【連載】新体制特集『Tough Choice』第3回 ロック鏡鈴之介×SO吉村紘

ラグビー男子

 今回お送りするのは副将に就任したロック鏡鈴之介(法4=東京・早大学院)とSO吉村紘(スポ4=東福岡)の対談だ。昨季を「思い描いていた1年ではなかった」と振り返る両選手。そんな昨季の振り返りと、副将として臨む今季の思いに迫った。

※この取材は3月19日にオンラインで行われたものです。

仲のいいお二人

――まずは他己紹介をお願いします

 食事やトレーニングに関してはストイックで人一倍やっている印象です。私生活は心配性なところがありかわいい一面もあります。みんなこのギャップにキュンキュンしています。かまってちゃんな一面があってかわいいです。

吉村 グラウンドではチームの先頭に立って体を張って良い影響を与えてくれていると思います。私生活の部分では、すごく優しくて誰でもコミュニケーションをとりたいと思うような、いつも輪の中心にいる人です。

――お二人は普段からよく話されますか

 紘が僕の部屋に来て(笑)。

吉村 プライベートな話もしますし、お互い自主練でジムを使うときも時間がよく被るので、なんだかんだ一緒にいる時間は長いです。

――オフに一緒に出かけられることもあるのでしょうか

 紘はオフの日にトレーニングをすることが多くて、僕はオフの日にはあまりしないので。

吉村 リズムが違うからね。

 そうだね。でも1、2年生のときは結構出かけていました。

――最近はあまり一緒には出かけてないのでしょうか

 そうですね。今度行きます。

吉村 約束します(笑)。

立大戦でパスをする吉村

「ふがいない1年だった」(吉村)

――それではラグビーの話に移ります。部としては、全国大学選手権ベスト8敗退という結果に終わってしまいましたが、昨シーズンを振り返っていかがですか

吉村 新体制になって昨年1年間を振り返ったときに、チームとしても個人としても正直相当ふがいない結果だったと思います。個人としてはだんだん出場時間が減っていき、シーズンが始まるときにイメージしていた1年間とはかけ離れている状況だったので、あまりいい1年ではありませんでした。

 春シーズンにAチームで出させて頂いていて、春シーズンが終わるぐらいにケガをしてしまい、結構チームを離れる時間が長く、最後はBチームという感じだったので、思い描いていた1年ではありませんでした。

――昨季のチームで『荒ぶる』に足りなかった部分はどこだと考えますか

吉村 チーム的には突き詰める部分が甘かったのかなと思います。練習量に自信を持ってしまい、結果を出すことに関してミスを突き詰める部分が甘かったです。

 互いに要求し合うという部分が足りていなかったと思います。

――昨シーズンを振り返って、鏡さん、吉村さん自身が成長できた部分はございますか

吉村 シーズン終盤のタフなゲームに出ることによって選手としては成長すると思います。その点最後の方は試合にあまり出ていなかったので、出ていたらどうなっていたのだろうと思うこともありますが、昨年1年間で得られたことは忍耐力とかです。自分が思い描いていた状況でなくとも、自分が決めた目標に取り組み続ける姿勢の大切さは改めて感じました。

 ケガをして、プレーヤーとして劇的な変化はないと思いますが、ケガをしても最後までAチームを目指した部分や、Bチームの中でもチームに貢献するために頑張った人生の経験は人間として大きくなれたと思います。

――とりわけ秋シーズンはチームとしてもご自身としても、満足のいくシーズンではなかったと思います。個人として足りなかったと感じる部分はございますか

吉村 どんな状況でも高いレベルで自分の持ち味を生かせるだけのスキルレベルがまだなかったと思うので、今年は一貫してどんな相手、試合でも自分のパフォーマンスのレベルを下げないようにプレーできる選手になりたいと思います。

