【ラグビー連載】関東大学対抗戦開幕特集『WORK HARD』最終回 フランカー/ロック加藤広人主将×CTB黒木健人副将

ラグビー男子

 春、夏と思うように結果が出ない中、チームを鼓舞し、引っ張り続けてきたのが加藤広人主将(スポ4=秋田工)と黒木健人副将(教4=宮崎・高鍋)の二人だ。4年生として、そして主将副将として迎える関東大学対抗戦(対抗戦)。夏合宿を終え、対抗戦開幕を目前に控えた、いまの心境を語ってもらった。

※この取材は9月7日に行われたものです。

4年生の覚悟

落ち着いた口調で春シーズンを振り返る加藤広主将

――主将、副将に就任してから大変だったことなどありましたか

加藤広 チームをまとめるのはもちろん大変なんですけど、自分自身により高いパフォーマンスが求められているというプレッシャーを感じていて。ケガで思うようにパフォーマンスが上がらないこともあって、そういうプレッシャーが個人的には結構大変だったなと思います。チームをまとめるのは苦労はしているんですけど、それこそ横山(陽介、スポ4=神奈川・桐蔭学園)だったり黒木だったり、要所要所で岸岡(智樹、教2=大阪・東海大仰星)や直人(齋藤、スポ2=神奈川・桐蔭学園)に助けられています。

黒木 僕の場合は春シーズン加藤がケガが多くて、その中でチームをまとめていくのは苦労した記憶があります。

――BKでは横山選手がよく声をかけていましたね

黒木 そうですね。でも横山に頼りすぎてもうまくいかない部分があるので、そういうときに拠り所となる精神的支柱になれればいいなと思ってやっていました。

――チーム内で意見の衝突はありましたか

黒木 対立はありませんが、うまくいかない中でどうしたらいいかという話し合いはしますね。

――二人で話すことはありますか

加藤広 二人だけで話すことはありませんね。

黒木 試合が終わったら委員会で話したり、練習前であれば監督から僕と加藤が呼ばれてこういうことを意識してやっていこうというのを、概略というか簡単に説明があってから臨むことで、僕たちもどういうところを意識してチームを見ていけばいいかを把握しながらプレーできています。

――お互い、どのような主将、副将でしょうか

加藤広 私生活を含めて口数は少ないですけど、やるときしっかりやってディフェンスでも一番体張ってくれてますし、要所要所言わなくてはいけない時は高校の時キャプテンでもあるので、まとめるところはしめてくれます。すごく助かっています。僕自身では分からないこともあるので。あと真面目ですね。

黒木 実は・・・(笑)。

加藤広 疑われてるよ。

――では加藤主将はどのような主将ですか

黒木 口でどうこういうよりは行動で示していくタイプで、プレーでは誰よりも前に出て背中で引っ張るタイプの人間です。

加藤広 大げさに言ってくれました(笑)。

――春、夏はどのようなシーズンだったという印象ですか

加藤広 結果が思うように上がりませんでした。それはなぜかと言ったら、戦術うんぬんの前に、僕ら特に試合に出ている4年生だとか、僕自身だとかがきついときにハードワークできなくて。そういうちょっとしたところから、大きなこういう結果になってしまって、いまそこをどうにかしようとしています。

黒木 4年生の気概というか責任と言いますか、そこがやはり大きいと思います。チームはやはり4年生が引っ張るものであって、4年生が良いパフォーマンスをすれば試合が引き締まったものになると思います。春で言えば作田(蓮太郎、教4=東京・早実)や厳(中野、社4=東京・早大学院)が試合に出ることで違った雰囲気が生まれたと思います。そこをまた夏で良くしていきたかったのですが・・・まだまだ4年生のプライドが足りないなと感じた夏でした。

――春、夏は厳しい結果になりましたが、そのような中でチームにどのような声かけをしましたか

黒木 行動で示すというのが1番ですね。僕らがやるからついてくるんだということを、加藤が毎回円陣で言ってくれていて。4年生が前に出て示そうということでやっていました。

――4年生が示すというのは試合中も練習中もということでしょうか

黒木 そうですね。試合中だったら細かい部分を話したり、ユニットごとで話したりします。僕らがハードワークするのは当たり前で、率先して4年生がやっていかなければいけないと思っています。

