ラグビーワールドカップ2015イングランド大会(W杯)。日本代表は、南アフリカ代表を下すなど代表史上初の3勝を記録し、世界を大いに驚かせた。その一員として早大のWTB/FB藤田慶和(スポ4=東福岡)は米国戦でトライを記録。大会終了後休むまもなく7人制日本代表に合流し、リオデジャネイロオリンピック(五輪)へ出場権獲得に貢献した。その他世界の有力選手が集う伝統あるチーム・バーバリアンズにも参加した藤田。多くの実績を携え早大に戻ってきた。世界での経験、そして早大でのプレー。日本ラグビー界の未来を担う期待の星が語る思いとは。
「ラグビーをできるのは幸せなこと」(藤田)
にこやかに取材に応じる藤田
——W杯を経験したことはご自身にとって、どのような意味がありましたか
南アフリカ戦には出場していないですが、あの場面に立ち会えたことは大きかったと思います。あのような経験はなかなかできないことだと思います。試合に出られない状況が続く中で、やっと最後にアメリカ戦に出場できました。良い経験をさせていただいたのと、もっとできることがあったのではないかという思いもあります。そのこと全てを含めて良い経験になったと思います。
——W杯のメンバーに選ばれた時の心境はいかがでしたか
WTBで競争が厳しかったので、選ばれて少しホッとした気持ちがありました。
——選出されない不安もありましたか
はい。ありましたね。エディーさん(エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC))もそういうところからプレッシャーをかけてくるので、毎日毎日が勝負でした。
——エディー・ジョーンズHCからのプレッシャーとはどのようなものでしたか
本当に毎日がテストのようで、1つ1つの試合や練習がセレクションに関わってくるので、すごく緊張感がありました。良い意味でいろいろな人と切磋琢磨(せっさたくま)でき、W杯のメンバーを競えたのではないかと思います。
——本番までの準備やモチベーションはいかがでしたか
自分たちが4年間やってきたことをしっかりと出すことを目標としていました。どのような相手に対しても、自分たちのラグビーを貫き通すようにと思っていました。そういったものがW杯までのモチベーションですね。
——良いモチベーションで臨めたということですね
はい。自分としても良いモチベーションで臨めましたね。
——南アフリカ戦の大金星を観た感想はいかがですか
本当に感動しました。世界中誰もが信じられなかったと思うのですが、ジャパンのメンバーだけは最後まで勝利を信じて諦めないことが結果につながったと思いますし、終わった時はこの4年間本当にハードなことをしてきたのでそれが実ったと感じました。本番前になると自分たちがやってきたことが本当に正しかったのか少し不安になることもあったのですが、南アフリカの勝利で本当に間違っていなかったと、たくさん犠牲にしてきたことも報われたという心境でした。涙も出てきましたし。すごくうれしかったですね。
——勝算はどれほどだと考えていましたか
勝つ雰囲気というのはチームの中にもありましたし、誰一人きょうの試合は負けるだろう、きょうの相手は南アフリカだから負けても大丈夫だという気持ちでは臨んでいませんでした。その気持ちを80分間切らさなかったことが前半の最後まで試合に表れていたと思います。そのようなことを外から見ていて感じました。
——勝てた要因に自分たちのラグビーが出せたこと、モチベーションが良かったことが挙げられますか
南アフリカの選手は実際に見ると大きいです。そのような選手に高坂さん(剛氏、総合格闘家)に教えていただいた低いタックルであったり、低く当たりにいくことと、エディーさんが口にしていた継続するラグビーがマッチした試合になっていたと思いますね。
——試合の映像はご覧になりましたか
あの試合は僕は観ていないですね。生で1回観ただけです
ね。逆に観ていないですね。
——スコットランド戦、サモア戦ではメンバー入りしませんでした。その中でご自身の役割とは何だと考えていましたか
