ラグビーでは試合前日の練習のことを、主将が中心となって行われてきた伝統から『キャプテンズラン』という。アジアラグビーチャンピオンシップ2015の香港戦を控え、日本代表は秩父宮ラグビー場でキャプテンズランを実施。私たち早稲田スポーツ新聞会は招待を受け、練習を取材した。
バスで秩父宮に到着するやいなやすぐグラウンドに姿を現した日本代表の選手。全員が揃うと、早大OBで香港戦のゲームキャプテンを務めるプロップ畠山健介(平20スポ卒=現サントリー)を中心に円陣が組まれ、練習が始まった。まずは3グループに分かれ、パス・ラン・ウエイトのメニューをローテーションでこなすトレーニング。ウォーミングアップとは思えないほど強度が高く、コーチが「あと30秒」などと細かく指示を出すなど綿密なタイムスケジュールのもとに行われた。その後は全体でキックオフを想定した実戦練習に。1プレーが終わるごとに即座に笛が吹かれ、選手は再び次のプレーに備えセットした。次いで行われたのはペナルティーキックを得た後にタッチに蹴り出し、すぐにラインアウトを行うという場面を想定したもの。秋に控えるラグビーワールドカップイングランド大会(W杯)の初戦となる南アフリカ戦を念頭に置き、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが「世界で一番大きい相手」という相手に対し、体格差の影響を最小限に抑えるという工夫が見て取れた。練習の公開はここで終わったが、冒頭だけでも日本代表の充実ぶりがうかがえる内容だった。
試合を翌日に控え、円陣で集中力を高める日本代表のメンバー
練習後にはエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)、副将で早大OBのFB五郎丸歩(平20スポ卒=現ヤマハ発動機)、豪州から帰国したばかりであるWTB山田章人(パナソニック)の囲み取材が行われた。各ポジションで展開される激しいポジション争いにジョーンズHCは「プレッシャーは全選手にかかっている」とコメント。五郎丸は「選手は自分のベストをグラウンドで表現する」と意気込んだ。また、早大のWTB藤田慶和副将(スポ4=東福岡)ら若手選手について、ジョーンズHCは「世界で戦うには何が必要か理解している山田をお手本にして欲しい」と語る一方、山田は「同じ20代」と冗談めかして答えた。
香港戦はベンチスタートの藤田。限られた試合時間でアピールしたい
この取材で、現段階での日本代表の活動がすでにW杯を一直線に見据えたものであることがはっきりと見て取れた。それは代表内でのサバイバルレースをも意味する。激しいポジション争いの渦中にある藤田にとっても正念場が続くだろう。いずれにせよ個々の、そしてチームとしての決して緩むことのないハードワークが、イングランドでの歓喜につながるはずだ。
(記事 鈴木泰介、写真 進藤翔太)