本格的なシーズン開幕に先立ち行われてきた夏の地方競技会。東京選手権まで残すところ約1カ月という中、東京夏季フィギュアスケート競技大会が開催された。今大会には昨シーズン、アイスダンス競技で全日本選手権3位に輝いた西山真瑚(人通3=東京・目黒日大)と2週間前のげんさんサマーカップにも出場した廣田聖幸(スポ2=千葉・東邦大東邦)がシニア男子の競技に登場。シニア女子の競技には8月初めから3つの大会に出場している馬場はるあ(社3=東京・駒場学園)が出場した。
★早大勢2人でFS進出、西山は総合優勝(シニア男子)
昨年12月に行われた全日本選手権のアイスダンス競技で、高浪歩未(国教3=ケイ・インターナショナルスクール東京)とともに3位に輝いた西山は今シーズン、シングル競技に出場することを表明している。2年半ぶりのシングルの舞台となった今大会。「シングルの大会感をしっかりと肌で感じて慣れていくこと」、「緊張感がある中でどれだけ普段通りのパフォーマンスを発揮できるかを知ること」を目標とし、演技に臨んだ。今シーズンのショートプログラム(SP)は『That’s Life』。黒いジャケットとシャツを合わせた衣装で登場し、クールなポーズでリンク中央に立つ。冒頭、直前の6分間練習で入念に確認していた3回転フリップからのコンビネーションは最初のジャンプでバランスを崩してしまう。しかし、ミスを引きずらずに続く3回転ループ、2回転アクセルは加点の付く美しい着氷を見せる。男性ボーカルの明るく軽快な音楽に乗り、遊び心を感じさせる振り付けを交えながら氷上を舞う西山。歌詞に合わせて上下を指差すような動きも見せる。軽やかかつ滑らかなスケートでプログラムを演じ切ると、笑顔でリンクを離れた。冒頭のコンビネーションジャンプやスピンでの細かいミスが影響し、得点は56・01点。SPを2位で終え、フリースケーティング(FS)へと駒を進めた。
SPで演技をする西山
27日朝に行われたシニア男子のFS。西山は、演技直前まで入念にウォーミングアップを行い最初のポジションについた。フリープログラムの曲は『New world symphony』と『Anthem』。演技開始直後から伸びやかなスケーティングを見せ、柔らかな表情で曲の世界に引き込む。冒頭の2回転アクセルを着氷すると、時より笑顔も見られる貫禄のある演技を披露した。その後のジャンプではところどころミスがあったものの、要所要所で締める。後半も疲れを感じさせない演技で最後まで曲の世界観を表現。全身をしなやかに使い、豊かな表情を見せた西山は、演技構成点で大きく点を伸ばした。FSの得点は118・92点、総合得点は174・93点で見事優勝。しかし、シングル競技での強さを見せた一方で、伸び代を感じさせる演技でもあった。西山本人も「練習通りの技術を本番で発揮できなかった」と振り返る。完成されたプログラムが見られる日を期待せずにはいられない。
FSで演技をする西山
「げんさんサマーカップよりも点数をあげること」を目標とし、今大会に臨んだ廣田。コーチと言葉を交わしてから、昨シーズンから継続のSP、『Overtake』の演技が始まった。演技の冒頭では、直前の6分間練習で念入りに確認していた3回転フリップを披露。「大会1週間前にようやく戻った」というジャンプだったが、安定感のある着氷を見せた。続く3回転+2回転のコンビネーションジャンプもきれいに着氷。後半のステップシークエンスでは少し乱れが見られたが、最後の2回転アクセルを決め、演技をまとめた。スピード感のある曲をダイナミックに表現した廣田。演技後は充実した表情でリンクを後にした。得点は46・24点で本人も驚きの3位。2位の西山とともに、上位6名のみが進出できるFSに進んだ。上々の演技を見せた廣田は今回のSPについて、「SPのジャンプの構成を上げつつも全部成功できたことや、自己ベストを出すことができ、目標の50点台を出す兆しが見えた」と振り返った。
SPで演技をする廣田
