全日本選手権大会(全日本選手権)の出場選手が決まる東日本選手権大会(東日本選手権)。29日は男女それぞれのショートプログラム(SP)が行われた。早大からは、東京選手権大会(東京選手権)を4位で通過した川畑和愛(社2=東京・N高)がシニア女子部門に、シニア男子部門には同じく東京選手権で2位表彰台となった石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)、東京選手権はシードとなっていた島田高志郎(人通2=岡山・就実)が出場。 男子部門では島田が80点に迫る高得点をマークし1位。最後の東日本選手権となる石塚がパーソナルベスト(PB)をマークし2位につけた。女子部門では、川畑がミスがありながらも3位。全員が好位置で31日に行われるフリースケーティング(FS)を迎える。
早大勢では川畑が最初に登場。SPは『シェルブールの雨傘』。曲が始まると、リンクを大きく使い、伸びやかな滑りで一気に川畑の世界に引き込んでいく。冒頭、6分間練習で入念に確認していたコンビネーションジャンプは、3回転ルッツできれいな放物線を描くと、余裕をもってセカンドの2回転トウループを着氷する。その後、スピードのあるスケーティングの中、難しい入りから2回転アクセルを決めると流れを絶やすことなく美しいツイズルに入る。そして、コンビネーションスピンでレベル4を獲得すると、演技は得点が1・1倍になる後半へ。最後のジャンプ、前回の大会でもミスが出てしまった3回転ループは、踏み切りのタイミングが合わず1回転となりノーバリューの判定に。「ノーミスしたいという焦りが出てしまった」と背景を語った川畑であったが、芯のある力強いスケートと表現力の高さは今回の演技でも光っていた。歌詞を口ずさみながら、表情や体全体で音の緩急を捉え、最後までしっかりと滑り切った。膝をつくポーズで演技を終えると、悔しそうな様子でリンクを後にした。点数は56・55点とミスが響いて低く出たが、全体の3位という順位に。全日本選手権への切符は5枚。「もう一度気持ちを切り替えて、あとはジャンプの調子をしっかりして、ノーミスできるようにしたい」と1日空けて迎えるFSへ意気込んだ。
表現豊かに演じた川畑
シーズン初戦となった島田は昨年の全日本選手権以来10カ月ぶりの試合。今シーズンのSP『Giving Up』を初披露した。ステファン・ランビエールコーチに「これで振り付けさせてくれないか」と言われて決めた、という曲にのせて滑り出すと冒頭は4回転サルコウ。6分間練習でも決めきれずにいたジャンプは「気持ちも体もすごくふわついていた」と回転が抜け、3回転に。それでも次の3回転-3回転のコンビネーションジャンプは余裕を持って決め、出来栄え点でも+1・53の高評価。続く2つのスピンではどちらも最高評価のレベル4を獲得。高さのある3回転アクセルをわずかに堪えながら着氷した後は、長い手足を存分に生かすダイナミックな動きと、指先まで神経の行き届いた柔らかな動きの両方を併せ持つステップシークエンス。曲に合わせて情緒豊かに滑りきり、最後もレベル4のスピンで締め括ると、演技は少し首を傾げ、悔しそうな表情。78・79点という高得点での1位にも「自分のベストパフォーマンスに比べると本当に今回は20〜30パーセントくらい」と振り返った。31日のFSはジュニア時代にも滑っていた『チャップリン・メドレー』。SPでのミスをFSまでに改善できるか。思い出深いプログラムでのノーミスの演技に期待が高まる。
緩急のついた表現を見せた島田
シニア男子全体の12番滑走で登場したのはラストシーズンの東日本選手権を迎えた石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)。鮮やかな青い衣装に身を包み、SPに挑んだ。冒頭、今シーズン苦戦していた3回転フリップ-3回転トウループの連続ジャンプを着氷させて流れに乗ると、その後の2回転アクセルや3回転ルッツも大きなミスなく跳び切った。スピンやステップは、体を大きく使いながらも正確な滑りを見せ、全要素で出来栄え点での加点をマーク。要素以外のつなぎの部分でも、一つ一つの音を丁寧に拾い、こだわりの詰まったセルフコレオのプログラム『The Beatles Concerts』の世界を創り上げた。本人もノーミスと振り返る会心の演技で、「素直にうれしい」と演技後にはガッツポーズも飛び出した。「最後のステップも気持ちよくできた」と本人も語るように、伸びのある美しいスケーティングで魅了した石塚。得点は63・47点のPBで2位。3年連続SP止まりになっている全日本選手権でのFS進出という目標に向けても、勢いづく結果が出た。31日のFSで披露するのは『雨に唄えば』。「曲調に乗せて、見てる人たちにも楽しさが伝わる演技を」と演技に臨む。
