女子SP 川畑、最後の全日本永井ともにFSへの進出を決めた

フィギュアスケート

 全日本学生選手権及びその代替大会の中止も決まり、早くも今季の締めくくりともなりそうな全日本選手権(全日本)。女子は今回を最後の全日本としている永井優香(社4=東京・駒場学園)、昨年3位だった川畑和愛(社1=沖縄・N高)が出場した。初日に行われたショートプログラム(SP)では、いずれも不安だったジャンプをまとめ、予選の東日本選手権(東日本)から得点を伸ばす。フリースケーティング(FS)への進出へのボーダーラインが、昨年から4点近くも上がるというハイレベルな大会となったが両者とも2日後に駒を進めた。

 

全てのジャンプを着氷。FSへの進出を決めた永井

 先に登場したのは今年の東京選手権優勝者でありながら、東日本選手権では振るわない成績となってしまった永井。全日本初出場は高校1年生だった2014年。奇しくも今大会と同じビッグハットで開催されたその大会で永井は4位に入った。それから6年。7回目の出場となる今大会を、最後の全日本と決めて臨んでいる。先月の東日本選手権ではSPでジャンプにミスが出て出遅れており、今回についても「少しジャンプに不安なところはあった」という。しかし「本当に最後なので出来なかったらどうしようとかそういうことは考えずにただただスケートを楽しもう」(永井)。思うような結果が得られなかったような過去の大会で見せていた不安げな表情とは異なり、最後と決めた選手がまとう特有の晴れやかさを、心なしか漂わせながら滑り出した。 最初の要素である3回転トーループ+3回転トーループを軽やかに決め笑顔を見せる。次の3回転ルッツも少し慎重さはあったが、持ち味のふんわりとしたジャンプに。フライングキャメルスピン、レイバックスピンとずっと入れて続けてきた要素も安定した質で披露。最後のジャンプである2回転アクセルを決め、その勢いのままステップシークエンスへ。つなぎの部分で両足が触れてしまったり、ステップのスパイラルで足をアラベスクに上げるのが若干詰まるなど細かいミスはあった。しかし曲名の『I belong to me』に違わず、永井らしい、伸びやかで大きな滑りで最後まで魅した。歓声をあげられない、満席でない会場ではあるが、観客の精一杯の拍手とスタンディングオベーションに讃えられ、自身も「グッときた」という。 演技後、SPの良かったところを聞かれ「めちゃくちゃ低レベルではあるんですけど、不安な中でジャンプ3本しめたので、自分の中ではよかった」と答えた永井。不安要素を決めきったおかげで、その後も曲にきちんと合わせて質の高い演技ができた。「たくさんの方が応援してくれてたんだなということを改めて実感することができて幸せだな」というファンへの思いと、「苦しいこととか時期は違ったかもしれないけど、いろんなことがありながらも最後まで一緒に頑張ってこられた」という仲間への思いも胸に、FSでは「その時思うことを出せれば」と心を躍らせた。

 