チームのために何ができるのかを考えて行動していました。選手として行っているので悔しかった思いもありましたが、次に試合に出る時に何ができるのかなど、準備をしていました。メンバー外の選手はメンバー入りの選手とはまた違ったきつい練習をするので、そういうところをしっかりと耐えながらW杯というのをモチベーションにやっていました。
——最後のアメリカ戦でメンバー入りを果たしました。そのことを聞いた時の心境はいかがでしたか
本当にうれしかったです。W杯が始まって3週間くらいずっと僕はメンバー入りしていないのに、チームは勝っているという。僕も早く出場してチームに貢献したい思いがあったので、選ばれた時はやるぞという気持ちとこれまでにたまっているものを出そうと思い1週間準備しました。
——試合に臨むにあたり、エディー・ジョーンズHCから掛けられた言葉はありますか
4年間本当にこのためにやってきたので、自信を持ってやりなさいということを言われました。
——自分が起用された意図については、どのようなものと考えていますか
うーん。はっきりとは分かりませんが練習でも必死にアピールし、真剣に取り組んだ姿をエディーさんが見てくれて熱意が伝わったのではないかと思います。
——ピッチに足を踏み入れた時の思いはいかがでしたか
特別なものを感じましたね。グロスターの会場はウォームアップゲームのジョージア戦の会場でした。2年前にグロスターのチームとも試合をしているのですが、また雰囲気が違っているように思いました。W杯という舞台は本当に特別なものなんだというのを感じましたね。
——君が代を歌っている時に感極まることはありましたか
自分はなかったですね。緊張しないでいこうと思っていたので君が代を歌っている時はいつも通りに、きょうはこんなプレーをしようと考えながら歌っていました。
——実際のプレーを振り返っていかがですか
チームが点数的に負けている時に入ったので、キックオフでしっかりとチェイスし、積極的なプレーができたことはチームに勢いを与えられたのかなと思いますし、すごく良かったのではないかと思います。
——トイメンの選手は7人制でも活躍するWTBザック・テスト選手でしたが、対戦してみていかがでしたか
セブンズではことしのベスト7にも選ばれた実力ある選手ということは知っていたので、リスペクトして試合に臨みました。
——エディージャパンでは相手選手を一人ずつ研究すると伺いました。テスト選手についても研究しましたか
はい。結構入念にしました。足が速くステップワークが良いので、そこを気をつけながらディフェンスをしようと思っていました。
——1対1の場面ではいかがでしたか
実際に1対1のシーンはあまりなかったのですね。コミュニケーションミスで誰がタックルに行くのかあやふやになってしまい1回抜かれてしまう場面はありましたが、それ以外に関してはあまりザック・テスト選手を脅威に感じることはなかったですね。それは研究の成果だと思います。
——モールからトライとなりましたが、どの段階でモールに加わろうとしましたか
南アフリカ戦からモールをつくり、チャンスがあるなら入ることを史君(SH田中史朗=パナソニック)が言っていて。すごく良いモールができているのに、もう少し力は加わればトライにつながるシーンが世界選抜戦でも、ウルグアイ戦でも何本かあったので。その場面があれば(モールに)入ろうとミーティングでも言っていたので、リモールして良いかたちで押せていたので、僕もサポートしようと思い加わった結果、たまたま僕のところにボールが来た感じですね。
——トライにいけると思った瞬間はありましたか
正直なところ、トライにいけるとは思っていませんでした。モールでトライはいけるかなとは思っていましたが、自分が取れるとは思っていませんでした。たまたまモールがラインに対して平行に動いていたので、ボールを取って新しくモールをつくろうと思って、自分が芯になろうと思って出たらラインを越えていたという感じでした。狙っていたわけではなくて、「あ、トライだ」という感じでした(笑)。自分がバッと出た瞬間に歓声がワッと聞こえたんですよ。すごい歓声で今までに経験したことないものでしたね。それはすごく鮮明に覚えています。でもその後にTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)があるのかな、オブストラクションがあるのかなとちょっと不安になったところはありました。トライと認められ個人としてもうれしかったですし、良いモールをつくってくれたFWの方にも感謝しなきゃいけないなと感じています。
