SH福田健太主将がタッチへ蹴り出す。スタンドの明大ファンが立ち上がる。実に8年ぶり、関東大学対抗戦(対抗戦)で王者・帝京大に土をつけた瞬間だった。全勝の帝京大に、慶大に敗れ1敗となった明大が挑んだ一戦。明大は序盤、スクラムを起点に得点を重ね、試合の主導権を握った。さらに後半、明大は帝京大ボールのスクラムをターンオーバー。そのままトライにつなげ、勝利を大きく引き寄せた。明大はスクラムの圧力と、粘り強い守備で、慶大戦からの見事な修正力を見せた。帝京大が対抗戦で敗れるのは、3年ぶり。筑波大に敗戦して以来だ。明大は対抗戦優勝の可能性を残し、早大との最終戦に臨む
開始早々、明大のスクラムに秩父宮がどよめいた。前半5分、敵陣での帝京大ボールのスクラムの場面、帝京大は明大の圧力に負けコラプシング。明大はFB山沢京平がPGを決め、幸先よく先制する。さらに、その直後、山沢がショートパントを上げて自らキャッチするとビッグゲイン。ゴール前5mでマイボールスクラムのチャンスを得る。福田が相手守備をくぐり抜けてボールを持ち出し、最後はCTB渡邉弐貴がインゴールへ飛び込んだ。明大は、序盤の攻防を制し、王者を相手に10点を先行する。その後は、一進一退の攻防が続いた。互いにPGを取り合い、13ー3に。時計は40分を指し、このままハーフタイムかと思われたが、スピードのある帝京大BK陣に空いたスペースを突かれ、失トライ。13ー8、明大はリードこそしたものの安心はできない点差で前半を終えた。
スクラムでは帝京大を圧倒した
運命の後半。開始直後、明大にノックオンがあり、帝京大ボールのスクラムとなる。しかし、明大はここでも帝京大を勢いよく押し返し、圧倒。ターンオーバーから素早く展開、CTB森勇登が裏のスペースへキックすると、スピード自慢のWTB髙橋汰地が走り込みキャッチ、そのままトライにつなげた。コンバージョンを決めて、20ー8。スクラムのパワーと、BK陣のスピードが融合、メイジの強さが見えたトライだった。その後は、帝京大のボールポゼッション有利な状況が続いたが、明大は粘り強い守備で得点を許さない。後半16分には、自陣ゴール前5mに迫りFW勝負を仕掛けた帝京大を押し戻し、ラックパイルアップで明大ボールに。24分には帝京大のFB竹山晃暉主将の個人技から失点。5点差に迫られる。しかし、28分明大はマイボールラインアウトからモールで前進、ゴールラインに迫る。FWのパワーで、何度も何度も当たり、粘り強く攻めた明大。35分、ついにPGのチャンスを得た。山沢が決め、23ー15。明大は、最後まで堅い守備が光った。スタンドは、万雷のメイジコール。そして、歓喜のノーサイドの瞬間を迎えた。
うまくキックに反応した髙橋
敗れた帝京大の岩出雅之監督は、試合を振り返り「明大のFWの頑張りに尽きる」と語った。名将にそう言わしめるほど、この日の明大の圧力と集中力は光っていた。1敗のまま、早大戦を残すのみとなった明大。福田主将は、早大について「ラグビーが変わったイメージ」があると述べた。しかし、早大が変わったならば、明大も明らかに変わった。その証明が、この日の白星である。現時点で、帝京大と早・明・慶が1敗となり、『四つ巴』の様相を呈する対抗戦。いよいよ、最終盤を迎える。果たして、勝利の女神はどこに微笑むのか。
(記事 元田蒼、写真 安岡菜月、涌井統矢)
関東大学対抗戦 | ||||
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明大 | スコア | 帝京大 | ||
前半 | 後半 | 得点 | 前半 | 後半 |
1 | 1 | T | 1 | 1 |
1 | 1 | G | 0 | 1 |
2 | 1 | P | 1 | 0 |
0 | 0 | D | 0 | 0 |
13 | 10 | 計 | 8 | 7 |
23 | 合計 | 15 | ||
【得点】▽トライ 渡邉、髙橋 ▽ゴール 山沢(2G、3PG) | ||||
※得点者は明大のみ記載 |
関東大学対抗戦Aグループ星取表 | ||||||||
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帝京大 | 明大 | 慶大 | 早大 | 筑波大 | 日体大 | 青学大 | 成蹊大 | |
帝京大 | * |
12/1 14:00 熊谷 |
〇90-7 |
〇141-7 |
〇113-7 |
|||
明大 | * |
12/2 14:00 秩父宮 |
||||||
慶大 | * |
11/23 14:00 秩父宮 |
〇84-17 |
12/1 11:30 熊谷 |
〇68-14 | |||
早大 |
12/2 14:00 秩父宮 |
11/23 14:00 秩父宮 |
* | 〇55-10 | 〇68-10 | 〇123-0 | 〇99-5 | |
筑波大 |
12/1 14:00 熊谷 |
●21-66 | ●24-35 | ●10-55 | * |
○55-24 |
○73-31 |
○101-0 |
日体大 |
●7-90 |
●17-31 |
●24-55 |
* |
●23-26 |
12/2 14:00 熊谷B |
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青学大 |
●7-141 |
12/1 11:30 熊谷 |
●31-73 |
○26-23 |
* |
○21-12 |
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成蹊大 |
●7-113 |
●5-99 |
●0-101 |
12/2 14:00 熊谷B |
●12-21 |
* | ||
※秩父宮は秩父宮ラグビー場、熊谷および熊谷Bは熊谷ラグビー場、帝京大Gは帝京大学百草園グラウンド、足利は足利市総合運動公園陸上競技場、江戸川は江戸川区陸上競技場、秋葉台は秋葉台公園球技場、明大Gは明大八幡山グラウンド、慶大Gは慶大日吉グラウンド、三郷はセナリオハウスフィールド三郷(三郷市陸上競技場)、筑波大Gは筑波大つくばグラウンド、敷島は群馬県立敷島公園サッカー・ラグビー場、味スタ西は味の素スタジアム西競技場、上柚木は上柚木公園陸上競技場。 |
関東大学対抗戦Aグループ順位表(11月18日現在) | |||||||||
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順位 | チーム | 試合 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失 | トライ |
1 | 帝京大 | 6 | 5 | 0 | 1 | 428 | 91 | 337 | 59 |
1 | 明大 | 6 | 5 | 0 | 1 | 342 | 81 | 261 | 50 |
3 | 早大 | 5 | 4 | 0 | 1 | 373 | 70 | 303 | 56 |
3 | 慶大 | 5 | 4 | 0 | 1 | 234 | 103 | 131 | 34 |
5 | 筑波大 | 6 | 3 | 0 | 3 | 284 | 211 | 73 | 43 |
6 | 青学大 | 6 | 2 | 0 | 4 | 85 | 458 | -373 | 13 |
7 | 日体大 | 6 | 0 | 0 | 6 | 98 | 354 | -256 | 13 |
7 | 成蹊大 | 6 | 0 | 0 | 6 | 38 | 512 | -474 | 6 |
勝ち数の多い大学を上位とし、勝ち数が並んだ場合は同順位とする。 |