翌日のFS、4番滑走で登場した廣田。演技開始前から緊張している様子が見てとれた。今シーズンのフリープログラム『ロケットマン』を意識した特徴的な衣装を身にまとい、ゆったりとした曲調に合わせて滑り出す。最初のルッツジャンプの回転が抜けてしまうと、2つ目もジャンプへの踏み込みで転倒してしまった。その後のスピンやステップでも表情は固いまま。冒頭のエレメンツで流れに乗り切れなかった廣田はジャンプでのミスが続いてしまう。出来栄え点でマイナスが付かなかったジャンプは回転が抜けてしまった2回転トーループのみにとどまった。ジャンプでのミスが響き、他のスピンやステップなどのエレメンツでも本来の力を発揮できなかった廣田。FSの得点は56・99点で6位。最終順位を6位で終えた。FSについて、「SPをたくさん練習していたのでただただ練習不足」と語る。今大会の経験を生かし、次戦ではさらに演技に磨きをかけ、プログラムの完成度も高めていく。
(記事 吉本朱里、濱嶋彩加、水平櫻子 写真 及川知世、吉本朱里)
★馬場、課題残る演技も多くの収穫を得る(シニア女子)
26日午後に行われたシニア女子SP。「緊張感に慣れることとスピンのレベルチェックをすること」を目標としていた馬場が登場。引き締まった表情で演技を始めた。プログラムの流れを作る最初のエレメンツは3回転ルッツ。慎重に踏み切るも、回転不足で転倒。すぐに切り替え、直後の3回転+2回転のコンビネーションジャンプは加点の付く出来栄えで決める。持ち直したかのように見えたが、演技後半の2回転アクセルでは転倒こそしなかったものの、回転不足で着氷。ダウングレードの判定を受けた。優雅なピアノ曲に合わせ、ドラマチックな演技を見せた馬場だったが、ステップやスピンにも乱れが見られる演技となり、首を傾げながらリンクを後にした。SPの得点は32・82点。「あまりにも酷い演技だった」と振り返ったように、悔しさの残る結果となった。それでも、SP17位で翌日のFS進出を決めた。
SPで演技をする馬場
FS2番滑走で登場した馬場。演技冒頭、鬼門のルッツジャンプは2回転になり、続く3回転サルコウも転倒してしまう。それでもその後はシークエンスジャンプや3連続ジャンプなどを着氷。回転不足や回転の抜けはあったものの、転倒せずにジャンプをこなしていく。演技のクライマックスで見せたレイバックスピンでは、8月初めに行われた飯塚杯やげんさんサマーカップでは獲得できなかった最高評価のレベル4を獲得。この夏の期間、3つの大会に出場し、エレメンツの精度を磨いてきた成果だろう。精細を欠いたSPから、「集中して冷静に演技ができた」という。目標としていたステップやスピンのレベルチェックもできたと語った。FSの得点は76・79点。SPから順位を上げ、総合13位で大会を終えた。多くの大会に出場してきた馬場は、これらの経験を糧にし、9月下旬に開幕する東京選手権をはじめとする公式戦に挑んでいく。
(記事 水平櫻子、吉本朱里 写真 及川知世)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
▽シニア男子
西山真瑚
SP 2位 56・01点
FS 1位 118・92点
総合 1位 174・93点
廣田聖幸
SP 3位 46・24点
FS 6位 56・99点
総合 6位 103・23点
▽シニア女子
馬場はるあ
SP 17位 32・82点
FS 9位 76・79点
総合 13位 109・61点
コメント
▽シニア男子
西山真瑚(人通3=東京・目黒日大)
――まずは優勝おめでとうございます。今大会の演技を振り返っていかがですか
今大会に向けて調子を上げてきていたため、練習通りの技術を本番で発揮できなかったことは悔しいです。しかし過去の僕の課題であった失敗を引きずらずに演技を続け、エレメンツ一つ一つに集中するということが出来たため、自身の成長を感じられた部分もありました。
――シングル競技への出場は久しぶりでしたが、今大会の目標を教えてください
2年半ぶりのシングル競技での大会だったため、まずはシングルの大会感をしっかりと肌で感じて慣れていくこと、そして緊張感がある中でどれだけ普段通りのパフォーマンスを発揮できるかを知ることを今回の大会の目的として臨んでいました。
――順位や点数についてはどのように捉えていますか
シングルの大会での優勝はしばらくしていなかったため、優勝出来たことはとても嬉しいです。FSでは、ジャンプのミスがあったにも関わらず、芸術点の方でとても良い評価をしてもらえたことは自信になりました。
――今後の試合への意気込みをお願いします
次の大会からは公式戦になってきます。今大会で得た良い点も悪い点もしっかり見直して、より良いパフォーマンスを発揮できるように練習を重ねたいと思います。今シーズンに関してはシングルスケーター西山真瑚として認知してもらえるように頑張りたいです!
