ノートライに抑えて3連勝

ラグビー男子

 関東大学春季大会で大東大、流通経大相手に2連勝した早大は、中大と対戦した。序盤から勢いに乗り、前半だけで30点差をつける。後半に入り主導権を完全に握ると、87-3で快勝。前回に引き続いて相手をノートライに抑え、2週間後の慶大戦に向け弾みをつけた。

 WTB荻野岳志(先理4=神奈川・柏陽)が、開始直後に守備2人をかわして先制。序盤から、早大は積極的に攻撃を仕掛けていく。しかし中大にPGを決められ失点。ペナルティーが重なり、なかなか敵陣に入り込むことができない。流れが変わったのは19分。WTB深津健吾(スポ4=東京・国学院久我山)が中大のキックをキャッチ。自陣深くから独走しゴールラインを割った。その後は得意の連続攻撃で両WTBが躍動。深津の力強いランブレイクと荻野の鮮やかなステップが好機を生み、33-3に点数を伸ばした。

2トライを奪った深津

 後半、早大はさらに調子を上げた。前半同様、BKがヨコに広く展開して揺さぶりをかけると、FWもそれに加勢する。フランカー仲元寺宏行(社3=広島・尾道)が敵を引きずりながらゲイン、ラックを形成。するとSO小倉順平副将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がギャップをついてインゴールに飛び込んだ。途中出場のフランカー布巻峻介副将(スポ4=東福岡)も、相手をなぎ倒すかのようなタックルで敵を粉砕。FWが各接点で圧力をかけ、攻撃の芽を摘み取った。中大につけいる隙を与えず、87-3の大量得点で勝利を飾った。

仲元寺は着実にゲインを重ねた

 流通経大戦、今回の中大戦と2試合連続で相手を封じた早大。奪った13トライのうち荻野が6トライ、深津が2トライを挙げ、両WTBが好調を見せつけた。このような明るい材料が多いだけに、前半のペナルティーによる失点と停滞が悔やまれる。「3失点は上に進めば進むほど大事な部分。そこの重みをみんなでもっと自覚してやっていきたい」(布巻)。細かい部分を突き詰めれば、より一層成長できるはずだ。布巻の言葉通り、慶大戦では結果だけでなくひとつひとつのプレーにしっかりこだわりたい。

(記事 田中みずき、写真 松下優、大口穂菜美)

☆PICK UP PLAYER

一瞬のスピードに磨きがかかった荻野

 87-3と圧勝した中大戦のトライ数は13を数える。その約半数となる6トライを挙げたのが、WTB荻野岳志(先理4=神奈川・柏陽)だ。とにかくトライを取ることを目標にしてきたが、1試合に6トライを取るのは高校以来のことだという。久しぶりに残したこの数字は仲間のアシストがあってこそ。荻野はそう考えていた。「良いボールが回ってきたので」。自らのトライ数に笑顔を見せつつ、周囲への感謝の気持ちは忘れない。心にはおごりもない。また、トライを取るだけではなく周囲を生かそうとする動きや、トライにつながるプレーも多く見られた。自分だけではなく、チーム全体で成長する──。そんな決意がうかがえるようだった。早大随一のトライゲッターとなりつつある男は、ラグビー蹴球部と共に、強くなる。

関東大学春季大会
早大 スコア 中大
前半 後半 得点 前半 後半
33 54
87 合計
【得点】▽トライ 桑野、小倉、深津2、飯野、荻野6、岡田、山本 ▽ゴール 小倉(7G)、浅見(4G)
※得点者は早大のみ記載
早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
光川 広之 スポ4 神奈川・公文国際学園
  後半0分交代→18千葉太    
貝塚 隼一郎 政経3 埼玉・早大本庄
  後半31分交代→17菅野    
佐藤 勇人 スポ4 秋田中央
  後半18分交代→16佐田    
◎大峯 功三 スポ4 福岡・東筑
桑野 詠真 スポ2 福岡・筑紫
吉田 有輝 人4 大分舞鶴
  後半0分交代→20布巻    
仲元寺 宏行 社3 広島・尾道
  後半23分交代→19河野    
山口 和慶 スポ2 福岡
平野 航輝 スポ4 長崎南山
  後半0分交代→21岡田    
10 小倉 順平 スポ4 神奈川・桐蔭学園
  後半18分交代→22浅見    
11 深津 健吾 スポ4 東京・国学院久我山
  後半7分交代→23山本    
12 飯野 恭史 商4 東京・早実
13 丹野 怜央 教4 北海道・札幌山の手
14 荻野 岳志 先理4 神奈川・柏陽
15 滝沢 祐樹 基理3 福島
リザーブ
16 佐田 涼祐 社2 東京・早実
17 菅野 卓磨 教4 東京・早実
18 千葉 太一 教2 東京・早実
19 河野 秀明 創理3 東京・早実
20 布巻 峻介 スポ4 東福岡
21 岡田 一平 スポ3 大阪・常翔学園
22 浅見 晋吾 スポ3 神奈川・桐蔭学園
23 山本 龍平 商4 東京・都武蔵
※◎は主将、監督は後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷)
コメント

