【連載】高校特集 第3回 千種 フランカー池本翔一×CTB勝浦秋

ラグビー男子

 有名校出身でなくても、浪人を経ていても、赤黒を着てAチームで戦う選手が早大には存在する。千種高時代からの先輩後輩であるフランカー池本翔一(スポ3=愛知・千種)とCTB勝浦秋(スポ2=愛知・千種)もそれを表す選手たちだ。今秋からも、主力争い、そして早大の勝敗に絡んでくるであろう2人にお話を伺った。

※この取材は7月13日に行われたものです。

「とても密度の濃い高校3年間を送れた」(池本)

高校時代を懐かしむ池本

――ラグビーを始められたのはいつですか

池本 僕は高校からです。

勝浦 僕は中学校からです。

――ラグビーを始められたきっかけは何ですか

池本 僕の兄が千種高出身でラグビーを高校で始めていました。それでその試合を見て、自分も千種高でやりたいなというふうに思いました。

勝浦 僕ははっきりとした理由はないのですが、もともとサッカーをやっていたのに中学校にサッカー部がなくて、ラグビー部に入ったような感じでした。

――高校での練習はどのようでしたか

池本 自分たちで練習をやっていこうというスタイルというか、昔からそういう伝統でした。練習メニューなども結構選手で決めた上でそれを監督に見せて、それではこれでいこうという感じでした。自分たち主体で練習はしていましたね。

――大学での練習とどちらの方が厳しいですか

勝浦 トレーニング系のメニューは高校も厳しかったのですが、やはり大学の方がレベルが上がったので、当たりの強さやスピードなどそういう面ではどうしてもやはり大学の方が厳しいと思います。

――千種高のラグビー部のレベルはどのくらいだったのですか

池本 愛知県自体があまり強くはないからなのですが、強くはないですね。愛知県では僕たちの代はベスト4でした。

――早大を選ばれた理由は何ですか

池本 現役で行きたい大学に行けなかったので浪人することを決めて、浪人するのだったら早大を目指そうという感じでした。浪人して目指せるなら、大学日本一を目指している早大でやろうかなと思いました。

勝浦 僕は早大を目指していたわけではないです。もともと別の大学が第一志望でずっと勉強をしてきて、その中で早大も受けました。ラグビーをやることは決めていて、どこの大学に行ってもラグビーをやろうとは思っていたのですが、早大に受かったときに先輩(池本)に話を聞きに行きました。その話を聞きに行ったときに、「早大のラグビー部の練習はそんなに厳しくない」と言われたので、それなら将来のことも考えてレベルの高いところでやってみようかなと思って、直前に早大に進学を決めました。だから、だまされたみたいな感じです(笑)。

池本 (笑)。

――勝浦選手が早大を選ばれたのは、池本選手の存在の影響もあったのですか

勝浦 別の大学にも先輩はいたので最初は本当に別の大学に行くつもりだったのですが、直前に練習が楽みたいなことを聞いたので…(笑)。

池本 そんなこと言ったっけ?(笑)

勝浦 「別に誰でもできる」みたいなことを言っていたので、だまされて行きましたね。

――高校の頃からポジションは同じだったのですか

池本 僕は高校と一緒です。

勝浦 僕は違います。何回か変わったのですが、最初はWTBで、途中でNO・8になっていま大学ではCTBです。いまはCTBで落ち着いています。

――池本選手はどうしてフランカーを選ばれたのですか

池本 高校のときの監督の勧めです。「フランカーをやってみたら良いんじゃないか」と言われて、そのとき高校の1個上の先輩にもあまりフランカーがいなくて、フランカーでなら試合に出られるということで早いうちから試合に出させてもらえていたので、ずっとフランカーをやってきました。

――千種高の校風はどのようでしたか

池本 自由で何でもできるという感じだよね。

勝浦 そうですね。基本は自主自律のもとでやっていくという感じで、文化祭や体育祭などそういうもの全てを生徒に委ねていました。

池本 先生があまり何も言わないよね。

勝浦 校則やルールもほとんどなかったです。

――千種高校で良かったと思うことはありますか

池本 高校で花園を目指せる環境にあって、監督の先生も生徒のことを理解している良い人だったので、自分は高校から始めたのですが、高校のその3年間でラグビーの魅力について気付かせてもらえました。とても密度の濃い高校3年間を送れたのはやはり、千種高だったからではないかなと思います。

勝浦 大学に入って思ったことは、千種高で培われた体の強さなどが他の強豪校から来る選手たちにも劣っていなかったということです。体が鍛えられたという意味では千種高のラグビー部にいて良かったなと思いました。