——トライを決めた後にWポーズをされていましたが、約束していたのですか
いや、約束はしていません。ちょうど南アフリカ戦の前くらいですかね。W杯期間中に早大のメンバーが応援ムービーを送ってきてくれて。すごくうれしかったですし、試合に出られない時もずっとそれを見て励まされました。元気が出ましたし恩返しができたらいいなと思っていたので、トライを取った後にみんなにありがとうの思いが届いたらいいなと思って、Wポーズをしたのですがテレビの半分くらいしか映らないという(笑)。僕がいろいろなところに遠征に行くことも、早大のみんなには迷惑を掛けているので迷惑かけた分の思いでこうしたポーズが出ました。
——早大ラグビー部も英国遠征中でした。会う機会はありましたか
直接会うことはなかったです。南アフリカ戦に来ていたようで、ワーっと会場が盛り上がっていた時に後ろから「慶和ー!」という声が聞こえたので、手を振ったくらいで話す時間はありませんでした。
——帰国してからの反響はいかがですか
空港に到着した時にあんなに人とカメラがいるのには驚きました。テレビでよく見る有名人が出てくるようなところを僕らが通っているイメージだったので、本当にびっくりでした。
——イギリス滞在時から日本の反響の様子はご存知でしたか
ホテルの中に日本のテレビを見られるリラックススペースがあったので、知っていました。毎日ラグビーの話題があるなと思っていました。
——帰国されてからも忙しかったですか
そうですね。驚きです。僕自身のことよりも一緒にやっていた五郎丸さん(歩、平20スポ卒=現ヤマハ発動機)などが出演していて、テレビをつけたらいる感じだったので、ラグビーブームが来ているなと感じました。
——ご自身も音楽番組に出演されましたね
はい(笑)。緊張しました。ラグビーの魅力などを伝えて、少しでも競技の発展に貢献したい思いがあるので。(音楽番組の)会場にいるお客さんはラグビーに関係ないことを目的に来ている方だったので、少しでもラグビーを知ってもらえたらいいなと思っていました。会場の雰囲気が楽しかったです。
——W杯の後には7人制日本代表に参加されていましたが、W杯から帰国してから7人制日本代表に合流するまでの1週間はどのように過ごされていましたか
平日は学校があったので全て学校に行って、早大の練習は参加しなかったのですが、外で見ながらチームとコミュニケーションを取っていました。土日は京都の実家の方に帰ってゆっくりしました。
——疲労の抜け具合としてはいかがでしたか
完全には抜けていなかったですね。なかなか忙しかったですし、学校もあるので。精神的には友達とご飯に行って話したりするなどリフレッシュできたのですが、肉体的には完全ではなかったですね。
——ご自身の7人制での役割はどのようなものだと考えていますか
たくさん動いて、相手をかき回すことです。ゲームメーカーになる、トライを取る、ラストパスを放ることも自分の役割だと思っています。
——ポジションとしてはどのようになりますか
SHとSOです。
——体重を4㌔落としたとのことですが、何日くらいで減量しましたか
香港に入ってからフィットネスを取り戻した感じがあります。セブンズのフィットネスを取り戻す、体重を落とすのを合わせて2週間くらいかかりましたね。
——4㌔落とすのはなかなか大変だと思いますがどのようにして落とされたのですか
大変でしたね。食事を制限したり、後はセブンズの練習は走るので、しっかりとそこで走ったりという感じですね。
——現在は体重は戻されていますか
そうですね。徐々に戻ってきています。