ロック大峯功三主将(スポ4=福岡・東筑)

――試合の振り返りをお願いします

きつい時間帯に暑さとかもありましたけど、バックスリーが前に出てくれたので最後にはこういう展開になったと思います。

――2試合連続0失トライですがディフェンスの手ごたえはありますか

少しずつ良くなってきて成果が出ていると思います。やっぱりもっと強い相手とやったときにどうなるかだと思います。2週間空いて慶大戦と帝京大戦があって、この2チームは強いと思うのでそこでどうなるかだと思います。

――前半はペナルティーが重なりましたがその部分についてはいかがですか

集中力が切れたというところです。あの部分を詰めていかないと勝てないのかなと思いました。

――最近の傾向として後半に突き放すというパターンができていますが、その面はいかがですか

それなりのフィットネスをやっていますし、そこで勝つことは大事だと思います。これが早大の展開の1つなのだと思います。

――次の試合まで2週間ありますがこの期間はどのように過ごしたいですか

さらにレベルアップできる期間だと思って一つずつ課題をつぶしていきたいと思います。慶大と帝京大との試合もありますが、それでもベクトルは常に自分たちに向けているので、どうやったらもっと強いチームになれるのかを考えてやっていきます。

フランカー布巻峻介副将(スポ4=東福岡)

――大量得点での勝利となりました。試合を振り返って感想をお願いします

一度流れに乗れれば点数は取れるので、87点でも30点でも変わらないと思っています。勝てたので良かったんですけど、3失点は上に進めば進むほど大事な部分になってくるので、そこの重みをみんなでもっと自覚してやっていきたいです。

――前回に引き続き相手をノートライで封じましたが、ディフェンス面はいかがでしたか

ターンオーバーもちょくちょくあったので、そこまでマイナスなイメージではなかったです。ただ抜かれてはいないけれど、ゲインとかを許してしまったというか前に進まれた部分はあって、帝京大戦とかはいつもそういうジリジリ押されるような展開なので、一本一本前に押し返すという意識でやっていきたいと思っています。

――今季はペースをつかんでガンガン点を取っていくスタイルを目標にしていると伺いましたが、そういう意味でこの試合プレーは理想に近いものでしたか

そうですね。点取るのは大事ですが、ディフェンスから取っていくのが理想なので、そこは勘違いせずにやっていきたいです。やっぱりディフェンスでボールを奪って、アタックをどんどん仕掛けていきたいので、そういうためにもディフェンスにもっとフォーカスして練習していきたいと思います。

――布巻選手ご自身が積極的にアタックを仕掛けている印象でしたが、ご自身のプレーを振り返っていかがでしたか

接点で負けない、1対1で負けないということをチームとして注意してやっていたので、僕もそれだけにフォーカスしてやろうと思いました。

――この試合で課題として見えた部分はありましたか

チームとしては勝てたので良かったんですけど、内容の部分であったり接点であったり、細かい一個一個の部分でもう少し突き詰めていかないとぶれた試合になってしまうので、ずっと同じパフォーマンスを出していくということを意識してやりたいです。

――帝京大戦まで3週間となりましたが、チームの状況はいかがですか

試合が続いてマンネリ化とかだらだらしやすいんですけど、大峯を中心に引き締めてやっていけているかなと思います。

SO小倉順平副将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)

