FW陣が粘って辛勝。スクラムに収穫あり

ラグビー男子

 初夏の陽気の中、早大上井草グラウンドにて東大との定期戦が行われた。早大はB、Cチームを中心としたメンバー編成。上位チームへの足がかりとすべく、個人としてのアピールをテーマのひとつとして試合に臨んだ。キックオフ直後から自陣でのプレー時間が長くなってしまい、危うい試合展開となる。シーズン序盤から取り組んでいるダブルタックルを意識したディフェンスでトライまでは許さなかったものの、一つ一つの接点で差し込まれる場面が目立ち、東大にテンポの良いアタックを展開されてしまう。なんとか得点を重ねて勝利を挙げることはできたが、ハンドリングエラーやキック処理の場面でのミスが散見されるなど、満足のいく試合内容とはならなかった。

 前半を風上で迎えた早大。序盤は東大に継続的なアタックを許し、自陣でのプレーを余儀なくされる。敵陣に攻め込む場面も見られたが、あと一歩のところでボールを失い、得点には至らない。敵陣で得たペナルティーのほとんどでスクラムを選択するなど、スクラムへのこだわりを見せるもあと一歩を押し切れなかった。それでも前半17分、敵陣での相手ボールラインアウトからのパスをロック水野孟(基理3=東京・早実)がインターセプト。そのままインゴールまでボールを運び、先制に成功する。しかしその直後のキックオフで早大がノックオン。その流れから同点のトライを許してしまった。その後は東大FW陣に接点への集散で優位に立たれ、なかなかボールを奪えない。ハイパントキックの処理にもミスがあり、流れをつかめなかった。35分にWTB山川慶祐(社4=東京・早実)が、39分にまたしても水野が大外でパスを受け追加点を挙げ17-7とするも、不十分な内容で前半を終えた。

試合を通してスクラムにこだわった

 後半に入ると、早大は強化しているスクラムでプレッシャーをかけ、少しずつ試合をリードしていく。アタックでもリズムをつかみ始めた後半12分、敵陣で連続攻撃を仕掛けると、空いた裏のスペースにSO船越明義(社2=東京・早大学院)がキック。みずからそのボールを押さえ、後半最初のトライを挙げる。20分に1トライを献上してしまうも、その後はFW陣を中心に粘りを見せた。そうして迎えた試合終盤。38分に敵陣ゴール前スクラムで相手のペナルティーを誘う。するとここでもスクラムを選択。またしても東大がペナルティーを犯したが、スクラムにこだわり抜いた。5m強を一丸となって押し切り、NO・8小柴大和(法2=北海道・函館ラサール)がグラウンディング。31-12とし、ノーサイドとなった。

スクラムトライを挙げ、喜ぶFW陣

 なんとか勝利を挙げることはできたが、試合内容には多くの課題が残った。まだ本格的にアタックを構築していないとはいえ、イージーな場面でのハンドリングエラーは減らさなければならない。中盤でのハイパントキックへの対応にも不安が残る。ダブルタックルの精度が上がってきているだけに、その次の、ターンオーバーにつながるプレーをさらに強化していく必要もあるだろう。しかし、こだわっているスクラムでトライを挙げたことやダブルタックルの回数が増えたことなど、少しずつ成果が見えてきているのも事実だ。「ファンダメンタルなスキルが足りていない」というCTB高橋駿ゲームキャプテン(文構4=東京・早実)の言葉通り、個人の基礎スキルの向上がチーム力強化には不可欠な要素となるだろう。組織としてのシステムが成果を上げてきている今、もう一度個人にベクトルを向け、ステップアップを図っていきたいところだ。

(記事、写真 進藤翔太)

定期戦
早大 スコア 東大
前半 後半 得点 前半 後半
17 14
31 合計 12
【得点】▽トライ 水野2、佐藤健、山川 ▽ゴール 野口(1G)、船越(2G)
※得点者は早大のみ記載
早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
井上 大二郎 スポ2 愛知・千種
  後半39分交代→16三隅    
尾島 拓樹 商2 東京・早実
  後半0分交代→17鷲野    
小澤 祐仁 法2 東京・早大学院
水野 孟 基理3 東京・早実
  後半13分交代→20近田    
三輪 達哉 文2 三重・桑名
板垣 悠太 基理2 東京・玉川学園
佐藤 健 商2 東京・早大学院
小柴 大和 法2 北海道・函館ラサール
緒形 岳 スポ2 新潟・新発田
10 辺津 勘太 法2 東京・早実
  後半0分交代→22船越    
11 佐藤 史也 教3 東京・本郷
  後半24分交代→23中野    
12 野口 祐樹 人3 群馬・太田
13 ◎高橋 駿 文構4 東京・早実
14 山川 慶祐 社4 東京・早実
  後半39分交代→20’郷地    
15 作田 蓮太郎 教3 東京・早実
リザーブ
16 三隅 寛己 法2 東京・早実
17 鷲野 孝成 基理2 神奈川・桐蔭学園
19 埜田 啓太 基理3 東京・早実
21 堀越 友太 社2 東京・早実
20 近田 和 法2 東京・早実
21’ 栗原 慶 文構2 埼玉・早大本庄
22 船越 明義 社2 東京・早大学院
23 中野 厳 社3 東京・早大学院
20’ 郷地 裕貴 人3 神奈川・桐蔭学園
※◎はゲームキャプテン、監督は山下大悟(平15人卒=神奈川・桐蔭学園)
コメント

CTB高橋駿(文構4=東京・早実)

