全明大に完勝も全慶大に勝ち切れず

ラグビー男子

 東日本大震災の復興支援を目指し、本年で5回目の開催となった早慶明の三大学によるチャリティーマッチ。いまだ完全に復興したとは言えない被災地のため、ことしも大学ラグビーをけん引する三大学がタッグを組んだ。試合前には売り上げの全額をJRFUラグビーファミリー支援会に寄付するチャリティーオークションが催され、会場では現役部員が来場者に募金を呼びかけた。試合は各校ともにOBと現役の混成チームが総当たりで40分ずつ対戦。現役選手にとってはトップリーグで活躍する選手とのプレーで学ぶ絶好の機会となった。メインイベントであるチャリティーマッチでは全明大には完勝を収めたものの、全慶大にはなんとかドローに持ち込むという結果に終わった全早大。現役部員にとって、翌週から始まる関東大学春季大会に向け各々が課題と収穫を発見することができた。

(記事 菅原拓人)

★全明大に粘り勝ち。春の初陣を零封で飾る

盛田は攻守に渡り際立ったプレーを見せた

 三校のプライドを懸けて戦う今大会。全早大はまず全明大と対戦した。試合開始早々から攻め込まれる全早大だったが、前日のみという短い練習期間を感じさせないチーム一丸となったディフェンスでトライまでは許さない。なかなか攻撃のリズムはつかめないまま迎えた15分。敵陣ゴール前でのマイボールスクラムを猛プッシュ。FWが売りの全明大を押し切り、NO・8佐藤穣司副将(スポ4=山梨・日川)がボールを抑えて先制点を挙げた。お互いにミスが目立ち始めた試合中盤。ここでもスコアを動かしたのは全早大だった。敵陣で得たペナルティーからロック岩井哲史(平23教卒=現中部電力)がタテに切り込みラインブレイクを果たすと、素早くボールを動かしWTB本田宗詩(スポ3=福岡)がインゴールに叩き込む。さらに40分には佐藤穣が相手のパスミスからチャンスをつくり、サポートに入ったCTB盛田志(スポ4=広島・尾道)、FB田邊秀樹(平22スポ卒=現神戸製鋼)が相手ディフェンスを冷静にパスでかわして最後は盛田が右中間にトライ。ロスタイムの全明大最後の攻撃も落ち着いて防ぎ切り、21-0で完勝を収めた。

(記事 進藤翔太、写真 高畑幸)

★ラストプレーで粘り見せるも引き分け

パワーとスピードを兼ねたランでトライを奪った勝浦

 全慶大戦ではペナルティーを機に5点を先制されてしまう。また、序盤は相手の堅いディフェンスに敵陣に踏み込むことができず好機を見出だせない。15分、ターンオーバーからプロップ伊藤平一郎(平成25スポ卒=現ヤマハ発動機)がトライを決めてようやく同点に追いつくも、直後に追加点を許してしまった。その後もそれぞれが1トライずつ奪い、試合は均衡状態に。それでも相手のペナルティーから右へパスをつなぎ、大外のWTB勝浦秋(スポ3=愛知・千種)が相手をかわして得点を挙げる好プレーも見られた。最大の見せ場が訪れたのは44分、17-24で迎えたラストワンプレー。ゴールライン手前でのマイボールスクラムから粘り強く攻め続ける。ミスやペナルティーを取られることなく攻撃を展開し、最後はWTB深津健吾(平27スポ卒=現リコー)が左大外からインゴールに飛び込んだ。SO浅見晋吾(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がしっかりとゴールキックを成功し24-24で試合終了。最後は全早大が意地を見せつけた結果となった。

(記事 黒田菜々子、写真 副島美沙子)

結果

○全早大21-0全明大


△全早大24-24全慶大



★いよいよシーズンが開幕!

 7人制ラグビーやチャリティーマッチを終え、いよいよ次週から春シーズンが本格的に始まる。関東大学春季大会のAグループに所属する早大は帝京大や東海大といった強豪校との試合が予定されており、フィジカル面をはじめ冬場の鍛錬の成果を試す場となるだろう。まずは5月5日の流通経大との初戦でどのようなプレーを見せるのか、注目が集まる。

【関東大学春季大会の日程】

5月5日(火)12:00~ 対流通経大 @秩父宮ラグビー場

5月23日(土)13:00~ 対法大 @法大多摩グラウンド

5月31日(日)13:00~ 対東海大 @早大上井草グラウンド

6月7日(日)13:00~ 対帝京大 @早大上井草グラウンド

6月21日(日)13:00~ 対明大 @盛岡南公園球技場

コメント

後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)

――大会を振り返って感想をお願いします

ALL早慶明ということで、試合に関してはキャプテンを始めリーダーを中心にやってもらいました。私としては昨季不本意なかたちで終わってしまった後、今季初めての公式戦ということで、きょうから新たな一歩を踏み出しました。OBにはワセダのプライドを伝えてくれとお願いをしていました。前半のメイジ戦に関しては、私としても非常に評価していて、アタックもディフェンスも良い部分がありました。その勢いのままケイオーとの試合もいきたかったのですが、引き分けに終わったということで、ワセダの戦力的な実状を映し出しているのかなとも思っています。この結果を持ち帰って今後に生かしたいと思います。