 大田尾監督ともシーズン終わって話したときに、何かが足りなかったよねという話をされました。具体的に何が足りなかったのか監督の答えは分かりません。ただ一貫して高いプレーをし続ける泥くさいプレーをするのが仕事なので、そうした部分の精度やこだわりを1センチ単位で磨いていくべきだったなと思います。

――全国大学選手権の準々決勝はどのような思いで見られていましたか

吉村 リザーブからだったのですが、試合を見ているときはSOとしてここ空いているなと感じたり、このようにボールを動かせたらいいなと思ったりしていました。いざ試合に出てみると、思い通りにボールは動かせましたが、ノータッチキックは僕のラグビー人生で一生残り続けるミスだと思うので、あのようなミスがないように今後も突き詰めた練習をしていきたいです。

 自分はスタンドから見ていたのですが、来たチャンスを全部生かし切れなかったなと思いました。そういった部分をこだわれば、勝てた試合であったと思います。

春季大会の東海大戦でタックルをかわす鏡

「一つ一つのプレーにこだわりたい」(鏡)

――新体制についてお聞きしていきます。副将にはどのような経緯で就任されたのでしょうか

吉村・鏡 昌彦の指名です。

――副将になることが決まった時のお気持ちをお聞かせください

吉村 何となく予想はできていたのでびっくりすることはなかったですが、副将に任命される前に明大に負け、悔しいかたちで個人的にはシーズンが終わってしまいました。今年は副将という立場になりチームに対する影響力も大きいと思うので、いい影響をチームに与え続けられる存在になりたいと思いました。

 昨年は委員会に入っていたので、任命される前になんとなく役職につくだろうとは思っていたのでそこまで驚きはありませんでした。ただ、昨年も最後に試合には出られていないですし、自分に務まるのかという思いもあります。ただそういった中でも、早大学院というあまり強くない高校出身でAチームに近い位置にいることや、大きなケガをしてもこうした位置にいさせてもらっていることを考えて下の選手からの希望の象徴のような選手になれたらいいなと思います。自分が頑張ることによって、下の選手やケガ人も頑張れるような環境を作っていきたいです。

――鏡選手は昨年委員を経験されました。委員から副将ということで、何か心境の変化はありますか

 昨年は委員会に入ってチームに影響を与えるというよりも、プレーヤーとして愚直にプレーで頑張り続けるタイプなので、プレーをひたすら頑張ろうと思ったのですが、今年は副将としてチームのことを考えなければならないという点では不安があります。

――副将が2人という点についていかがですか

 1人で副将をやれと言われたらできないと思うので、吉村のような輝かしい選手がいてくれた方がありがたいと思います。

吉村 1人でやるよりは2人でやる方が色々なところに目が行き届くと思いますし、僕らが1年生のころも2人体制だったので違和感はないですね。

――目指す副将像はありますか

 影響力が強い役職だと思うので、まずはグラウンド内外ともに自分の役割をまっとうして信頼を得られる副将になることです。また、昌彦がチーム立ち上げ当初に言っていた「一体感」というのを、一番下のチームやケガ人だった自分が(当事者の)気持ちを理解できると思うので、そういった選手たちにも目を向けながらやっていけたらなと思います。

吉村 チームの調子がいいとき悪いときが1年を通して絶対にあると思うので、僕自身のグラウンド内外での振る舞いを高いレベルで維持し、いつでも変わらないなと周りの選手に思ってもらえるようにしたいです。自分たちも真似しようと思われるような行動を日々取り続けたいです。

――何に一番こだわってやりたいか、個人とチーム、それぞれについてお聞かせください

吉村 チームとしては昨年の明大戦で多くのことを学んだので、一つ一つのプレーの精度を高め細部に徹底的にこだわっていきたいと思います。個人としては結果を出すという部分にフォーカスしていきたいと思います。自分の中で練習をやってきたつもりではありましたが、この練習が結果につながるのか問い続けながらやっていきたいと思います。今まで結果を無視して練習をしてきた訳ではありませんが、より強く試合をイメージして結果を出すことにこだわって練習していきたいです。

