約1カ月もの長きに渡った夏合宿。その最後に用意されたのは、流通経大との一戦だ。早大は前半から主導権を握って試合を優位に進める。後半から相手の足が止まったのを見逃さなかった早大は、猛烈なトライラッシュを披露。後半だけで9つのトライを挙げた早大が65-19と大差で勝利し、合宿の充実さを感じさせると共に、翌月に開幕を控える関東大学対抗戦へと大きく弾みをつけた。
前半、早大は素早いアタックや、SO小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)のロングキックが機能し、敵陣で優位にラグビーを続ける。FWが近場、BKが展開して外を攻めるしつこい攻撃は、流通経大に多くのペナルティーを誘発させた。すると11分、早大は相手ゴール前付近からのラインアウトからBKが左にパスをつないでいき、FB滝沢祐樹(基理2=福島)がインゴールに飛び込んで先制点を挙げた。27分にも同様の形から小倉がトライ。14-0とし、このまま突き放したい早大だったが、30分、BKのパスミスから流通経大にターンオーバーされると、そのまま独走を許して失トライ。ゲームを支配していただけに痛恨の失点だったが、早大は前半を14-7とリードして折り返した。
安定したエリアマネジメントでチームに貢献した小倉
迎えた後半は、いきなりWTB荻野岳志(先理3=神奈川・柏陽)が相手ディフェンスの穴をすり抜け、ノーホイッスルトライを決め幕が開けた。さらに後半途中から投入されたSH平野航輝(スポ3=長崎南山)、SO間島陸(商4=東京・早大学院)のコンビが、疲れの見える流通経大の守備の穴を、ハイテンポで突いていくと一方的な展開に。中でも28分、相手のドロップアウトから試合が再開すると、ボールを受けた滝沢が大幅ゲイン。フォローに走っていたフッカー清水新也(スポ3=宮城・仙台育英)につなぎ、最後はまたも滝沢が抜け出して獲得した得点は、春からテーマに掲げている『数で勝つ』の一端が伺えた。
好調を維持する滝沢
今回の大勝の裏には、ペナルティーの少なさが大きく関わっている。「相手にペナルティーをさせて自分たちがしなければ、それだけで敵陣にい続けることができ、楽な試合運びができる」と後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)は語る。これまで多かった、自らのペナルティーの数を減らしていくことが、復権のカギを握ることは間違いない。この課題を菅平から下山しても取り組んでいきたいところだ。新たな戦いはもう目の前に迫っている。
(記事 御船祥平、写真 大口穂菜美)
夏季オープン戦 | ||||
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早大 | スコア | 流通経大 | ||
前半 | 後半 | 得点 | 前半 | 後半 |
2 | 9 | T | 1 | 2 |
2 | 3 | G | 1 | 1 |
0 | 0 | P | 0 | 0 |
0 | 0 | D | 0 | 0 |
14 | 51 | 計 | 7 | 12 |
65 | 合計 | 19 | ||
【得点】▽トライ 黒木、小倉、土肥2、荻野4、滝沢2、平野 ▽ゴール 小倉(3G)、間島(2G) | ||||
※得点者は早大のみ記載 |
早大メンバー | |||
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背番号 | 名前 | 学部学年 | 出身校 |
1 | 大瀧 祐司 | 文4 | 神奈川・横浜緑ケ丘 |
後半22分交代→17光川 | |||
2 | 清水 新也 | スポ3 | 宮城・仙台育英 |
3 | ◎垣永 真之介 | スポ4 | 東福岡 |
4 | 近藤 貴敬 | 社4 | 宮城・仙台育英 |
5 | 大峯 功三 | スポ3 | 福岡・東筑 |
6 | 呉 泰誠 | スポ4 | 大阪朝鮮 |
7 | 布巻 峻介 | スポ3 | 東福岡 |
後半0分交代→18河野 | |||
8 | 黒木 東星 | スポ4 | 東福岡 |
9 | 岡田 一平 | スポ2 | 大阪・常翔学園 |
後半22分交代→19平野 | |||
10 | 小倉 順平 | スポ3 | 神奈川・桐蔭学園 |
後半22分交代→20間島 | |||
11 | 土肥 将也 | 人4 | 東京・三鷹 |
12 | 坪郷 勇輝 | 商4 | 東京・早実 |
13 | 飯野 恭史 | 商3 | 東京・早実 |
前半35分交代→21藤近 | |||
14 | 荻野 岳志 | 先理3 | 神奈川・柏陽 |
15 | 滝沢 祐樹 | 基理2 | 福島 |
リザーブ | |||
16 | 須藤 拓輝 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
17 | 光川 広之 | スポ3 | 神奈川・公文国際 |
18 | 河野 秀明 | 創理2 | 東京・早実 |
19 | 平野 航輝 | スポ3 | 長崎南山 |
20 | 間島 陸 | 商4 | 東京・早大学院 |
21 | 藤近 紘二郎 | 政経4 | 神奈川・桐蔭学園 |
※◎は主将、監督は後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷) |
