首位東洋大相手に一時逆転リードも終盤に2失点 ア女が悔しい敗戦を喫する

ア式蹴球女子
試合結果

関東大学女子サッカーリーグ 後期第10節

2024年10月26日(土)18:00 Kickoff
東洋大学朝霞キャンパス・サッカー場

試合結果

チーム 前半 後半 合計
早稲田大学 1 2 3
東洋大学 2 2 4

得点者

前半

2分 宮本 妃菜里(相手)

9分 生田 七彩

10分 小林 莉々子(相手)

後半

54分 宗形 みなみ

72分 千葉 梨々花

84分 宮本 妃菜里(相手)

90分 落合 依和(相手)

 2連勝中と勢いに乗るア式蹴球部女子(ア女)は、今節アウェイで首位東洋大との一戦に臨んだ。関カレ20試合で52得点と圧倒的な攻撃力を武器とする東洋大。前期の試合では3-3と打ち合いの末痛み分けに終わった顔合わせは、今回も両チームともにゴールを奪い合う展開となった。試合開始直後にア女がPKを与え相手に先制点を許すことになったが、9分にFW生田七彩(スポ3=岡山・作陽)がゴールを奪い同点に。しかし、直後に相手に追加点を奪われ、前半はビハインドで終了した。後半の立ち上がりにMF宗形みなみ(スポ3=マイナビ仙台レディースユース)のゴールで再び同点にすると、FW千葉梨々花(スポ2=東京・十文字)の得点で逆転する。だが、終盤に立て続けに2点を奪われ、ア女が悔しい敗戦を喫した。

ゴールを決める生田

 キックオフ早々に試合は動いた。2分に右サイドからクロスをあげられると、ペナルティーエリア内で相手選手とMF三宅万尋(スポ1=東京・十文字)が交錯。このプレーが反則と判断される。PKを相手に決められ、先制点を献上することになった。出鼻をくじかれたア女だが、動揺することなく試合を進めると、9分に決定機をつくる。DF吉田玲音(社1=新潟・帝京長岡)が相手DFライン裏へスルーパスを供給。パスに反応した生田が相手DFとのスピード勝負に競り勝ち、ボールをキープ。反転してシュートを打つと、ボールは綺麗な弧を描いてゴールネットを揺らした。生田の武器であるスピードを生かした攻撃で試合を振り出しに戻したア女。しかし、直後の10分に相手のワンタッチで連続したパスに右サイドを崩されると、相手FWにクロスからゴールを決められ、再び失点を許す。その後はア女がボールを保持しながらチャンスを伺ったが、得点を奪えないまま試合はハーフタイムへと突入した。

話をする宗形と大山。攻撃の中心として活躍を見せた

 いち早く相手に追いつきたいア女は、後半の立ち上がりから敵陣でチャンスを伺った。宗形、MF大山愛笑(スポ2=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)を中心としたパス回しで相手を揺さぶると、54分に大山、宗形、MF白井美羽(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)の3人が敵陣中央で細かいワンタッチパスを交わす。このパスワークで相手選手を中央へ引き付けると、大山が左サイドでフリーになったFW﨑岡由真(スポ2=埼玉・浦和レッズレディースユース)へパス。﨑岡のクロスにニアへ走り込んだ宗形が合わせると、ヘディングで放たれたボールは相手GKの反応できないコースへと飛び、ゴールイン。理想の時間帯にスコアを同点にしたア女は、このゴールを皮切りに猛攻を仕掛けた。67分には左サイドからペナルティーエリア内へ侵入した﨑岡がシュートを打つが、惜しくも相手GKにセーブされる。それでも攻勢を続けると、迎えた72分、再び敵陣中央で宗形、大山、生田がワンタッチの縦パスで相手を引き付ける。そして、右サイドからペナルティーエリア中央へと走りこんできた千葉へパスを出すと、千葉がトラップで相手DFを交わす。倒れこみながらも千葉は冷静にボールをゴールへと流し込み、3点目。ア女がこの試合初めてリードをすることになった。

相手を交わし、シュートを打つ千葉

 しかし、78分にペナルティーエリア内で相手に放たれたシュートがDF田頭花菜主将(スポ4=東京・十文字)の手に当たり、PKの判定。田頭はこのプレーで2枚目のイエローカードをもらい退場となった。絶対絶命の場面だったものの、「絶対にやらせないという気持ち」(GK石田心菜、スポ4=大阪学芸)とキャプテンマークを引き継いだ石田がチームを救うスーパーセーブを見せ、ゴールを守り抜く。窮地を脱したア女だが、数的不利の状況は変わらず試合のペースは相手に握られることに。すると、84分に自陣でのコーナーキックからこぼれ球を相手に押し込まれ同点弾を許す。その後も相手の攻撃を何とか自陣で跳ね返し続けたが、試合終了間際の90分に相手DFにペナルティーエリア外から強烈なミドルシュートを決められ、失点。最後の最後に試合をひっくり返され、首位相手に白星獲得とはならなかった。

