【連載】第4回 フランカー加藤広人×フランカー布巻峻介副将×NO・8佐藤穣司

ラグビー男子

 連載第4回にお送りするのは、フランカー布巻峻介副将(スポ4=東福岡)、フランカー加藤広人(スポ1=秋田工)、NO・8佐藤穣司(スポ3=山梨・日川)によるバックロー対談。学年や出身校、プレースタイルは異なるが、チームで不動の地位を築き上げている3選手に、今季の振り返りや互いの印象、来るべきビッグゲームへの思いなど、ざっくばらんに語っていただいた。

※この取材は11月13日に行われたものです。

攻守の要となるバックロー

チームの核として躍動する布巻

――このメンバーでバックロー対談をやると聞いたときの率直な感想を教えてください

布巻 新鮮でした。

加藤 テレビで観てきたすごい選手と対談させていただけて光栄だなと思いました。

――私生活でも交流は多いのですか

佐藤穣 僕は下の階なので、寮にいるときはごはんとかお風呂のときとかしか会わないんですよね。

――『バックロー会』のようなものはあるのですか

佐藤穣 僕は行ってないんですけど、バックローでディズニーランドに行ったりというのはありましたね。

――布巻選手と加藤選手は行かれたのですか

布巻 僕も行ってないです(笑)。

加藤 僕もです(笑)。

――フランカーのお二人はポジション練習などで関わりが多いと思いますが、普段も話をしたりするのですか

布巻 加藤はもともとロックで練習していて、最近バックローの練習に入ったので、いままでは練習でもそんなに関わりがなかったんですよね。

――布巻選手は春の特集時、期待の選手として佐藤穣選手と加藤選手の名前を挙げていましたが、いまその二人と組んでみていかがですか

布巻 非常に頼もしいですね。バックローはコンビプレーはそんなにないんですけど、個人個人が結果を出すことで良いバックローになってくると思います。

――加藤選手は激しいポジション争いの末、1年生ながらスタメンの座を手に入れました。赤黒に袖を通してどのようなお気持ちですか

加藤 評価してもらったのは走力とか身長の高さを生かした高いプレーの部分だと思います。試合になれば学年は関係ないと思うので、持ち味を全面に出して頑張りたいと思います。

――先輩方から何かアドバイスを受けることはありますか

加藤 自分はやっぱりまだまだなので、いろいろなところで「もっとこうした方が良い」とか言われることは多いですね。

――布巻選手と佐藤穣選手から見て、加藤選手の印象はいかがですか

佐藤穣 僕の1年生のときにちょっと似ているなと思います。

――具体的にどういった部分が似ていると感じるのですか

佐藤穣 試合後とかに思うところがあって泣いてたりするのを見たりとか、チームに馴染み切れていない感じとか、厳しい練習に苦労してるのを見ると思い出しますね。僕の1年生のときよりは全然すごいんですけど、メンタル的な部分とかは似ているのかなと思います。

――佐藤穣選手から加藤選手にアドバイスをすることもあるのですか

佐藤穣 プレー中はそのとき思ったことを言うくらいなので、終わった後とかは特にないですね。

――布巻選手はいかがですか

布巻 加藤は走力とか高さとか、持ち味がすぐに分かる選手だと思います。1年生ですし、思い切りやっているところとかを見ると良いなと思いますね。

――加藤選手は布巻選手や佐藤穣選手と一緒にプレーしてみていかがですか

加藤 二人とも僕が中高生のときから花園とか大学ラグビーで活躍していて、テレビとかで観ることもよくあったので、小さい時から憧れていますし、学ぶところも多いです。

――布巻選手と佐藤穣選手、お互いの印象を教えてください

佐藤穣 本当に存在感がデカくて頼れますし、プレーもそうなんですけどポジション練習とかを見ていただくときも学ぶことが多くて、プレー中も練習中も尊敬できる方です。私生活ではその場の空気をうまく読んで、誰かをいじって笑いを生んだりだとかして周りに気配りをしてくれるし、そういうのがプレーにも出ていると思います。

