【連載】野球部 秋季早慶戦直前特集 『圧倒』 第7回 山縣秀

特集中面

≪特集表紙へ戻る

 今季は武器としていた守備にさらに磨きがかかり、見る者の想像をはるかに超えたプレーを披露している山縣秀(商4=東京・早大学院)。守備を持ち味に先月のドラフト会議では日本ハムから5位指名を受けた。幼少期からの夢をつかんだ守備職人が次につかみ取るのは2季連続の完全優勝だ。

※この取材は10月26日にオンラインで行われたものです。

できるまでやればできる

――日本ハムからの指名おめでとうございます。2日経って現在の心境はいかがですか

 あんまり実感がないので、まだ何がなんだかわからない状態です。

――ご両親には連絡されましたか

 指名を受けて会見に行く前に母親に電話しました。

――どのようなことをお話されましたか

 本当におめでとうと。母があんまり落ち着いてなかったので(笑)、何を言っているか覚えてないですけど、本当におめでとうと言われたので、本当にありがとうと伝えました。

――楽天に5位指名された吉納翼選手(スポ4=愛知・東邦)とはどんな話をされましたか

 やばいねみたいな、それくらいです(笑)。

――指名後の会見では小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)からはLINEの返信待ちとおっしゃっていました

 グッドの絵文字が返信で来ました。

――明大の浅利太門選手(4年)や法大の山城航太郎選手(4年)ともチームメートになります

 いいピッチャーなので本当に嬉しく思いますし、少し喋ったんですけど、すぐ仲良くなれそうでした。コミュニケーション能力が高い2人だったので、自分はその流れについていっている感じで、楽しくやっています(笑)。

――色紙には「できるまでやればできる」という言葉を書かれていました

 やればできるだとちょっと無責任というか、やればできるわけではないので。できるまでだったら当たり前のことですが、できるまでやめないでやり続けるという気持ちがずっと大事だなと。自分が好きなアニメでそういう風に言っているキャラクターがいて、それを座右の銘としてやっています。

――ハイキューですか

 そうですね(笑)。アニメで見ています。

――これまでの色紙には「絶対的」と書くことが多かったです

 絶対的は今年1年の目標です。これから先の人生となると少し違うのかなと。

――リーグ戦前の対談で、「もしプロ野球選手になれたら信じられない」と話をしていました。小さい頃の夢が叶いましたが、今、幼少期の自分にかけるならどんな言葉をかけてあげたいですか

 野球は続けた方がいいっていうのと、とにかく楽しんで野球をやってほしいと伝えますね。

――登場曲は決めていますか

 Little Glee Monsterの「好きだ。」を登場曲にしようと思っています。

――改めてプロ入り後の意気込みの方をお願いします

 早稲田の名に恥じぬようと言うのが一番です。それをした上でチームに今年一番貢献した選手と言われるぐらい頑張りたいと思います。

守備は引き出し

――秋季リーグ戦をチームとして振り返っていかがですか

 本当に粘り強く戦えているというのが一番です。立教戦で1個負けてしまったんですけど、それ以外はしっかり勝つことができていますし、明治戦も引き分けを挟んで2連勝で、法政戦も3戦目までいきましたが、しっかり勝つことができました。チームとしては一番いい形で早慶戦を迎えることができてるんじゃないかなという風に思います。

――特に印象に残っている試合はありますか

 明大1回戦です。終わり方があのような形(山縣選手の好判断で3-6-5の併殺)で終わったので、今までにない経験でした。あの形で試合が終わったの初めて自分は経験して、テレビとかでは見たことがありましたが、実際やるとすごいなと思いました。

――近年苦戦してきた明大から無敗で勝ち点を獲得しました

 本当に伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)がすごかったという印象です。樹がいたから明治打線を抑えることができたと思いますし、本当に樹にはまたびっくりさせられましたね。

――明大2回戦は4時間半越えのゲームでした。試合後の選手たちの雰囲気はいかがてしたか

 負けなかったことが本当に大きかったと思います。1戦目の夜と同じ雰囲気というか、俺たちはまだ勝っているんだという余裕がみんなありました。

――ここまで1敗のみで早慶戦を迎えます

 大学生相手にずっと負けていなかったので、立教に負けたのがすごい悔しいです。ただ、それ以外のチームに負けていないのは自分たちも少しは春に比べて強くなったのかなという風に思います。

――立大3回戦で適時打、明大3回戦でも適時打が飛び出ています。打撃の調子が上向いていると感じますが、いかがですか

 打席の中で自分がスイングしてる場面が増え、ヒットが出始めています。これまではバントやバスターで塁を進めることが多かったです。最初の方は打率が全く上がらなく苦しいなと思っていたのですが、実際調子自体は悪くはなかったです。