晴れやかな表情で演じた石塚
(記事 及川知世、岡すなを、栗田優大、写真 及川知世)
結果
▽男子SP
島田高志郎 1位 78・79点
石塚玲雄 2位 63・47点
▽女子SP
川畑和愛 3位 56・55点
コメント
石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)
――ショートの演技を終えての率直な感想をお聞かせください
今シーズン、ショートがなかなか予定要素のとおりにできていなかったので、やっと予定している構成どおりにジャンプ含めて実施できて、とても良かったなと思いました。
――演技後にガッツポーズも見えましたが、その時の気持ちはいかがでしたか
ほんとうに素直にうれしいなという気持ちが一番大きくて、最後のステップとかも気持ちよくできたので、そういうのも含めてガッツポーズをしました。
――今までと構成を変えて、演技冒頭にコンビネーションを持ってきた意図があれば教えていただきたいです
東京選手権が冒頭でミスをしてしまって、リカバリーとして最後3-3にした形でした。今回がどちらかというと予定している構成どおりにできたということなので、やっとできたなという感じです。
――演技後のガッツポーズとは一転してキス&クライでは引き締まった表情に見えましたがその時はどういった気持ちでしたか
ショートをノーミスでできてすごくうれしいのですが、まだまだ明後日フリーが残っているので、そっちをちゃんとやり切ってからほんとうに喜びたいなと思いました。
――最後にフリーに向けての意気込みをお願いします
技とかそういう部分も含めて、しっかり練習してきたことを出し切りたいという思いが強いです。一番見て欲しいのは、演技面で『雨に唄えば』の曲調に乗せて楽しく、見ている人たちにも楽しさが伝わるように、そこを意識して演技したいです。
川畑和愛(社2=東京・N高)
※Zoom囲み取材より
――演技を終えてみて率直な感想を聞かせてください
6分間でルッツジャンプがうまくはまっていなかったので不安だったのですが、それが最初しっかり決められたのでホッとはしました。そして、最後のループでパンクしてしまったので、フリーでは絶対にしないようにしたいです。
――東京選手権の時も、ループで着地が乱れたかと思いますが、それと原因は一緒ですか
原因は違うと思うのですが、最後のジャンプでノーミスしたいという焦りが出てしまったのかなと思います。
――今後ショートというのはミスも許されないと思うのですが、ノーミスしていく上で大切だなと思うことは何ですか
練習からノーミスを常に重ねていくことが大事だと思うのですが、それを本番でしっかり出せる気持ちの持って行き方が少し今回上手くいかなかったのかなと思います。
――表現や表情が良かったなと思いますが、デヴィッド・ウィルソンさんやコーチからはどういったことを心掛けるように言われていますか
ショートはもっと感情を出すようにと言われていて、それはやっぱりジャンプの失敗に関わらずしっかり練習してきているので、本番でも出せたかなと思います。
――最後にフリーに向けて意気込みをお願いします
1日空くので、もう一度気持ちを切り替えて、あとはジャンプの調子をしっかりして、ノーミスできるようにしたいです。
――コーチの樋口豊先生と太田由希奈先生はお2人でどのように指導されていますか
由希奈先生にも樋口先生にも全体を見てもらってはいるのですが、スピンとかは由希奈先生に教わることが多いですし、表現とかは樋口先生にももっと感情を出せるように、と言われています。
島田高志郎(人通2=岡山・就実)
※Zoom囲み取材より
――初戦ということでしたが、どのような気持ちで迎えましたか
本当に数少ない試合しかこなしてきていないので、1試合1試合を大事に、絶対に悔いの残らない演技がしたいと思って臨んだのですが、1番してはいけないミス、冒頭の4回転がパンクしてしまったということで、悔いの残る演技にはなってしまいました。でも本当に自分の中で全く納得がいっていなくてもあの点数を出していただけたのは1つの収穫だなというふうには思います。