――佐藤穣選手もいじられることはあるのですか

佐藤穣 最近はあんまりないですね(笑)。1年生のときとかはちょっとありましたけど…。怖かったです(笑)。

布巻 嘘言うなよ(笑)。

佐藤穣 布巻さんとか竜太郎さん(上田竜太郎元主将、平25スポ卒=現NTTコミュニケーションズ)とか、東福岡の先輩がそろったときはやばかったです(笑)。

――よくいじる部員さんはいらっしゃいますか

布巻 みんな満遍なく(笑)。みんなと話すことを心掛けています。

――布巻選手から見た佐藤穣選手の印象はいかがですか

布巻 プレーは何も言うことがないし、すべて高いレベルでできる選手ですね。チームの中でも軸となってくる選手だと思います。

――バックローというポジションの魅力は何ですか

佐藤穣 攻守共に中心となるところですかね。

布巻 攻守共に引っ張ることができるポジションだし、攻守の割合を自分の中で決めることができるし、比較的自由なポジションだと思います。

――三人とも別のポジションを経験していますが、いまのポジションとどういった部分が相違していますか(※入部時は布巻がCTB、佐藤穣・加藤がロック)

佐藤穣 僕は代表のときはロックだったんですけど、高校のときはNO・8だったので、変わっても特に新鮮味はなかったですね。NO・8はいろいろ考えるポジションというイメージなんですけど、代表でロックをやったときにいろいろなところに現れたり、結構自由の利くポジションだなと思って、面白かったのでロックを希望して入部しました。でもすぐクビになってNO・8に落ち着きました(笑)。

――ロックとNO・8どちらが好きですか

佐藤穣 いまはもうロックをやりたいとは思わないですね。なのでNO・8で良いかなと思います。

――加藤選手がロックからフランカーに変わった経緯を教えてください

加藤 最初後藤さん(後藤禎和監督、平2社卒=東京・日比谷)に声を掛けてもらった時はロックで取ると言われていて、そのつもりでやっていたんですけど、夏休みの試合でフランカーをやったら調子が良くて評価して頂けたので、そのまま転向という感じですね。

――布巻選手はCTBからフランカーにコンバートしましたが、どちらの方が合っていると感じますか

布巻 体型とかも変わったのでいますぐCTBをやれと言われたら無理ですけど、まだどちらもできる感覚はありますし、CTB的な役割ができるフランカーになりたいです。このチームでやる以上型にはまらずに自由な動きでやっていきたいと思っています。

――やってみたいポジションはありますか

佐藤穣 SOです。ずっとサッカーをやってたし、普通にかっこいいので(笑)。中学は県選抜とかだとロックだったんですけど、普通のチームだと状況に応じてSOとかのBKもやっていました。高校からはFWだけですね。

布巻 全部好きですけど、フロントだけはやりたくないです(笑)。キツそうだし、スクラムとかできる気がしないので(笑)。

加藤 僕はBKをやったことがないので、BKをやってみたいです。器用にパスとかキックとかしててかっこいいので。WTBで思い切り走ってトライを取るとかやってみたいですね。

花園の思い出

ルーキーながら対抗戦全試合出場中の加藤

――3選手とも出身県が違うということで、それぞれの県自慢をお願いします

布巻 (福岡は)ご飯がおいしい。

加藤 秋田なのでお米がおいしいです。

佐藤穣 僕は水がおいしいと思います。

――布巻選手に伺います。おすすめのグルメなどはありますか

布巻 基本的に何でもおいしいんですよね。鍋だったら水炊きやモツ鍋もありますし。魚もおいしいですね。お肉はあんまり聞かないですけど。そういうものを安く食べられるところかなと思いますね。特にこれというものはないです。