プロップ伊藤雄大ゲームキャプテン(平17人卒=現三菱重工相模原)

――大会を振り返って感想をお願いします

全早大のキャプテンを務めた伊藤です。本日はALL早慶明ということで、自分の中では気合いが入っていました。個人的な話だと仲の良い後輩がきょう引退するということで絶対に勝ちたいという気持ちでいたのですが、最後は全慶大と引き分けてしまいました。得失点差を考えれば優勝ではありますが(笑)。現役はなかなか結果が出ていないなか、OBとして現役に何か伝えられたらいいなと思っていたので、少しでも伝えられることができて、その点はすごくよかったです。あと、いまら帝京大の1強時代が続いているのですが、ワセダ、ケイオー、メイジの3校も強くないと大学ラグビーは盛り上がらないと思います。帝京大を倒すにはワセダじゃないといけないと思いますし、そうでなければケイオーかメイジであってほしいので、このような機会を増やして、より強い3校になれればなと思います。本日はありがとうございました。

ロック大峯功三前主将(平27スポ卒=現FWコーチ)

――全慶大戦に出場されましたが、試合を振り返っていかがですか

慶大に勝ちたかったので、引き分けになってしまって歯がゆい気持ちが残っています。最後に負けずに同点になったのは良かったと思います。

――ラストまでもつれる展開となりましたが、最後はどのような気持ちでプレーされていましたか

絶対に負けられないというプライドですね。最後の最後まで粘った結果ゴールが入ったというのもあると思いますし、良い最後だったと思います。

――全明大戦をご覧になっていてどのような感想を持たれましたか

OBの方たちがしっかりと良いディフェンスをしていて、すごく勉強になりました。

――母校のプライドを懸けた戦いだったかと思いますが、今大会を振り返っていかがですか

引退される先輩たちもいますし、初めて(赤黒の)ジャージを着てプレーする人もいますし、ある意味いろんなスタートという意味で大事なゲームだったと思います。負けることなく終われたことはすごく良かったと思います。

――早大を卒業されて、環境の変化という面ではいかがですか

新しくラグビーを見つめなおす良い時間だなと思っています。

――コーチをされていますが、チームを見ていてどのように感じていますか

特にジュニアのCチームとDチームを見ているのですが、基礎を中心に良い練習ができていると思います。

――コーチとして、そしてOBとして本日の試合での現役選手の動きを見て感想をお願いします

初めての15人制ということはあったかと思いますが、もっとアグレッシブに動いてほしかったなと思います。

――これから関東大学春季大会も始まりますが、現役選手に向けてメッセージをお願いします

春に基礎の部分を固めれば良いシーズンを送れると思うので、しっかり頑張ってもらいたいです。

NO・8佐藤穰司副将(スポ4=山梨・日川)

――本日の試合を振り返っていただいて、いかがですか

最初の全明大戦に関してはOBの方も多く出場されていました。(全国大学選手権)優勝経験者の方なども多くいるなかで、接点の激しさやこぼれ球への反応、リーダーシップの部分など、学ぶところが多かったです。現役に関しては、ディフェンスの部分で受けているシーンが多かったかなと思います。そこはチームに持ち帰り、改善していこうと思います。

――チャリティーマッチでしたが、どのような気持ちで臨まれましたか

被災地の方にと思いつつ、OBの方とプレーできる機会なので、いろいろなことを吸収したいと考えていました。

――OBの方からアドバイスされたことはありましたか

僕自身にはあまりなかったのですが、プレー中での声掛けであったり試合前の集中力の高め方であったり、意識の持ち方などは見習いたいと思いました。

――春シーズンに向けて、意気込みを教えてください

来週から春シーズンが始まるので、一週間で準備をしていいかたちで入り、そこから一歩ずつ成長して秋に向けて頑張っていきたいです。

CTB盛田志(スポ4=広島・尾道)

