対談のラストは今年フィギュア部門の主将に就任した石塚玲雄(スポ4=東京・駒場学園)。今年こそ全日本フリー進出へーーー「集大成」と語る今シーズンへの抱負、そして主将としてのチームへの思いと卒業後について伺った。
※この取材は6月23日に行われたものです。
「やっと馴染んできた感じ」
――緊急事態宣言下の時期を含め、ここ数ヶ月の練習状況を教えてください
緊急事態宣言が出ていた時期の前半は、東京都のリンクが閉鎖していたので氷上練習ができなくて、主に陸上でトレーニングをしていました。たぶん部員の大半が同じ状況だった と思います。緊急事態宣言下の後半はリンクが再開して、今は氷上練習ができています。部員の多くが同じような状態で、氷上練習が再開できて、やっと少しずつ調子を上げてこれているかなという状況です。
――氷上練習ができなかった時期、陸上ではどのようなトレーニングをされていましたか
陸上練習では、体幹トレーニングや、振付の練習をしていました。あと自分の場合は、インラインスケートを少しやっていました。
――SNSでもインラインスケートの様子を投稿していらっしゃいますね。昨年の夏の対談取材の際もインラインスケートのお話を伺いましたが、やはり陸上練習として効果的なのでしょうか
そうですね、かなり感覚が似ているので。氷上で滑れない間もインラインスケートをやることによってだいぶ感覚は失わずに済んだかなっていう感じです。
――インラインスケートならではの難しさや楽しさはどのようなところでしょうか
難しさは、氷と違って横方向にスライドができないのでストップするときに怖い、というかやりづらいというところです。逆に、おもしろいのは外の風を感じながら開放的な場所で滑れるところです。
――SNSで披露していらっしゃったインラインスケートでのジャンプなどはどれくらい練習したら跳べるようになるのでしょうか
1週間くらいでそこそこのジャンプは跳べるようになりました。普段氷上でフィギュアスケートをやっている人なら結構短い期間でできるのではないのかなと思います。
――続いて大学生活についてお聞きします。4年生に進級して2ヶ月近くが経ち、残りの大学生活も少なくなってきましたが、今どのように感じていらっしゃいますか
そうですね、去年は4年生が4人もいらっしゃってすごく心強かったので、その4人が抜けてしまったとき、最初はどうしようかと思ったのですが、だいぶ今の感じに慣れてきました。僕の同期はもう1人、佐々木風珠ちゃん(政経4=東京・早実)がいます。その2人だけなんですけど、主将とか副主将とか関係なく協力してやっていこうという話をしています。それに下級生の部員たちもついてきてくれているので、やっと馴染んできた感じがあります。
――ワセダオンアイスのグループナンバーでも石塚選手と佐々木選手がお二人で滑るシーンから仲の良さや信頼関係が伝わってきました
ありがとうございます(笑)。
――大学での授業について伺います。現在、授業はオンラインと対面どちらが中心ですか
僕は4年生なので、主にゼミと1、2個の授業のみをとっています。その1、2個の授業はオンラインでやっていて、ゼミは対面です。ゼミだけ週に1回対面でやっているという感じです。
――ゼミではどのようなことをされているのですか
僕が入っているゼミはコンディショニング関係のゼミなので、怪我から復帰するときのプログラム作成だったりとか、どうしたら怪我が防げるかとかそういった内容を4年生になっても引き続き学んでいます。
――学んでいる内容は、やはりフィギュアスケートに生かされる部分が大きいのでしょうか
そうですね、同じゼミのメンバーの中にもいろんなスポーツの経験者がいるので、競技が違ってもスケートに繋がることとかもありますし、意外とこんなところがスケートに繋がるんだっていう新たな発見とかも多いので結構ためになります。
――卒論の内容をお話しできる範囲で教えてください
まだそんなに作業が進んでいるわけではないのですが、主に卒論でやろうとしている内容はインソール型の足底板という体重のかかり方を計測する装置を使うものです。今回はインラインフィギュアを活用して、インラインフィギュアスケートでどういった体重のかかり方がされたときに一番いいジャンプが跳べているのかっていうのを研究しようかなと思っています。