――帰省したら必ずやることはありますか

布巻 とりあえず、食べて飲んでの繰り返しですね。お世話になった人に、会える方には毎回行くようにはしています。あいさつ回りに行っていますね。

佐藤穣 地元の友達と遊ぶことぐらいですね。

加藤 僕も地元の友達と会っています。母校には必ず顔を出すようにしています。

――母校の練習に参加されたりはしますか

加藤 実戦形式の部分だけ、少し混ざるぐらいです。

佐藤穣 高校の方に行く機会があればやりますね。ちょっと実家と高校が離れているので、行ける機会があったら顔を出したりはしています。

布巻 練習はしなくても見に行ったりとかはします。

――方言などで苦労されたことはありますか

布巻 九州出身者が多いので、こっち(関東)の人に理解してもらうことの方が多かったりします。苦労はあまりしていません。

加藤 僕はもともと全然なまっていないので、苦労はしていません。むしろ、関西弁とか九州の言葉はどういう意味なんだろうって思っています。

佐藤穣 僕には方言はないですね。

――3選手ともに花園経験者ですが、大学入学前からお互いのことはご存知でしたか

布巻 穣司とは高校日本代表で会ったのが初めてかな。それまでは知らなかったんですけど、大学入学前には知っていました。

――初めて佐藤穣選手のプレーを見た時の印象はどうでしたか

布巻 あんまり覚えていませんが、大きいなというかんじです(笑)。その時のことはあまり覚えていません。

――佐藤穣選手から見た布巻選手の印象はどのようなものでしたか

佐藤 すごくうまくチームをまとめている方だなと。まとめ役が上手だなという印象がありました。

――花園での成績について教えてください

布巻 1年目ベスト4で、2年と3年は優勝でした。3年の時は同点優勝ということで、全部の代でそれぞれ違った結果となって、僕の中では大きな経験になっていますね。

佐藤穣 僕は1年生の時は2回戦で2、3年ではどちらも1回戦負けですね。

加藤 僕は1年の時は秋田中央高さんに負けて、花園には行っていません。2、3年生ではベスト8ですね。

――花園でのエピソードはありますか

布巻 (東福岡高の)先生が元気なうちは言わないでおきます(笑)。普通にリラックスして過ごしていましたけどね。

佐藤穣 (負けて)そんなに長くはいないので…(笑)。何もないです。

――加藤選手は花園で年を越されていますが、何かエピソードはありますか

加藤 同期と同じ部屋だったので、12時過ぎまで起きていて、新年迎えたらおめでとうございますと言って寝るくらいですね。普段とあまり変わりません。

――大学ラグビーの聖地は秩父宮、高校ラグビーでは花園と言われていますが、どちらが好きですか

布巻 どっちも魅力があって、肌で感じるものがあるのでどっちが好きとかはないですね。いまは秩父宮でプレーするので、どっちか選ぶなら秩父宮かなと思いますね。

佐藤穣 高校の時は最初の方で負けていたので、第一グラウンドでやることがなかったです。大学に入って1年生の時に初めて花園の第一グラウンドでプレーしたんですけど、芝生が結構良いイメージがあって、しっかり踏ん張れるイメージがあります。秩父宮は結構試合数が多くて、グラウンド的にはすぐにボロボロになってしまうので。グラウンドは花園の方が良かったかなとは思います。

加藤 花園の方が高校でしかない特有の雰囲気があるので、そっちの方が緊張するかなと思います。

まだまだ伸びしろはある(布巻)

3年目の佐藤穣はパワープレーでも存在感を増してきた

――帝京大戦から10日ほど経ちましたが、いま試合について振り返ってみていかがですか

布巻 いま思えば、ああしておけばよかったとか、こうしておけばよかったとかあります。ですが、それよりも帝京大の強さを感じましたし、逆に言うと僕らにもまだまだ伸びしろはあると確信した試合でした。また、やらないといけないいう覚悟を決めざるを得ない試合だったのかなと思います。

佐藤穣 いま布巻さんが言ったこともそうですし、試合前にやろうと言っていたところが全くできていないから、ああいう結果につながったのかなと思いました。もっと自分個人としても全体としても意識を変えて、どんどん上を目指していかなければいけないと感じます。

加藤 負けてきて焦っているときにやろうとしていることができず、立ち直って冷静になれたらなと思うシーンがいっぱいありました。今季は残り試合数が少ないですが、修正していきたいです。

――帝京大と戦ってみて感じた、チームとして強化しないといけない部分は特にどのようなことですか

布巻 チームとしてはどこで勝っていくのかを明確にすることです。後藤さんもよく言われるのですが、そこを信じ切るというか、俺たちはここで勝つとみんなで共有することが大切かなと。同時に、個々がそれを成し遂げるためのスキルだったりメンタルだったりを用意してやっていくことだと思います。

――チームとしてはどこで勝っていくべきだとお考えですか

布巻 ディフェンスなら日本一のディフェンスをやることです。誰よりも強いタックルを、誰よりも早いセットを、というサイクルを手に入れることかなと。アタックではいまやっている僕らがやりたい戦術で勝ち切る、そこからはぶれないようにするという感じです。

――チームのことを伺ってきましたが、対抗戦を振り返って個人としての手応えを聞かせてください

佐藤穣 チームが勢いに乗れているときは、みんなも僕もいいプレーができている印象があります。ですが、相手が強くなったときなどプレッシャーを受けるときに、1つラインブレイクをするとか、ビッグタックルをするとかそういうことを増やしていかなければいけないなと思います。