――まず、試合全体を振り返ってみていかがでしたか

まず、この試合のテーマとして、ディフェンスでのハードワーク、ダブルタックル、ジャガー(タックル後に起き上がってボールを越えていくこと)という三つと、個人としてのアピールというものがありました。試合を通して、スクラムも押してくれましたし、FWがすごく頑張ってくれて。それなのに、BKがディフェンスの時のゲインラインの攻防をうまくやれていなくて、次のセットが遅れてしまうという悪循環に陥ってしまいました。そこは改善点だなと思いました。

――まずはディフェンスの部分が重要ということですか

そうですね。今季のチームは、アタックというよりもディフェンスで勝つという方向性が決まっています。なので、そこは絶対に負けてはいけない部分だと思いますし、強みにしていかなければならない部分だと思います。

――ダブルタックルについてなのですが、少しずつ回数も増えてきたような印象です

そうですね。ダブルタックルの精度自体は、ずっといままでやってきていますし、かなり良くなってきていると思います。あとは、タックルに入る前のセットのスピードだったり、入った後も足を殺さないで、4本の足で戦い続けて、(接点を)越えていく動きといったところを徹底していきたいですね。

――アタックに関してはいかがでしたか

大事なところでBKが簡単なミスをしてしまう場面が多かったので、FWには申し訳ないなと思いました。

――FWのこの試合での働きについてはどうですか

本当に頑張ってくれたと思います。この試合で勝てたのは本当にFWのおかげだと思っています。僕ももっと試合中にFWを盛り立ててあげられるようにならないといけないなと思いました。

――ゲームキャプテンとして何か意識したことはありますか

先週の試合は後半に流れが悪くなってしまったので、きょうはそういうことがないように、周りをよく見て声を掛けられるように意識していました。ただ、4年生としてはもっと声の部分だったり、他の選手への気配りだったりが足りないと思ったので、改善していきたいです。

――風の影響からか、相手のハイパントキックに苦しめられていた印象でしたが、その点に関してはいかがですか

あれは単純にポジショニングとコミュニケーションの問題ですね。チームでSHはキックを取らないというルールがあって、FWが下がったりして対応していくということなんですけど、そこの連携がうまく取れていなかったですね。でも、個人のファンダメンタルなスキルが足りていないというところな大きいですね。BチームとしてもBKとしても、今後ああいったミスがあってはならないと思います。

――前半は風上に立ちながらもエリアを思うように取れていなかった印象です

そうですね。敵陣でプレーするということが一番大事なことなんですけど、うまくいかなかったですね。同じ話になってしまうんですけど、ここも個人のファンダメンタルなスキルが足りていなかったです。そこは練習していきたいですね。

――この試合のメンバー構成としてはどのような位置付けだったのでしょうか

BチームとCチームのミックスという感じです。

――この試合を終えて、どういった部分を次の試合につなげていきたいですか

きょうの試合を通して、個人のフィジカルもスキルも、Aチームの試合に出るには全然足りていなくて、Aチームの舞台にも立てないというレベルにあるということがわかったと思います。なので、一人一人がしっかりと目標を持って、ウェイトトレーニングであったり、栄養摂取であったり、スキルトレーニングであったりをやっていくしかないと思います。

プロップ井上大二郎(スポ2=愛知・千種)

――試合全体を振り返ってみていかがでしたか

気温が高い中での試合だったので、フィットネスが足りてないなと思いました。あと、ディフェンスの部分で相手を受けてしまって、食い込まれてしまう場面が多かったですね。しっかりダブルタックルして、ボールを越えていくという部分がやりきれていなかったです。そういうところから相手に良いテンポでボールを回されてしまったと思います。そこはしっかり改善して、FWからしっかりディフェンスできたらなと思います。

――ダブルタックルの数は増えていながらも、ターンオーバーまでつながる場面が少なかった印象ですが、その点に関してはいかがですか

2人でタックルには入れているんですけど、そこで勝ち切れていなくて。せっかくダブルタックルに入れたのに後ろに引いてしまう場面が多かったです。そうなるとタックルの後のファイトにもなかなかいけなくなってしまいますね。相手を仰向けに倒して、越えていくというシチュエーションをもっとつくれたら、良いディフェンスができてくると思います。

――スクラムにこだわっていく姿勢が試合を通して見えましたが、そこはチームとして徹底しているのですか

そうですね。チームとして、FWは第一にスクラムということで、すべてのスクラムでペナルティーを得るということ、ゴール前のスクラムだったらスクラムトライを狙う、ということをやっているので。最後の場面でトライを取れたのは良かったと思いますけど、もっと前半からできたのかなと思います。

――敵陣でのペナルティーは基本的にスクラムを選択していくのでしょうか

きょうの試合は個人としてもアピールしていこうという場だったので、自分たちのこだわっている部分をやろうということで、スクラムを選択していました。

――スクラムトライの場面を振り返ってみていかがですか

あの時にFWは2年生だけだったので、全員で取ろうという気持ちを最後まで全員が持ってたから取れたトライだと思います。形としてはあまり良いスクラムではなかったんですけど、取り切れたことは良かったと思いますね。

――トライ後はFW全体で喜び合っていましたね

そうですね。初めてのスクラムトライだったので、本当に嬉しかったです。

――次の試合に向けて、どういう部分を意識していきたいですか

あしたの試合もメンバーに入っているので、チャンスがあれば出場したいですね。でも、まだまだ自分の実力が足りていないのはわかっているので、もっともっと練習して、レベルアップして、しっかりとした実力をもってAチームに入れるように頑張っていきたいです。