――リーグ戦の対談ではバットを少し短くして芯にあてる話をされていましたが、その点の成果は出ていますか

 結局は元に戻したんです。短く持った方が芯に当たるのはわからなくもないですし、ずっと試してはいたのですが、どうしても短いバットを使ってるので、プラスして短くすると当たらないので。ちょうどいいところを探しながらやって春と同じところで落ち着いてきました。

――守備では体重が増えたことで安定感が増したと話していました。体重増加のためにどのようなことを取り組みましたか

 体重増加ためには、まずご飯を食べること、特にご飯粒ではなくおかずの量を多く、タンパク質を摂ることを意識しました。また去年の冬からウエートトレーニングをずっと続けてきました。

――体重を増やすためにどなたからアドバイスはありましたか

 ウエートトレーニングについては、JPFストレングス工房というトレーニングジムに通い始めました。アドバイスを求めながらという感じです。

――4年間でどのくらい体重が増加しましたか

 入学時が73キロで、今80キロなので、7キロ増加です。

――守備に関して、打球に対してベストなプレーを選ぶようにしていると話していましたがこの点をもう少し詳しく教えてください

 本能の赴ままって感じです。反射でできるプレーを増やすのが練習だと思っているので、試合になったらもう何も考えずにできるよう意識してやっています。

――プレーの幅を広げる感じですか

 はい。もう引き出しです。守備は引き出しと言われてきたので、本当にそれにつきます。

――いつ頃から守備は引き出しというのを感じていたのですか

 引き出しを増やすことは、自分がやっていく中で感じたことです。アウトになれば全部一緒なのですけど、そのアウトを取るために一番確率が高いプレーを選ぶのが引き出しだと思っています。引き出しがあるに越したことはないというのは、大学からというよりかは、野球を始めた頃から思っていたことです。ずっとこういうプレーを見つけたから真似してやってみようみたいなのやってきたので、小さい頃からですね。

――東大2回戦では高いバウンドの打球に飛びながら捕球して、着地後すぐにスローイングするあまり見ない守備を披露していました

 あれは本当は1個前に出て投げなきゃいけないプレーなんです。ただ、あれはバッターランナーがそんなに足が速くなさそうだったのと、1テンポ後ろで捕ってもアウトになるだろうという安全さを求めた結果です。別に悪いプレーではないですけど、いいプレーでもないと思っています。

――同じ遊撃手の宗山塁選手(明大4年)と比較されることが多いと思います。宗山選手は体の正面で基本に忠実に打球を処理している印象です。一方の山縣選手は外野手のように打球を処理をしている場面が多くあります

 体の正面という定義の話になってしまうのですが、別に体のど真ん中で取ることが正面ではなく、自分の体の向きにグローブがあれば正面だと思っています。例えば、逆シングルでも自分の両足の間にグローブがあって体の上半身がグローブに向かって向いていれば正面だと思います。宗山の守備の綺麗さは誰が見ても綺麗だなと思いますし、意識してないわけではないです。結果的に自分が楽をして左側で捕って見えるかもしれないですが、正面で捕ることが全てではないと思います。

――スローイングまで含めての捕球体勢なのですか

 あれになるのは、あの体勢でバウンドに入りたいからです。1個後ろで正面で割って、捕ることもできます。

――スローイングは少しサイドスロー気味ですが何か意識していることはあるのでしょうか

 スローイングは特にサイドスローで投げている気ではなく、上から投げているつもりですが、勝手にあの形になっているだけですね。意識することは、ファーストの左上に向かって投げることです。自分の球はシュートしながら落ちていくので、ファーストが捕る時にファーストの顔あたりに投げれるように意識しています。

――体重増加以外で、4年間で守備にの磨きがかかった要因を上げるなら何があると思いますか

 練習量ですね。ノックを受けまくりました。

2連勝で完全優勝

――早慶戦に向けて現在のチームの雰囲気はいかがですか

 明治戦の2連勝で少しほっとしている雰囲気が出ています。気が緩んでるわけではないですが、みんなほっとしてるのかなと。もう1回引き締め直さないといけないかなと思います。

――今季の慶大の印象はいかがですか

 粘り強い印象です。

――大学生活の中で最後の早慶戦です

 早慶戦は特別な舞台だと思うので、最後しっかり楽しめたらいいかなと思います。

――最後に早慶戦への意気込みの方をお願いします

 2連勝で完全優勝できるように頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 近藤翔太)

◆山縣秀(やまがた・しゅう)

2002(平14)年5月1日生まれ。176センチ、80キロ。東京・早大学院出身。商学部4年。早大学院から2人目のプロ入りを果たした山縣選手。登場曲はLittle Glee Monsterの「好きだ。」にするそう。北の大地でも観衆を沸かせるプレーを見せてくれることでしょう!