――まず本日の試合を振り返ってみていかがでしたか

今シーズン初トライが取れましたし、ぼくは全明大戦しか出ていないのですが、内容もそこまで悪いものではなかったので良かったのではないかと思います。

――多くのOBの方々との試合となりましたが実際に共にプレーしてみていかがでしたか

試合の前日にメンバーで練習する機会があって、その時は緊張したんですけど、実際に試合となるとやっぱり頼もしくて、自分自身も落ち着いてプレーすることが出来ました。

――OBの方々の中で、特に参考になったような方はいらっしゃいますか

SOの久木元さん(孝成、平18教卒=大分舞鶴)から色々とアドバイスを頂きながら練習も試合もできたので、すごく勉強になりました。

――あまりメンバーで練習する時間がなかったにも関わらずBKとしてのディフェンスが良かったように感じましたが、それに関してはいかがですか

OBの方々を含めて、FWが内側からきっちりセットしてくれたので、BKとしてもすごくやりやすかったというのはありますね。

――今シーズン初トライも決められましたが、この試合のご自身のプレーはどう評価されていますか

そんなに良くもなかったのですけど、結果として田邊さん(秀樹、平22スポ卒=現神戸製鋼)の力もありトライを取れたので、この調子でやっていきたいと思います。

――3週間連続で赤黒を着てのプレーとなりましたが、それに関してはどう評価されていますか

まだここからかな、と。ここが目標ではないので。最終的にずっと赤黒を着続けていけるように体のケアもしながら日々成長していきたいと思います。

――来週の流通経大戦が15人制としては今季初の試合となりますが、それに向けてはいかがですか

もちろんチームとしても勝つというのは絶対的な目標としてあるのですけど、個人としては、ワセダのラグビーがことしはちょっと変わった形になるので、それにフィットして、CTBとして仕事して、体を張れればいいなと思います。

――ラストイヤーとなる今季に向けた意気込みをお願いします

まだ全然成長できていると思うので、守るのではなく、最後の最後まで攻め続けたと思います。

CTB矢野健人(商3=東京・早実)

――全慶大との試合に出場してみていかがでしたか

結構走れると思っていたのですが走れなくて、ハードな試合でした。

――ディフェンスが厳しく自由に走れなかったということでしょうか

いや、体力的に走れませんでした。15人制としては今季の初試合だったので、きつかったですね。

――メンバーに入った経緯を教えてください

後藤さん(禎和監督)がセレクトされたと思うのですが、詳しいことは分からないです。

――復興支援のチャリティーマッチということで、何か思うところもありますか

試合前にイベントがあって、観てくれたスクール生など小さい子たちにもワセダを目指してもらえるようかっこいい試合をしようとしたのですが、最後ギリギリの試合になってしまったので(笑)。もっと頑張っていきたいと思います。

――OBも多数参加されましたが、どれくらいの練習期間でしたか

前日に1時間やったくらいですね。

――練習や試合を通じて得たことはありますか

トップリーガーのコミュニケーションの能力やプレーの正確さに圧倒されました。

――2週間前のセブンズから赤黒を着られていますが、手応えを聞かせてください

1、2年の時は大事なところでけがをしてしまい出られなかったことと比べ、まだまだ未熟ですが一つ一つ上手くはなっているのかなと思います。

――通用している部分はどのようなところですか

ハンドリングスキルを始めアタックは通用していると思います。ディフェンスがまだまだですね。

――ここから本格的に春シーズンが始まりますが、意気込みを聞かせてください

けがに気を付けて、一生懸命精進していきたいと思います!

WTB勝浦秋(スポ3=愛知・千種)

――OBの方と共にプレーしてみていかがでしたか

3人入ったのですけど、全員知り合いだったということと、OBの方が少なかったので普段通りできました。サインとかも知っているので普段通りのプレーができたと思います。

――WTBでの出場でしたが昨季からポジション変更されたのには理由があるのですか

昨季とアタックフォーメーションがかなり変わって、それだと僕はCTBよりWTBの方が向いているのではないかとコーチ陣から言われてWTBやってみないかとなりました。練習はずっとWTBでやっていたのですけど、試合に出たのはこの日が初めてです。

――実際にやってみていかがですか

コーチ陣からも言われるのですが、まだ十分に分かっていないみたいで動きとかができていないです。でもボールを取ってトライできたのは良かったと思います。

――7人制から出場されていますが、ご自身の調子はいかがですか

昨季と比べてボールを持っている回数は多くなったかなと思います。

――この試合を通して課題など見つかりましたか

やはりWTBの動きが慣れていないところです。キックの処理の仕方とかFBとのコミュニケーションとか、そういうところをもっと勉強していきたいと思います。

――今季はWTBとして出場されるご予定ですか

4月にWTBをやってみないかと言われたのですが、そのときは完璧にコンバートする訳ではなくて、一回やってみないかという感じだったのでこれからWTBでやっていくかはまだ分からないです。

――今シーズンはどのようなシーズンにしていきたいですか

大前提として負けないということです。自分の強みがアタックなので昨季以上にアタックで活躍したいと思います。

WTB早田健二(平22スポ卒=現九州電力)

――この試合を振り返っていかがですか

久しぶりにワセダのジャージーを着て試合をしたので、大学時代を思い出して身の引き締まる思いでできました。

――トライにつながる好ランもありましたが、振り返っていかがでしたか

ワセダのジャージーを着たからには勝たなければならないという意識が出てくるので、後輩たちもいろいろな試合があると思いますが勝ちを意識して頑張って欲しいと思います。

――最近の早大のプレーはご覧になっていますか

そうですね。貪欲に勝ちにこだわるプレーをして、帝京大が連覇をしていますが、牙城を崩してもらいたいと思います。

――重ね重ねになりますが後輩にメッセージをお願いします

負けて終わったときよりも勝って終わったときの方が得るものは大きいと思うので、勝って終えられるように頑張ってくださいということを伝えたいと思います。