 チームとしては紘が言ったように一つ一つのプレーにこだわることです。これを達成するためにお互いに要求しあうところをチームでこだわっていきたいと思います。個人的な部分でいえば今年は本当に結果がほしいので、自分の役割であるブレイクダウンの部分をとにかくこだわって練習をして結果を出したいと思います。

――副将として周囲に対して何を求めたいか、個人とチーム、それぞれについてお聞かせください

吉村 一人一人が自律したチームになってほしいです。チームとして意識をあげるだとか、やる気を出せといった指摘をしないようなチーム、高いレベルで言い合えるようなチームになりたいので、モチベーションや日本一の目標を常日頃から誰に言われずとも自分たちで意識できるような選手が集まった集団になってほしいと思います。

 全員が常に『荒ぶる』や赤黒にむけて挑戦することを部員全員で取り組めるようにしたいです。

――新スローガンに込めた思いをお聞かせください

吉村 『Tough Choice』というスローガンなのですが、一つ一つのプレーやトレーニングで妥協せずに厳しい方を選んでいくということと、昨年の負けから学んだお互い要求し合うという部分にも『Tough Choice』がつながっているのではないかと思います。

――チームの中でご自身に求められている役割は何だと思いますか

吉村 ゲームコントロールの部分や周りの14人の選手とコミュニケーションをとって良さを引き出すことだと思います。副将としては高い基準を示し続けてチームの雰囲気を作り、いい影響を各個人に与えていくことだと思います。

 一番下のチームやケガを経験しての副将なので、こうした経験を生かしてチーム力の向上に貢献していく必要があるなと思います。

――ご自身のプレーでここに注目してほしいという部分があれば教えてください

吉村 キックとパスです。スキルの部分はほかの選手と違いを出せる部分なので注目してほしいです。また、今年は今までよりも変わったなというプレーを見せられるように頑張ります。

 コンタクトの部分、接点の部分で少しでも前に出るというところです。昨年もこだわっているつもりではいましたが、こだわり切れてはいなかったと思うので、今年は昨年よりも強みにしていくので、ぜひ見てほしいです。

――まずは春シーズン、意気込みをお願い致します

吉村 秋に比べて結果に直結しない試合ではありますが、早大である以上勝敗にこだわってやっていくつもりなので、1年間通して結果にはこだわり続けたいです。

 春シーズンだからといって負けていい試合はないので、勝ちにこだわりつつチャレンジをしていきたいと思います。

――最後に今季の意気込みとファンの方にメッセージをお願いします

吉村 今年も例年通りチームとしては『荒ぶる』という目標を掲げて進めていきます。個人としては昨年ふがいない結果で終わってしまったので、今年はしっかり挽回するので早大ラグビー蹴球部での最後の1年となるので応援のほどよろしくお願いします。

 今年こそ『荒ぶる』を取るぞと思っています。個人的にも『荒ぶる』を取る瞬間にピッチで迎えられるように頑張ります。こういったご時世であまり試合に見に来てもらえない中でも応援していただいているファンの方の存在にとても感謝しています。今年もそのようなご声援を頂けると嬉しいです。ぜひよろしくお願いします。

今季に向けた意気込みを書いていただきました!

――ありがとうございました!

(取材・編集 森田健介)

◆吉村紘(よしむら・こう)(※写真左)

2000(平12)年10月7日生まれ。179センチ。89キロ。東福岡高出身。スポーツ科学部4年。プレーからは想像もつかない、お茶目な一面もあるそうです。正確無比なキックとパスから生み出されるゲームメイクに期待です!

◆鏡鈴之介(かがみ・すずのすけ)

2000(平12)年12月4日生まれ。182センチ。99キロ。東京・早大学院出身。法学部4年。色紙に『一貫』と書いてくださった鏡選手。ケガに悩まされた昨季から、今季はAチーム不動のロックとして『荒ぶる』に導いてくれるでしょう!