――同じ愛知県出身の選手でライバル視している選手はいますか

池本 法政大でFBをやっている犬飼(涼二)は高校のときの東海選抜などで一緒だったのもあって、試合で会ったら話します。すごく頑張っていてAチームで出たりしているので、またやってみたいと思います。あとは高校の同期で同大の八木(智彦)という選手ともこの間の春の同大戦で一緒に戦えて、すごく頑張っているので刺激にはなりました。

勝浦 僕の場合は、千種高校のラグビー部の同期の古橋(純)という選手が慶大でラグビーをやっていて、高校ではポジションが違っていたのですが二人ともCTBになっていたので、この前の慶大Bとの試合ではCTB同士で戦うという場面がありました。

「4年生が下級生を引っ張ってくれるチーム」(勝浦)

今季からAチームで活躍する勝浦

――オフは何をして過ごされていますか

勝浦 長期オフだったら、僕の場合はやはり一回愛知県の実家に帰って高校に顔を出したりしますね。練習に交ぜてもらったりという感じです。

池本 僕も今回の長期オフは帰りました。高校に行ったり地元の友達と遊んだりしました。普段はラグビー部のみんなと過ごしています。

――お二人とも寮生活ですか

池本 僕は上井草で勝浦は東伏見の寮です。

――池本選手は誰と同部屋ですか

池本 布巻さん(峻介副将、スポ4=東福岡)と加藤(広人、スポ1=秋田工)です。

――仲の良い同期は誰ですか

池本 寮生で言ったら仲元寺(宏行、社3=広島・尾道)、貝塚(隼一郎、政経3=埼玉・早大本庄)とは結構一緒にいます。外勤で特に仲が良いのは中庭(悠、人3=茨城・水戸一)です。みんな仲良いですが、特に言うならという感じです。

勝浦 みんなと普通に仲が良いですが、東伏見の寮で一緒だった渡辺(大輝、社2=国学院栃木)と山崎(海、スポ2=神奈川・桐蔭学園)とは特に仲が良いですね。

――3年生、2年生はそれぞれどのような学年ですか

池本 僕たちの代はみんな個が強くて、思っていることを結構言うし、にぎやかと言えばにぎやかですし、はじけてる感じじゃないですか(笑)。

勝浦 どうだろう、本当のことを言ったら面倒くさいし…(笑)。でも学年で話しているときにたまに出るのが、ウエイトトレーニングとかに真面目で、基本的には練習にはすごく真面目です。

――お互いに他己紹介をしてください

池本 勝浦は高校のときから真面目で、はっちゃけるときははっちゃけるのですが、基本的には練習に対しても真面目ですし、先輩などに対してもちゃんとわきまえているところはわきまえているというか、そういうところがよくできているなと僕から見て思います。大学に入ってラグビーに対して一段と意識が変わっているなと思うところがあって、実際大学に入ってすごく強くなっているので、僕が影響を受けるところも結構あります。最近は本当に勝浦に見習うところも自分ではあると思っています。

勝浦 高校からすごく足が速いと思っていました。自分も結構足が速いと思っていたのですが、高校に入って越えられない壁みたいなものをこの人で実感して、それは大学に入ってからもあまり変わっていません。それから、練習などには真面目に取り組む人ですし、やはり早大に入って一番自分が影響を受けている人です。ただ、くず人間ですね(笑)。部活には本当に真面目で全ての練習に全力で取り組むし、本当にすごい人だとは昔から思っていました。それは大学に入っても変わらないのですが、ただたまに「はっ?」となるようなことがあります(笑)。時間とか全然守らない人なので、それで迷惑を被ったことが何回かあります(笑)。

――池本選手は天然な性格なのですか

勝浦 天然?いや…。結構意図してやっているんじゃないですか(笑)。「あいつなら待たせて良いだろう」みたいな…。僕の同期の中では結構ダメ人間みたいなキャラですよ(笑)。

池本 絡みやすい先輩ってことです!いじれるし、気軽に話せるということにしておいてください!

――いまの早大のチーム全体はどういうカラーだと思いますか

池本 功三さん(大峯主将、スポ4=福岡・東筑)も言っているように、一人一人がリーダーの自覚を持つということで、練習やウエイトトレーニングにしてもだいぶ昨年とは取り組み方が変わってきたと思います。一人一人がちゃんと考えて取り組むということを促してくれています。功三さんだけが主将として引っ張っていくのではなくて、他の4年生も本当に下級生に影響を与えるようなリーダーシップをすごく発揮してくれていると思いますし、だから僕たちもそこについていきやすいです。僕たち後輩からしてみても、1、2年生のときと比べていろんなことがやりやすいですし、3年生の僕の立場から見ても良い雰囲気かなと思います。

勝浦 僕は今季から初めてAチームに関わらせてもらったのですが、功三さん主体で、下級生がプレーしやすいように4年生が頑張ろうというようなことを毎試合のように言っていて、実際試合でも下級生が足を引っ張ってしまったところを4年生がみんなでカバーしてくれるような、4年生が下級生を引っ張ってくれるチームです。練習でも、下級生のミスがあったらそこを4年生が取り返したりだとか、下級生からしても本当にすごくプレーしやすいです。

