流通経大を寄せ付けず完封勝利

ラグビー男子

 関東大学春季大会の2戦目、早大は流通経大と対戦した。試合は相手に勢いがある序盤を早大が粘り抜くと、その後は一方的な展開に。攻めては豊富なバリエーションから9トライが生まれる。守ってはゴールラインを背負っても臆すことなく好タックルを決め、無失点。59-0と流通経大に白星を飾り、昨年の関東大学対抗戦の日体大戦以来となる完封勝利を挙げた。

 「前半の入りの20分をしっかりやろうと決めていました」(SO小倉順平副将、スポ4=神奈川・桐蔭学園)。早大はこの時間帯でしっかり規律を守ると、コンスタントに点を重ねることに成功する。フランカー吉田有輝(人4=大分舞鶴)がラインアウトモールから抜け出し先制。さらに小倉がFWとBKを使い分けながら効果的に敵陣へアタックしていく。終盤にはNO・8山口和慶(スポ2=福岡)とSH岡田一平(スポ3=大阪・常翔学園)の力強い突破からフッカー菅野卓磨(教4=東京・早実)がインゴールへ。約20分間で計5トライを挙げ、35-0と大きなアドバンテージを得て前半を終えた。

山口は強引な突破を何度も見せた

 後半はいきなりピンチが訪れる。自らのペナルティーを起点に、自陣深くに攻め込まれてしまった。しかし早大は出足の鋭いディフェンスで流通経大に前進を許さない。吉田や途中出場のSH平野航輝(スポ4=長崎南山)らが低いタックルで突き刺さり、危機を脱出した。ここからは前半同様にトライラッシュとなる。得点も与えることなく、後半は24―0。この結果には後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)も「素直に評価できるところです」と納得の表情を浮かべた。

攻守両面で存在感を示した平野

 「根本的な部分でのヒットやディフェンスを見直してきました」(ロック大峯功三主将、スポ4=福岡・東筑)。先週明大に敗れてからは基本スキルの向上を図ってきた。まだまだ詰められる部分はあるが、十分にその成果を発揮することができたであろう。春シーズンも残り1カ月。最後に控える宿敵・帝京大との一戦に向け、より高みを目指していく。「後藤さんやコーチの想像を超えるような練習を学生がしていきたいです」(大峯)。この『自律』の達成こそが、王者をとらえるカギになる。

(記事 御船祥平、写真 加藤千暁)

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果敢なタックルを見せた吉田

 「一緒に試合ができてすごくうれしかった」。フランカー吉田有輝(人4=大分舞鶴)は、一つの目標をかなえた。それはSH平野航輝(スポ4=長崎南山)と共に戦うということ。「お互いライバルとしてやってきて、あいつには思い入れがある」。入学当初から、SHとして平野と切磋琢磨(せっさたくま)し続けてきた。そんな吉田がコンバートを決意したのは、昨年の10月。自身の強みであるタックルを生かすため、SHからフランカーへと転向した。熾烈(しれつ)なポジション争いの中、ようやくチャンスをつかんだこの試合。先制トライでチームを勢いづかせると、鋭く刺さるタックルを何度も決める。実力をいかんなく発揮し、見事チーム内MVPに輝いた。「まだまだだが、きょうは嬉しい気持ちが大きい」。待ち望んだ仲間との共演、プレーへの手ごたえが、吉田を笑顔にした。

関東大学春季大会
早大 スコア 流通経大
前半 後半 得点 前半 後半
35 24
59 合計
【得点】▽トライ 菅野、吉田、山口、深津2、飯野、荻野、滝沢、貝塚 ▽ゴール 小倉(7G)
※得点者は早大のみ記載
早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
光川 広之 スポ4 神奈川・公文国際学園
  後半20分交代→18千葉太    
菅野 卓磨 教4 東京・早実
  後半0分交代→17貝塚    
佐藤 勇人 スポ4 秋田中央
  後半26分交代→16高橋俊    
◎大峯 功三 スポ4 福岡・東筑
桑野 詠真 スポ2 福岡・筑紫
  後半36分交代→19河野    
吉田 有輝 人4 大分舞鶴
仲元寺 宏行 社3 広島・尾道
  後半12分交代→20布巻    
山口 和慶 スポ2 福岡
岡田 一平 スポ3 大阪・常翔学園
  後半0分交代→21平野    
10 小倉 順平 スポ4 神奈川・桐蔭学園
11 深津 健吾 スポ4 東京・国学院久我山
12 飯野 恭史 商4 東京・早実
  後半31分交代→22久富    
13 丹野 怜央 教4 北海道・札幌山の手
14 荻野 岳志 先理4 神奈川・柏陽
15 滝沢 祐樹 基理3 福島
  後半36分交代→23門田    
リザーブ
16 高橋 俊太郎 社4 東京・早実
17 貝塚 隼一郎 政経3 埼玉・早大本庄
18 千葉 太一 教2 東京・早実
19 河野 秀明 創理3 東京・早実
20 布巻 峻介 スポ4 東福岡
21 平野 航輝 スポ4 長崎南山
22 久富 悠介 文構3 福岡・小倉
23 門田 成朗 法3 埼玉・早大本庄
※◎は主将、監督は後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷)
コメント