布巻 膝のケガのせいで個人のパフォーマンスとしてはいいものを出せていないので、今後は状態を上げて、万全に近い状態で試合に挑みたいなと思います。

加藤 いままで対抗戦に全試合で出させてもらっているのですが、起用の際に期待されているようなプレーよりも課題が残るようなプレーが多いので、期待以上のプレーができるようにしなきゃいけないなと思います。

――みなさん課題を挙げられましたが、逆に手応えを感じている部分はありますか

佐藤穣 全然まだまだなのですが、タックルの部分でいいタックルが1試合に1本は出るようになったかなというのは感じています。ですが、そこからが先がまだできていなくて、バックローに求められる仕事である、タックルしてすぐにリアクションをし、プレッシャーをかけるなどを、いまチームでできているのが布巻さんくらいだと思います。このままだと強いチームとの競った試合で勝ち切れなかったり、自分たちのやりたいことができなかったりすると思うので、そこは手応えを感じつつも課題であるとも感じています。

布巻 接点では昨年からやってきた経験があるので、余裕を持ってできているかなと思います。

加藤 やはり高校の時とはレベルが違くて、頑張ろうと思えることですかね。中学の時も高校に進学した時も初めは全然通用しなかったのですが、最終的には通用するようになったので、また通用するために頑張ろうと思えたことはよかったです。

――ここから先は早慶戦や早明戦など満員の観衆が予想されますが、そのような中でプレーすることについてはいかがですか

布巻 緊張はあまりしないのですが、やっぱり興奮とかはしますね。特に昨年の早明戦とかは幸せだなと思いながら試合に入ったことを覚えていて、満員のなかでプレーできることは光栄だと思いますし、逆に固くなったりしたらもったいないと思うので、いつも通りやりたいと思います。

佐藤穣 僕も非常に楽しみです。

――加藤選手は初めての早慶戦や早明戦ですが、いまの心境を教えてください

加藤 最初の方は緊張してしまうと思うのですが、始まって30秒もすれば気にならなくなると思うので大丈夫です(笑)。

――自分のここを見てくれ!というプレーはありますか

布巻 体を張るプレーを見てほしいです。

佐藤穣 いや、どうですかね…。特にはないですね(笑)。

加藤 誰よりも走ります!

――最後に応援するファンの方々に一言ずつお願いします

布巻 どんな試合でも応援に来てくださる人もいますし、早慶戦と早明戦はいつもより多くの方が来てくださるので、みなさんに感謝と同時に、僕らが頑張る姿を見せることで、これからも来ていただけるような関係になればいいと思っています。

佐藤穣 ファンの方々のおかげで満員になり、さらに楽しく試合できています。サポートしてくださることにも感謝していていますし、布巻さんが言ったような関係が続けばなと思っています。

加藤 応援してくださるファンの方の期待以上の結果を残せるよう頑張ります!

――ありがとうございました!

(取材・編集 大口穂菜美、菅原拓人、高畑幸)

個々に特色のあるガッツポーズでの撮影です!

◆布巻 峻介(ぬのまき・しゅんすけ)(※写真右)

1992(平4)年7月13日生まれのAB型。178センチ。97キロ。東福岡高出身。スポーツ科学部4年。ポジションはフランカー。最近『打ちっぱなし』に行き始めたという布巻選手。ラグビーとは異なり、全く動かないボールにアプローチするところが難しくもあり、面白いところなのだそうです。ラグビーでは豪快なプレーを見せる布巻選手。繊細なスポーツに挑戦する姿も見てみたいですね!

◆加藤 広人(かとう・ひろと)(※写真中央)

1995(平7)年9月30日生まれのO型。186センチ、89キロ。秋田工高出身。スポーツ科学部1年。ポジションはフランカー。小学校時代に観戦した早明戦でファンの方たちが旗や身ぶりつきで校歌を斉唱する姿が印象に残っているそうです。早慶戦でも熱いファンの応援を味方に、全力プレーで躍動します!

◆佐藤 穣司(さとう・じょうじ)(※写真左)

1993(平5)年8月3日生まれのA型。184センチ、99キロ。山梨・日川高出身。スポーツ科学部3年。ポジションはNO・8。青学大戦では出血したSO小倉順平副将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)に代わってコンバージョンキックを蹴った佐藤穣選手。惜しくも外してしまいましたが、実は普段からキックの練習をしているそうです。今後も蹴ることはあるのでしょうか!?