卒業した先輩方に守りや攻撃を頼っていた部分がありましたが、それがいまはなくなって全員が責任感を持っていて、気持ちの部分での成長はあるんじゃないかと思います。あとは、アグレッシブなプレーをしてくれる選手がきょねんよりも多いんじゃないのかなという気はします。
青木 きょねんの4年生はうまい人たちばっかりだったので、抜けた穴というは本当に大きかったのですが、その分一人一人が一生懸命やらなければいけないという自覚が芽生えましたし、それがチーム力につながっていると思います。
石川 ただ、「強み」というのがレベルが5がマックスだとして、きょねんの強みが5だとしたらいまの強みは3ぐらいの強みだから、結果は出ていないんですよね。自分たちの強みが足りてなくて突出したものがない。ここがウィークポイントでもあるのかなと思います。
「尊敬している先輩です」(青木)
なごやかな口調で語る青木
――お二人とも埼玉栄高校出身ですが、初めてお二人がお会いしたときの印象は覚えていますか
石川 全然覚えていないです(笑)。
青木 中学の時から石川さんのことは知っていて、中学のときの印象は静かでおとなしそうな印象だったんですけど、話すと面白いです(笑)。
――高校のときからお二人は仲が良かったのですか
石川 高校のときからいろんな飯屋に行ってて、結構一緒に遊んでましたね。
――お二人でどこに遊びに行ったりするのですか
石川 きょねんは西武園に釣りに行きました。楽しかったです。あと、 大学に入ってからなんですけど、正月に実家に青木が来たんですよ。人の家で羽を伸ばしたいだけ伸ばしていましたね。
一同 (笑)。
――青木選手にとって石川選手はどういう先輩ですか
青木 普段はまあこんな感じなんですけど…(笑)。オンとオフの切り替えがすごくて、やるときはしっかりやる、遊ぶときは遊ぶということができていて、本当に尊敬している先輩です。
――石川選手にとって青木選手はどういう後輩ですか
石川 プレーに関して言うならば、本当にチームで1、2を争うほど足が速くて、突破する力を持っていると思います。逆に青木のDゾーン(ディフェンディングゾーン)の守りやポジショニングは弱みになるのかなと。プライベートとか生活面では、みんなからいじられていたり、笑いをとることができる後輩ですね(笑)。
青木 自分は金子立樹と一番行っていると思います。同期で学部も同じで一緒に授業を取ったりもしているので、帰りに一緒に行ったり。試合前も金子立樹と、あと松本逸輝(商2=滋賀・光泉)とかとご飯食べることが多いです。
――同期はどのような存在ですか
石川 選手だけではなくてマネージャーやトレーナーもいて、運営に関することもちょくちょく話しますし、ホッケーだけじゃなくてチームの全体のことまで話せる仲なのかなと思います。あとは面白いやつが多くて、すごくリフレッシュさせてもらえるというか、そういう時間を共有できる同期なのかなと思います。
青木 同期は人数も多いのでさまざまな考えや思いもあって、そういうところでいろいろな意見があるんだなというのを思います。この同期の中にいれば人間的にも成長できるんじゃないかなと思います。
――4年生の印象は
石川 人数が少ない中でどうにかしようというのを感じますし、僕は接する機会が多いですが、駄目だったところをどう改善しようかとすごく考えているのを感じますね。チームを本当の意味で引っ張っているんだなと思います。チームの中心に立って先頭を走っているという感じで、支えていきたいと思える人たちですね。
青木 人数が少ない中で部を引っ張ってくれて、信頼もできますし、面白い方ばかりで一緒にいても楽しいですね。
――池田一騎主将については
石川 ホッケーに関して本当にストイックです。勝利やホッケーに対する気持ちが一番強い方ですね。ホッケー以外でも、すごく面白くて人をいじるのがうまくて、笑いをとったりすることが多いです。
青木 キャプテンということもあり、ホッケーを一番知っています。相手がこう攻めてくるからこう守ろう、とか相手がこう守っているからこう攻めようというようなことを言ってもらえて、自分もそのおかげでうまくいくこともありますし納得のいくプレーもできることがあるので、本当に信頼できる先輩ですね。
――1年生はいかがですか
石川 試合に出られるようにというモチベーションが高い選手が多いと思います。自分は試合には出られないなと諦めている選手はいないと思いますし、試合に出たいという気持ちが表れている選手が多いと思います。高校のときから有名だった明大や中大の人たちにも負けないぞという気持ちを持った選手が多いというのを感じます。
青木 学年が1つしか違わないということで、タメ口で話してくる後輩もいるんですけど(笑)。人間関係という面では良好な関係を築けているかなと思います。
――期待の1年生はだれかいらっしゃいますか
石川 間違いなく新井遥平(スポ1=北海道・駒大苫小牧)ですね。いま試合に出ていますし、そういうホッケーにおける期待というのは間違いなく一番高い選手です。あとは田中創一郎(政経1=東京・早実)。一生懸命走ってぶつかって、アタッキングゾーンで相手に絡むという自分の役割をしっかり理解してやっていると思うので期待しています。
青木 やっぱり一番期待しているのは(新井)遥平ですね。秋のリーグ戦も一緒のセットを組んでいたので、良いところも知っていますし。あと個人的には高校も一緒ですし高校3年生の時には一緒のセットを組んでいたので、格地龍太郎(スポ1=埼玉栄)にももっと頑張って試合に出てほしいなと思います。
「やってみなければ分からない」(石川)
チームのことをよく分析している石川
――インカレが近づいていますがいまの心境は