池本 一人一人が自覚を持たなければいけないということも頻繁に言ってくれているので、僕たちも自然にそうしなければいけないのだというふうになっていっていると思います。

――いまチーム内にライバルとして意識している選手などはいますか

池本 それはフランカー全員ですが、ライバルというか常に目指すべきところに存在しているのは布巻さんです。布巻さんのプレー一つ一つがとてもお手本になりますし、そういうプレーができればずっとAチームに定着していられると思うので、ライバルはみんなですが、特に尊敬しているのは布巻さんです。

勝浦 僕もライバルというより先輩として尊敬しているのは飯野さん(恭史、商4=東京・早実)です。春も何回か一緒に試合に出たのですが、やはり何回も飯野さんに助けられた部分があって、自分もあのようなスキルが欲しいなと思うことが多いのは飯野さんですね。

『赤黒』への強い気持ち

池本(左)と勝浦

――春のシーズンを振り返っていかがでしたか

池本 春は途中でケガをしてしまったのですが、それまでを振り返ってみるとあまり自分では納得できていなくて、もっと昨春や昨秋の方が思い切りやれていたかなということは感じます。いままで2年生のときは本当にがむしゃらにやるだけでした。それで3年生になって、春も最初の方はAチームで出させてもらっていたので、自分なりにいろいろなことを考えたりして試していて、試すのは良かったのですが、本来持っている良いところなどが出せないでいろいろと自分の中で模索してしまっていたかなとは感じています。でも、そういうことは自分でも分かっているので、もうケガも治るので夏に向けてもう一度初心に返るところは返って、いままで通り考えてやるべきところはこれからも考えて、秋のシーズンにつなげていきたいと思います。

勝浦 初めてAチームに関わらせてもらって、良いプレーができたと思う部分は何度か自分の中であったのですが、それでもやはり昨季からAチームで出ている先輩たちとの差がはっきりとして、試合や練習で自分のミスで先輩に迷惑をかけることがありました。ただ、自分の持ち味の突破、ラインブレイクは何回かできたかなと思いました。

――勝浦選手はAチームで帝京大戦にも出場されましたが、帝京大の印象はいかがでしたか

勝浦 自分の持ち味はアタックだと思っていたのですが、そのアタックでラインブレイクやゲインをすることがなかなかできなくて、帝京大はアタックだけではなくディフェンスも本当に強いのだということを実感しました。

――初赤黒を着た感想はいかがでしたか

勝浦 昨年の夏合宿でのCチームの試合などでは赤黒を着たことがあったのですが、Aチームとしての赤黒は春のシーズンの初めの長崎での試合(対長崎ドリームチーム戦)でした。やはりユニフォームをもらったときはうれしかったですし、試合に出るときは緊張しました。

――春のシーズンで印象に残った試合はありますか

池本 同大との試合ですかね。さっきも言ったように高校の同期の八木とも初めて戦えましたし、悪い面もたくさんあったのですが、良いところも出せた試合でした。千種高校の現部員も応援に駆けつけてくれていたので、とてもうれしかったし印象に残っています。

勝浦 僕は悪い意味で同大との試合です。千種高校の人たちが応援に来てくれたことや先輩と戦えることはすごくうれしかったのですが、ただそんな試合で全然自分の力を出せなかったので、悪い意味で印象に残ってしまいました。

――池本選手はケガにも悩まされたシーズンだと思うのですが、その間どういう練習をされてきましたか

池本 できるだけ筋力などは落としたくなかったので、ケガをしてすぐのときはあまり何もできないのですが、下半身はできるようになったので、下半身に重点を置いてやって上半身も鍛えられるところからどんどん鍛えていきました。ウエイトはあまり落としたくなかったので、本当にできるところからやっていました。

――ケガの最中に多くのフランカーの選手が試合に出場されていましたか、やはり焦りなどはありましたか

池本 それは焦りますよ(笑)。焦りますけど、周りのどんな人がフランカーに転向してきたとしても、周りは周りで結局向き合うところは自分だと思っていて、やはりチームに求められているようなことがちゃんとできていればまたAチームに定着していられると思うので、周りに良い意味で影響を受けながら頑張っていきたいです。

――いまの早大のチーム全体の強みは何だと思いますか

池本 チーム全体として雰囲気がとても良くて、後輩たちがやりやすいと感じられる雰囲気を4年生がつくってくれているということが僕たちに良い影響を与えていると思います。4年生の働きがチームを良い方向へつなげていると思います。