持ち味のスケーティングが光る川畑

 昨年の全日本で3位表彰台に上がったため、シード選手として出場している川畑は最終滑走。プレッシャーも大きいトリを務めることになったことを、「ここでちゃんと滑り切れたらより自分が強くなれるかなと思って頑張りました」とプラスに捉えて臨んだ。 『黄昏のワルツ』のヴァイオリンの美しい旋律にのせて、歌うように滑り出した川畑。冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループは、1つ目のルッツで高さ61センチと非常に質の高いジャンプに。演技前に「コンビネーションジャンプの回転不足が結構気にかかっていた 」と不安を口にしていた要素を、「自分の1番良いもの」という出来で跳んでみせた。次の3回転ループは「少し軸が外れてしまって」着氷でバランスを崩しランディングが流れず。それでも武器である高いスケート技術ですぐにトップスピードに戻り、流れるような舞を見せる。フライングキャメルスピンでは腕の動きで静かなしらべをそのまま表現すると、ピアノのソロとなり少し強い曲調に変化したあとのレイバックスピンでは、鋭い回転速度を保ちながらビールマンの姿勢までスムーズに移行し最高評価のレベル4を獲得した。後半、直近の大会ではレベル2の評価が続き課題でもあったステップシークエンスで、丁寧なエッジワークでエレガントに魅せる。そのままの流れのままアラベスク・スパイラルから2回転アクセルを+2の評価が並ぶ素晴らしい出来で決めると、最後はチェンジコンビネーションスピンへ。レベルは取りこぼしたものの、足替え後も安定した回転速度で回り最後はY字姿勢で加速し演技を締めくくった。 今季はジャンプの回転不足などに苦しみ、思うような演技ができていなかった川畑。前回はジュニアからの出場ながら有力選手を抑えて表彰台に上がったことで「どこかにプレッシャーというのが自分でも気づかないうちに感じていた部分」があったという。しかしその経験もふまえ、「自分を出し切りたいというポジティブな気持ち」で今回は思いきり滑り、シーズンベストを約5点更新。不安だったジャンプも、着氷が乱れたループも含め高さのある回転が充足したものを見せ、調子の良さが伺える。昨年128.43点という高得点を叩き出したときと同じプログラムを滑る明後日は、自己ベスト更新を狙い「自分を信じて頑張ります」と意気込んだ。

(記事 青柳香穂、写真 アフロ/JSF)

結果

▽全日本選手権女子SP

川畑和愛 9位 64.56点 永井優香 18位 58.99点

コメント

永井優香(社4=東京・駒場学園)※Zoomでの囲み取材より抜粋

 

――まずはこの全日本選手権、昨日抽選が終わって今日どのような気持ちで迎えられましたか

 

少しジャンプに不安なところはあったんですけど、でも本当に最後なので出来なかったらどうしようとかそういうことは考えずにただただスケートを楽しもうということをずっと考えていました。

 

――演技が終わった後、涙ぐんでいるように見えたのですが終わった後の感情というものはどうでしたか

 

終わった直後はとりあえずジャンプ回れたということにホッとしていたんですけど、観客の皆さんが、立ち会ってくださってるお客様がいらしたのでそれをみてグッときましたね。

 

――グッときたということを紐解いていただくとどのような感じですか

 

顔とかはわからないけれども、たくさんの方が応援してくれてたんだなということを改めて実感することができて幸せだなというふうに思いました。

 

――今日のショートプログラムご自身の演技でここが良かったなというところを教えてください

 

めちゃくちゃ低レベルではあるんですけど、不安な中でジャンプ三本しめたので、自分の中ではよかったかなというふうに思っています。

 

――明日のフリーにむけてご自身でこういうことを表現したいなど意気込みがあれば教えてください

 

フリー滑れるかはわからないんですけど(インタビュー時点)、もし滑れたとしたら、その時感じていることをそのまま表現できればなというふうに思っています。あんまり難しいこと、これをこうしようとかいうふうに考えるのではなくて、滑り始めたら色んなことを考えると思うのでその時思うことを出せればなと思います。

 

――悔いなくということですか

 

悔いなくということもそうですし、この場で滑らせていただけるのは、本当にたくさんの、なんというんだろう。この試合を開催するのは大変だったと思うんですけど、それにむけてご尽力してくださった方々がいたから滑れますし、今私がスケーターとして滑れるのは本当にたくさんの方々が今まで14、5年支えてくださった方がいるからなので、そういった感謝みたいなものも感じながら滑ることができればなと思います。

 

――先ほど住吉りをんさんが優香さんの演技を見て感極まっていたようなのですが、そういう後輩たちと一緒のこの場に立てたということと、あと仲間たちについてどのような思いがあるか具体的に教えていただけますか

 

そうですね、まずはりをんちゃんをはじめ、たくさんの後輩たちが、もしいつの日かの自分をみて憧れてくれてたりしたらそんなに嬉しいことはないなというふうに思いますし、同期とかも苦しいこととか時期は違ったかもしれないけど、いろんなことがありながらも最後まで一緒に頑張ってこられたので、1人としてかけていたら自分はここにいられなかったんじゃないかなと思います。

 