――試合の振り返りをお願いします

明大戦でうまくできていないことがすごく多かったので、それを修正して流通経大戦と中大戦でいい感じにできたのかなと思います。

――うまくできなかったというのはどういうところでしょうか

アタックのバリエーションが少なくて、攻め方が単調になっていたという部分があります。この試合は一人一人が勝っていたので楽にゲームを進めることができました。

――オフェンスの出来としては良かったということですか

細かいところはまだですが、全体を通して見たとしたら良かったのかなと思います。

――流通経大戦から2戦連続で相手をノートライで抑えていますが、ディフェンスの感触としてはいかがでしょう

ディフェンスも確かに言われてみれば良かったと思いますね。ですが疲れてくる時間帯とか前半の最初の方でもペナルティーが多くて、敵陣に入れてもすぐにペナルティーをして、簡単に脱出されてしまいました。ペナルティーのところをもっと練習中にこだわってやっていかなければならないと思います。

――ペナルティーが前半に多いのはなぜでしょうか

最初は相手も元気なので、最初の20分は基本的に均衡するのが普通で、その時にこっちが我慢できないことが多いからだと思います。

――裏に蹴る回数、特にWTB荻野岳志選手(先理4=神奈川・柏陽)側に蹴ることが多いように感じますが、何か意識されているのですか

たぶん荻野側にいくことが多いのは、右足が利き足なのでそっちに蹴るのが楽だからかなと思います。でも裏に蹴る回数は確かに多いですね。裏が空いていれば蹴るようにしているので、相手にもよるとは思いますが、何か特別意識をしているわけではないですね。

――見つかった課題はありますか

やはりペナルティーがすごく気になります。そこを修正したいです。

――慶大戦が控えていますが、意識してやっていたことは何かありますか

いまチームがやっているアタックやディフェンスというのをもっと意識させてやっていきたいです。あとはノーペナルティーというのをよりいっそうやっていきたいなと思います。

プロップ佐藤勇人(スポ4=秋田中央)

――試合の振り返りをお願いします

ペナルティーが多かったので今後修正していきたいのと、BKが良い物を持っているので、FWがもっと走ってBKに良い球を供給して良いラグビーにしていきたいと思いました。

――ペナルティーの多さについて、どう改善していきたいですか

1人1人の戻る意識で変わってくると思うので、これからの練習でノーペナルティーをテーマにやっていきたいと思っています。

――FW全体への評価はいかがですか

スクラムでのオフサイドが1個、ラインオフサイドも何個かあったので、ペナルティーが少し多かったかなと思います。セットプレーは安定していたので、そこを武器にして今後やっていきたいです。

――PGの3点を除き、ノートライに抑え失点を防いだ試合でしたね

先週に引き続きノートライということで、ディフェンス力がだんだん上がってきたのかなと思っています。

――ご自身への評価はどうでしょうか

良かった点が少なく、セットプレーでどんどん相手にプレッシャーをかけていくということが課題として残りました。

――次の慶大戦に向け意気込みをお願いします

ペナルティーの部分と、伝統の早慶戦なので、受けることなく自分たちがどんどんチャレンジしていきたいと思っています。

フランカー仲元寺宏行(社3=広島・尾道)

――この試合を振り返って、いかがでしたか

暑かったのですが、BKもFWも全体的に走れていて良かったと思います。

――2試合連続でスタメンとなっていますが、ご自身の調子はいかがですか

もう少しできるかなという部分はありますが、練習でも最近は良い部分が出てきているので、帝京大戦に向けてもっともっと調子を上げていきたいと思います。

――具体的にもう少しできると思う部分はどこですか

もっとアタックでボールをもらって、積極的に自分で仕掛けていきたいなと思っています。

――この試合の中で良かったところやアピールできたところはどこだと思いますか

この試合で自分が意識したことはアタックとラインブレイクで、何本か自分が持っていけたものがあったので良かったなと思います。

――ポジション争いをする上で意識していることは何ですか

ディフェンスでもアタックでももっと走ることだと思っていて、自分はそんなに体が特別強いわけではないので、もっと下働きができるプレーヤーになりたいなと思っています。

――来週のジャパンセブンズ2014に向けての意気込みをお願いします

初戦が帝京大戦で、その後も多分トップリーグのチームと当たると思うので、レベルの高い相手にどれだけ自分が通用するかチャレンジしていきたいと思います。

――今季通しての目標を教えてください

最後の1月の選手権(全国大学選手権)決勝に向けて、自分が早大のAチームとして出場して優勝に貢献できるように、これからもまだまだ頑張っていきたいと思います。

WTB深津健吾(スポ4=東京・国学院久我山)

