勝利するも選手に笑顔なし

ラグビー男子

 石巻で慶大に大敗を喫してから一週間。ホーム・早大上井草グラウンドに日大を迎え、関東大学春季大会の最終戦が行われた。前節からスタメンを10人入れ替えて臨んだ試合は、前半こそは早大らしさを出したものの、後半はタックルの甘さや、要所でのミスが目立ち、慶大戦からの変化がさほど感じられない不満の残るゲームとなった。

 早大のキックオフで始まった前半。ゴール前スクラムからSH岡田一平(スポ2=大阪・常翔学園)が右サイドに持ち出す。そこからFWが近場を攻め、最後はBKが左に大きく展開。大外に構えていたWTB廣野晃紀(社4=東京・早実)が仕留めて幸先よく先制する。向かい風ながらも、SO小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)の優れたエリアマネジメントで地域を支配した早大は、12分、24分にもトライを決め、日大を引き離す。33分にこの試合最初のピンチを迎えるが、ゴール前スクラムで圧倒し、見事ターンオーバー。ここはチャンスの芽を摘む。しかし外国人選手の凄まじいカウンターアタックに太刀打ちできず、36分に初失点を喫した。前半終了間際にもう1トライを重ねた早大は24-5と、まずまずの内容で前半を折り返す。

主将が不在の中ゲームキャプテンを務めた金

 後半開始早々、素早い連続攻撃で相手を掻き回す早大は、CTB飯野恭史(商3=東京・早実)のオフロードパスを受けたFB滝沢祐樹(基理2=福島)が中央を突破。最後まで走り切り、前半同様に順調な立ち上がりを見せる。このまま勢いづくかに思われたが、「トライを取れるところで取りきれなかった」と小倉が語るように、ゴール前でミスを連発。自分たちで流れを絶ってしまう。またタックルにも甘さが目立ち始め、弾かれる場面が多くなり、13分にはあっさりと失点を許す。17分に相手がシンビンで一時退場し、数的有利に立つも、決定力を欠いた早大はインゴールを陥れることができない。ディフェンスでも後手に回り、徐々に失速。結局、最初にトライを奪ってから、1点も追加点を重ねることなく、31-10でノーサイドを迎えた。

タテへの突破でチャンスを演出した飯野

 垣永真之介主将(スポ4=東福岡)が不在のため、代わりにゲームキャプテンを務めたフランカー金正奎(教4=大阪・常翔啓光学園)は、試合後に、「もっと一人一人が自分に厳しいプレーをしなければ」と唇をかんだ。春季の総仕上げとして当初からターゲットに掲げる帝京大戦まで残り3週間。選手たちが相当な覚悟をもって、ウィークポイントの改善に取り組まなければ、またしても昨年と同じ結果が待っているだろう。

(記事 坂田謙一 写真 大口穂菜美)

関東大学春季大会
早大 スコア 日大
前半 後半 得点 前半 後半
24
31 合計 10
【得点】▽トライ 金、廣野2、飯野、滝沢 ▽ゴール 小倉(3G)
※得点者は早大のみ記載
早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
光川 広之 スポ3 神奈川・公文国際学園
  後半9分交代→17大瀧    
須藤 拓輝 スポ4 東京・国学院久我山
  後半0分交代→16清水    
佐藤 勇人 スポ3 秋田中央
近藤 貴敬 社4 宮城・仙台育英
河野 秀明 創理2 東京・早実
  後半26分交代→18大峯    
◎金 正奎 教4 大阪・常翔啓光学園
  後半15分交代→19池本    
古賀 壮一郎 スポ4 福岡・筑紫
深津 健吾 スポ3 東京・国学院久我山
岡田 一平 スポ2 大阪・常翔学園
  後半10分交代→20平野    
10 小倉 順平 スポ3 神奈川・桐蔭学園
  後半35分交代→21浅見    
11 廣野 晃紀 社4 東京・早実
12 飯野 恭史 商3 東京・早実
13 藤近 紘二郎 政経4 神奈川・桐蔭学園
  後半0分交代→22水野    
14 山本 龍平 商3 東京・都武蔵
15 滝沢 祐樹 基理2 福島
リザーブ
16 清水 新也 スポ3 宮城・仙台育英
17 大瀧祐司 文4 神奈川・横浜緑ヶ丘
18 大峯 功三 スポ3 福岡・東筑
19 池本 翔一 スポ2 愛知・千種
20 平野 航輝 スポ3 長崎南山
21 浅見 晋吾 スポ2 神奈川・桐蔭学園
22 水野健人 人4 大阪・東海大仰星
※◎はゲームキャプテン、監督は後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷)
コメント

