今シーズン1万メートルで27分台、5000メートルでもチームトップのタイムをマークするなど、トラックでも躍動した石塚陽士(教3=東京・早実)。夏には自身初となる海外遠征も経験し、大きな収穫を得ることができた。しかし、駅伝シーズンではここまで思うような走りができず、悔しい思いをしている。チームの柱としてもこのままでは終われない――。雪辱を期す東京箱根間往復大学駅伝(箱根)に向けて、意気込みを伺った。
※この取材は12月12日に行われたものです。
「望んだ結果が得られた」トラックシーズン
六大学5000メートルで優勝し笑顔を見せる石塚
――まずは今季のトラックシーズン全体の振り返りをお願いします
トラックシーズンに関しては、六大学(東京六大学対校)のシーズンインから始まって、日体大(日体大競技会)の1万メートル27分台だったり、ホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ士別大会)の5000メートルの13分33秒だったりとか、当初思っていた通り、またはそれ以上の結果が出たので、そこに関してはすごくいい流れでトラックシーズンは過ごせたのかなと思います。
――4月には1万メートル27分台を出されましたよね
レース本番を迎えた時は(調子が)五分五分といったところだったのですが、そこで目標通り27分台を達成できたところに関してはすごく自信になりました。ですが、競り合いで負けてしまったりだとか、その後に(他大学の選手で)27分台がどんどん出てくるという中では、もう少し行きたかったというのもありますし、いいところもあれば悪いところもあったという感じです。あとは27分台がゴールではなくて、学生トップクラスになるためのスタートラインと考えると、ここからもっと頑張らないといけないなという感想を抱きました。
――7月には5000メートルでも13分33秒台をマークし、1万メートルと共にチーム内トップとなりました。それについてはどのように感じていますか
入学当初からずっと同期の伊藤大志(スポ3=長野・佐久長聖)に追いつくことを目標にやってきていたので、そこでようやく追いつけたということは良かったなと思いました。ただ正直、すぐに山口(智規、スポ2=福島・学法石川)や大志とかが2週間後にホクレン千歳大会があったので、そこで抜かされると思っていました。その時は学内トップだとは全く思っていなかったのですが、結局残ってしまっているので、歯痒い思いもありながら迎えたトラックシーズン終了でした。
――昨年のトラックシーズンは思うようにいかなかったとおっしゃっていた中で、今年は取り組みの部分などで意識したところはありますか
昨年と比べると、ジャンプトレーニングなどを入れて、そこが生きてくれたのかなと感じています。あとは学生ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)でかなり大外ししてしまったので、そこの焦りというか、変えないといけないという自分の心の中でのマインドがいい方向に働いてきて、望むような結果が得られたのかなと考えています。
――今年のトラックシーズンは点数をつけるとしたら、何点ですか
100点はあげられないと思うのですが、総合的に考えると90点ぐらいはあげてもいいのかなと思っています。
――残りの10点というのは、ラストの競り合いで負けてしまった部分などですか
そうですね。やはり全部合格点に達してはいるのですが、そのプラスアルファの部分がやはりまだまだ足りなかったかなと。それこそ最後の競り合いの部分だったり、ホクレンで言えば13分30秒切りが見えたかもしれませんし、そういうというところも考えると10点は引かざるを得ないかなと思います。
――次に夏合宿についてお伺いします。夏合宿は達成度含めて振り返るといかがですか
海外遠征前後で結構分かれるかなと思っていて、海外遠征前に関してはしっかりと練習を積めましたし、いい流れでいけました。ですが、海外遠征が終わって9月の中旬ぐらいにまた体調を崩してしまって。それでその後は全然練習が積めなかったので、総合的に見たら60点ぐらいで、前後半で分けるのであれば、(前半が)90点で(後半が)30、40かなと思います。
――今年の夏合宿はどのようなことを重点的に取り組みましたか
