国体の東京予選である都民体育大会。早大からはシニア男子部門に石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)、シニア女子部門に小室笑凜(スポ3=東京・開智日本橋学園)が出場。石塚が接戦の末、優勝を飾り、残り1カ月を切った全日本選手権大会(全日本)へ、調子の良さを伺わせた。小室は「自分の思い描く演技には到底及ばなかった」と力を出しきれず。悔しい11位となった。
★石塚が僅差制し優勝!(シニア男子)
ショートプログラム(SP)で石塚は、コーチとうなずき合い、堂々とした面持ちで登場。冒頭の3回転フリップはこらえるような形になったものの、続く2回転アクセルでは安定した着氷を見せた。その後も得意のスピード感のあるスピンと雄大なステップを織り交ぜながら、最後にコンビネーションジャンプを決めてしっかりとリカバリー。演技全体をまとめ上げた。演技終了後は淡々と氷を降り、コーチに声をかけられ笑顔を見せた石塚。得点は59・91点の2位で、全日本選手権に向けまずまずの仕上がりを見せた。
SPを演じる石塚
翌日のフリースケーティング(FS)は、4番目での登場。石塚のイエローのベストは、この日も東伏見のリンクに映えていた。FS『雨に唄えば』の冒頭、3回転フリップ-3回転トウループを着氷。勢いのままアップテンポなメロディーに乗り、3回転ルッツ、2回転アクセルを立て続けに決める。こだわりのコレオシークエンスでは、手先の動かし方など細かな所作まで気を配り、 陽気な雰囲気でありながら繊細さも感じられた。演技後半、軽やかで弾むような曲調に変わると膝を手で叩く仕草や、イーグルポジションで両手を高く上げるポーズなど、洒脱(しゃだつ)な振り付けの魅力を余すことなく披露。回転不足や、連続ジャンプでの転倒がありつつも、磨かれてきた表現力、安定感のあるスピンでプログラム全体をまとめ上げた。数々の思い出を共にしてきたリンクでの最後の試合を迎え、「心から東伏見のリンクへ ありがとうという気持ち」を込めた終盤のステップでは、連なるターンをこなしながらメリハリをつけて曲の世界観を演じた。SPとの合計得点は、176・47 で2位との僅差を制し見事優勝した。次戦となる全日本選手権では、過去最高の「雨に唄えば」を披露してくれることだろう。
FSの演技を行う石塚
(記事 中村凜々子、中島美穂、写真 及川知世、田島璃子)
★小室はジャンプ決まらず11位(シニア女子)
小室のSPは『エデンの東』。曲がかかると、かがんだ姿勢から上を見上げる、幻想的な美しさを感じさせる振り付け。冒頭のコンビネーションジャンプで転倒すると、続くサルコウにもコンビネーションをつけられず0点の判定に。終盤に入ると、前半のしなやかで落ち着いた雰囲気とは一転、壮麗な音楽に合わせたダイナミックな振り付けを披露する。しかし、2回転アクセルでも両足をついてしまうなど、終始ジャンプのミスが響き、 32・93点と点数を伸ばしきれなかった。
SPの演技を終え、礼をする小室
翌日のFSは、前の選手が棄権し、女子部門の1番滑走。明るい掛け声から始まる曲に合わせ、ぐっと加速して最初のジャンプに入るが、空中で回転が解け、2回転になってしまう。その後も2回転になってしまうジャンプが相次ぎ、着氷後に首を傾げる場面も。後半は立て直し、3連続ジャンプや、序盤に失敗した3回転サルコウも綺麗に着氷。終盤のステップシークエンスでは、丁寧にエッジを踏み、音楽の特徴を捉えた雄大なスケーティングを見せた。しかし、技術点を伸ばしきれず、11位で競技を終えた。
今シーズンは、「どの試合も自分の一番悪い状態が本番で出てしまった」と本来の力を出しきれていない。ジャンプが試合でなかなかジャンプが決まらない原因について、FS後にはコーチと長時間、感覚を重視して振り返り、分析した。「沼から抜け出せていないような苦しい状態」だというが、次戦の国体へ向けては気持ちも高まっているという。地元開催の国体で、納得の演技を見せることができるか。不調からの脱却が待たれる。
