試合後に行われた表彰式。中京大、関大に続いて呼ばれたのは、『早稲田大学』だった。日本学生氷上競技選手権(インカレ)女子Aクラスが閉幕。中塩美悠(人通2=広島・ノートルダム清心)と松嶋那奈(スポ3=東京・駒場学園)が早大として11年ぶりのW入賞、8年ぶりの団体表彰台入りを成し遂げた。
混戦の最終グループ、エンジのジャージーをまとった二人がリンクに向かった。6分間練習を終え、まずは中塩が登場。冒頭のコンビネーションジャンプは決めたが、苦手のフリップは転倒に終わる。しかし、インカレというこの舞台、リンクサイドには仲間たちがいた。声援を背に立ち上がると、朝の公式練習では抜ける場面が目立ったトリプルループを着氷。笑顔いっぱいに、中塩らしさ全開のステップシークエンスが始まった。後半はサルコーからのコンビネーションでミスが出たが、最後まで駆け抜け得点は100点超え。初めてのインカレで5位入賞を果たした。「インカレに出たいからです」。春、西日本を拠点としながら早大のスケート部に入部した理由を問うと、中塩はシンプルに、きっぱりとこう答えた。1年越しにかなえた一つの夢。結果以上の喜びが、そこにはあった。
初めてのインカレを楽しんで滑り終えた中塩
3日間に渡って行われたフィギュア部門の戦いを締めくくったのは、最終滑走の松嶋だ。今や東日本を背負う存在となった松嶋の4分間が、幕を開けた。まずは、トリプルトーループ―トリプルトーループを当然のように降りる。続くループはダブルになったが、ステップやコレオでは、全日本選手権(全日本)でつかんだ自信を胸に貫録をも感じさせるスケーティングを披露。勢いに乗りたい後半はサルコーが回転不足、3連続の3つ目がステップアウトとなり、演技後は悔しい表情を見せた。それでもジャンプ以外の要素は確実にこなし、フリーでも全日本を超える得点をマーク。総合153.08点は自己ベスト、そして昨季のインカレの得点を約28点も上回った。11位に沈んだ失意のインカレから1年。復活した早大のエースが、大舞台のラストを飾るにふさわしいスケーターであることを証明してみせた。
1年前のリベンジを果たした松嶋
早大スケート部フィギュア部門は決して大規模な部ではないが、チームであることに変わりはない。ノーミスの演技を見せた安藤美裕(教1=東京・早実)、有終の美を飾った礎良輔主将(基理4=東京・早大学院)を含む早大メンバーは最後まで二人を見守り、それに応えたWエースが光をもたらした。そして、この日リンクサイドで松嶋の演技を見届けた親友の鈴木美桜(慶大)をはじめ、東日本には来年松嶋と共に大学ラストイヤーを迎える選手が多くいる。大学の垣根なく共に戦い、『打倒・西』へ――。その東を引っ張るのは、もちろんエンジのスケーターたちだ。
(記事 川浪康太郎、写真 藤岡小雪、杉山睦美)
表彰式では並んで笑顔を浮かべた
結果
▽女子Aクラス
中塩美悠 5位 153.27点(FS 6位 100.30点)
松嶋那奈 6位 153.08点(FS 8位 96.71点)
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コメント
松嶋那奈(スポ3=東京・駒場学園)
――今大会は最終滑走でしたが、いかがでしたか
最終滑走は独特の雰囲気がありますね。落ち着いてはいたのですが、体が動いていないかなという印象があり、あまりいい演技ができなくて悔しいです。
――朝の練習でサルコーやループの調子がよくなかったように見えたのですが、どのような感触がありましたか
もともと来る前から調子が悪かったので、まあそんなものかな…と思いました。
――本番では
今まで調子が悪くてその結果こうなってしまい、ダブルになってしまったジャンプもあり悔しいですが、その割にはまとめて終わることができてよかったです。
――スピンやステップについてはいかがでしたか
ジャンプの調子が悪いので、スピンやステップで点を稼ごうと思いました。落ち着いてやることができたので、良かったです。
――結果についてはどのように考えていらっしゃいますか
順位は落としてしまったのですが、収穫はあったので、次の試合に向けて頑張れたらいいなと思います。
――次の試合は国民体育大会(国体)ですが、国体に向けて意気込みをお願い致します
国体は1人ではなく普段一緒にやっている慶大の子とペアでやるので、 2人で力を合わせて表彰台の3位以内に入れたら良いなと思っています。(国体まで)3週間あるので、その間ミスを防げるようにみっちり練習していきたいです。
中塩美悠(人通2=広島・ノートルダム清心)
――インカレ(日本学生氷上競技選手権)を終えた今の心境はいかがですか
全日本(全日本選手権)が終わってから、一回もフリーを通して練習していなかったので、体力がもつか心配でした。いざかけたら大丈夫かなと思ったのですが、案の定体力がなくて最後のジャンプを失敗したのが悔しかったです。
――朝の公式練習ではジャンプのミスも目立ちましたが、感触はいかがでしたか
朝はきのうの疲れが全然取れていなくて、すごく体が重かったです。本番は朝よりはよかったかなと思うのですが、そういうところも、体調管理というか疲れの取り方を考えないといけないなと思いました。
――スピン、ステップの部分はいかがでしたか
そんなに緊張しなかったのですが、スピンとかも集中して数えるようなことができなかったので、レベル見てみないと分かりませんがちょっと不安です。
――ケガの具合はいかがですか
ケガは完全には治っていないのですが、だいぶよくなってきたし、痛みにも慣れてきました。
――きのうのショートプログラムは楽しく滑れたということでしたが、フリーも楽しく滑ることができましたか
フリーも楽しくて、やっぱりワセダの人たちが並んでいるのを見たら心強かったし、楽しかったです。
――松嶋那奈選手(スポ3=東京・駒場学園)も同じグループでしたが、演技をご覧になっていかがでしたか
二十歳になって体力も落ちたし、毎日毎日同じジャンプが跳べるわけでもないのに、那奈ちゃんは私よりも年上で、それなのに3-3もキープしてショートはノーミスして、女子選手で3年生なのにすごいなと思います。
――次戦の国民体育大会(国体)に向けた意気込みをお聞かせください
国体がシーズンの最後なので、ここまで頑張ってきて体はボロボロなんですけど、最後の力を振り絞って練習して、頑張りたいと思います。