我慢の春。同大戦に続き、早慶戦でも大敗

ラグビー男子

 ラグビーの聖地、花園ラグビー場で早大と慶大、伝統校同士が激突した。ディフェンスの強化を中心に行ってきた早大にとって、失点を抑え練習の成果を見せたかった。前半はアタックの決定力を欠き得点につながらないものの、粘り強いディフェンスで慶大のトライを防いでいく。後半には5点を取り返すも、慶大の出足の鋭いタックルに対応しきれず、トライを重ねることができない。さらに、自身のミスにより相手にアタックの機会を与えてしまい、6トライを献上した。結果として、5-57で完敗。ライバルに大きな差を見せつけられた試合となってしまった。

 前半開始5分、早大は先制を許す。相手WTBにハイパントキックを再獲得され、そのまま左大外を走り抜かれた。反撃の機会をうかがう早大は10分、安定したスクラムから相手のペナルティーを誘い、敵陣ゴール前でラインアウトを得る。モールを形成するが押し込むことができず、BKにボールを展開するもノックオン。チャンスを逸してしまう。15分に敵陣でアドバンテージを獲得すると、SO岸岡智樹(教1=大阪・東海大仰星)のキックパスからWTB桑山淳生(スポ1=鹿児島実)がトライを狙うが、惜しくも失敗する。続くマイボールスクラムからのアタックも継続できず、好機を生かせない。すると18分、慶大の猛攻を受けディフェンスラインを整備できないまま、ラックサイドを突かれ追加点を許す。さらに1トライを追加され、0-19で前半を折り返した。

ゴール前でモールを組むチャンスもあったが押し切れなかった

 後半で相手との差を縮めたい早大は10分、途中出場のCTB中野将伍(スポ1=福岡・東筑)のロングパスを受けた桑山淳のゲインからボールを右に動かす。岸岡がキックで相手の裏のスペースを突き、そのままトライ。5点を取り返した。しかしその後、慶大にペースをつかまれると自身のペナルティーが原因で立て続けに失点、大きく突き放される。何とか追いつきたい早大は、突破力のある中野将にボールを集め、ゲインを試みるも、慶大の出足の鋭いタックルに押し返され、思うようなアタックができない。一度も得点できないまま、終盤の40分にもトライを追加され、ノーサイドのホイッスルが鳴り響いた。

後半から出場し、ボールキャリアーとしての働きが目立った中野将

 今回の試合では重点的に取り組んできたディフェンスの成果を十分に発揮することができなかった。慶大にゲインを許すとディフェンスラインの整備が間に合わず、トライを許してしまう場面が多くあった。今までの試合と比べるとダブルタックルに入る精度も落ちてきている。次戦は明大戦。伝統的にフィジカルを武器とする明大に対応するためにディフェンスの修正は急を要するだろう。今回の試合は不本意な内容に見えるかもしれない。しかし山下大悟監督(平15人卒=神奈川・桐蔭学園)が「秋に結果を出すためにも、春は辛抱強くやっていきたい」と語るようにこの期間は秋の関東大学対抗戦に備えてチームの強化を進める時期だ。たとえ望むような結果が出なくとも辛抱強く我慢する必要がある。

(記事 服平周、写真 本田理奈、三佐川唯)

☆PICK UP PLAYER

元BKなだけあって、フィールドプレーも鶴川の強みの一つだ

 今季からプロップに転向した鶴川達彦(文構3=神奈川・桐蔭学園中教校)が、たしかな成長を遂げている。5月8日の高麗大戦から全試合スタメン出場。慣れないポジションなだけに、序盤はスクラムで苦しむ場面が多かった。しかし、先週の同大戦、この日の慶大戦ではスクラムで圧倒。「自分の納得のいく姿勢でスクラムを組めるようになった」と、手ごたえも十分だ。転機は5月22日の拓大戦。プロップ歴半年にも満たない鶴川に対する3番は、スーパーラグビー・サンウルブズのメンバーにも選ばれている具智元(拓大)だった。その試合のスクラムでは完敗を喫した鶴川。それでも「トップレベルの強さに体を慣らすことができた」と振り返るように、それをみずからの成長につなげた。翌週に控えるは明大との一戦。まずはスクラムで、相手を圧倒していきたい。

