神奈川県を拠点とするスケーターが一堂に会する大会・リリーカップ。早大のエース松嶋那奈(スポ3=東京・駒場学園)は、『ラストエンペラー』と『SAYURI』を組み合わせた独特な新プログラムで今季初戦に臨んだ。慶大の鈴木美桜・星佳姉妹ら並み居るライバルを退け、2年ぶりの優勝。この時期としては高得点と言える82.72点をマークし、大学3年目シーズンの飛躍を予感させた。
高校2年次の『蝶々夫人』で使用した鮮やかな衣装をまとい、リンクに向かった松嶋。6分間練習では苦手のサルコーを何度も降り立つなど、好調ぶりをアピールした。前半で演じたのは『ラストエンペラー』。まずは、最初にして最大の得点源であるコンビネーションジャンプに挑む。2つ目のジャンプこそ着氷が乱れたものの、トーループの高さは今季も健在だ。また、「自信を持って練習通りいこう」と意識した中盤のトリプルサルコー-ダブルトーループを見事成功。日本学生氷上競技選手権ではサルコーの失敗が順位に影響したこともあり、今季もこのジャンプがカギを握ることとなりそうだ。
美しさに磨きのかかったステップシークエンス
前半のダイナミックな演技から一転、後半の『SAYURI』では手足の先まで神経を届かせた繊細な振りつけを披露。「最初聞いた時はどう表現すればいいかと思った」と語るように、高校生時代にも演じた同曲とは一味違う「大人のSAYURI」で魅了した。後半のジャンプでは回転不足などの細かいミスこそ見られたが、スパイラルからのダブルアクセルや片手を上げたジャンプで確実に加点を重ねる。技術点、演技構成点共に40点を超え、出場選手の中で唯一の80点台。3位に終わった昨季の雪辱を果たした松嶋が、再び表彰台の頂点で金メダルを掲げた。
表彰式で笑顔を見せる松嶋(中央)
抑揚のある難しいプログラムを滑り、新境地に足を踏み入れた松嶋。昨季わずか1.89点差で逃した全日本選手権出場へ向け、幸先のよいスタートを切った。次なる舞台は、6月に行われる関東学生フリースケーティング選手権。「安定したジャンプや表現力をファンに見せられるような演技をしたい」。進化を続けるエースは、再びエンジを背負って戦う。
(記事 川浪康太郎、写真 森原美紘)
結果
▽選手権女子
松嶋那奈 優勝(82.72点)
コメント
松嶋那奈(スポ3=東京・駒場学園)
――優勝おめでとうございます。いまの心境は
今回は初めての曲で臨む試合だったのですが、まだまだ失敗もしていますしでき上がってはいない状態だと思います。これからの期間リンクがなくなってしまうのですが、また課題もたくさん見つけられたので、合宿の時などに少しずつ、一つずつ丁寧に改善できるようにしようと思いました。
――昨季とは雰囲気の違う新プログラムでしたが、どのような思いが込められていますか
『ラストエンペラー』は初めてなのですが、『SAYURI』は高校1年生の時に滑っていて、全く違う雰囲気の『SAYURI』だったので最初聞いた時はどう表現すればいいのかと思ったのですが、前半は楽しく、後半はおしとやかに滑れたらいいなと思っていました。
――今回の衣装には何かこだわりはありますか
今回の衣装は高校2年生の時に『蝶々夫人』を滑った衣装で、次の春関(関東学生フリースケーティング選手権)では別の衣装で滑ります。
――6分間練習でのジャンプの手応えはいかがでしたか
今週練習してきた中ではすごく調子がいい方だったので、自信を持っていけるなという気持ちはありました。
――試合でのジャンプを振り返って
回転不足であったたり、ループのところで「これ回らないな」と感じてしまう部分があったので、もう少し安定感が出るように練習していきたいと思いました。
――中盤のトリプルサルコー-ダブルトーループが決まったのは大きいのではないでしょうか
いつも練習で全然決まらなくて不安だったのですが、最近の練習ではサルコーの調子が上がってきていたので、自信を持って練習通りいこうという気持ちで気軽にいけたかなと思います。
――一方、昨年課題にも挙げていた表現面はいかがでしょうか
やはりまだ表現し切れないところがあるので、これからきょうの映像を自分でも確認して課題を見つけていきたいです。
――この時期の80点越えについてはどう捉えていますか
今季最初の試合だったのでまだ安定していない部分もあるのですが、今回80点に乗ったことはすごく自信になったので、次の試合からも少しずつ点数を伸ばせていけたらいいと思います。
――6月の春関へ向けた意気込みをお願いします
春関の間はリンクがなくて練習や曲かけができないので不安要素がたくさんあるのですが、今大会をふまえて短い時間でみっちり練習できるようにして、本番ではきょうみたいな失敗はせず安定したジャンプや表現力をファンに見せられるような演技をしたいと思います。