――春、夏共に帝京大に大差で敗れましたが、帝京大との差をどのように受け止めていらっしゃいますか

加藤広 帝京大の選手はみんな大きくて強いですし、一人一人が全然さぼらないです。やはりそこのハードワークの部分だと思います。帝京大や東海大は体が大きいうえに、さぼらないでハードワークしてくるので、そこは僕らもやらなければいけないと思いましたし、こんなんじゃまだまだだめだなとあらためて思いました。

――その差はどうやったら埋めることができると考えていますか

黒木 地道に、寝たらすぐ立ち上がる部分や早いセットなどを練習から積み重ねていくしかないかなと思います。

――「ハードワークできなかった」と試合後におっしゃる選手が多いですが、ハードワークとはメンタル的なものなのですか。それとも体力的な問題なのでしょうか。

黒木 両方あるとは思います。うまくいかなくて、そこで自分たちでフラストレーションやストレスを抱えてしまって。そこで、うまくいかないからこうしようと変えて結局うまくいかない部分がありました。まずは、早いセットや相手より早く動き出すとか、そういった根本的な部分に戻らないと僕たちは勝てないなと思いました。

――夏合宿ではどんな収穫がありましたか

加藤広 現状に気づくことができたというところですかね。大差で負けてしまって、それはなぜなのかというところで、ハードワークの部分だとか、セットの部分、起き上がりの部分など基本的なところに立ち返る、というところに気づくことができたというのが、強いて挙げるなら収穫だと思います。

黒木 戦術、アタックはこれからやっていくと言われていて、その中でうまくいかないのは次につながるようにしていくしかないという状況ですね。負けがあったから、あそこで気づくことができたから、いまがある、と言えるようにしていくしかないです。

――『スクラム、ブレイクダウン、チームディフェンス』の三本柱の現時点での完成度はどれくらいだと感じていますか

黒木 ブレイクダウンはそこそこですかね。まだ足りないのですが、映像を見ると帝京大や東海大と戦えていましたし、そこは春から積み上げてきたS&Cの部分の成果が出ているなと感じました。チームディフェンスは僕が引っ張っていかなければいけない部分なのですが、まだまだハードワークが足りていないので、これからまだ伸びしろがあると思います。

加藤広 スクラムは、僕らが目指しているものだとか、日本一になるためのスクラムにどれくらい近いかと言われればまだまだです。

――対抗戦開幕まで残り時間非常に短いですが、その足りない部分というのは、試合をしていく中で修正していくということになるのでしょうか

黒木 試合で修正していく部分もあると思いますし、もう日々の練習で積み上げていくものだと思っています。

――春の結果は参考にならないという声を聞くのですが、なぜだと思いますか

黒木 春はケガ人がいたり、教育実習とかありますし、春って結構人がいなくなるので。うちはそれほどですけど。

加藤広 言い訳に聞こえるかもしれませんけど、春は去年やってきたことをただやっているだけなので。ただやっているというのもおかしいですけど、やってきたことを徹底してやっているだけなので新しいことはやっていない状態です。まだまだ伸び代があるという意味で春の結果は参考にならないと言われているんじゃないでしょうか。

――お二人とも長くプレーされてきて、実感としてラグビーの勝敗を決めるものは何だと思いますか

黒木 実力差が6対4だったらひっくり返せると僕は思ってます。7対3だったらおそらく無理ですけど、6対4だったら気持ちの持っていき方だったり、しっかり相手がどうしてくるかを前もって研究していれば勝てると思います。試合の流れはもちろんありますが、気持ちの部分でひっくり返せるのは6対4までかなと思います。そこまでやっていくのは普段の練習です。これは今までやってきて思うことです。

加藤広 ラグビーは番狂わせが少ないスポーツというイメージがあります。大一番の試合にいつもの実力、それ以上の力をいかに持って行けるかがカギになっているのではないかと思います。結局普段できていても試合でミスを連発して、逆に格下のチームが普段やっていることをできたり、普段以上のことが出せたりしたらひっくり返されることはありますし。普段の練習をどれだけ試合に近づけてやれるか、いかにその試合にピーキングして持って行けるかというところが大事だと思います。

――チームの精神的な面での課題はどのような点にありますか

黒木 夏の大東大戦みたいに競った試合に勝てるのは、勝ちたいという気持ちが土台にあったからだと思います。逆に帝京大戦のようにあれほど大差になるのは、どこかに諦めている気持ちだったり、どこかでやめてしまった部分、切れた部分があると思います。そこで切らさないためには何が要るのかってことですよね。難しいです。