コメント
後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)
――やりたいことが思うようにできた試合ではないでしょうか
できれば相手が元気なうちから、もう一つ精度高いラグビーをしたかったというのはあるんですけど、帝京大を最大のターゲットにしてきて、どうしても緩みがちになってしまうところなんだけど、それにしては規律を守ったいいラグビーができたのではないかと思います。
――今回の試合はペナルティーが少なく、むしろ相手に誘発させていましたが、その点についてはいかがですか
選手たちにも言ったんですけど、相手にペナルティーをさせて自分たちがしなければ、それだけで敵陣にい続けることができ、楽な試合運びができるというのを身を持って分かってくれたと思うので、この辺りは継続、強化していきます。
――一つのミスが失トライにつながった印象を受けましたが、ディフェンスについてはいかがでしたか
ゴール前での粘りっていうものはある程度見せれたと思うんですけど、ミスからの切り返しのところが反応できなくて、一発で持っていかれたシーンがあったので、ここも改善していきたいです。
――後半から出場したSH平野航輝選手(スポ3=長崎南山)、SO間島陸選手(商4=東京・早大学院)が非常に良くテンポアップしてくれましたね
向こうの足が完全に止まってからのことなので、誰が入っても一緒じゃないですか(笑)。
――この試合の得点源としてはキックカウンターがあったと思いますが、その点についての評価を教えてください
こう言ってはなんなんですけど、相手のキックチェイスが整っていないというのがあったので、帝京大相手にこんな簡単にカウンターアタックが仕掛けられるはずは無いので、評価は控えたいですね。
――合宿を通して精度を課題にしていましたが、精度についてはどう感じていますか
本当に少しずつ、ちょっとずつですけど良くなってきているという印象を持っています。
――それは規律という面についても同様ですか
規律とかもそうですし集中力ということも、ミス無く攻めきるということが大事になってきていますね。
――これから本格的にシーズンが幕を開けますが、改めて目標と抱負をお願いします
当然目標は(全国)大学選手権優勝というところにあるので、それに向けて序盤戦をどう過ごすかっていうことが大事になってくると思います。特に九月の最後には筑波大戦があるので、そこへまずは最初のピークというか仕上げていっていい試合をしたいですね。
プロップ垣永真之介主将(スポ4=東福岡)
――夏合宿最後の試合とでしたが、どんな気持ちで臨みましたか
やってきたことの集大成をみんなで示そうという思いで臨みました。
――やってきたことは出せた試合だったのではないでしょうか
いや、まだ全然詰めが甘いですね。そこを帰って締めれたらいいなと思います。
――具体的にどういった点が詰めが甘いとお考えですか
ブレイクダウンとかアタックミスに関しては、思うように成果が出ていないです。
――この夏は『規律』をテーマに取り組んでいましたが、この点に関してはいかがでしたか
この試合に関してはペナルティーは少なかったですが、帝京大レベルになるとペナルティーが多くなるので、もう一回見直してやっていきたいです。
――これで21日間に及ぶ夏合宿も終了となりますが、夏合宿の総括をお願いします
すごく充実した夏合宿になったと思います。帝京大戦が近づくにつれて、雰囲気も良くなっていきましたし、いいゲームができたんではないかと思います。
――最後に関東大学対抗戦に向けて抱負をお願いします
優勝だけを目指して頑張っていきたいと思います。
ロック近藤貴敬(社4=宮城・仙台育英)
――スタメン復帰となりましたが、どういう心境で臨まれましたか
実際少し緊張はしていたのですが、Aチームということを背負って臨まないといけないので。そういうところを意識しました。
――ラインアウトリーダーということで、ゲームでのラインアウトの出来はいかがでしたか
最後にゴール前で一本ミスをしてしまったことが反省ですが、それ以外はきれいに取れていたかなと思います。
――留学生を含め流通経大のフィジカルに苦心した場面もありました。どういった意識を持って臨みましたか
一人目がロータックルで低く入って、二人目とダブルで倒すということを練習してきたのですが、それがあまり生かせなかったかなというのが反省点です。
――後半は前半に比べよりうまくアタックが機能した。要因はどこにありますか
僕たちは夏に走り込んできたので、フィットネスの部分で流通経大に上回ったのかなと思います。
――夏合宿で改めて見えた課題は何ですか
帝京大と戦って、春シーズンよりも点差が開いてしまった。そこに自分たちの努力の足りなさや甘さを感じました。これから秋に向けこれ以上の努力が必要だと再認識できたと思います。
――逆に手応えや収穫はありますか
ケガが癒えて、夏合宿の最終戦にまたスタメンで出られたので、収穫ではないかもしれないですが、良いかたちで秋シーズンに入っていけるのは良かったかなと思います。
――秋に向けどの程度まで仕上がりましたか
いやまだまだ全然ですね。足りない部分が多すぎるので。(全国)大学選手権が終わるまでは努力を続けなければと思います。
