主将小室 想いをのせたプログラムを演じ切る

フィギュアスケート

 早大フィギュア部門の主将、小室笑凜(スポ4=東京・開智日本橋学園)が、スケート人生最後の試合に臨んだ。現役最後の今シーズンはケガに苦しんできたが、12月初めの予選を突破し、栃木県代表としてこの国民体育大会冬季大会(国体)に出場。ショートプログラム(SP)では転倒がありながらも、シーズンベストを記録し、24位で翌日のフリースケーティング(FS)に進出。大会最後の演技となったFSでは伸びやかにプログラムを滑り切り、幸せをかみしめた。

★成年女子SP

 シーズン序盤のケガの影響で苦戦を強いられてきた早大フィギュア部門の主将、小室。ケガ明けに臨んだ東京選手権や東日本学生選手権では思うような演技ができず、苦しいラストシーズンとなっていた。「なかなか気持ちのコントロールができなかった場面も多かった」という。そんな中、12月初めに行われた予選を勝ち抜き、栃木県代表として4年連続となる国体出場権を獲得。シングル最後の試合を、たくさんの観客が集まった八戸のリンクで迎えることとなった。

 小室のラストシーズンのSPは映画ムーランの主題歌、『Reflection』。スパンコールが輝く薄いブルーの衣装に身を包んだ小室は、ゆったりとした音楽に合わせて伸びやかな滑りを見せていく。冒頭、大事なコンビネーションジャンプでは、3回転トーループが回転不足の判定を受けるも、しっかりと2回転トーループをつけて着氷。2本目のジャンプ、3回転サルコウでは転倒してしまうものの、その後のスピン、ステップを丁寧にこなす。力強く、壮大になっていく歌声にのるように全身を大きく使って曲を表現。プログラムの最後に跳んだ2回転アクセルは大きなミスなく着氷し、晴れやかな笑顔が見られた。ゆっくりと上を向く最後のポーズを決めると、会場からは温かい拍手が送られた。

 転倒はありながらも、「自分のできることは出せた」と語る小室は、シーズンベストの39・56点をマーク。FSに進出できる上位24人に滑り込み、翌日のFSの舞台へと駒を進めた。

『Reflection』を演じる小室

★成年女子FS

 1番滑走で迎えた最後のFS。小室は、仲間たちや観客の拍手を全身に受けながら、笑顔でリンク中央へ向かった。名曲、『オペラ座の怪人』が流れるとしなやかな動きで演技を始める。変化する曲調に合わせて跳んだ3回転サルコウや2回転アクセルは両足着氷となり、回転不足の判定を受けるも、丁寧にエレメンツを披露していく。ステップシークエンスでは、序盤の力強さを感じさせる滑りとは一転、柔らかく華麗な舞を披露。演技後半のジャンプでも回転不足などのミスが見られたが、『オペラ座の怪人』の世界観を演じ続ける。「演技中に見える、観客の方、コーチやリンクサイドで応援している人に向け精一杯演技しよう」。そう思いながら披露したコレオシークエンスではリンクを大きく使った伸びやかな滑りで魅せ、会場を引き込む。最後の2回転フリップからのコンビネーションジャンプをミスなく決め、美しいスピンで演技を締め括ると、感極まったような表情を見せた。

 苦しい場面も多かったラストシーズンを、幸せをかみしめるような笑顔で締めくくった小室。たくさんの観客の前で披露した最後のFSを「幸せだった」、「こんなに温かい空気感で滑れる時間が終わってほしくなかった」と振り返った。引退試合を終えた早大フィギュア部門の主将は、2月末のWASEDA ON ICEでスケート人生最後の演技を迎える。フィギュアスケートという競技の魅力が存分に伝わる演技を披露する小室の姿を、最後まで見届けたい。

(記事 吉本朱里、写真 及川知世)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

結果

▽成年女子


小室笑凜(栃木県)

 

SP 24位 39・56点

FS 23位 62・14点

総合 23位 101・70点


コメント

小室笑凜(スポ4=東京・開智日本橋学園)