――油断せずに競り勝ったことは良かった点として捉えられるのでしょうか

黒木 それはやらなければいけないことです。ハードワークして地道に、一発でぽんと取れることなんて少ないので、ひとつひとつ積み重ねていってディフェンスも我慢して我慢して、というのをどの試合でもやらなければならないです。

――この代のカラーは何ですか

加藤広 良いのか悪いのか分からないですけど、結構学年関係なくしゃべれる環境があると思うので。特に一緒に試合に出ているメンバーとかは特に言うこと言ってくれますし、思い切ってプレーしてくれるのでそういうところは良いところだと思います。

黒木 普段からコミュニケーションは取りますし、今の時代いるか分からないですけど怖い先輩はいません。いた方がいいのかもしれないですけど、(チームは)フレンドリーです。仲良すぎる訳ではないですけど、言いたいことを言えるような雰囲気はしっかり作れていると思います。

勝つ、それが責任だと思う

時折笑顔も見せながら穏やかに話す黒木副将

――ついに対抗戦が開幕します。ラストイヤー、そして主将副将として迎えることしの対抗戦に懸ける思いを聞かせてください

黒木 一戦一戦が大学最後なので、最後だからというわけじゃないですけど、地道に一つ一つやるべきことをやっていって、勝利につながるようなプレーをして、バイスキャプテンとして導いていきたいと思っています。

加藤広 黒木も言ったのですが、これから一戦一戦が落とせない試合になってくるので、◯◯戦だからとか関係なく、練習でやってきたことや自分のパフォーマンス、特長を前面に出して、勝利できるようにチームを引っ張っていけるように体を張っていきたいと思います。

――プレーヤーとして、試合中のご自身の役割はどのようなものだと考えていますか

黒木 派手なプレーなんて僕はできないので、地道に泥臭く、アタックでもディフェンスでも声出して体を張り続けたいと思っています。

加藤広 僕が高いパフォーマンスをして、ディフェンスだったらしっかり前で止める、アタックだったらボールを持ったら前に出て、チームでそして大学で1番の選手になりたいです。プレーで見せることができないと、言葉ってやはり軽くなってしまうと思うので、しっかりプレーで高いパフォーマンスを出して、その上でチームをまとめられるようにしたいと思います。

――対抗戦の他のチームであえてライバルを挙げるとしたら誰ですか

加藤広 僕は筑波大のキャプテンの占部くん(航典、4年)がライバルというか気になる存在で、尊敬している選手でもあります。オールスターで代表以来の久々にフランカーを組んで、彼はフランカーとしてすごくレベルが高い選手ですし、尊敬できる選手です。さっき僕自身プレーヤーとしても日本一にならなければいけないと言ったのですが、彼を超えなくてはいけないので、彼以上のパフォーマンスを出すために気になる存在ではありますね。

黒木 筑波大の鈴木啓太選手(4年)で、花園でも1回対戦してすごい選手だなと思っています。

加藤広 おととしも、いいようにやられたよね。

黒木 タテへのスピードだったり、ボールのもらい方もうまくて、必ずゲインしてくるので、そこで僕がしっかり前に出て止めたいと思います。

――最後に対抗戦への意気込みをお願いします

黒木 一つ一つ絶対に負けられないので、全勝を目指してというより、しっかり全勝します。それが責任だと思うので。

加藤広 ここ数年強いワセダを見せることができていないので、強いワセダを見せて日本一を奪還できるように体を張るので、残り少ないですが頑張っていきます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 曽祢真衣、本田理奈)

冷静で背中で引っ張るタイプの加藤広主将と、真面目な中にユーモアもある黒木副将。とても素敵なコンビだと感じました。

◆加藤・広人(かとう・ひろと)(※写真右)

1995(平7)年9月30日生まれ。186センチ、103キロ。秋田工高身。スポーツ科学部4年。ポジションはフランカー、ロック。多くは語らない加藤主将ですが、その分一言一言に重みや責任を感じます。主将として迎える自身4度目の対抗戦に懸ける思いの強さは人一倍です!

◆黒木健人(くろき・けんと)(※写真左)

1995(平7)年10月5日生まれ。179センチ、94キロ。宮崎・高鍋高出身。教育学部社会学科4年。ポジションはCTB。以前、目標としている選手に鹿尾貫太選手(東海大、4年)を挙げた黒木副将。夏の東海大とのオープン戦では鹿尾選手と仲良くなったそうです。