——見事にリオデジャネイロ五輪の出場権を獲得しましたが、大会を振り返ってみていかがでしたか
アジア大会だったので自分たちがやってきたことをしっかりとすれば、切符は勝ち取れると思い自分たちのやってきたことを信じてやってきました。一発勝負という部分で最後の香港戦はヒヤヒヤする場面はあったのですが、チームとしてやってくたことを後半に取り戻せたので逆転できたのかなと思います。
——世界の舞台を駆け抜けてきた1年間を振り返っていかがでしたか
1年間でまるまる体を動かさなかった日は2週間しかないので、ハードでしたが幸せだったなという感じですね。負傷を経験していて、(ラグビーを)できない辛さをたくさん知っているので、そういうところを考えると何もなくラグビーをできることは幸せなことだと思います。いろいろな方に感謝してプレーしたいと感じましたね。
——ちなみに他の日本代表の選手が6月の合宿は
もうやりたくないと言っているようですが、藤田選手はいかがですか
一緒です(笑)。一日中練習でした。体力的にボロボロでしたし、テーピングを練習前に巻いたりするのですが、テーピングを巻く部屋に入るのが嫌でしたね。(練習の時間が)来ないでほしいと思っていました。
——合宿の前にはバーバリアンズに選出されましたが、そこでのプレーはいかがでしたか
世界のトップレベルの選手が集まって、1週間で2試合するのですが、コミュニケーションが大切だなということを改めて実感した1週間となりました。
——特にこの選手がすごかったという選手はいますか
(WTBジョー・)ロコゾコですね。すごかったです。1試合目のアイルランドXV戦で一人だけ次元が違うというか、もはや遊んでましたね。やっぱりあれがオールブラックスで出続けてたWTBの一人なのかなと思いました。人間としても本当に良
い人で、ホテルに着いた時にたまたまそこにいて、お茶しようよと言われてお茶しました。
——どのようなことを話されたのですか
いろいろ僕のことを聞いてきたりとか、向こうのことを軽く話してくれたりしました。
——トゥイッケナムスタジアムのピッチに立ってみた感想はいかがでしたか
セブンズでやったことがあるので特別感動したということはなかったのですが、グラウンドが広く感じたという印象はありました。
早大でのプレー
復帰した早慶戦ではマークに遭いながらもゲインを見せた
——代表から戻ってきての切り替えという面ではいかがでしょうか
それはできました。15人制から7人制への切り替えもできましたし、カテゴリーは違いますが切り替えという面では同じなので。
——これから個人とチームでフォーカスしていく面は何ですか
チームとしては、早慶戦で良い準備はできていたと思ったのですが、精度が悪くミスがあれだけ出てしまったということは準備がまだまだ足りないということだったので、良い準備をして精度の高いラグビーをしていかないといけないなと思います。個人としてはもっと早大の全てのプレーにおいて勢いを与えられるようなプレーができるようにもっと相手を抜いてゲインしていかないといけないと思いますし、後ろから声を出して前の人間を動かしていけないなと思います。
——これまでの早大の試合映像はご覧になっていますか
はい。英国遠征中、分析の人にYoutubeにアップして送ってくれと頼んでいました。
——試合を見てどのような印象を持ちましたか
勝てないところが、自分の中でもすごく悔しかったです。チームの状況というものはLINEを通じて知っていましたが実際にはその場におらず分からない部分もありました。それでも帰ってきたら僕が思っている状況とは全然違う感じで、もっと悪い状況、チーム力が落ちていてスキルが上がっていないと試合やそのスコアを見て思っていたのですが、そういうことはなくスキルもチーム力も上がっている感じですし、あと何より選手一人一人が自立して行動できているところがすごい成長していると実感しています。
——早慶戦はミスが多いとのことでしたが、それでも勝てたのはメンタルの部分が大きいのでしょうか