――試合を振り返っていかがでしたか

僕たちはこの試合に対して隙を見せずにやろうということを言っていたのですが、ペナルティーなどで前半少し点が伸びなかったので、そういうところに隙がありました。得点できたことは良かったんですけど、もっとペナルティーを少なくしていかないといけないと思います。ディフェンスが甘くなっているところもあって、そこはまだまだ詰められる部分なので、しっかり練習して修正していきたいと思います。

――2トライの活躍でしたが、ご自身のプレーをどのように評価していますか

もっとボールキャリアーになる回数を増やしていかないといけないと思います。よく小倉にも、「相手からお前がボールを持つのが一番嫌だと言われるようになれ」と言われているので、もっとキャリアーになる数を増やして、相手の嫌なことをしていけるようになりたいと思います。

――両WTBがしっかりと役割を果たしていましたが、どのような部分が良かったと思いますか

個人の力をちゃんと出すことができたというのが大きいと思います。

――この試合の中で、次につながる収穫はありましたか

しっかりアタックを継続できる時間が増えたことですかね。ディフェンスする機会はそんなに多くなかったので。

――次週のジャパンセブンズ2014への意気込みをお願いします

自分たちの力を試す良い機会だと思うので、優勝を目指して一つでも多く勝てるように頑張ります。

CTB飯野恭史(商4=東京・早実)

――終始リードする展開となりましたが、勝因は何ですか

FWもしっかりと思うように走ってくれたし、練習でやってきたことがかたちになったことだと思います。

――思い通りの試合ができたということですか

FWは特に良かったと思いますけど、個人的にはまだできなかった部分や練習通りにいかなかった部分があったので、そういったところを修正していきたいです。

――1トライを決められましたが、個人的には反省点の多い試合だったのですか

そうですね。もう少しハードワークできたところもあると思いますし、攻め方の部分であったりだとか良いところもあったのですが、個人的には悪い部分のほうが気になっています。

――具体的に個人の課題は何ですか

外にボールを回したいときの自分の立ち位置であったり、周りの見方だったりとか、そういった部分かなと思います。

――昨年と比べてご自身の調子はいかがですか

相手が変わっているので分からないですが、少しずつ良くなってきていると思うので、もっともっと成長していければなと思います。

――次のジャパンセブンズ2014に向けて意気込みをお願いします

セブンズをすることで見えてくるところは必ずあると思うので、そこで学んだことを自分戻ってきて見返して、もう一回り成長できればいいなと思います。

WTB荻野岳志(先理4=神奈川・柏陽)

──中大戦にはどういったことを意識して臨まれましたか

暑さがあったので、前半はそんなに守らなくて良いように全開でいこうというようにチームで話しました。1対1で負けないようにという練習をしていたので、1対1にこだわっていたのかなと思います。

──中大戦を振り返ってみていかがでしたか

裏に出た後にまだまだ取り切れない部分だったりとか、敵陣でミスだったりペナルティーだったりをしてしまい、取り切れる部分がもうちょっとあったのがもったいないかなと思います。

──前後半合わせて6トライでした

たまたまボールが来たので良かったかなと思います。

──この試合はいつも以上にトライに貪欲で、調子も良かったように思います

いつも通りです(笑)。本当にたまたま良いボールが回ってきました。

──長めのボールを出してもらってそこに走り込んでトライを狙うという場面が何度か見受けられましたが、事前に話し合っていたのでしょうか

いえ、それはもう臨機応変で。お互いが感じ取ってプレーしていました。

──2試合連続無失トライですが、ディフェンスの部分はいかがでしたか

FWが良いタックルでターンオーバーしてくれるシーンが先週と同様多かったので、BKとしては助かりました。

──ジャパンセブンズ2014にはキャプテンとして臨まれますが、どういったことを吸収してきたいと考えていますか

やっぱりセブンズでは1対1が一番必要なスキルになってくると思うので、そういった意味でどんどん勝負して一人一人が勝負して自信をつけて、慶大や帝京大に挑めたらなと思います。

──ジャパンセブンス2014に向けての意気込みをお願いします

まだ具体的な練習などはしていないのですが、やっぱり個々の勝負だと思うので、帝京大やトップリーグにも気後れせずにしっかり1対1で勝負していきたいなと思います。