連載の初回を飾るのは、アシスタントキャプテンとして尽力するFW森田哲朗副将(教4=東京・早実)、昨年の日本学生氷上競技選手権(インカレ)決勝で途中出場し優勝に貢献したGK中川悠輔(教3=東京・早実)、勝負強さと技術を兼ね備えたワセダの守護神・GK遠藤秀至(社2=東京・早実)の早実トリオ。高校時代からワセダを背負って戦ってきた三人に、インカレへの意気込みなどさまざまなお話しを伺った。
※この取材は12月18日に行われたものです。
早実時代を振り返って
左から遠藤、森田、中川
――同じ早実高出身の三人ですが、高校時代の関係性はどのようなものでしたか
森田 自分がキャプテンでしたが、私生活では秀至(遠藤)とは昼飯とか一緒に食べていて、自分の友達とも仲良くて1年生なのに3年生の教室に来ていました。中川は生意気だったので、すごい自分を避けていました。
中川 それには語弊があって。生意気とかじゃなくて、いまだからこそ言えますけど、まじで早実では独裁国家を築いていて。
森田 独裁ではないよ。民主主義だったよね?
中川 民主主義ではない(笑)。キャプテン中心にやるところはしっかりやるんですけど、いまみたいに丸くなくて尖っていて。
森田 いまは丸いって何だよ(笑)。普通なんですけど、チームが弱かったので規律から厳しくやっていかないとなと。そういうチームづくりをしていたのですが、私生活は和気あいあいと。
中川 そういうことにしておきましょう(笑)。
――大学に入って変わった人はいますか
森田 誰も変わってなくない?
遠藤 中川さんじゃない?めっちゃいじられるようになりましたよね。
森田 高校のときはそんなにいじられるキャラではなかったんですけど、大学に入って1年生のときに4年生からいじられたのがスタートで、いま3年生ですけどいじられるキャラです。
中川 隠していたんですよ、いままで。大学になって素の自分を出せたという。
――遠藤選手から見た中川選手はどのような印象でしたか
遠藤 高校時代は怖かったですね。
中川 嘘つくなよ(笑)。
遠藤 何が怒るポイントなのか分からないんですよ。ちょっと部活の外とかでいじるときも、ここはOKなのかな…と思いながらやってました。怒るところが人とずれているので。
中川 それやばいやつじゃん(笑)。いまは怒らない。
遠藤 高校のときはそうだったのですが、大学に入ったら踊ったりいじられたりしているし、変わったなと思います。
――中川選手と遠藤選手は同じGKをされていますが、お互いどのような存在ですか
中川 後輩ですけど本当に上手で、気持ちの強さは大学リーグでも1番くらい強いですし、すごいです。
遠藤 高校時代から試合前までどちらが出るか分からなくて、中川さんに勝とうという気持ちでやっていたので、中川さんがいなかったらここまで真面目に練習もしていなかったと思いますし、先輩ですけどすごく良いライバルだと思います。
遠藤の気持ちの強さは周囲も認めるところ
――なぜGKをやり始めたのですか
中川 最初はGKがいなかったから始めたのですが、そのときにちょうどワセダのOBのGKの方が地元の石川県に来てくれて、そのときにGKの面白さを教えてくれて、それでGKの道に進もうかなと思いました。
遠藤 僕は完全に一時の気の迷いというか。小学校2年生で(GKを)始めたのですが、何を思ったのか分からないですけどGKをやりたいと言ってしまって、そこからです。5、6歳くらいでホッケーを始めて2年間くらいはプレーヤーをやっていたのですが、正直小学校1年生なんて試合に出られないですし、練習でたまにGKを見ていて面白そうだと思ってやりたいと言ってしまって。そこが間違いだったのですが(笑)。
中川 それは思いますね(笑)。GKはお金もかかりますし、試合には一人しか出られないし孤独で、普通に見たらプレーヤーの方が得点も取れるし面白そうだし。
――ではGKの面白さはどこにあると思いますか
遠藤 面白いかと言われると、そんなに面白くないんじゃないですかね(笑)。ドMかとよく言われるんですけど別にばんばんシュートを打たれて気持ちいいとか思いませんし。でもシュートがきて、しっかりと止めて勝てれば面白いです。あとは、難しいシュートというか、止められそうにないシュートを止められたときは面白いと思います。
――早実時代の面白いエピソードは何かありますか
中川 日々の生活が面白かったです。
遠藤 中川さんがカップ麺の下に穴をあけてきたり。