花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)就任2年目ということで全体の流れはつかめていたので、そこからどれだけ余力を持ってやっていけるか、他の人を引っ張っていくかということに重きを置いてやっていました。基本的には昨年と同じ練習だったので、その後のプラスアルファ、フリーのところでしっかりと去年よりペースを上げるだとか、昨年はいろいろな人に引っ張ってもらった練習もあったのですが、そこを自分で引っ張ることを増やしたりとか、そういうところでアクセントをつけて取り組みました。
世界のレースを経験して得られたこと
――9月には初めての海外遠征にも行かれましたが、今回の海外遠征はどのような目的でしたか
クラウドファンディングで行かせてもらうところもあって、目的としては日本では経験できない海外のレースを肌身で感じるというところと、普段とは全く違う環境でやった時にどれだけ自分の力が出せるかというところを目的に遠征に行かせてもらいました。
――実際に日本のレースとの違いというのはどのような部分で感じましたか
序盤から、全員が全員けん制せずに、グイグイ引っ張っていくスピードレースになっていくというところが日本とは少し違うという印象を受けました。あとはロードの環境ですね。向こうはヨーロッパ特有というところもあると思うのですが、石畳の上を走ったり、路面電車の線路の上を走ったりとか日本では考えられないような路面のところを走ったので、そこはかなり違った環境だったのかなと感じています。
――時差や食事面などレース以外の部分はいかがでしたか
時差はやはり影響を受けました。元々プライベートも含めて初海外だったので、時差の修正に慣れていなかったというのもあって。向こうについてから2日間くらいは、現地時間の夜8時くらいに眠くなって耐えられなくて寝るという状態が続いてしまっていて、なかなか対応するのは大変でした。食事に関しても、白米があまりないので、普段白米を食べる身としてはそこが少し口寂しく感じましたし、パックご飯とかを持って行った方が海外で大会がある時はいいのかなと思いました。
――初の海外遠征で得られた収穫や課題について教えてください
得られた収穫としては、海外の速いペースの中で日本人の中では一番長くつくことができましたし、そこはすごくいい経験になったと思っています。改善点としては、速いペースで押していくレースをあまり経験していなかったので、離れてからの対応がズルズル落ちてしまうところもあったので、そこが課題なのかなと感じました。
――今回の海外遠征の経験を今後の競技生活にどのように生かしていきたいですか
直近の箱根で言えば、例えば2区とかの駅伝の前半区間だったら、最初ある程度突っ込んで前に追いついてそこからどう動かしていくかというところが大事になってきます。そこに生きてきますし、トラックレースだとしても今後世界を目指していくならかなり速いペースで回っていかないといけないので、生きてくるのかなと思います。
ほろ苦い駅伝シーズン
出雲で3区を走る石塚
――次に駅伝シーズンについてお聞きします。初戦の出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)は不調だったということもおっしゃっていました。改めてその要因を教えてください
先ほども話したのですが、9月中旬の体調不良がかなり響いてしまったという感じです。そこで全ての歯車が狂ったというか、体調不良で1回練習を休んでから練習に復帰してもなかなか自分の思うような走りができなくて、悪いスパイラルに陥ってしまったかなと感じています。
――出雲から全日本大学駅伝対校選手権(全日本)の期間は調子を戻すことを最優先にしたという感じでしょうか
そうですね。力をつけるというよりは、戻さないとどうしようもないという状態だったので。出雲の時が40%とかだったので、それを80%とかに戻していけるかということを意識して過ごしました。
――全日本は個人、チームとしてどのように振り返りますか
全日本は前半かなり突っ込むという選択をしました。後ろの区間がかなり心配だというチーム状況もあったのですが、それ以上に海外遠征の力を試してみたいという気持ちもありました。そこを試してみようと思えるぐらいまでに調子が回復できたことは、出雲の時と比べるとかなり良くなったのかなと感じています。ただそれが完全に調子が回復しきれなかったところや、自分の実力不足もあり、なかなか自分の思い描いたようには進まなかったところは課題点だと思います。チームとしては、1人、2人本来走るべき人が走らなかったらそうなるよなという結果で、改めて一人一人、普段主力で走っている選手がどれだけ100%に近い状態で本番まで持っていけるかということを身にしみて感じました。主力選手以外のボーダー付近の選手がどれだけ本来走るべき人の走りに近づけるかというところが大事になってくるのかなと感じたので、そこは今箱根に向けても改善しているところです。
