【連載】野球部 秋季早慶戦直前特集 『圧倒』 第12回 小宮山悟監督

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 ここまで勝ち点4の獲得に導いた小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)。全勝優勝で春秋連覇を目標に掲げた始まった今季は、立大に1敗したものの、2季連続の完全優勝を目前としている。圧倒的な試合運びを見せてきた今季の戦いぶりや、来る早慶戦への意気込みを伺った。

※この取材は10月27日にオンラインで行われたものです。

選手みんなが勝つことで自信がどんどん芽生えてきて、自信満々でプレーができている

――ここまでのリーグ戦の4カードを振り返っていかがですか

 全勝優勝を目指して始まったリーグ戦でした。立教戦で思うように打線が機能せずに星を落とすということはありましたけれども、4カード全てで勝ち点を奪えているということを考えると、よく頑張っていると思います。

――開幕カードの東大戦では2戦共に二桁得点の快勝でした。振り返っていかがですか

 最初のカードであれだけ打ちまくってということで、打線が春はチーム打率が3割を超えてたので、同じように機能するかどうかというところがポイントでした。それを考えると、あれだけ打ちまくるということができたので、それなりの手応えを感じつつ、いい滑り出しであったと思います。

――続いて法政戦の振り返りに移ります。1戦目は引き分けに終わるも、2、3戦目でしっかりと勝利し、勝ち点を挙げました

 難敵というところで、かなり強烈な投手陣でしたので、なかなか思うように点は取れないだろうという風に思ってました。こちらとしても守備力に関しては自信があったので、競り合いに持ち込めればなんとかなるかなという風には思ってましたので、我々の思惑通りに試合が進んだと感じています。ただ、引き分けの試合ももう少しうまくやって競り合いに持ち込めれば勝てたという風に思ってます。また、3戦目の篠木(健太郎、法大4年)くんと2度目の対戦の時に前田(健伸、商3=大阪桐蔭)がかなり力強いバッティングを見せてくれました。この秋に彼が覚醒してくれればと願っていましたので、篠木くんから打ったホームランが彼を目覚めさせてくれたと思います。これまでいいかたちで試合ができてますので、健伸に限らず、選手みんなが勝つことで自信がどんどん芽生えてきて、自信満々でプレーができているという感じに見えます。

――続いて立教戦では2回戦で今季初黒星を喫しましたが、3回戦なんとか勝利して勝ち点を獲得しました

 東大、法政といいかたちで勝てたというところで、全勝優勝というのを声高に叫んでましたので、変なプレッシャーみたいなものを感じたのかなという気はしてます。2試合目は誇南(宮城、スポ3=埼玉・浦和学院)が粘って投げてたけれども、逆転された後に打線が思うように機能しなかったところは大いに反省しないといけない点です。ただ、1つ負けたことでチームが引き締まったというか、もう負けられないという思いになったという感じがします。3回戦ではうまくゲームを進められない中でも何とかしのいで戦えたと思っていますので、厳しい状況になったとしても、どこかで負けるわけがないというような、選手全員が勝利を目指すチームになった感じが見ていてあるので、いいチームになったなと思っています。

――明大とのカードでは首位同士の天王山となりました

 戦う前に明大の田中監督(田中武宏監督)と話をする機会があって、「全くの相星で戦うのはなかなかないですね」と。打線も投手陣も守備力も本当に互角の戦いでした。そこで負けずに勝ち点を取れたというのは本当に大きいことですし、 選手が本当によく頑張ったなと思います。

――2回戦は4時間半以上のゲームとなりました

 いろんな方からお褒めの言葉をいただく試合になりました。学生野球の真髄を見ることができたというような賛辞を送ってくださる方もいらっしゃいました。選手はとにかく必死になってやってましたけども、1点を争う攻防がもう本当に見ている方からすると手に汗握る非常にいい戦いができたと思っています。早明両校が力を振り絞ってぶつかり合った戦いでしたので、試合が終わって清々しい気持ちになりました。

(エースは)これぐらいやれて当然

――先ほどのお話にもあったように、前田選手は今季に覚醒したように見えます

 春にレギュラーとして使いましたが、彼の中でも一生懸命頑張ったけれども結果が伴わなかったというところで悔しい思いをしていると思うんです。その思いを持って夏の南魚沼の強化合宿で徹底的に絞り上げて、とにかくお前が打たないと勝てないというところも含めて、早稲田のレギュラーとして恥ずかしくない選手にするということで、かなり厳しく練習させました。結果はいいかたちでリーグ戦で答えを出してくれたので、まだシーズン中ですけど、おそらくシーズンを終えた後も来年に備えて彼はこの夏と同じように血のにじむような努力をしてくれるでしょう。それぐらい、頑張ればなんとかなるんだということを身をもって経験しているので、チームにとっても影響力のある選手ですから、ますます頑張ってくれる、そんなシーズンにできたと思っています。

――8番を打つ石郷岡大成選手(社3=東京・早実)はチーム打率トップ、四球もかなり多く奪っています

 能力で言うと脚力があって、力があって、下位打線の中に置いておくにはもったいないぐらいの選手というつもりではいます。ただ、春はボール球に手を出すことも多々ありました。彼に言ったのが1試合で4打席あるとして、犠打1つ、四死球1つで、これをなんとか自分のものにすると2打席勝負で規定打席に足りると。その2打席のうち、武器であるセーフティバントやヒットを打つだとかすると、確実に5割近い打率が残せると。そう考えると、首位打者に一番近いところにいるという話をそれとなくしました。四球を取るということで言うと、ツーストライクを取られてからでも、粘って粘ってフォアボール取ったシーンもありましたし、 あの粘りが彼の真骨頂だと思います。4割の打率をなんとか残してもらいたいなという風に思っているので、早慶戦で挽回して4割超の打率を残してシーズンを終えられるように後押ししたいと思います。