そうですね。メンタルトレーニングというものを毎週はじめにやっているのですが、自分で考えて行動できるようにしています。普通に生活している中で人前で話すことや、自分の思いをまとめて人に伝えることってあまりないと思うのですが、そういうのをメンタルトレーニングで話し合ったりしています。部屋の中でやっていることが、緊迫した状況の中でも皆が意見を出し合って次に何をしようとか、点数と時間を見て次のプレーを瞬時に選択することができたので、勝利につながったのではないかと思います。
——メンタルトレーニングは今季一貫してやっているものですか
そうですね。7月くらいからやっているみたいなのですが、僕も全然知らなくて。何それ?いう感じだったのですが、実際にやってみると身につくものですね。皆真剣に取り組んでいました。
——日本代表ではそのようなことをされているのですか
特にはやっていません。メンタルコーチはいるのですが、チームに還元するというよりは個人にフォーカスして、改善していくものでした。
——早慶戦は一昨年以来2回目ですが、その時と比べていかがですか
(一昨年は)簡単に勝たせてもらったいう感じでそんなに苦労した早慶戦ではなかったのですが、ことしは慶大の持ち味であるタックルを粘り強く決められてあの点数になったと思います。早大がずっと攻めていたのにあれだけしか点数を取れない、逆にワンチャンスで点を取られるというということがあったので、これから格上の相手とプレーしていく中で慶大のプレーを学ばないといけないです。リスペクトして盗めるところは盗めたらいいと思います。
——慶大戦では高校の後輩であるフランカー廣川翔也選手と対戦しましたが意識されていましたか
後輩には負けられないと思っていました。
——試合後に何か話されていましたね
「勝ちたかったです」と言ってきたので「まだ早い」と返しました(笑)。
——副将として心がけていることは何ですか
チームに良い影響を与えるということと、リーダーとして引っ張っていくような言動や行動をしていくということを心がけてやっています。
——CTB岡田一平主将(スポ4=大阪・常翔学園)、NO・8佐藤穣司副将(スポ4=山梨・日川)との連携はいかがですか
バランスの取れた3人だと思いますしうまく表現ができませんが、僕が気がつけるところ、一平が気がつけるところ、穣司が気がつけるところはチームに意味があることだったり違う視点からチームを見ることができているので、そこは良いことだと思いますし、バランスが取れているんじゃないかと思いますね。
——岡田主将に取材した際に藤田選手の声掛けで気持ちが軽くなったと伺いました。どのような声掛けをしましたか
「思いっきり前に突っ込んでいけ」と言いました。一平の持ち味がそこだと思うので、そう言いました。そこがなくなると一平らしさが出ないと思ったので「マネジメントは後ろで俺がするから」と軽く言いました。キャプテンらしいキャプテンというよりも、強みを生かしてチームを引っ張っていく方が良いキャプテンだと思うので。リーチ(マイケル)さんが言葉でというよりも体やプレーで引っ張るというキャプテンだったので、思いっきり自分の強みを生かしてほしいと思いました。軽い感じで声掛けしましたね。
——3人それぞれ違う視点があるそうですが、佐藤穣副将の印象はいかがですか
穣司はいろいろなことを冷静に見ることができますし、FWをまとめられる存在ですね。ユニットに分かれた時に僕と一平はFWのところにはいないので、穣司が核となってまとまっていると思いますし、穣司の意識の高さは下の学年のリーダー陣である桑野(詠真、スポ3=福岡・筑紫)や加藤(広人、スポ2=秋田工)に伝染して、下の学年で頑張っている人につられて同期も頑張るというような雰囲気がありますね。宮里(侑樹、スポ1=沖縄・名護商工)や早慶戦でスクラムを押してくれた千葉(太一、教3=東京・早実)や佐田(涼祐、社3=東京・早実)に伝染して、良いかたちで練習であったり、ミーティングであったり、出来ていると思います。
——その他の同期との絆の部分について教えて下さい