石川 まずきょねんはインカレ前に合宿とか練習試合をせずに練習ばかりしたのですが、ことしは日体大や慶大といったところと練習試合もするので、そういう環境をつくってくれたスタッフや試合をしてくれる相手に感謝したいです。それを自分たちがいかにうまく生かせるかですね。自分たちの駄目なところを早く発見して、インカレまでの時間が限られた中で改善していくというのと、秋季リーグにチームで感じたことを直せるかというのが大事になってくるかと思います。
青木 きょねん1年目にインカレという大きなタイトルを取るということを経験させてもらって、また取りたいという欲が出てきているのですが、もちろん簡単に勝てる試合はありませんしトーナメント表を見ても厳しい戦いが続くと思います。負けた時点で終わりなので、一回一回の練習を集中してやってまたインカレで優勝できるように頑張っていきたいと思います。
――インカレではリンクサイズが変わりますが、その対策は何かしていますか
石川 アタッキングゾーンとDゾーンが広くなるのを練習から意識していこうということで、スタッフが毎回の練習の前にスプレーとメジャーでブルーラインを引いておいてくれて。そういう準備という面ではきょねんよりもほかのチームよりも良い準備ができているのかなと思います。スタッフを含めてみんなでそういうインカレへ向けての気持ちをつくっていけているというのを感じています。
――インカレでは順当にいけば2試合目に東洋大との対戦が予想されますが
石川 秋季リーグが1勝1敗ということで勝つチャンスがないわけではないし、本当にやってみなければ分からないと思います。そこまでの準備で何をするかですね。相手がしてくるプレーにどういう対策が考えられるか、それをどう実践できるかが勝敗を分けると思うので、しっかり良い準備をしていきたいなと思います。
青木 ことし3試合をやって2敗しているのですが、その2敗がどちらも逆転負けということで、第3Pの集中力だったり最後まで足を動かす体力だったりというのが東洋大に勝つカギになると思います。
――ほかに優勝へ向けて何が必要だと思いますか
石川 まずブルーラインが違うのでそれに対する選手の対応が重要になりますね。特にDゾーンが広くなるというのは失点のリスクが高くなるということなので、いかにDゾーンでの時間を減らせるかというのがディフェンス面で重要になってくると思います。そのためにはもっとコーナーで激しく当たってルーズパックをつくって味方に拾わせるとか、自分でパックを奪って味方につなぐという部分を強化していく必要があるんじゃないかと思います。逆に攻めに関してはパワープレーもゾーンを広く使って相手の内側の空いたエリアを使ってシュートを打つとかパスをより多く回して決めるということが可能になってくると思います。それをうまく利用するためにどういうパワープレーができるのかを考えていく必要があると思いますし、それができればおのずと良い結果がついてくるのではないかと思います。
青木 トーナメントで負けたらすぐ終わってしまうので、調整が一番重要なのかなと思っています。毎試合万全な状態で挑むことが大切ですし、ワセダはほかの大学と比べて一人の欠場の影響が大きいと思うので、みんなが万全な状態で挑むことが大事だと思います。
――個人的にはどのようなプレーをしたいと思っていますか
石川 自分たちのチームに勢いを与えるパスだったりスコアにつながるパスというのをしてきたいです。あとはDゾーンでのリーダーシップをしっかり取っていければいいのかなと思います。
青木 個人的にはがつがつしたプレーですね。2年目ですので。がつがつ貪欲にゴールを狙っていこうと思います。
インカレでは青木の突破力に期待が懸かる
――インカレへの意気込みをお願いします
青木 目指しているのは優勝ですし、厳しい戦いが続くとは思いますが、一戦一戦大切にして自分たちのプレーをして優勝できるように頑張りたいと思います。
石川 ことしはタイトルを一つも取れていない悔しい結果続きの中で、最後の最後に一番大きなタイトルを取ることを最大の目標にして頑張っているので、秋季リーグ以上に一戦一戦しっかり戦っていくというのが大切だと思います。インカレはすごくタイトな日程になってくるので、そこへ向かって全員がしっかり準備して、ワセダの強みであるチームワークを十分に発揮できるように、スタッフや4年生と共にチームをまとめ上げていきたいと思います。
――最後に、今季自分が一番成長したと思うところを教えてください
石川 やっぱり自分が役割をもらったということで、リーダーシップを発揮する力だったり考える力というのはいままで以上に成長したと思っています。昨年は羽刕さんと虎太朗さん(山田虎太朗、平26社卒=現王子イーグルス)がいて、自分が引っ張っていこうというのがさほどなかったのですが、それがDFリーダーになったことで考える力とか責任という部分ですごく成長しているんじゃないかと思います。
青木 自分はホッケーに対する責任感が強くなったと思っています。きょねんまででしたら勝田さん(貴之、平26国教卒=米国・ライ高)や一騎さんの後についていけば二人で点を取ってくれていたのですが、きょねんの穴を埋められるほどの実力はないですけれど、もっと自分がしっかりしなくてはいけない責任感というのは身についたと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 伊藤広真、種村春歩)
仲の良い先輩後輩です!
◆石川貴大(いしかわ・たかひろ)※写真左
1993年(平5)4月26日生まれ。165センチ、82キロ。埼玉栄高出身。スポーツ科学部3年。今季はDFの司令塔として、「自分がプレーしている最中に失点してはいけない」と並々ならぬ覚悟で試合に臨んでいる石川選手。インカレでも石川選手のリーダーシップに注目です。
◆青木優之介(あおき・ゆうのすけ)※写真右
1994年(平6)8月18日生まれ。168センチ、74キロ。埼玉栄高出身。スポーツ科学部2年。インタビュー中、終始笑顔を絶やさなかった青木選手。チーム内では癒しを与える存在で、いじられ役として日々チームメートに笑いを提供しているようです!