後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)

――この試合全体を振り返ってみていかがでしたか

完封できたことは素直に評価できるところです。前半に良いかたちで点数が取れたので、ハーフタイムで後半の最初に隙を見せるなという話をしました。攻め込まれたこと自体は課題があると思いますが、守り切ったのは良かったです。

――先週の負けから雰囲気はいかがでしたか

負け惜しみではなくて内容的に良い部分もたくさんありましたし、その前の高麗大戦からもAチームの力は着実に上がってきていたので、それほど変なことにはならないだろうなとは思っていました。その実感はAチームの選手は持っていたと思います。

――前半の入りは拮抗(きっこう)していましたがいかがでしたか

どのチームとやるにしても最初の20分はせめぎ合いになると思いますし、選手も十分に分かっていると思います。ミスも出ましたが想定通りの展開でした。

――その後にトライを重ねることができた要因は何でしょうか

その時間帯をある程度粘り強くできたことです。逆にその後のチャンスを早大が着実にものにすることができたというところですね。

――得点を重ねることができましたが得点力についてはいかがですか

欲を言えばもう少し取るぐらいまで得点力を上げていきたいと思います。この試合では完封できましたが、逆にディフェンス力が昨年のチームと比べるともしかしたら若干劣るかもしれないです。その分、攻撃力については昨年以上のものを付けたいです。

――春の残り1カ月に向けて一言お願いします

この試合を良いかたちで乗り切ることができて、最後の帝京大戦に向けて何とか仕上げていけると思います。

ロック大峯功三主将(スポ4=福岡・東筑)

――この試合の振り返りをお願いします

先週負けてから根本的な部分でのヒットやディフェンスを見直してきました。1対1の部分なども練習から厳しくやろうということでした。その成果がでたのかと思います。

――先週の負けからチームの雰囲気はいかがでしたか

負けたことで逆にやるべきことが分かって、チームとして課題を認識することができました。Aチームはしっかり結果を出すことができたのでやってきたことは間違っていなかったと思います。

――その成果が出た試合だと思いますが実感はありますか

そうですね。出ている部分もあれば、まだまだなところもありました。それでもこの試合は合格点だったと思います。

――0点に抑えたことはチームとして大きいことだと思いますがいかがですか

早大としても久しぶりのことだったみたいで、チーム的に良かったと思います。ゴールラインに迫られたときも良いディフェンスができました。1対1で勝つためには前に出ないと勝てないので、そこは練習中から意識しています。

――今季のチームは得点力が増したように思えますがその点について聞かせてください

しっかり取りきることはできているのですが、この試合でも惜しいようなシーンが多かったと思うのでそこをなくして、必ずトライにつなげていくアタックをしていきたいです。この試合ではまだ詰めが甘かったですね。

――サントリーとの合同練習では何をメインに練習されましたか

先ほどの課題を、強い相手にどれだけできるかということでした。通用している部分も結構ありました。でもまだまだいけるなとも感じました。

――スクラムでのペナルティーがここ数試合出ている印象ですがその点についも教えてください

まだ一人一人でやっている部分があると思います。早大のスクラムは8人がまとまって押すスクラムなので、後半は1つペナルティーが出てしまいましたが、修正はできたと思います。

――入りの20分間はいかがでしたか

どんなに強いチームでも最初の20分間は拮抗(きっこう)した展開になると思うので、そこで早大は絶対に切れてはいけないですし、必ずそこを制して残りの前半につなげていかないといけないです。この試合に関しては流通経大のスタミナが切れてしまっていたと思うので、トライにつながりました。

――スタミナ面でも練習の成果が出てきていますか

そうですね。でももっと特に前の5人は走らないといけないと思います(笑)。少しずつ成果は出てきていると感じています。

――春シーズン残り1カ月ですが最後の帝京大戦に向けて強化していかないといけないことは何ですか

明大戦で折り返して、いまは1つずつ課題をつぶしていく状態で、これからもそれが続いていくと思います。もっと練習の精度を上げて、後藤さんやコーチの想像を超えるような練習を学生でつくっていくようにしたいです。