絆と言うと恥ずかしいですが、僕が4年間ずっと海外に出回っていたわがままを許してくれた、認めてくれたことは本当に感謝しています。それは同期だけではなく、チーム全員、監督、コーチにも感謝しています。それをどういうかたちで恩返しするのかを考えるとチームに良い影響を与えて還元し、最高のかたちで終わることが恩返しだと思うので、それを実現させていきたいと思います。最大でもあと6試合しかないので、この6試合をまずは戦えるように、試合に向けて時間を大切にして仲間との時間を大切にしながら準備していきたいと思います。
——プライベートの部分ではいかがですか
試合前の夜も門田(成朗、法4=埼玉・早大本庄)と滝沢(祐樹、基理4=福島)と話していましたね。門田とは部屋が一緒で、滝沢も寮なので。一緒にお茶をしながら「あすの試合はどんな風にしようか」と話しをしていたら、そのお店に穣司(佐藤穣司副将)と志(盛田志、スポ4=広島・尾道)も来て。ラグビーのことだけではなく、私生活の部分でもいろいろ話すので、私生活の面でも仲は良いと思います。まとまっている学年だと思いますね。
——部屋割りは門田選手との2人部屋ですか
いや。山口(和慶、スポ3=福岡)も一緒の3人部屋です。
——部屋ではどのようなことを話しますか
門田君が寝るの早過ぎるんですよね(笑)。僕が部屋に戻ると電気が消えていて寝ているという状況なので。夜は「もう寝てるんや」という感じですけど、練習前や早慶戦前は門田がBチームで僕がAチームだったので、「練習で絶対に抜いてやるからな」とちょっとライバル的な感じで言ってきたりとかしますね。毎日結構楽しく過ごさせてもらっています。
——門田選手は何時ごろに就寝しますか
10時ごろですかね?本当に早いですよ(笑)。何年生やっていう(笑)。
——藤田選手と同じ早慶戦で復帰したSO横山陽介選手(スポ2=神奈川・桐蔭学園)との連携についてはいかがですか
試合のピンチになってしまった部分を、振り返るとまだまだできていないですね。1年ぶりくらいなので、しっかりと深めていかないといけないと思います。僕もそうですが横山も早慶戦は全く良くなかったので、もっと精度を高くやっていかないと明大には勝てないと思います。しっかりとした準備をしていきたいと思います。
——横山選手のプレーの魅力とは何でしょうか
キックですね。あとはラインを前に上げるパスができるところですかね。横山もラグビーを完全に理解して、流れなどを読めているかと言われたらまだまだ足りていないところはあると思いますし、精度の低い部分もあるのでもっと突き詰めてやっていかないといけないなと僕は思っています。それでも期待している後輩の1人ですね。
——昨年のケガのリハビリの時は一緒にされていましたか
そうですね。その時にはよく話していまし、気も合う感じですね。
——他に見どころのある下級生はいますか
うーん。加藤(広人)ですね。ことしU-20日本代表で世界の舞台を経験してすごく成長して帰ってきましたし、コミュニケーション能力も上がっていると思います。本当にひた向きにプレーしてくれて、チームを穣司と一緒にFWから引っ張ってくれていると思います。
——日本代表から戻った藤田選手がチームにもたらしたことで、15人の分析の他に何かありますか
ユニットでのミーティングであったり、Aチームならそのチーム内での反省と見直しであったりですかね。自分たちのゲームプランの見直すミーティングであったりとか、たくさんのミーティングをすることによって、自分たちのやるべきことをはっきりとさせたり、相手のウィークポイントをしっかりと確認することができたと思います。
——日本代表でもそれは徹底してやていましたか
そうですね。ジャパンだとスケジュールに入っていたりするほどだったのですが、早大の場合は練習と書いてあるだけで時間も組めなかったので。そこは岡田から集まろうとLINEで呼びかけてくれたりして、選手主体でできているので良いんじゃないかと思います。
——日本代表では選手たちの自主性で南アフリカ戦の最後のスクラムにつながったとクローズアップされていました。早大のチームもそのような印象をお持ちですか