中川 後輩が大きなカップ麺を買ってきて、後輩のくせに生意気だなと思って、カップ麺の下に割り箸で穴をあけておいたんですよ。お湯を注いで3分後食べようと思ったら、全部お湯が出ていくという(笑)。
一同 (笑)。
「最後まで全員を同じ方向に向かせられなかった」(森田)
4位という結果を重く受け止めている森田
――関東大学リーグ戦(リーグ戦)の話に移りますが、4位と言う結果についてそれぞれどのような思いですか
森田 もちろん優勝を狙っていたので悔しいということもありますが、それ以上に4位という結果は妥当だったのかなという思いが強いです。1次リーグを1位で折り返せたのはラッキーということは分かっていて、だからこそ2次リーグはもう一度気持ちを入れ直して改善すべきところは改善して臨もうとしていたのに、上の強い大学には勝てなかったので、この結果が妥当です。個人的にも2セット目は得点も少なかったですし、銘さん(羽刕銘、平26スポ卒=現日本製紙クレインズ)や晃さん(松浦晃、平26人卒=北海道・釧路工)がいた昨年までの2セット目とは変わってしまった中で、自分とか三浦(FW三浦亮、教4=青森・八戸商)とかが頑張らなくてはいけないところを最後まで変えられなかったので、そこかなと思っています。
中川 自分は1年生のときには優勝、2年生のときは全日本(選手権)に出場できる2位という結果は残せていて、結果が残らなった秋リーグは初めてだったので、もう少し改善できなかったのかということは考えてしまいます。個人的にもいま正GKではないですし、2年生の秀至にかなり頼っている部分があるので、もっと助けるような努力をしないといけなかったと思いますし、課題が多く残る秋リーグでした。
遠藤 4位は本当に悔しい結果で、前半は良いかたちとは言えないですけど1位で折り返せたのですが、その後流れを悪くしてしまいました。途中でも悪いところがかなりあったのですが、具体的にどうすればいいかというと正直自分は分かっていなくて、そこをしっかり改善できれば良かったのですが、後半悪い結果だったにも関わらず修正できなかったので、4位という結果になってしまったと思います。
――明確な改善点が分からず迷走してしまったという感じでしょうか
森田 2次リーグに入って変えなければいけないところはたくさんありましたけど、それ以前の問題というか。プレー面というよりは試合に対する思いとか、チームがどうすれば勝てるという思いとか、全員が考えているかというとそうではなかったと思いますし、それはC(キャプテン)、A(アシスタントキャプテン)と4年に責任があると思いますが、最後まで全員を同じ方向に向かせられなかったと思います。
中川 勝ちたいという気持ちはみんなあると思うのですが、試合に出ている人と出ていない人でも気持ちの面で差があって、そういった部分を上級生というかいままで出ていなかった人たちが埋めていかないといけないのですが、それがあまりなされていなかったことに秋リーグ中に気が付かなくてはいけなかったと思います。ちょっとしたところで違いがあって、一つに向けることができなかったと思います。
――遠藤選手はリーグ戦を通してご自身のプレーの精度はいかがでしたか
遠藤 試合ごとに違いはありましたが、全体的に言えば調子は変わらなかったです。ただ前半はシュートが多く来る中でしっかりと厳しくても耐え切って、味方が点を取ってくれて勝ち取った試合が多かったですが、後半は何とか守ってもこちらが先に失点をしてしまって、流れを相手に持っていかれて負けた試合が多くて、そこで耐え切れるか耐え切れなかったかの違いが後半は出てきてしまったのかなと思います。
リーグ戦を振り返る遠藤
――それぞれリーグ戦で印象に残っている試合はありますか
森田 (後半戦の)東洋大に逆転された試合です。あそこの前の試合で中大と明大が引き分けてくれて、また優勝の可能性が出てきた中で勝ち切れず、優勝がその時点でなくなりましたし、2位も難しくなって、そこでがくんときました。
中川 最後の中大戦ですかね。外から見ていてその日秀至の調子が悪いわけではなかったのですが、結構序盤に失点をしてしまって、ぼくはバックアップで用意をしていたのでもしかしたらと思っていたのですが、なかなか(交代の指示が)来なかったということはまだ信頼されていない部分があると思います。もっと変わらなきゃという気持ちになりました。
遠藤 2周目の法大戦ですね。悪い流れというか勝ち切れない試合が始まったのが法大戦なので。法大が上位チームで1番初めにやるチームで、その試合で勝ち切れなかったことが後半悪い流れになってしまった原因なのかなと思います。