フランカー布巻峻介副将(スポ4=東福岡)

―― 試合全体を振り返って感想をお願いします

ミスはありましたけど、完封したのは今季初だったので、そこは十分評価できるかなと思います。

――一時スクラムで劣勢に立たされる場面もありましたが、組んでみた印象はいかがでしたか

ちょっと重いとは感じたんですけど、押されてる感じではなかったです。プロップがうまく合っていなかったこともあって難しかったですね。反則とかも多かったので、そこは修正しないといけないですね。

――外国人選手にも力強いタックルを決めていましたが、体の大きな選手でも当たり負ける感じはありませんでしたか

そうですね。強かったですけど、やられるという感覚はなかったですね。

――先日サントリーと合同練習を行ったとのことですが、そのときの練習が生きた部分はありましたか

ディフェンスは通用した部分があったので、みんな自信を持って試合に挑めたのかなという感覚はあります。

――他にも収穫となった点はありますか

社会人との練習は全部に学べるところがあるので、個々人で差はありますけどセットの早さだったり、セットプレーだったり、全部のレベルが高いので勉強になりました。

――フランカー吉田有輝選手(人4=大分舞鶴)が初スタメンを飾りましたが、プレーを見ていていかがでしたか

チームではこの試合のMVPにも選ばれていたので良いパフォーマンスはしていましたし、僕自身刺激になりました。これから一緒に高め合っていきたい存在ですね。

――ケガ人も出てきているようですが、チームの状況はいかがでしょうか

やはり1人ケガ人が出てくるとチームにも迷惑を掛けることになるので、そこは一人一人自覚を持ってやってほしいですね。

――先週行われた明大戦での敗北から、どのようにチームを立て直してきましたか

負けが続かないように、とりあえずきょうは勝つということを意識して臨みました。春の踏ん張りどころ、中間地点としてはうまくいったかなと思います。

――次節に向け、心掛けていきたいことがあれば教えてください

一個一個課題は増えているんですけど、まずは自分たちが練習でやっていることを試合でできているかできていないかということにフォーカスしていきたいので、できていないことを一つ一つつぶしていこうかなと思います。

SO小倉順平副将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)

――どのようなことを意識して試合に臨みましたか

前半の入りの20分をとりあえずしっかりやろうと決めていました。

――前半点が入らない時間帯が続いた時、何を考えてプレーされていたのですか

特に最初の入りのところで、我慢しようということをFWにずっと言っていました。

――前半の途中から点が入るようになりましたがきっかけがあったのですか

相手が疲れただけですね。最初の20分はどこのチームも強くて同じぐらいですが、その20分、30分が終わり相手が疲れた後に、どちらが先に点を取ってペースに乗れるかというのが勝負だと思います。

――自分たちが何か変えたというわけではないのですね

相手が疲れた後で、自分たちが継続できたということが大きいですね。

――全体を通してディフェンスはいかがでしたか

0点で抑えられたということがまず一番大きいです。チームとしては個々でやられているのが少しあったので、それを帝京大戦までに修正したいなと思います。

――0点に抑えたことについてはどのように感じていますか

それはすごく評価していいと思います。昨年から数えても、あまり0点で抑えたことがなかったと思うので。

――先週、明大戦で負けてからチーム内に変化はありましたか

明大戦の後、きのうもBチームやCチームが負けて、チームとしてはあまりいい方向に行っていないところをAチームがしっかり打開できたことは良かったです。

――サントリーと合同練習されたとお聞きしましたが収穫はありましたか

サントリーの時もボロボロにやられたわけではなくてトライも取れましたし、ディフェンスが上がる感覚とかもみんなあったみたいなので、それで習得できたものはあったと思います。

――次戦までに修正すべき点があれば教えてください

もっとディフェンスが前に出るというのもありますが、アタックも1対1のところで入りの20分に相当負けているということが目に見えたので、入りの20分をもっとこっちのペースにできるようにやっていきたいと思います。

プロップ光川広之(スポ4=神奈川・公文国際学園)

――試合を振り返っていかがでしたか

最近は後半から出場することが多くて、スターターが久しぶりだったのでコンディションなどを意識してやりました。

――どのような意気込みで臨みましたか

前半の30分が勝負と言われていたので、自分が出る時間帯ということでセットプレーやディフェンスを特に意識していました。

――スクラムを組んでみた印象はいかがでしたか

相手が自分たちよりも重かったのですが、押すときに上にいってしまい、思うように押せなかったので、そこは修正していきたいと思います。

――無失点で抑えましたが、ディフェンス面はいかがでしたか

FWがよく声を出していて、ブレイクダウン周りなどもディフェンスセットができていたので、あまり大きなゲインもされずに失点ゼロにつながったのかと思います。

――オフェンス面に関してはいかがでしたか

ポイントポイントが多くできてしまったので、ポイントをなるべく作らないように、それぞれが1対1で必ずゲインして少ないチャンスをものにしてもっとトライを取っていきたかったですね。