そうですね。昨年よりは自分たちでやろう、新しいことをしようとする意識が高くなっている気がします。
——戦術面で言えば日本代表ではシェイプ、一方で早大ではポッドを用いているかと思います。違ったスタイルですが共通項はありますか
それぞれ違った戦術ですが、ボールを継続することは変わらないので。シェイプの方ががよく走るのですが、ポッドだとより良い判断を求められる感じです。慶大のラグビーが走って、数を余らせるシェイプのかたちですね。ポッドは空いているスペースを見つけてそこにボールを運んでいくかたちなので、求められる役割は変わってきますね。
——早大で伸ばしていくべき部分とはどのような点ですか
僕がマークされるのは分かっているので、その中でどうしていくべきかを考えています。
——早大の試合を入学前にご覧になったことはありますか
ありますね。曽我部さん(佳憲、平19教卒=現ヤマハ発動機)、矢富さん(勇毅、平19スポ卒=現ヤマハ発動機)、五郎丸さんの時代くらいですかね。すごいなと感じていました。
——W杯で一緒だった五郎丸選手と早大の話をしましたか
いや。部屋などは廣瀬(俊朗=東芝)さんや堅樹(福岡堅樹=筑波大)さんと一緒だったので、そんなに話していません。W杯では言われませんでしたが、後からしっかり頑張れよと言われました。
——現在南アフリカ代表SOハンドレ・ポラード選手など若い選手がプロとして活躍する中で、日本の選手は大学でプレーすることが多いと思いますが、大学ラグビーのことをどのように捉えていますか
学歴社会なので、そういう文化の中で大学に入るという状況にあると思います。難しい話になりますが、世界との差はここでできると思うんですよね。大学ラグビーを改善しなければならないということはあると思います。大学だけで競っているのではなくてしっかりと世界を見てやっていかないといけないなとは感じています。
——帰国してからの授業は忙しいですか
教育の免許も取っているので、普通の4年生よりは忙しいかなと思います。
——どのコースで学んでいらっしゃるのですか
スポーツ科学部の教育コースですね。
——将来は指導者になりたいのですか
まだ分からないですが、子供たちに夢を与えるのが好きなので、将来何か困ったときにそういう仕事につけたらいいなと思って勉強していただいています。
——お友達の方は試合に見に来たりしますか
この前も見に来てくれましたし、うれしかったですね。
——W杯から帰ってきた際にはどのような言葉をかけられましたか
お疲れ様ということを言ってくれましたし、応援してたよということも言ってくれました。
——早明戦、伝統の一戦となりますが、どのように捉えていますか
大切な試合だと思いますし、(全国)大学選手権に向けても重要なので、早大としては、良い準備をしないといけないなと思います。
——早明戦は3年連続となりますが、明大に対するイメージはありますか
明大は強いのでそれ以上にしっかりと準備していかないとなということは感じていますね。
——大学選手権も3年連続ですね
過去2回は戦っていますが、また(今季のチームは)前と違うチームなので、自分たちのチームで何ができるかというところをチャレンジしていきたいと思います。
——最後になりますが、早明戦、大学選手権に向けた意気込みを改めてお願いします
これからあと6試合戦うためには、一つ一つの試合でレベルアップ、ステップアップしていかないといけないと思います。それができるチームだと僕の中で確信しているので、意識を高く持って日々充実させていきたいと思っています。
——ありがとうございました!
(取材・編集 鈴木泰介、高畑幸)
最後の大一番へ意気込みを書いてもらいました。手に持つのはW杯でも使用したスパイクです!
◆藤田慶和(ふじた・よしかず)
1993年(平5)9月8日生まれ。身長185センチ、体重93キロ。東福岡高出身。スポーツ科学部4年。ポジションはFB。W杯の思い出の品として米国戦で履いた黄色のスパイクを持参した藤田選手。このスパイクは現役バリバリで早慶戦でも同じものを履いていました(写真参照)。早明戦でも藤田選手の足元に注目です!