――法大戦といえば、GKと相手のエースFWの1対1の場面が多かったと思いますが、ああいった大事な場面は緊張しますか
遠藤 1対1はそんなには緊張しないですね。入れられたら入れられたでしょうがない、止めたらもうけもんだくらいでやっているので。相手が打つところも賭けというか読んでやっています。どちらのチームからしてもGKと1対1という場面をつくり出した時点でほぼ1点だと思うので、そこで1点を取られてもしょうがないし、そこで止められたらそれはそれでOKなので、そんなに緊張はしなかったです。
――ワセダはパワープレーで得点をするというスタイルですが、今リーグではその評価はいかがですか
森田 1次リーグではパーセンテージ的には高くて、結果終わってみても1位だったのですが、1次リーグから見たら2次リーグはすごく下がってしまいました。他のチームに対策を練られたということはありますが、そこがワセダの強みなので、さらにそこを上回るようなプレーをしなければいけないと思います。
「勝てるチームに」(中川)
チームになくてはならない存在の中川
――インカレに向けた練習状況はいかがですか
森田 正直いままで自分が見てきた中では一番苦しい状況ですね。
遠藤 チーム全体の調子で言ったらそんなに良くないのかもしれません。きょねんはリーグ戦2位で終わって、全日本でも実業団のチーム相手に良い試合ができて、この時期はすごく勢いに乗って練習できていました。でもことしはリーグ戦の終わりがあまり良くなかったので、いまから良い流れをつくっていかなきゃいけなくて、そういう意味ではすごく大変というか。実際まだ調子が上がり切っていないので、調子を上げていかないといけないと思います。
――中川選手は練習中などに積極的に他の選手に声を掛けていると伺いました
森田 それは本当にそうですね。試合中なんかも、失点しだすとベンチの雰囲気が悪くなってしまうんですけど、そういうとき声を出しているのは中川です。それは本当に大事なことで、ワセダは雰囲気と流れが重要で、結果にも響いてくるチームなので、そういうところで本当に活躍していると思います。
中川 僕から言わせてもらうとCやAは強く言えるのですが、僕なんか全然言えなくて。僕としては逆に、優しい言葉しか掛けられない、厳しい言葉の掛け方を忘れてしまったというのがいま悩みです。
――先日練習試合を2試合行ったとお聞きしましたが、その意図は
中川 (インカレは)リンクサイズが変わりますからね。
森田 そうですね。リンクサイズに慣れることが練習試合をやる一番の理由です。
――リンクサイズが変わることによってプレーにはどのように影響するのですか
森田 圧倒的に攻めが有利になります。
遠藤 広くなってDFがパックを持つ余裕ができたことで、DFがうまいチームも有利になったんじゃないかなと。
森田 要するに個人スキルが高いほど有利。
遠藤 DFは守る範囲が増えて隙間が多くなってしまうので、なかなか守りづらくなったと思います。ワセダは守って守って点を取らないといけないんですけど、その「守って」がかなり厳しくなったと思います。
――ルール変更で厳しくなった部分もあるということですが、それも踏まえていまはどのようなところを強化しているのですか
森田 逆にリンクサイズが変わったことでスペシャルプレーは有利になるので、さらにその精度を上げなきゃいけないですね。あとは、「1セット目は点数を取ってくる。2、3セット目はプラマイゼロで」という目標をスタッフから課せられて、いまセットを少し変えています。
――インカレまでの期間で、どのようなチームを目指していきたいですか
遠藤 個人個人がプレーの調子を上げていって、全員が良いイメージを共有できるようなチームになれれば良いと思います。
中川 一人一人が変わっていかなければいけないと思います。最終的にはやはり勝てるチームに。インカレ優勝できれば、何かが変わった結果だと言えると思うんですよね。だから何が何でも優勝できるチームにしていきたいですね。
森田 多分いまの状況だと、優勝したいけどできるかわからないと思っているやつが多いと思います。その不安を払拭(ふっしょく)して、全員が勝てるという自信を持てるチームにならないと絶対に勝てません。まずは準々決勝であたるであろう東洋大戦に照準を合わせて、自信を持てるチームにしたいです。
試合前に声を掛け合う森田(右)と中川
――2戦目に東洋大とあたる可能性が高いですが、どのような試合をしたいですか