――ポジション争いに関してはどのようにお考えですか

フロントローの1番大切なことはスクラムと後藤監督(禎和、平2社卒=東京・日比谷)にもずっと言われているので、そのスクラムを1番こだわってやっていきたいです。

――課題は見つかりましたか

スクラムですかね。上に押してるっていうのをしっかり修正して、自分がもっと強くなったらロックの力を借りずに、ひとりで押していけるのかなと思うのでもっと強くなりたいです。

――今シーズンの意気込みをお願いします

今シーズンはずっとAチームに定着してやっていきたいと思います。

フランカー吉田有輝(人4=大分舞鶴)

――試合を振り返っての印象をお願いします

完封することができたので、良い試合だったと思います。

――意識して臨んだ点は何かありますか

外国人選手が2人いて、個々が強い相手だったので、1対1で負けないようにするという部分と、ブレイクダウンを越え切るという今週のテーマの部分を徹底して臨みました。

――意識していた部分の評価をお願いいたします

前半の前半は受けてしまいましたが、後半になるにつれて修正することができていたと思います。

――トライシーンの振り返りをお願いいたします

全員でモールを押してくれたので、後は自分がいくだけという感じでした。

――ご自身の良かった点はありますか

下のボールに対するセービングは周りのみんなからも評価されたので、自分自身でも納得できるものだったと思っています。

――チームMVPに選出されたそうですが、お気持ちはいかがですか

まだまだなんですが、きょうはうれしい気持ちが大きいです。

――今季初スタメンでしたが、何か心掛けたことはありますか

特別意識した所はないのですが、自分が流れを変えるタックルをできればいいなと思っていました。

――フランカーに転向されたのはいつからですか

3年生の10月からなので、まだ半年くらいですね。

――転向のきっかけを教えてください

自分はタックルが得意だったので、それを売りにしていこうと思ったときに、やはりフランカーがいいのではないかと思って転向を決意しました。

――ポジション争いも激しいと思いますがいかがですか

自分しかできないこと、体の小ささや他の人にはない泥くささだったり、先にタックルでいくという気持ちの面では誰にも負けないと思っているので、そういったものを出していければ自分自身やっていける自信があります。

――SH平野航輝(スポ4=長崎南山)選手と一緒に試合に出たいとHPに書いてあるのを拝見しましたが、それが達成されましたね

そうですね、試合後一緒に写真を撮りました(笑)。(平野選手とは)入学当初からお互いライバルとしてやってきて、あいつには思い入れがあるというか。1年生の時にポジション練習などのつらい経験も一緒にしたので、一緒に試合ができてすごくうれしかったです。

――今後の意気込みを教えてください

Aチームに定着して、勝利に貢献できるように今後もがんばっていきます。

CTB丹野怜央(教4=北海道・札幌山の手)

――この試合を振り返っていかがでしたか

完封できたことが良いところかなと思っています。もっと得点を取れたかなと思うところがあったので、それが悪いところだと思います。

――具体に何を修正すれば、より多くの得点につなげられたと思いますか

良いセットをしてもう少し良いアタックができていれば、簡単にトライが取れそうなシーンが多かったのですが、自滅というか、あまり良いかたちにできずにトライが取れなかったので、そこを改善できればもっとトライを量産できたかなと思います。

――流通経大の印象はいかがでしたか

FWがごりごり来てトライを取っていって、BKも外国人の選手を当ててくるイメージでした。

――BKのパスがあまり通っていない印象がありましたが、いかがですか

この試合の前から、流通経大が前に出てかぶせてくるチームだという情報は聞いていて、それに対応できたところではゲインやトライをできたと思うのですが、前半の最初だったり後半の途中だったりはそこを修正できずに少し捕まってしまうシーンがありました。

――Aチームスタメン定着に向けて、個人的にアピールできたところはどこですか

前半はアタックもディフェンスもそれなりにできてアピールできたかなと思うのですが、後半はあまり良いプレーができていなかったので、そこはアピールできなかったかなと思います。前半の部分を継続できれば良いアピールになると思います。

――これからに向けた意気込みをお願いします

Aチームのスタメンとして帝京大を倒すことが目標なので、まずは春の終わりにある帝京大戦に出場できるように、頑張ってAチームに出場することを続けていきたいです。それで帝京大を倒したいと思います。