「気持ちがより引き締まった」
質問に答える石塚
――チームの状況はいかがですか
去年もそうだったのですが、部員全体の人数が多くなり、にぎやかになって、まとまりも出てきた一方で、普段海外で練習している人たちもいるので、そういった海外組となるべく部員たちの距離が離れないように、四年生も含めて一丸となろうという話をしています。早稲田は前からそうでしたけど、いろんなバックグラウンドを持っている選手が集まっていて、アイスダンスをやっている人、シンクロをやっている人、ぼくたちシングルも含めていろんな経験を持った選手がいるので、そういったたくさんの選手がいるからこそ、みんなの良さを含めて、そういったスケートの要素を共有できる環境だと思うので。スケートを好きな人が集まっていることもあって、新1年生もすごく雰囲気に溶け込んでくれていますし、ワセダオンアイスを去年やったことによって、映像とか見てくれてたみたいで、こういった楽しさもあるんだよと部員に伝わっているので、本当にコミュニケーションが取りやすいです。新体制になってから1回zoomの集まりをやったのですが、そういう感じでコロナ禍であっても部員でなるべく集まれる機会を作ろうということで、みんなの気持ちをひとつにまとめるということができているのかなと思います。コロナ禍ですごく大変な部分があるのですが、部員のみんなが協力的なのですごくいい関係性で練習、学校生活を含めて送れているのかなと思います。
――スケートや授業に関して個人的に連絡は取ったりしているのですか
同じスポーツ科学部の後輩の廣田(聖幸、スポ1=千葉・東邦大東邦)くんだったり、2年生の西浦穂香(スポ2=東京・都立墨田川)ちゃんは少し連絡は取ったりはしたんですけど、他学部の人たちは僕もアドバイスできないので、授業のことに関してはあまり連絡はとっていないです。ですがジャージの連絡や部練の貸切の連絡とかは僕が積極的にみんなにしているので、なるべくそういったところでコミュニケーションを欠かさないことを大事にしています。
――前年度永井優香主将(令3社卒)から受け継いだものはありますか
はい、あります。永井主将はみんなに寄り添う主将になりたいとおっしゃっていて、実際みんな寄り添う主将だったと思います。自分も寄り添う主将になりたいと思いましたし、同じく同期の(佐々木)楓珠も同じ思いでいるので、今回同期が2人だけなので、主将、副主将と名前だけはどうしても分かれてしまうんですけど、あんまりそういう役職にとらわれずに、みんなで後輩に寄り添えるそういう存在でいたいねという話をして新体制を迎えました。やっぱり永井主将みたいにみんなから目標にされる存在でありつつ、立場とかレベルとか関係なくみんなと寄り添って、楽しくスケートする時間を共有したいなと思います。
――石塚選手なりにチームをまとめる方法はありますか
そうですね、やっぱりチームをまとめるというか、コミュニケーションが大事だと思うので、どんな形であっても会話を欠かさないということが大事だと思っています。あとやっぱり、良いものは良いと伝えてあげることが大事だと思っています。永井主将もそうだったんですけど、良いジャンプを後輩が飛べていたら、今のジャンプ良かったよとかそのような感じで些細なことを褒めてあげることで自信もつきますし、大事だと思うので、そういうふうに部活内の雰囲気、士気を高めるというのは良いことだなと思っています。
――最高学年になられて、心境の変化はありますか
やっぱり、自分が1番上の学年になったので覚悟というか気持ちがシャキッとする部分もありますし、逆にいうと部活内にいる人たちが同期以外後輩なのでしっかりしたいなという強い思いもあります。4年生になったことで気持ちがより引き締まった感じがします。
――フィギュアスケート部門の盛り上げ役はどなたですか
そうですね。盛り上げ役は、今の3年生だったら、正村瞭子(文構3=東京・早実)ちゃんが面白いこと言って盛り上げてくれたり、今の2年生だったら岡島右京(商2=東京・早大学院)くんが色々面白いネタだったり、ワセダオンアイスのインスタの個人紹介でも本田武史さんのモノマネで笑わせてくれましたけど、普段から面白いことをやってくれるので、そういった感じで場を盛り上げてくれています。