遠藤 リーグ戦2試合とも向こうはこっちの倍くらいシュートを打っていて、多分(インカレでも)そうなるんじゃないかなと思います。でもリーグ戦でも失点はそんなにしていないので、それと同じようにシュート数を多く打たれても抑えて、相手の脇本さん(東洋大)もうまいGKでいっぱい点が取れるとは限らないのですが、最低限の点数を取って、ロースコアで勝ち切りたいと思います。
――森田選手は最後のインカレになりますが、特別な思いはありますか
森田 まだ最後だという感じは全然なくて。実感がわいていないというか。毎日がハードですし、一日一日チームを良くしていくというのに精一杯です。アシスタントキャプテンとして考えなきゃいけないことも多くて、一騎(FW池田一騎主将、スポ4=北海道・駒大苫小牧)にはプレーで負担をかけているので、それ以外の負担を軽くしないといけないと思っています。
――それぞれインカレへの意気込みをお願いします
中川 やはりインカレは毎年『4年生のチーム』というのが当たり前にあると思うので、4年生のために最後自分たちができる精一杯のプレーをしたいです。らいねんは僕たちが最上級生になるのでできるところは全て吸収して、最後の恩返しができるようにしていきたいです。
遠藤 インカレはきょねん優勝できているので悪いイメージはないですが、きょねんは銘さんとか虎太朗さん(平26社卒=現王子イーグルス)のようなすごい人がいて、僕はプレー面でもメンタル面でもすごく支えてもらっていたんですけど、ことしはちゃんと自分でコントロールしないといけないし、自分からDFに声を掛けてコミュニケーションを取って守っていかなきゃいけないと思います。FWは点を取って来てくれると思うんで、まずは守りからしっかりやっていきたいです。きょねんは準々決勝で法大とやって、かなり厳しい戦いだったんですけどそこでしっかり勝ったことでその後も良い流れでいけたので、今回も準々決勝で良い流れをつくれるようにしていきたいと思います。
森田 きょねん優勝して2、3、4年生はその味を知っています。ことしはまだタイトルが取れていないので、最後に良い思いをみんなにさせてあげられたらなと思っています。
――最後に、今季を通して自分が成長したと思うところを教えてください
遠藤 大きいケガをしてしっかりそこから復帰できたことです。きょねんのインカレでケガして春はまだ足が本調子じゃなかったんですが、春からリハビリをかなりやって良くなって、リハビリをしながらケガをしていない部分のトレーニングもやっていたので、ケガしたことによってマイナスになるのではなくプラスに持って行けました。大きなケガを経験して成長できたんじゃないかと思います。
中川 試合前の準備で、いつも同じような調子に持って行けるようになりました。いままですごく波があったので。いつも一定のプレーができるようになってきたのが成長です。
森田 中学高校でキャプテンやってきて、人に何か言わなきゃいけないことが多かったんですけど、大学のAマークはいままでと全然違って、ただ言えばいいだけじゃなくてフォローも大事で。人間として成長できたんじゃないかと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 栗田麻里奈、末永響子)
高校時代からワセダを背負う三人です
◆森田哲朗(もりた・てつろう)※写真中央
1992(平4)年4月15日生まれ。164センチ、60キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。取材中は積極的に会話をリードしてくださった森田選手。遠藤選手や中川選手との言葉の掛け合いが絶妙で、三人の仲の良さがうかがえました。インカレでは一年間副将として奮闘した森田選手の熱いプレーに期待です!
◆中川悠輔(なかがわ・ゆうすけ)※写真右
1993(平5)年7月28日生まれ。173センチ、68キロ。東京・早実高出身。スポーツ科学部4年。高校時代はイケメンキャラで通っていたという中川選手ですが、大学に入ってからはいじられキャラとしての地位を確立しているそうです。『カップ麺事件』の他にもいろいろな面白いエピソードを披露してくださいました。
◆遠藤秀至(えんどう・しゅうじ)※写真左
1994(平6)年4月23日生まれ。168センチ、63キロ。東京・早実高出身。社会科学部2年。一見クールな遠藤選手ですが、氷上では気持ちの入ったプレーでゴールを死守。来るインカレに向けて調子は上向いているそうです。今季のインカレでも、大一番でのスーパーセーブで会場を沸かせてほしいですね!