FSを演じる小室
(記事 中村凜々子、及川知世 写真 田島璃子)
結果
▽選手権男子
石塚玲雄
S P 59・91点 2位
F S 116・56点 1位
総合 176・47点 1位
▽選手権女子
小室笑凜
S P 32・93点 11位
F S 66・13点 11位
総合 99・06点 11位
コメント
石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)
――全体的に、ジャンプを含め調子が良さそうでしたが、東日本選手権からの約1カ月間どのように調整されてきましたか
特に何かを大きく変えたとかではないのですが、落ち着いて練習して来られたと思います。
――東日本選手権から、得点を5点近く伸ばしての優勝となりました。得点が伸びた要因はなんだと感じましたか
やはり、FSで予定構成通りにジャンプを跳んでいけたことが大きいかなと思います。
――今回は無観客試合でしたが、プログラムにおいて表現面で意識していたことがあれば教えてください
無観客試合ですが応援して下さっている方が沢山いるので、無観客ライブみたいな意識で滑っていました。また、FSでは演技が終わったジュニア男子の後輩達がリンクに残って観てくれていたので、『雨に唄えば』の幸せな空間を伝えたいなと思って演技しました。
――東京、東日本と僅差で負けていた長谷川選手に今度は僅差で優っての1位でした。大会全体を振り返ってみていかがですか
優勝は素直に嬉しいです。いつも僅差で戦えているのはとても良い戦いができているということだと思います。でも、まだ僕も完璧ではないし、長谷川くんも完璧ではないと思うのでお互いもっと点数が伸ばせるのかな。もっと高いレベルで競り合えたらもっと良いのかなと思っています。
――東伏見での試合は最後だったのでしょうか。どのような思いで滑りましたか。東伏見での特に印象的だった試合などがあれば教えてください
おそらく最後でした。FSの最後のステップでは心から東伏見のリンクへありがとうという気持ちで滑ることができました。いつも、東伏見のリンクには見守ってもらえている気がします。たぶん、今回の試合も沢山見守ってくれていました。
東伏見で印象的だった試合は、いつだったかジュニア時代の東日本選手権です。SPで全日本ジュニア進出圏外の順位になってしまって後がないところから、危なげはあったけどFSで予定構成ほぼノーミスという演技ができて無事に全日本ジュニアにも進出できた試合です。
小室笑凜(スポ3=東京・開智日本橋学園)
――今大会の目標を教えてください
練習で飛べているジャンプの最低8割程度の質で飛ぶことを目標にしていました。
――6分間練習ではジャンプを重点的に確認しているように見受けられました。調子はいかがでしたか
悪くはなかったと思います。練習通り体は動いていたので自分の中では安心しており、イメージを確認することに徹していました。
――精神状態としては落ち着いて演技を迎えることができましたか
今シーズンの中で一番落ち着いて演技する事ができたと思います。
――演技内容を振り返ってみて、どう感じますか
残念ながら、自分の思い描く演技には到底及ばなかったです。今シーズンは、どの試合も自分の一番悪い状態が本番で出てしまい、一度は全く沼から抜け出せていないような苦しい状態かなと思います。
――演技後にコーチと長くお話されていましたが、どのような話があったのでしょう
本番でジャンプがハマらない理由を分析していました。会話の中では、コーチからの客観的視点と言うよりかは、私自身が感じた感覚に重きをおいて分析していました。
――次戦は決まっていますか。それに向けての意気込みをお願いします
1月の国体に出場予定です。今年は地元栃木開催のため、小さい頃から応援してくださっている地元の方に良いご報告ができるよう頑張りたいです。過去2年間の国体の時よりも出場にあたっての気持ちも高まっているので、良い方向に転換できるように調整したいと思います!