――ワセダオンアイスは今年も開催する予定ですか
絶対やりたいなと思っていて、去年すごく良かったということもあるんですけど、新1年生にこのワセダオンアイスを経験させてあげたいというのが大きいです。やっぱり、今年の新1年生もワセダオンアイスをみてこういうことやりたいと思って入ってきたくれた子もいると思うので、そういった思いもある子にそういった経験させてあげたいなという気持ちです。
――どんなフィギュアスケート部門にしていきたいですか。全体的な目標があればお願いします
まず、スケートが好きな人が集まっているので、そのスケートが好きな気持ちをもっともっと大きくしてもらいたいなというのが1番です。それに加えて先ほども言ったようにさまざまなバックグラウンドを持った選手が集まっているので部練とかワセダオンアイスとかその他含めていろんな機会があると思うので、その機会の中でいろんなものを部員のメンバーの中から吸収して、今新入生で入った後輩たちも含め、後輩たちもこれからどんどん色んなものを吸収して、技術的な面でも成長してほしいと思っています。スケートは感性が生きる競技だと思うので、どんどんそういった感性も含めてこの部活を経験することで高めてほしいなという気持ちでいます。
集大成のシーズン
――個人の競技についてお聞きします。昨シーズンはコロナウイルスの関係で試合が多く中止になり、変則的なシーズンでしたが、全体的に振り返っていかがですか
練習は頑張れていたと思っていて、特に夏に向けて調子は上げてくることができていました。ですが、やはり試合数が少なかったことが残念だった部分もあります。やはりコロナ禍なので仕方がない部分もあるのですが、僕は試合数をこなして自信をつけていくタイプだったので、去年は試合数が少なく、自信を持ちきれないまま全日本に行ってしまいました。それによって1番大事な全日本で精神的な面で不安な部分が演技に現れてしまったのかなと思っているので、今年はもう少し試合数ができるといいなと思います。
――氷上練習ができない期間も長かったと思いますが練習量や濃度といった面では満足できる内容はできていたのですか
昨年はやはり自粛期間が今年よりも長く、2カ月くらいは氷上から離れていて、そういった経験も初めてだったので、氷上に復帰してからの2カ月半は体力面でも技術面でもきつく、戻すのに苦労しました。大変だった部分もあるのですが、法政大学の1つ上の先輩の小林健斗選手がいつも僕の見本となり、一歩先の目標とすべき行動をとってくれていました。それを見ながら僕も練習することができて、こういうふうに練習すればこのような辛い状況の中でも打破していけるのだなということがわかったので、そういう先輩がいてくれたからこそ乗り越えることができたのかなと思っています。
――現在の練習は順調ですか
はい。順調にできています。
――今シーズンのプログラムについて、お話できる範囲でお聞かせください
今シーズンは集大成ということもあり、ショートプログラムもフリースケーティングも新しくしました。ショートは、ビートルズメドレーのオーケストラバージョンで滑ります。後半にかけて盛り上がっていくステップの部分や、足をタップする部分を自分でもすごくこだわって振り付けにいれたので、そこを注目してほしいです。
――セルフコレオですか
はい。ショートはセルフコレオです。
――フリーについても伺ってもよろしいですか
フリーの振り付けは服部瑛貴先生ですが、僕も少し振り付けに関わりました。こういう振りを入れたいなどを一緒に考えさせていただいたので、一緒に作ったプログラムです。曲名はミュージカルの『雨に唄えば』です。以前ミュージカルを実際見に行ったこともあるのですが、すごく明るい曲で、僕自身が引退シーズンだからといって必ずしもそれほど悲しい曲で滑らなくてもいいよな、と思っていて、最後は明るく終わりたいという気持ちがあったので、スケートの楽しさや明るいオーラを出していきたいと思ってこの曲を選びました。全体的に見どころはたくさんありますが、明るい雰囲気や、スケートが楽しい気持ちを受け取ってもらえればなと思います。