勝浦 4年生のおかげで下級生が気兼ねなく普通にプレーができるということと、あとは今季特に実感したのはほとんどの人が常に上を目指していて、赤黒を着るためにポジション変更までするというくらい、赤黒を着ようという気持ちが強いことで、常にみんな練習でも自分と同じポジションの人に負けないようにということを意識しているのではないですかね。それがチームの質を高めていると思います。

――プレーの面でのいまの早大の武器は何ですか

池本 ディフェンスは組織がしっかりしてきているとは思います。練習からも、特にFWは一人一人がしっかり役割を果たせるようになってきていると思いますし、一人一人がディフェンスの仕事を意識してやれているからその次のアタックに良い流れでつなげられる局面が多く見られたかなと思います。ディフェンスがそれだけしっかりしているのは強みです。

勝浦 一人一人が考えてプレーできていると思います。

――逆にいまの早大の課題は何ですか

勝浦 これは帝京大や明大などの他の大学と比べてという話なのですが、体がどうしても小さいという部分ですね。だからそういうことを意識して、ウエイトトレーニングなどをしっかりやるようにはなっているのですが、ウエイトの重量があっても体重が増えていない人がいたりもするので、チーム全体として体重の増加とウエイトの重量の増加が大事かなと思います。

――春のシーズンでは1年生も多く台頭しましたが、注目している1年生はいますか

勝浦 同じCTBのポジションに、帝京大戦でもメンバー登録されていた鶴川(達彦、文構1=神奈川・桐蔭学園中教校)という選手がいて、とにかく体が大きくて走力もあるので注目ですね。

池本 部屋も一緒の加藤に注目していて、とても練習に対して真面目ですし私生活でも意識が高いので、春はAチームに絡むことはなかったのですが、これからどんどん伸びていくと思います。お互い高め合ってやっていきたいです。

――1年生とはよく話されますか

池本 同じ部屋だからだとは思いますが、結構加藤とは話しますね。ケガ人で一緒にやっている1年生とも結構話します。

勝浦 同じポジションですし、一緒の寮に住んでいる高橋吾郎(スポ1=福岡・修猷館)とはよく話します。

――FWから見たBK、BKから見たFWについて教えてください

池本 今季のBKは昨年のAチームに絡んでいた人も多くいて、FWを引っ張ってくれているところが多いです。ディフェンスにしても信頼して任せられるし決めるところは決めてくれるので、経験している人が多いぶんなのかもしれないのですが、信頼できるBKが多いです。

勝浦 今季のFWは、もともとBKだった人が何人かいるので、BKのラインに参加してくれたりBKの助けに回ってくれてすごく頼れる人が多いです。

――理想のプレーヤー像を教えてください

池本 僕はフランカーなので、何でもできる人が理想で、アタックにおいてもディフェンスにおいても「またあいつがいるぞ」と思われるように、ポイントごとに誰よりも多く仕事をしたいです。BKのラインにもどんどん入って、アタックも何回もして、一つの試合で何回も目立てるような、周りに嫌がられるような選手がフランカーとして理想かなと思います。

勝浦 僕はCTBなので、アタックでは相手のディフェンスラインを突破できる選手、ディフェンスでもピンチを救うようなタックルができる選手ですね。

――夏に重点的に強化したいことは何ですか

池本 目標としては、アタックにどんどん入ってたくさんボールをもらって、何度もディフェンスラインを突破できるようなアタックが一つの試合で何回もできるようになることに重点を置いていきたいと思います。

勝浦 コーチなどにも言われるのですが、僕の課題はディフェンスで、春のシーズンもディフェンスでミスが多かったので、ディフェンスを頑張ろうと思います。

――最後に夏や秋のシーズンに向けた意気込みをお願いします

池本 春のシーズンはふがいない結果で終わってしまったので、秋はもちろんAチームに定着することを第一目標にして、そのためにはアタックなどの自分の持ち味や良さを生かせるようにしていって、誰よりも多く走ってアピールしていきたいと思います。

勝浦 僕はディフェンスを克服するのと、Aチームで定着するだけでなくAチームで活躍できる選手になりたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大水渚)

仲良く肩を組んで写真を撮って頂きました!

◆池本翔一(いけもと・しょういち)(※写真左)

1993(平5)年3月2日生まれ。176センチ、91キロ。愛知・千種高出身。スポーツ科学部3年。ポジションはフランカー。勝浦選手と肩を組むポーズを発案したのは池本選手でした。理由は「みんなにそんなに仲が良くないと思われていそうだから」。この対談で二人の仲良しぶりを証明できましたね!

◆勝浦秋(かつうら・しゅう)(※写真右)

1993(平5)年10月24日生まれ。179センチ、87キロ。愛知・千種高出身。スポーツ科学部2年。ポジションはCTB。趣味は漫画を読むことだそうですが、特に好きな漫画を尋ねたところ「言いたくない」とのこと。どんなものを読んでいるのか、余計に気になってしまいました。