関東大学春季大会
早大 スコア 慶大
前半 後半 得点 前半 後半
19 38
合計 57
【得点】▽トライ 岸岡
※得点者は早大のみ記載
早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
鶴川 達彦 文構3 神奈川・桐蔭学園中教校
鷲野 孝成 基理2 神奈川・桐蔭学園
  後半20分交代→17佐田    
千葉 太一 教4 東京・早実
  後半22分交代→18柴田    
山口 和慶 スポ4 福岡
  後半22分交代→20水野    
◎桑野 詠真 スポ4 福岡・筑紫
  後半20分交代→19吉満    
加藤 広人 スポ3 秋田工
柴田 徹 社1 神奈川・桐蔭学園
佐藤 真吾 スポ2 東京・本郷
杉本 頼亮 スポ3 京都・桂
  後半0分交代→21杉本峻    
10 岸岡 智樹 教1 大阪・東海大仰星
11 桑山 淳生 スポ1 鹿児島実
  後半14分交代→22高橋吾    
12 桐ケ谷 稜介 スポ2 群馬・太田
  後半0分交代→23中野将    
13 フリン 勝音 スポ2 福岡・筑紫丘
14 勝浦 秋 スポ4 愛知・千種
15 梅津 友喜 スポ1 岩手・黒沢尻北
リザーブ
16 井上 大二郎 スポ2 愛知・千種
17 佐田 涼祐 社4 東京・早実
18 柴田 雄基 文3 愛知・千種
19 吉満 慎吾 人3 東京・本郷
20 水野 孟 基理3 東京・早実
21 杉本 峻 商4 東京・早実
22 高橋 吾郎 スポ3 福岡・修猷館
23 中野 将伍 スポ1 福岡・東筑
※◎は主将、監督は山下大悟(平15人卒=神奈川・桐蔭学園)
コメント

山下大悟監督(平15人卒=神奈川・桐蔭学園)

――この試合を振り返ってみていかがでしたか

先週の同大戦と同じで、相手が強い時間帯の最初の20分で受けてしまったり、判断のミスがありましたね。勝たなければいけない時間帯ですし、踏ん張らなければいけないところだったのに踏ん張ることができなくて波に乗れなかったから、こういう結果になってしまったと思います。

――春シーズンを通して、テーマはスクラム、ブレイクダウン、チームディフェンスで変わらないのでしょうか

変わらないですよ。春の試合に関しては、他のテーマはないです。ただ、そこに関しての精度がまだ悪いですね。あと、きょうはコンディショニングも悪かったように感じますね。そこは一週間のスケジュールとして見直さなければいけない部分もあるのかなと思いました。

――コンディショニングについては、遠征ということも影響していたのでしょうか

それはお互いに一緒です。そういうところじゃなくて、週間のプログラムとして見直していったほうがいい部分があると思います。

――春シーズンのこれまでの試合を見ていて、シーズン当初に思い描いていた像との差などはありますか

そんなにないですね。一週間に一回、こういったかたちで試合があるのは、良い定点観測になるので。でも、まだまだ取り組みが甘いなとは思います。

――アタックに関してはいかがですか

アタックに関してはほとんどやっていないです。でも、きょうの試合に関しても、アタックでボールを下げてしまうことが多いので、そこは少しだけ取り組んでいこうかなと思っています。そんなにがっつりやるわけではないですけど。ただ、BKのユニットとしての精度が低かったので、そこだけは整理しようと思っています。あと、プログラムの中で、ランニングフィットネスはちょっと抜かしているので、そこが欠けているかなと思います。