悔しさがにじみ出る試合後の選手たち

 3-4とスコアだけを見れば失点数が気になる結果だが、決してア女のプレーが悪かったとは言えないのが今節の内容だった。序盤に2失点を喫したものの、その後は終盤まで相手に決定機をつくらせなかった。2失点目以降はア女がボールを保持しチャンスを伺う時間が続いた。後半に入ってからは猛攻を仕掛け続け相手を圧倒。「自分たちが積み重ねてきたところを選手がしっかりと出してくれた」(後藤史監督、平21教卒=宮城・常盤木学園)と指揮官が言うように攻撃では、フィールドプレイヤー全員があうんの呼吸でワンタッチのダイレクトパスをつなぎ、小刻みでリズミカルなパスワークで相手を翻弄した。守備では3バックが相手FWや背後へのパスを冷静かつパワフルに対処し、相手の攻撃を遮断。試合前のスカウティングから相手への対策を練ってきたことがわかる素晴らしいパフォーマンスを見せた一戦だった。それだけに試合後の選手たちの姿からは、勝ちきれなかった結果に対する悔しさが溢れていた。それでも「本当にこの負けを無駄にせず、インカレで必ず日本一を取りたい」(石田)と、選手たちは目標に向かって前を向いている。シーズンを通して苦境をバネにしてチーム全体で成長してきたア女。この敗戦を機にさらに強いチームへと進化するはずだ。

(記事 荒川聡吾、写真 髙田凜太郎、取材 大幡拓登)

スターティングメンバー

早大メンバー (数字は背番号、◎はキャプテン)
GK 1
石田心菜(スポ4=大阪学芸)
DF 3 杉山遥菜(スポ2=東京・十文字)
DF 5 ◎ 田頭花菜(スポ4=東京・十文字)
DF 30 吉田玲音(社1=新潟・帝京長岡)
MF 8 白井美羽(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)
→81分、佐溝愛唯(社1=大阪・大商学園)
MF 11 宗形みなみ(スポ3=マイナビ仙台レディースユース)
MF 14 大山愛笑(スポ2=日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
MF 24 三宅万尋(スポ1=東京・十文字)
FW7 﨑岡由真(スポ2=埼玉・浦和レッズレディースユース)
FW 9 生田七彩(スポ3=岡山・作陽)
FW 15 千葉梨々花(スポ2=東京・十文字)

試合後インタビュー
後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
ーー3-4と相手に競り負ける結果となりました。どのように試合を捉えていますか
 最初のPKから始まって、難しい試合になるというのはある程度予想はできていました。難しい展開の中で、 最後の最後に10人になったところで守りきれなかったという結果だけ見れば負けですが、得点のところなど自分たちが積み重ねてきたところを選手がしっかりと出してくれました。まだここでシーズンの全てが終わったわけでもないですし、インカレの出場権を取れている中で、必ず決勝まで残れば、この悔しさを晴らせるタイミングが出てくるので、全員でこの悔しさを体に染み込ませて、インカレで日本一を取りたいです。

ーー開始早々に失点しましたが、ア女が試合を支配する時間帯もありました。手ごたえはありましたか
 後ろのビルドアップというところから始まって、最後の攻撃の部分で苦しむところを、ここ何ヶ月かかけて準備してきました。前節の日大戦でも良い形が出ましたけど、こうやって5バックでしっかり守ってくる相手に対して、ああいう形でチャンスを生むことができたのは、今年の選手たちがいざと言う場面でしっかりと積み重ねたもの体現する力があることなので、その部分が今日はしっかり出たんじゃないかなと思います。

ーー攻撃力を武器とする東洋大相手にどのような守備を準備してきましたか
 基本的にうちは守備時には4-4-2なのですが、東洋さんがしっかりボールを保持しながら進むことがあるので、どこで奪いきるかというところを試合の前からいくつか想定してきました。その中で選手たちが、試合の中でしっかりと判断しながら、最初の方はバタついた部分はありましたが、途中から自分たちの守備の狙いを修正した部分も含めて、しっかりと対応できていたと考えます。

ーー結果としては悔しい負けになりましたが、選手たちにはどういった声をかけていきますか 
 来週山梨学院大さんとの試合も残ってますし、キャプテンの田頭が出場ができないと。 この悔しさは全員が目に焼きつけているので、しっかり次の試合の準備をできるように 声をかけます。