――今年はインカレがないということですけど、大学生として、早稲田の学生としてこの場に出てるということの大学への思いや感じていることはありますか

 

そうですね、さっきコールされたときに大学の名前呼ばれて、大学を背負って出させてもらえていること、4年間出れたことをすごく嬉しく思いました。

 

川畑和愛(社1=沖縄・N高)※24日の公式練習後、Zoomでの囲み取材より抜粋

 

――公式練習で滑ってみてご自身の感触、感覚を教えてください

 

すごい感覚は良くて、ジャンプが浮くような感じもあって、いい練習ができたと思 います。

 

――同じリンクで、紀平選手だったり宮原選手だったり海外組が一緒に練習してました。リンクの雰囲気はいかがでしたか

 

一緒に練習したこともある選手なのでそこはあまり気にはならなかったんですけど、集中したいい雰囲気の練習だったと思います。

 

――NHK 杯から 3 週間ちょっとくらいで全日本を迎えましたが、その間どのようなことをメインに練習してきましたか

 

NHK 杯が終わってジャンプにはまだ少し不安が残っていたんですけど、この全日本までには自信をつけてこられたと思います。

 

――具体的にはどのジャンプが

 

コンビネーションジャンプの回転不足とかが結構気にかかっていたんですけど、 クリーンに跳べるジャンプも増えてきて、曲でもしっかり跳べるようになったので自信 を持って跳んでいきたいです。

 

――全日本でのご自身の目標や意気込みを教えてください

 

目標はショートとフリーの自己ベストを更新することで、本番で自分ができること を出し切りたいです。

 

※以下SP演技後、Zoomでの囲み取材より抜粋

――まずはショートプログラム滑り終えて感想をお願いします

 

抽選で最終滑走を引いた時は、すごくドキッとしたんですけど、緊張しすぎることもなく、最初のコンビネーションを決めれて、ループでは少しステップアウトしてしまったんですけど、思いっきり滑れたかなと思います。

 

――抽選で30番を引いた時はどのような思いでしたか

 

抽選の札が並べてあって自分で指さす方法だったので、残ってる中で真ん中にあるやつを選ぼうとずっと思っていて、そしたらそれが30番だったので、ここでちゃんと滑り切れたらより自分が強くなれるかなと思って頑張りました。

 

――実際今回ショートプログラムを滑ってみてご自身で手応えを掴んだりここがよかったなというところを教えてください

 

やっぱり30番という最終滑走の中で、最初のコンビネーションジャンプをしっかり自分の1番良いものをできたことが自信になりました。

 

――明後日のフリーに向けて何か課題は出てきましたか

 

ループでは少し軸が外れてしまって、そういったところの自分の、風の上にのって飛び上がることを調整して、もうちょっとスケートが滑るように、しっかり氷を感じて練習したいです。

 

――今シーズン試合で上手く噛み合わなかったり苦しいなという局面もいろんな意味であったと思いますがそこで自分を支えたものはどのようなものだったでしょうか

 

去年の全日本が3位で、それがあんまり自分では過去のことなので、全然違う良い自分を今シーズンは出していこうと思っていたんですけど、やっぱりどこかにプレッシャーというのが自分でも気づかないうちに感じていた部分があって、それで試合でもやらなきゃいけないと思ってしまって緊張してしまうことがわかったので、それはちゃんと自覚して、今シーズン、自粛明けから結構自分の中ではジャンプの調子を戻したりするのが大変だったんですけど、しっかり練習してきたのでその自分を出し切りたいというポジティブな気持ちで滑ろうと思って頑張ってきました。

 

――この全日本ではそういうプレッシャーをあまり感じずに自分のスケートができているという感じがありますか

 

えっと、全くないと言ったら嘘になってしまうと思うんですけど、自分ができることは決まっているので私は私という気持ちで頑張ります。

 

――練習はとてもよくできていると思うんですけど練習でできていることが出せればという確信というか自分への信頼みたいなものはフリーに向けてありますか

 

調子は結構上がってきていて、この大会に向けてしっかり調整してこれて、曲かけでももしっかりノーミスできるようになったので自分を信じて頑張ります。