――スクラムには手応えを感じているのではないでしょうか

たしかに良くはなっていますけど、まだまだドミネートするところまではいけていないですね。

――チームディフェンスに関してはいかがでしょうか

きょうの慶大のチームディフェンスのほうが良かったね。ボールが空中に浮いている間に、もっと前に出るようなディフェンスをしていきたいですね。

――春シーズン序盤に比べて、ダブルタックルの回数が減っているような印象です

ダブルタックルの回数が減っているというよりも、精度が下がっています。相手のレベルが上がってきたことも原因だと思いますが。あとは、さっき言ったように、フィットネス、コンディションが落ちているというのもありますね。

――来週は明大戦となりますが、どのような相手だと思いますか

明大はアタックでもディフェンスでも、前に圧力をかけてくる相手だと思うので、そこに対して逃げないでしっかりやっていこうと思っています。

――明大戦におけるテーマも特にいままでと変わらないのでしょうか

変わりません。ダブルタックルやフォービットの回数を増やしていってチームディフェンスを強みにするということは、負けないためにやっていることなので。そのためだけにまい進していきたいです。

――1年生も実戦デビューし始めましたが、プレーについてはどうお思いですか

のびのびやってくれればいいと思いますね。それでも、あそこではキックだ、パスだといった場面ごとのプレー選択について、細かく整理していきたいです。岸岡(智樹、教1=大阪・東海大仰星)についても、前半の風上の場面で、後半の慶大のようにシンプルにやったほうが良かったと思う部分もあるので。

――春シーズンも折り返しとなりましたが、残りの1ヶ月間をどのようにしていきたいですか

当初の(一年間の)ロードマップでは、まず春シーズンで強みをつくっていくというようにしていて、色々なプログラムを統合的に進めていたんですけど、正直に言ってそれを見直さなきゃいけない部分も出てきたかなと思います。それでも、選手は一生懸命やっていますし、自信は自分たちがやってきたことの成果を得たことによってしか積み重なっていかないと思うので、秋に結果を出すためにも、春は辛抱強くやっていきたいと思います。この部はすごく結果が求められるんですけど、それは秋の結果だと思っているので。それまでの期間はそういった積み重ねをやりたいと思います。なので、ファンの皆さんには一つ一つの結果に対して一喜一憂せずに、長い目で応援していただければと思っています。

プロップ鶴川達彦(文構3=神奈川・桐蔭学園中教校)

――きょうの試合を振り返ってみていかがでしたか

試合前に話し合ったディフェンスの部分で慶大に追い込まれてしまい、練習を積み重ねる必要があると感じました。

――スクラムが同大戦以降、安定してきました

この間の拓大戦でトップレベルの選手とスクラムを組む機会があったので、トップレベルの強さに体を慣らすことができました。

――BKからプロップへ転向しました

最初は抵抗がありました。チームのためだと納得して転向を決めました。

――プロップへ転向した後、どのような意識で練習に臨みましたか

他のプロップの選手より、経験が絶対的に少ないことは自覚していました。スクラムやラインアウトの基礎的な練習を重視して、練習しました。

――初めてスクラムを試合で組んで、どのような印象を受けましたか

相手に自分の力が伝わらず、力不足を痛感しました。

――スクラムに関して成長できた部分はありますか

普段から姿勢を意識して、練習に取り組んできました。試合で自分の納得のいく姿勢でスクラムを組めるようになったと感じています。

――ゴール前のモールが崩れることがありました

練習中からバインドを強くして組むことを意識していました。しかし、今回の試合ではそれが発揮できませんでした。

――慶大と戦い、どのような印象を受けましたか

慶大のディフェンスは前に出る意識が強く、アタックの選択肢が狭まりました。

――きょうの試合の課題は

セットプレーのさらなる安定と試合での運動量を上げることです。スクラムは練習のように組めば、通用するのでそこは継続したいですね。

――次回の試合に向けて

同大と慶大はどちらも試合の入りが悪かったので、修正したいと思います。

SO岸岡智樹(教1=大阪・東海大仰星)