――出雲、全日本ともに前半区間を任されていましたが、駅伝においてご自身にはどのような役割が求められていると考えていますか
花田さんがよく「伊藤、山口、石塚の海外遠征に行った3人でどれだけトップ争いできるか」ということをおっしゃっていたので、やっぱり今年でいうと駒大にどれだけつけるか、貯金を作れるかというところを主眼に置かれていたので、先頭集団の中に持っていって、勢いをつけるというのが役割だったのかなと思います。
――全日本が終わってから、花田駅伝監督や菖蒲敦司駅伝主将(スポ4=山口・西京)からはどのような言葉をかけられましたか
当然の事ながら、「箱根は万全で迎えてほしい」ということは花田さんにも菖蒲さんにも言われたので、そこはあと3週間ないぐらいですがしっかりと調子を整えていければなと思います。
箱根路では「チームにいい風向きを送る」走りを
――次に箱根についてお伺いしていきます。まずはチームとしての目標を教えてください
チームとしては5番以内、前回以上の順位をとるということが目標です。
――現在の調子はいかがですか
特別いいわけでも特別悪いわけでもなく、まだ通常の状態が続いているのかなと思います。ここからどれだけ調子を上向きにできるのかが鍵になってくると感じています。
――今のチームの雰囲気や現状についてはどのように感じていますか
ケガ人も少ないですし、夏に苦しんでいた辻さん(辻文哉、政経4=東京・早実)とかもかなり回復してきたので、今はかなり活気づいているのかなと思います。
――希望区間はありますか
自分が向いている区間は4区かなと思っていますが、その一方で前回2区を走った経験も生かせると思うので、そこも加味すると4区か2区になるのかなと思います。
――2区でリベンジしたい気持ちもありますか
そうですね、区間10位はパッとしない成績ですし、そこはリベンジしてからじゃないと終われないかなという気持ちはあります。
――箱根は今回で100回大会を迎えますが、改めて箱根は石塚選手にとってどのような舞台ですか
やっぱり箱根駅伝は学生の陸上の大会の中でも一番注目度は高いですし、それだけ他の人に見てもらう機会も多いので、今まで関わってきてくれた人に自分が頑張っている姿を表現できる機会かなと感じています。なかなか中学の友人とかは普段連絡が取れていなかったり、話す機会もなかったりするのですが、箱根は結構いろいろな人が見てくれるので、そこで「こういうことをやっているんだな」と知ってもらう機会にもなりますし、頑張っているところを見せていきたいので、そういった意味ではかなり大事な大会なのかなと感じています。
――上級生として迎える箱根になります。これまでの2年間と違う思いはありますか
1年生、2年生の時は自分の力を発揮すればいいという考え方が主になっていたのですが、3年生、上級生になってくるとどれだけ後輩を気持ちに余裕がある位置で走らせてあげられるかというところも考えないといけないと思っています。より一層チームのためにという感覚が芽生えてきましたし、今年は井川さん(井川龍人、令5スポ卒=現旭化成)が快走してくれて、チームにいい風向きを送ってくれましたが、そういった走りができるようになりたいと思っています。
――最後に箱根に向けた意気込みをお願いします
昨年はエース区間を走らせてもらったのですが、あまりいい結果とは言えなかったので、今年はそのリベンジを果たせるように頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 加藤志保)
◆石塚陽士(いしづか・はると)
2002(平14)年4月22日生まれ。170センチ。東京・早実高出身。教育学部3年。9月のチェコへの海外遠征は、片道17時間、乗り継ぎも含めると丸一日かかったそう。そんな長旅のお供として選んだ『ハリーポッター』は、往復の機内でほぼ全作見たそうです!来たる箱根路は、前回大会の「リベンジ」、そして今季の駅伝シーズンの悔しい思いを晴らす走りをしてくれるでしょう!