GK石田心菜(スポ4=大阪学芸)
ーー最初に失点がありましたが、ア女が試合を優位に進める時間もありました。チームとしてはどのような良さが出たと感じますか
 立ち上がりに失点してしまい、それでもチームとして下を向かずに、ひっくり返せました。攻撃は練習の中でやってることが試合で出たなという手応えをすごく感じ、自分も後ろから見てそう感じました。練習でやってきたことが試合で良い崩しや攻撃に繋がって、しっかり得点という形に繋がったのは、本当にチームとして良かったことだと思います。

ーー開始早々のPKでは失点されましたが、2回目のPKではセーブもありました。どのような気持ちで臨みましたか
 本当に絶対に止めるっていう気持ちだけで挑みました。最初決められてしまい、2回目はタガシ(田頭)のところで、しょうがないファウルだったので。1本目と気持ちは変わらなかったですけど、ここで決められることで相手に勢いを持たれてしまうなというのはあったので、絶対にやらせないという気持ちで、2本目はしっかり修正して止められたので、良かったと思います。

ーー田頭選手が退場してからは、キャプテンマークを巻きました。どのような言葉を交わしましたか
 「任せたよ」という一言をかけてもらいました。ただ、キャプテンマークを巻いたことに関しては意識しなかったんですけど、やっぱりチームとしてあれだけ相手に点を決められて勢い持たれてるなか、相手の応援もあったりと結構飲み込まれてたので、飲み込まれずにしっかり後ろから声かけて慌てずにやろうとしてました。後ろが飲み込まれるような気持ちを見せてしまうと、他の選手にすごい影響が出てしまうので、落ち着いてプレーすることを意識しました。

ーーシーズンは続きます。意気込みをお願いします
 本当に今日の一戦は悔しかったですが、やっぱりチームとしてできたことがすごくあり、試合中に勢いを感じることもできたので、本当にこの負けを無駄にせず、インカレで必ず日本一を取りたいと思います。

MF大山愛笑(スポ2=日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
--重要な1戦だったと思います。ふりかえっていかがですか
 自分たちが想定していなかった開始早々の失点で難しい試合展開にはなってしまいましたが、落ち着いてからは自分たちのサッカーを出せていたと思います。得点シーンでは、切り替えの部分も、細かくつながって少ないタッチでゴールに行くところも、練習で積み重ねてきたところが出せたと思います。1人少なくなって厳しい中でも同点で終われたら良かったですが、そこはもう1つレベルを上げなければいけないなと思います。

--東洋大はボールをつないでくる相手ですが、前半から引くことなくア女のスタイルを出すことができていたように思います。チームとして意識していたところですか
 先週の東洋大の試合を見て、自分たちなりに守備の仕方を決めていました。ただ序盤は自分たちが用意していたものがうまくはまらなかったので、修正を加えました。試合中に自分たちの中で「こっちにしたほうが良い」と守備の仕方を変えられたのは良かったと思います。

--はまらなかった守備というのはどういった守備ですか
 奪おうと思っていたサイドで奪えずにボールをもたれていましたし、ゴール前まで行かれてしまっていました。飲水タイムなどの時間で話して、修正しました。

--3点目の得点シーンは大山選手が起点となっての綺麗なゴールでした。狙っていたかたちでしたか
 自分たちはパスを細かくつないでサッカーをしていくというところはこだわっていますし、インカレに向けてさらに高めている部分ではあるので、練習の成果が出たかなと思います。

--一方重要な局面で守り切れるかどうかも、インカレに向けてさらに大事になってくるポイントだと思います。今日の敗戦からどのように改善していきたいですか
 今日は今季で初めて10人で戦う展開になりました。結果的には負けてしまいましたが、自分たちのやりたいことができていた時間も多くあった試合だと思います。負けたことに対しては反省が必要ですが、インカレで似た場面になった時に同じことを繰り返さないための良い練習になったとポジティブに捉えたいです。

--ご自身は代表活動でチームを抜ける期間があり、その間に1年生の台頭などチームに変化もあったと思います。外から見る時期もあった中で、今季のチームに対してどのような成長を感じますか
 自分がW杯に行っている間に試合を見ていて、前期に比べて「チームとして攻撃できている」という印象がすごくあって。前期はカウンターであったり、スピードなど個人の特徴を生かして得点していたイメージがありました。自分たちが本来したいサッカーである、少ないタッチ数でゴールに迫る部分や根本的な強度の部分は上がってきているなと感じています。

--次週の関カレ最終節と、その先のインカレに向けてどのような準備をしていきたいですか
 最後はホームで戦えるので、しっかりと切り替えた上で最終戦を勝ち切りたいと思います。去年は目の前で日本一を逃して悔しい思いをしたので、インカレではどんな時も自分たちのサッカーを貫いて、最後は笑って日本一奪冠したいなと思います。