――尾瀬雄大選手(スポ3=東京・帝京)や印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)も春と同様の活躍ぶりです

 尾瀬に関しては東大戦でつまずいて少し心配したのですが、さすが首位打者だという数字になっています。大先輩の岡田さん(彰布、元阪神監督)のシーズン通算打率の記録を更新するぐらいの勢いで打ちまくってもらいたいですし、100安打も達成してもらいたいです。来年も今年以上の活躍を期待してもいいぐらい練習をしてくれてます。とにかくバットを振ってますから、結果が出て当然だなと思っています。 一方の印出はキャプテンとして連覇のかかるシーズンということで重圧の中、夏には代表に選ばれて1ヶ月近く抜けていましたけど、戻ってきてすぐにチームを俯瞰してどうすればいいかというのをキャプテンとして立派に努めてくれています。秋ももちろん活躍もありがたいですし、早慶戦で勝ち点を奪って春秋完全優勝で連覇という目標に向けた大事なキャプテンなので期待しています。

――投手陣では伊藤樹選手(スポ3=宮城・仙台育英)が今季負けなしの6勝を挙げています

 これぐらいやれて当然だと思っています。今6つ勝っていますが、早慶戦で1つ上積みして7勝。これが大体の目安になるので、優勝するチームにはエースピッチャーが1人で7つ勝って優勝するというのは、大体の過去のリーグ戦を振り返るとそういうアベレージになってますから。来年に向けて弾みがついた1年になっていますので、最後まで頑張ってもらいたいと思います。

――第二先発の宮城選手は春に比べてかなり成長したように見えます

 春に比べると数段良くなっていると思います。彼のセールスポイントと言いますか、投球スタイルは飄々(ひょうひょう)として投げるというね。何事もなかったようにマウンドでボールを投げて、何事もなかったようにダグアウトに帰ってくる感じのピッチャーです。もう本当に十分頑張ってくれているなという風に思っています。

――今季から田和廉選手(教3=東京・早実)も復活してクローザーを務めています

 故障する前のボールを見ていても、普通に投げれば抑えられるピッチャーという認識でいました。不本意なことに故障で1年投げられない時期がありましたが、この秋から戻ってくることができました。夏に彼とも話しながら、とにかく無理をさせないように使いたいと。なおかつ3年生である程度周りに対してアピールができれば、4年生の最後のシーズンで希望の進路に進めるような状況になるので、この後とにかく頑張れということで。 本当だったら連投やイニング跨ぎは避けたかったのですが、チームの勝利というところを考えた場合、彼が「大丈夫です。いけます」と。かなり無理はしているとは思うのですが、頑張ってくれましたので、今の成績になっていると思います。

完全優勝は最低条件

――約2週間後に早慶戦が控えていますが、現在のチームの雰囲気はいかがですか

 現在の「現在」というのが微妙ですかね。今日、現在の状況を伝えるとしたならば、 明治戦を終えてほっとした直後の1週間ということで腑抜けですね。もちろん、大事な大事な早慶戦を控えてはいるけれども、ちょっと時間が空きすぎているので。丸々3週間緊張を保つのは危険だと思いますので、明治戦を終えて一山越えたというところで、もう完全に腑抜けになっていいという風に思っています。あえて何の注文もせずに腑抜けの状態です。明日は休みで明後日からの1週間。この週末に明治と法政が試合をしますから、この明治と法政の動向でひょっとしたら優勝が決まるかもしれないということで言えば、 少なからず選手の頭の中に優勝という文字がちらついて、練習をする時間になりますから、多少なりとも緊張しながら練習をしてくれるんだろうという風に思ってます。明治がもし連勝して早慶戦の結果待ちという状況になれば、我々としたら1つ取らないといけないという状況になりますから、もっともっと緊張しながらやるんでしょう。あえて今日の練習終わりに選手たちに伝えたのは、春完全優勝、秋も早慶戦に連勝すると、 春秋連覇が完全優勝というレアケースになるわけですね。過去で言うと3回ということで、 さらに翌年の春も完全優勝すると、3シーズン連続で完全優勝になります。これは過去一度もないことになるので、ここを目標にするためには何がなんでも早慶戦で勝ち点を取らないといけないんだと。仮に明治がこけて優勝が決まったとしても、早慶戦で勝ち点を挙げて、 春秋完全制覇で翌年の春を迎えられるように気持ちを1つに頑張るということを伝えていますので、少なからずその情報を彼らにインプットしてあるので、いいかたちで早慶戦を迎えられると思います。

――最後に早慶戦への意気込みをお願いいたします

 勝ち点を取って完全優勝。これがもう最低条件だと思っています。仮に来週、明治が負けて優勝が決まったとて、 慶応に秋負けて優勝しても何ら嬉しくもなんともないので、勝ち点を挙げて完全優勝を遂げるというところが最低限の目標になっています。そこに向けてしっかりと練習をして臨みたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 近藤翔太)

◆小宮山悟(こみやま・さとる)

1965(昭40)年9月15日生まれ。千葉・芝浦工大柏高出身。1990(平成2)年教育学部卒業。現早大野球部監督。