――地元大阪での試合となりましたが、どのような意気込みで試合に臨んだのですか

みんなからの過剰な激励もあったのですが、今まで通り練習してきたことを出すだけということで、ワセダラグビーの一員として試合に挑もうという気持ちで試合に臨みました。

――きょうのゲームプランはどのようなものだったのですか

自分たちのアタックがどうこうではなくて、相手のアタックに対して自分たちの強みであるフォーピットを全面に押し出すことを目標にこの一週間やってきました。でも、そこが全然出せなかったのが、あの点差につながってしまったと思います。

――キックチャージをされることが多かったように感じましたが、原因は何だったと考えていますか

自分の焦りと、精度の低さと、FWに自分のしたいことを伝えられず、相手のプレッシャーを受けたままに自分の適当なプレーが出てしまったのが原因だと思います。

――慶大はタテにアタックをしてきますが、そこへの対応はどうでしたか

山下監督からも前日のミーティングなどで話があって、相手のアタックはこういうものだと分かっていましたし、相手に対して自分たちはこういうディフェンスをしようという意思統一はあったのですが、タックルで受けてしまいました。相手のアタックがシンプルだと分かりながらも、それを止めきれなかったのが、トライを取られるということにつながり、敗因になったと思います。

――アタックに関しては振り返っていかがですか

アタックに関してはまだまだこれからなので、今は何よりもディフェンスの部分で修正していきたいと思います。

――これから修正していきたい部分や、意気込みを聞かせてください

次回僕が出るとしたら、ディフェンスを強みにすると言っている以上、ディフェンスについてこの一週間で考え直して、自分たちの強みを押し出せるようなゲームメイクをしたいと思います。

CTB中野将伍(スポ1=福岡・東筑)

――デビュー戦となりました。どのような意気込みを持っていましたか

まずは自分の力をしっかり出して強みである部分で戦っていければと思って入りました。

――ご自身の強みとはどんなところなのでしょうか

ボール持った時の強さだったり、コンタクトの部分ですね。

――ボールタッチの場面も目立ちました

もっと前に出なきゃいけないと意識しながらやっていたんですけど、やっぱり今回は結果もついてきませんでしたし、改善する部分も多かったですね。

――後半のチームの雰囲気はどうでしたか

後半の途中から相手のテンポでずるずると行ってしまった部分があったので、そこをしっかりディフェンスで持ちこたえられていればもっと自分たちの雰囲気だとか、プレーも出せたのかなと思います。若干、チームのテンポが良くない方向にいってしまいました。

――後半、6トライ許した要因としては何があったのでしょうか

ディフェンスのファーストタックルの場面で前に出られていて、そこから相手につけこまれたかなと思います。

――ご自身のプレーでうまくいかなった点はありますか

ボールをもらう立ち位置だったり、タイミングだったりといった部分がまだ合わせられなかったので、次はもっと自分の納得する形で準備をしたいですね。

――テーピングも巻いていましたが、ケガの調子はいかがですか

今週やっとケガから復帰して、まだ本調子ではない部分もあるのでこれから直していけたらと思います。ケガ自体は2ヶ月くらいかかると言われているものなので。

――悔しいデビュー戦となりましたが、初めて赤黒ジャージーを着た感想をお願いします

もっと体を張っていかなければいけないなと痛感しました。重みを感じてプレーしたいです。

――重みというのは

やはり、部員もたくさんいる中で、赤黒のジャージーは選ばれた人しか着れないので、他の着れなかった人の分の思いを背負ってしっかりプレーしたいと思いました。

――早大を選んだ理由は何ですか

自分が小さかったころに、ワセダはずっと優勝していて、その時から憧れの大学でした。自分もその強い大学でプレーしたいと思ったことがきっかけです。

――大学四年間で目指している目標はありますか

やはり、四年後のワールドカップに出場したいというのが個人の目標として強く思っています。チームとしては何よりも日本一奪還を目指します。

――早大の一員として今後チームの力になりたいところはありますか

1年生が多いので、思い切りのいいプレーを増やしていきたいです。それから、チームにも良い影響を与える存在になって、まとまったチームの一員になれたらなと思います。