後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)

――この試合全体を振り返ってみていかがでしたか

後半、肝になるプレーヤーが何人か抜けてやはり地力が落ちてしまいました。それが前半と後半の点差になったのではないかと思います。

――ディフェンスに関してはいかが評価しますか

前半はそれなりに評価できると思います。後半は先週の慶大戦と全く同じで、飛び込んでタックルに行って、それが弾かれてゲインを許してしまいました。前半出ていた選手と、後半から入った選手とでは、タックルひとつを取ってみても、大きな差がありました。

――Aチームに復帰した選手はいかがでしたか

まだ万全ではないですが、キープレイヤーになる須藤(拓輝、スポ4=国学院久我山)、金(正奎、教4=大阪・常翔啓光学園)、藤近(紘二郎、政経4=神奈川・桐蔭学園)の3人の存在はやはり大きいと思いました。

――帝京大戦まであと3週間となりました。どこを強化していきますか

今までやってきたことの精度を高めていきます。フィジカルに関しては引き続き強化して、少なくとも今のレベルから落とすことはしたくないです。

――決定力の弱さが際立ちましたが、監督はどのように思っていますか

主力が戻ってこないと分からないですが、いま出ているプレーヤー、特にバックスリーにはトライを取る重要性をもう一度考えてほしいと思います。

フランカー金正奎ゲームキャプテン(教4=大阪・常翔啓光学園)

――試合を振り返って感想をお願いします

勝つには勝てましたが、取り切れるところで取り切れなかったり、アタックのセットが非常に悪かったりで、反省の残る試合でした。

――金選手の復帰戦となりましたが、試合勘などを含めコンディションはいかがでしたか

特に悪くはないですけど、まだ万全とは言い切れないのでこれからだと思います。

――ご自身のプレーの出来はいかがでしたか

全然ダメでした。チームとしてセットできていなかったところは多分僕もできていなかったというのと、チームの方向性を明確にできなかったというのは、リーダーとして反省しています。

――後半途中からはベンチで見ていていかがでしたか

もっと一人一人が自分に厳しいプレーをしなければということを感じました。

――次戦に向けて、課題や修正点があれば教えてください

まずはアタックのセットを練習しているので、そこを修正するのが一番なのと、あとはメンタリティと部分をもっと強くするべきだと思うので、他人任せにせずに自分のプレーをするということをもっと徹底してやっていきたいと思います。

フッカー須藤拓輝(スポ4=国学院久我山)

――今季初スタメンとなりましたが、どのようなことを考えて試合に臨みましたか

先週の慶大戦が結果的にも内容的にも大きく崩れてしまった試合だったので、前半セットプレーから締めていければと思っていました。

――最近の課題でもある試合の入りはいかがでしたか

立ち上がりは良かったのですが、まだふわふわしているところがあるというか、慶大戦の敗戦から切り替えられていないなというのを今週の練習中から感じていました。それが試合でも抜けていなかったかなと感じています。

――慶大戦からの立て直しはまだ途中の段階というところでしょうか

そうですね。でも結果として勝つことができたのが大きいと思います。良い方向に進むことができると思います。自分のプレーもまだまだですが徐々に戻ってきていると感じています。

――後半の内容は外からどのように見ていましたか

前半のようにゲームプラン通りには進められなくて、ゴール前でのミスが多かったです。やはりミスが多いとああいう苦しい試合展開になってしまいますね。

――韓国遠征へ向けて意識する点はありますか

今回の試合で勝つという結果は出せたので、次は内容を求めて試合に臨みたいと思います。

NO・8深津健吾(スポ3=東京・国学院久我山)