※SP後

――今日の演技を振り返っていかがですか

 本当に楽しんで、お客さんに目を向けて滑ることというのは一番やりたかったことだったので、そこはすごくよかったかなと思います。

――演技後に関してはいかがですか

 やれることはやったかなと思います。転倒もあったのですがパンクはしなかったので、自分のできることは出せたかなと思います。

――今シーズンの中では点も出ていましたが、点数についてはいかがですか

 点数的には満足がいくものではないのですが、点数よりも今回は自分の中でやり切れたところがあるので、全然可も否もないという感じです。

――ケガに苦しんだシーズンだったかと思いますが、国体出場が決まったときの心境はいかがでしたか

まず、4年間連続で出られたというところはすごくよかったなと思っています。自分が出られる中で一番大きな試合なので。正直自分のコンディション的に予選が通過できるかがわからなかったので、とりあえずすごく嬉しかったです。

――それを踏まえて、どのような気持ちで今大会に臨みましたか

 本当に、ケガでなかなか気持ちのコントロールができなかった場面が多かったシーズンだったと思っています。理想とのギャップがありすぎたというところから、どのように自分のゴールを設定するかというところのコントロールをしっかりした上で、自分もそうですけど、両親に対しても感謝の気持ちを忘れずにというところを意識してやってきました。

――早稲田ジャージを着用されているのは

 いつも着ているというのはあるのですが、早稲田の部員として大会に出るのは最後だなという思いがありました(笑)。

――滑走順が三原舞依選手の後でしたがやりづらさなどはありましたか

 私は逆に嬉しくて(笑)。こういう経験はできないので。国体は4回出たのですが、そのうち3回は兵庫県の選手の後で、1年目は坂本花織選手、2年目は三原選手、3年目は違ったのですが、今年は三原選手の後に滑ってちょっと全日本の選手の気分でした(笑)。点数出たときは、「すごいなー!」と。

――FSに進めるかわからない状態ではありますが(インタビュー後、FS進出が確定)、大会全体を振り返っていかがですか

 まず、この大会に4年間出られたということがすごくよかったと思います。また、お客さんや、今日来てくれている両親の前で自分の気持ちを出し切って滑ることができたのがよかったと思います。


※FS後

――公式戦最後のFSでしたが、演技内容を振り返っていかがですか

 会場からの温かい応援と拍手の中で演技ができ幸せでした。ジャンプなどの内容面で見たら、課題はたくさんあったと思うのですが、それよりも楽しんで自分の想いをのせて滑れただけで十分です。

――後半の伸びやかな滑りや、演技後の感極まったような表情が印象的でした。後半はどのようなことを思って演技をされましたか

 最後はただただ自分の好きなように滑っていたと思います。演技中に見える、観客の方、コーチやリンクサイドで応援している人に向け精一杯演技しようと思っていました。体力的にしんどいと思いながらも(笑)、コレオのあたりから本当にこれが最後の試合なんだと実感が湧いてきて、一人で感極まってしまいました。

――ラストシーズンを振り返ってどのようなことを思いますか

 沢山の人に支えられ国体という素晴らしい舞台で終えられ、良いラストシーズンにできたのではないかなと思います。シーズン入ってすぐに、予想外の怪我があり精神的にも不安定だった時期もありましたが、懸命に私の怪我を回復に向け努めてくださった病院の方やコーチからの言葉、両親や先輩、友人からの励ましがあってこそ、こんなにも素晴らしい引退を迎えられたと感じています。沢山の方に感謝をしたいです。

――久々の有観客開催でしたが、観客や選手のみなさんからの応援を受けながら滑った感想をお聞かせください

 本当にとても楽しかったですし、幸せでした。こんな自分のことを応援してくれる人がいて、こんなに温かい空気感で滑れる時間が終わってほしくなかったです。

――最後に、WASEDA ON ICE(WOI)に向けての意気込みをお願いします

 WOIが最後の演技の場になるので、スケート人生悔いのない滑りができたらと思っています。また、観客の方により一層楽しんでいただけるものをお届けできるよう、部員全員で精一杯つくり上げて行こうと思います!!