廣田聖幸(スポ2=千葉・東邦大東邦)
――今大会の目標を教えてください
げんさんサマーカップよりも点数を上げることです。
――今大会での演技を振り返っていかがですか
SPは今大会1週間前にようやく戻った3回転フリップも含め、エレメンツを全て決めることができたことがとても良かったです。でも、FSに進めるとは、しかも3位で進めるなんて全く思っていなかったです(笑)。フリーはまさか進めると思っていなくて、げんさんサマーカップのあとショートプログラムをたくさん練習していたのでただただ練習不足です。でも、演技自体の記憶がほぼなくて(笑)。ジャンプが一つも入らなかったのでとにかく酷かったです。
――げんさんサマーカップや今回の東京夏季フィギュアなどの競技会に出場されましたが、全体を通して何か収穫などはありましたか
げんさんサマーカップでは、なかなか一緒に出る機会がない西の選手と戦ったことで自分のレベルを知ることができました。あとはトップレベルのスケートを近くで見ていろいろなことを学び吸収することができたこともその後の練習に活きてきていると思います。東京夏季フィギュアでは、げんさんサマーカップからSPのジャンプの構成を上げて全部成功できたこと、SPの自己ベストを出すことができたこと、目標の50点を出すことができる兆しが見えたことがとても大きかったです。逆にFSは試合での出来は一番下のレベルまで落ちたのでここからブロックまで滑り込んで上げることだけです。ただ、FSを滑ることができたこと自体がとても大きな収穫でした。
――今後への意気込みをお願いします
これからシーズンが本格的に始まるので、まずは東京選手権に向けて、SPはジャンプの構成を上げて練習して、完成度を高めていきたいです。FSは練習から全力で滑り切る練習を積み重ねていきたいと思います。そして、ブロックで目標の点数を出せるように頑張ります!
▽シニア女子
馬場はるあ(社3=東京・駒場学園)
――今大会の目標を教えてください
緊張感に慣れることとスピンのレベルチェックです。
――SPの演技を振り返っていかがですか
あまりにも酷い演技だったなと思います。
――FSの演技を振り返っていかがですか
SPが酷かったのでFSに行けると思っていませんでした。無事ステップやスピンのレベルチェックができ、今後の課題が見つかったかなと思います。集中して冷静に演技を行うことができ、昨日のSPの演技を引きずらずに演技できたと思います。切り替えることができたと思います。
――北九州オープンやげんさんサマーカップ、今回の東京夏季フィギュアなど、多くの大会に出場されましたが、全体を通して何か収穫などは得られましたか
緊張感に慣れてきたと思います。またメンタルな面での収穫が多く得られました。たくさんの課題が試合ごとに見えてきたのでそれも収穫だと思います。
――今後の試合への意気込みをお願いします
今までの試合で得た経験や収穫をしっかりと吸収し、実践し自分の全てを公式戦で出したいと思います。充実した練習を行っていきたいです。