フランカー呉泰誠(スポ4=大阪朝鮮)
――試合を振り返って感想をお願いします
前半はきつい時間が続いて、自分たちのペナルティーやミスのせいで相手に攻め込まれてしまいました。『規律』と『集中力』が欠けていたと反省しています。ですが、後半はしっかり立て直すことができて、ワセダのラグビーができたのではないかと思います。
――帝京大戦に比べてペナルティーが減ったと思いますが、合宿の成果でしょうか
そうですね。ペナルティーを減らさないと自分たちは勝てないと思っていますし、そのための練習を合宿でも重ねてきたので、少し成果が出たかなと感じています。
――残っている課題を教えて下さい
合宿の最終戦ということもありますが、疲れが出てしまい、FWが全然めくれていませんでした。やはりFWのワークレートが低くなってしまったのは大きな課題だと思いますね。
――夏を振り返って感想をお願いします
チームとして、監督やコーチ陣とやろうと決めたことをまだ100パーセント確実にやりきれていないと感じています。それをやりきるためにも、フィットネスはもちろんゲームの経験をもっと積んで、レベルアップをしていきたいですね。秋に向けて優勝を目指して戦っていくビジョンは見えているので、これからは芯に肉付けをしていこうと思います。
――秋のシーズンに向けての意気込みをお願いします
僕のポジションはタレントが多いので、自分らしさを出しながら、Aチームに残ってチームの日本一に貢献していきたいです。
フランカー布巻峻介(スポ3=東福岡)
――夏最後の試合でしたが、どのようなことを意識しましたか
一番はやはり勝って終わるということ、また夏合宿でやってきたことを出すということです。
――実際に夏合宿でやったことは試合に出ていましたか
みんな強気に、前半はタテにタテにいっていたし、ブレイクダウンへのこだわりだとか、そういう意識は見られたと思います。
――他に良かった点はありますか
敵陣で(トライを)取り切れるようになってきたことですね。チャンスをものにできる回数は増えてきたかなと思います。
――逆に課題はありますか
やはりミスが多いところ。あとはチャンスのところでどれだけみんなが走れるか、ピンチの時にスピードを切り替えて走れるか、そういうところだと思います。
――布巻選手は前回も今回も前半のみでの出場でしたが、特に理由はありますか
徐々に上げていくという感じです。
――夏合宿の感想をお願いします
すごく良い3週間で、自分にも向き合えたし、チームとしても課題であったり強みであったりを、みんなが見つめる機会になったと思います。
――これからいよいよ関東大学対抗戦が始まりますが、意気込みをお願いします
この夏合宿でやったことを自信にして試合に臨むことと、いままでと変わらずチャレンジ精神で成長し続けていくこと、それを意識して頑張りたいと思います。
SH岡田一平(スポ2=大阪・常翔学園)
――試合を振り返っていかがですか
僕らのやり方としては、前半はしっかりと布石を置いて表のプレーをやっていって、後半はその裏をついて点を取っていこうというプランでした。前半と後半で点数に差がありましたが、チームプランとしてはよかったと思います。ただ、前半で失点がある場面は、タックルミスなどの自分らのミスから始まったので、そこは前半の厳しい時間を我慢し続けるというのがこれからの課題だと思います。
――いい形で合宿が終えられたということでしょうか
そうですね。アタックは自分たちのやりたいことができたと思います。ディフェンスについては、なんとか0点におさえないといけなかったですね。帝京大が相手になるとどんどん点数を重ねられるので、まず一人目、ダブル、トリプルとタックルして止められるようにするのが課題です。
――具体的に課題というのはディフェンス面になるということですか
そうですね。帝京大には春の試合よりも点差をつけられたし、流通経大でもタックルミスからトライされたので。今回もディフェンスですね。
――関東大学対抗戦に向けて一言お願いします
まずはAチームで出るということです。そして出たからにはちゃんとしたワセダのプレーができるように、練習に励みたいと思います。
SO小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)
――帝京大戦からどのような調整をされましたか
ロータックルとキックオフの後の逆目セットとかですね。帝京大戦でできなかったことを重点的にやっていました。
――試合を振り返っていかがですか
最初、相手が元気だったときに何本か取られて、こっちのペースが上手く保てなかったので、入りの20分を大事にするのが大切なのかなと思いました。
――入りの20分で苦戦してしまった原因はなんでしょうか
FWとBKが連動して動けていなくて、流通経大のディフェンスも良かったので全然上手くいかなかったです。
――そこから調子を上げた要因はなんでしょうか
相手が疲れただけですね。
――ご自身のエリアマネジメントはいかがでしたか
割と敵陣には居られたのですが、相手の外国人選手に簡単にやられてしまったので、それを避けながら居られればなと思いました。
――夏季オープン戦のまとめをお願いします
帝京大戦に良い状態で持っていけるように、ひとりひとりが練習して、国立に立てるように頑張ります。