――卒業後は競技を続けないのですか
現役としては続けませんが、やはりスケートがすごく好きなので、スケートに携わる職に就きたいと思っています。これからもスケートには貢献したいと思っているので、現役は引退するのですが、なんらかの形でスケートに携わっていきたいとは考えています。
――就職活動をしているのですか
一般企業への就職活動はしていないのですが、今はいろんな方の協力を得てスケート界の中で色々話をさせていただいています。まだ全然決まっていないのですが、スケート界の中で自分がどういった貢献ができるのかなといったところをいろんな方と話をさせていただいているので、今後スケート界の中で自分が力を発揮できる場を探して行けたらなと思っています。
――人前で滑る機会はありそうですか
それも結構考えています。今コロナ禍で厳しい部分はあるりますが、元からアイスショーを見るのも、アイスショーで活躍されている方と話すのも好きなので、すごく興味があります。やはり人に演技を見てもらうという意味ではすごくいい場だと思うので、もし実現したら皆さんにたくさん見ていただきたいなと思います。
――トリプルアクセルについて伺ってもよろしいですか
今まさに練習しているところです。もとから自分は一気にジャンプが跳べるようになるタイプではなかったので、未だにコツコツと練習している感じになるのですが、でもちゃんと地道ですけどよくはなっていて最近は回転もちゃんと回るようになっています。すぐに試合で使えるかといったことはわからないのですが、明らかに去年よりはいい状態になっていて、だいぶバランスも軸も取れてきて、回転も回るようになってきています。焦ることはないと思っていますが、引退するまでには試合で使えるようなジャンプにしたいなと思って今も練習しています。
――今シーズンの競技面での目標を教えてください
試合で結果を残すのはもちろんなのですが、そのためには練習が1番大事だと思っているので、練習から、部活内や同じリンクの後輩など、沢山の後輩の見本、目標となる存在で居たいと思って練習をしています。そういった気持ちで練習することがモチベーションにもなっています。目標、尊敬する存在になれているか、というのは後輩が判断することなので自分では分からない部分もあるのですが、やはり1番自分が今最年長の立場として、自分が取る行動であったり、自分の練習内容であったりは必ず後輩たちは見ているので、そうやって見てくれている時に自分がどのような練習をするかというのが大事だと思っています。そういった面で練習からみんなの手本となるような練習をして、それが試合に生かされればいいかなと思っています。まずは練習からそういった姿勢でやっていきたいです。
――引退までに成し遂げたいことはありますか
トリプルアクセルが1番なのと、まだまだできない技がジャンプに限らずスピンやステップでも多いので、少しでも多くの技をできるようにしたいという気持ちです。具体的にこの技、と決まっているわけではないのですが、やってみたいなと思ったものをとにかく楽しみながら練習して、それが引退までの間に1つでも多くできるようになれば嬉しいかなと思っています。
――引退前に1番目標とする大会はやはり全日本選手権ですか
そうですね、全日本は3年連続でショートで終わってしまっているので、今年こそはフリーを滑りたいです。せっかく明るいプログラムで締め括るという意味でフリーに『雨に唄えば』を選び、それを滑らずに終わってしまうのは悲しいので、今年こそは『雨に唄えば』を滑って終われるように、そこを目標にかなりしっかりやっていきたいと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 岡すなを、中島美穂、及川知世)
◆石塚玲雄(いしづか・れお)
1999(平11)年11月14日生まれ。東京・駒場学園出身。スポーツ科学部4年。後輩たちの手本になるように、という言葉を多く口にしていた石塚選手。取材から、チームメイトや後輩に対しての思いが強く感じられました。ラストイヤーでも明るい演技に期待です!