――きょうの試合を振り返っての感想をお願いします

チーム全体として、『責任』というのを目標に掲げていたんですけど、自分のプレーを振り返ると、責任がなかったのかなと思うので、これからもっと責任のあるプレーをしていきたいと思います。

――ここ数試合で、試合の入りというのが課題としてあったと思いますが、今回はいかがでしたか

先制点も取れたので、入りは悪くなかったと思います。

――逆に後半は立ち上がりの1トライのみと、失速した印象を受けました

流れが僕たちにあるときに、自分たちのミスが原因で流れが相手にいってしまったりしているので、その流れを取り戻すようなビックタックルができればと思います。

――試合後にラインアウトの練習をされていましたが、セットプレーに関してはいかがでしたか

スクラムも安定していてコントロールできていたと思うので、前一列には頑張ってもらえていたと思います。ラインアウトはスローとリフトが合っていないところがあって、僕自身のミスも一つあったので、そういうミスを一つずつなくして、セットプレーの安定に努めたいと思います。

――深津選手は初のAチーム先発出場でしたが、ご自身のプレーはいかがでしたか

出られない4年生とかもいるので、もっとしっかり考えて、選ばれた責任もあると思うので、その責任を果たせるようにしっかりプレーしたいと思います。

――来週は高麗大戦ですが、意気込みを聞かせてください

まだ選ばれるかわからないので何とも言えないですけど、外国人と試合ができる良い機会なので、しっかりと体を当てて、良い勝負ができるように頑張りたいと思います。

SO小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)

――今日の試合を振り返って感想をお願いします

敵陣に入るところまでは出来ていたんですけど、トライを取りきれず、ミスが多かったと感じています。

――先週の慶大戦からどのような点を修正してこの試合に臨みましたか

ディフェンスが全然出来ていないというのが修正点としてあったんですけど…。まだまだ帝京大とは戦えないと思います。

――前半は良いテンポでパスを繋いでいた場面がいくつか見られました

まだまだですね…。

――後半試合が停滞した原因として何か感じることはありますか

さっきも言ったんですけどトライを取れるところで取りきれなかったのと、敵陣に入ってからミスが多くなってしまったのが原因かなと思います。

――ご自身のプレーについてはいかがでしたか

まだまだですね。試合を通してチームをコントロールし続けるところと後半もいける体力の部分は足りないと感じています。

――これから明大、帝京大といった強敵との対戦が続きます

自分たちよりも身体の大きい相手との対戦ということでどれだけみんながひたむきにやれるかが重要だと思うので、練習からしっかりやっていきたいです。

CTB藤近紘二郎(政経4=神奈川・桐蔭学園)

――試合を振り返っていかがでしたか

BKが取りきらなきゃいけないところでミスが多かったりして、それがなければ後半点数を取れなかったところでもっと良い試合ができたんじゃないかと思うので反省しています。

――久々のAチームスタメン復帰でしたが、調子はいかがですか

どの試合でもベストの状態で自分にとってベストのプレーをすることを心掛けているので、そういった点では変わったところはないです。

――前半の立ち上がりは好調ながら、徐々に調子を落としてしまいましたが、どのように感じましたか

そういったところをそれぞれが意識していたので、入りはよかったのかなと思います。そこで切らさずに後半にもその流れを持っていければもっと良い試合になったと思うので、そういったところが反省として上がってきています。

――後半、ベンチから客観的に試合を観ていかがでしたか

風上で陣地も良い感じで取れていたとは思うんですけど、やっぱり敵陣での取りきるプレーのところでミスが多くて、そこで相手に流れが行きかけた部分があったので、そういったところでちゃんと取りきれるBKじゃないとこれからの試合もっと厳しいと思います。

――春季大会全体を客観的に観て、良かった点と悪かった点があれば教えてください

初めて赤黒を着る選手が多くいるなかで、それぞれ経験が少なかったりして大変な部分があったと思うんですけど、やっぱり悪い点が多くてそういったところをいまの時点で見つけられたのは良かったのかなと思います。

――高麗大戦や帝京大戦に向けての意気込みをお願いします

やっぱり個々が強いチームになってくると思うので、そういったところで当たり負けないで、しっかりとひとりひとりが自分の責任を果たせるように頑張っていきます。