――試合は10カ月ぶりですか
そうですね、全日本選手権ぶりなので10カ月ぶりになります。
――試合に飢えている感じでしたか
そうですね、試合に飢えて、飢えて、と言う感じだったのですが、まずこうしてやっと日本に帰ってこられて、試合ができたということ自体がすごく嬉しいです。その中で、良い準備をしてこられたので、もっと良い演技を自分の頭の中では思い描いていたのですが、それができなかったのがどうしても悔しいです。
――ジャンプがパンクして3回転になってしまった要因としてはどのように考えていますか
6分間練習の時から気持ちも体もすごくふわついていて、いつもの自分じゃないような感じで、それが良い方向だったら良かったのですが、悪い方向に豹変してしまっているな、と思ったので、それをどうしても引きずってしまったかたちになります。あと、その浮わついた中で起こるミスというのが、技術的な面でもあったので、そこをフリーに向けて改善していきたいなと思います。
――ジャンプはミスがありましたが、今回のSPで良かった点、次につながる点はどういったところですか
最初にミスをしてしまった後を、まあまとめることができたというのは良い点だったなというふうには思います。それでも練習でできていた自分のベストパフォーマンスに比べると本当に今回は20〜30パーセントくらいだと思っているので、今度はもっと良い演技ができるように、本当に今はそれしか頭の中では思い描いていないです。
――ショートプログラムは大人の曲、といった感じでしたが、何からインスパイアされたのでしょう
この曲に決めた理由には、曲自体がすごく素敵なものだな、ということと、大人びた愛情の表現というものを(2016-17シーズンの)『ロミオとジュリエット』以来あまりやっていなかったかな、と思ったということがあります。また、ステファンコーチ(ステファン・ランビエールコーチ)に、単純に曲が良いからこれで振り付けさせてくれないか、というふうに言っていただけたので、それも原因だったのですが、今はこのプログラムがすごく大好きになっています。
――フリーに向けての意気込みをお願いします
今回のフリーはジュニア時代に滑っていた『チャップリン・メドレー』ということで、自分の中でもすごく思い出深いプログラムですし、それのハタチバージョンというか、とにかくまずは自分自身が楽しんで、画面の向こうにいるスケートファンの方々に、少しでも成長したな、と思っていただけるような演技がしたいなと思います。
――今日は本田武史先生が付いてらっしゃいましたが、本田先生にはどのような経緯でお願いしたのでしょうか
今回は本田武史さんに指導していただいているのですが、それは自分自身が日本に帰った時に、今回のようにコーチがどうしても日本に来られないこともあって、日本で誰にお願いするか、となったときに、本田武史さんにお願いしてみたいな、というか習ってみたいな、という気持ちがまずは一番最初にありました。そこから少しずつ練習を見ていただいて、今回の大会を迎えたという感じです。日々の練習では、ステファンコーチだったり、今シャンペリーには3人のコーチがいらっしゃるのですが、全員からほぼ毎日連絡が来て、2週間の隔離生活、練習とホテルの行き来だけはスポーツ省さんにお願いして行けるようなっていたのですが、それの励ましだったり、あたたかいメッセージはいただいていました。
――本田先生に習ってみたいと思ったのは、どういったところからなのでしょうか
もちろんまずは人柄がすごく魅力的だなと思っていたのと、やっぱりジャンプなどの技術面であったりもそうですし、ステファンコーチに相談した際にお名前が上がっていたのも本田武史さんでした。本当にたくさん相談して、自分のいつものコーチと違った形で迎えるのは誰がいいかということを悩みに悩んだ結果、本田武史さんにお願いしたいという気持ちがさらに強まりました。
――今後はスイスに戻るのですか
東日本選手権が終わったら、次にチャレンジャーシリーズのワルシャワカップに向けて一時スイスに戻り、チャレンジャーシリーズに出て、全日本選手権の2週間ちょっと前に日本に帰ってきて、隔離をまた行う、という形です。
――ワルシャワはステファンコーチと一緒に行けそうですか
宇野昌磨君のグランプリファイナルだったり、未確定の要素がすごく多いので、おそらくアンジェロさんというチームシャンペリーのコーチの一人についてきていただく予定です。