怪我や貧血に苦しんだ昨年より練習を見直し、今シーズン着実に力をつけている宮岡凜太(商2=神奈川・鎌倉学園)。地元を通る東京箱根間往復駅伝競走(箱根)には人一倍強い思いを持っている。今シーズンの振り返りから箱根への意気込みまで様々なことを伺い、宮岡が凛とした表情の裏に秘めている闘志を見せていただいた。
※この取材は12月13日に行われたものです。
実力の証明
写真撮影に応じる宮岡
――エントリーメンバーに選ばれた感想をお願いします
昨年はギリギリ16人の中に入ったかなという感じだったのですが、今年は夏から秋にかけて上手く練習が出来た中でエントリーされたので、そこはすごく良かったです。
――事前に予想はしていたということですか
そうですね。普段練習をしていて、16人の中に入るくらいにしっかりできているかなという自覚はありました。
――エントリーメンバーが発表される際に花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)から何か声をかけられましたか
発表前に個人的にというのは無かったのですが、10月から11月にかけて練習後のミーティングで一対一で話した時は色々箱根のことを意識して、ということを言われていました。
――今のコンディションを教えてください
夏合宿の期間がすごく調子良く練習できて、その後のレガシー(レガシーハーフマラソン)で自己ベストを出したときはかなり良かったのですが、11月の上尾(上尾シティハーフマラソン)は自分の中で少し空回りしてしまった感じがありました。そこからあまり調子が良くなかったのですが、今は徐々に箱根に向けて上がってきているという感じです。
――続いて春シーズンについてお伺いします。6月の日体大記録会まで5000メートルへの出場があまりなかったことには何か意図があったのですか
自分がハーフを主戦場としてやっていたこともあって、春はどちらかというとそれに向けたスピード強化の位置付けだったので。花田監督の方針的にも、チームの上の人は関カレ(関東学生対校選手権)やホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)というレベルの高いレースで5000メートルや1万メートルを走ることが多かったのですが、自分はあまりそういうことがなくて。ただ日体大記録会は監督からもしっかり狙っていこうと言われていたレースだったので、そこは気合いを入れて臨むつもりでした。
――春シーズンの日体大記録会や早大競技会の5000メートルの結果はどのように捉えていますか
自分の自己ベストが高校3年生の春に出したものだったので、日体大記録会では更新したいと思っていました。直前の部員日記には「頑張る」と意気込んで書きましたが、自分の体調的には練習のし過ぎで少し疲れている感じがあったので、本心としては微妙だなという感じで臨んでいました。
――周回するトラック種目への意識に変化はありましたか
やっぱり自分は、ずっと同じところをまわるトラック種目があまり好きになれなくて。自分の中でも苦手意識を持ってやっていました。
――部員日記や対談の際にも度々登場している『量より質を意識した練習』とは、高校時代の練習と比べてどのようなところが違っていますか
高校から大学1、2年生にかけては、練習はやればやるだけ良いと思い込んでいた節がありました。つなぎの練習などをあまり意識せず、毎日毎日自分が出来る限りの練習をたくさんやっていたのが、昔の自分の量に対しての考えです。やっぱりそうして続けていたら、怪我をしたり貧血やオーバートレーニングにもつながってしまいました。その時に初めて、やるばかりではなくて休む時はしっかり休み、それによって頑張る日の練習の質を高めることを意識するようになりました。
――春に入部してきた1年生の走りをどうご覧になっていますか
3人とも春から夏にかけてすごく活躍していて、内心、すごいライバルが入ってきてしまったなという気持ちではありました。箱根は16人しかエントリーされないので。でも、夏合宿などで一緒に過ごしてみると、彼らも彼らで考えて練習に臨んでいて、その姿勢や練習での走りは一緒に過ごしていく中で刺激になっていたかなと思います。
――夏合宿では特にどのようなことを意識していましたか
昨年は自分が怪我していたこともあって、夏合宿に一度も参加出来ませんでした。なので、今年はまず合宿での練習を全てやりきることを考えていました。
――夏合宿を経ての収穫はありましたか
実際に経験してみて思ったのは、自分は周囲と比べても結構タフに走れるということです。みんながキツイなと感じているところでも粘れる強みが自分にはあることが1つ発見だったかなと思います。
――10月のレガシーハーフは自信があったとおっしゃっていました。その自己ベスト更新は夏合宿の成果や夏合宿で得られた自信が繋がったということですか
春先のトラックシーズンが上手くいかなかったので、気持ちを一新して取り組んだ夏合宿でした。2か月間ほとんど消化率100パーセントで走れたので、確かに自信につながっていたかなと思います。
――レガシーでの自己ベスト更新には、ご自身にとってどのような意味がありましたか
昨年は走れてしまった形で1時間4分35秒が上尾で出たのですが、そこが当時の自分の調子のてっぺんだったように感じていました。ですが、今回のレガシーは夏合宿からそんなに間が長かったわけではなく、今の自分のベストではなかったのにそれで自己ベストがが出たっていうのは、逆に自分の実力の証明になったのかなと思います。なので上尾でもっと良い記録をだしてやろうという気持ちでした。結局振り返ると上尾ハーフはそこで気持ちだけが先走ってしまって結果が追いついてこなかったなという感じでした。
「チームの安心材料になる」
上尾ハーフで走る宮岡
――箱根駅伝のシーズンになってきました。現在の長距離ブロックの雰囲気を教えてください
出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)はみんなまとめた走りをしていましたが、正直全日本(全日本大学駅伝対校選手権)でシード落ちを経験してからは、「やばいな」という一種の緊張感みたいなものがチームに浸透してきているなという感じがあります。春夏もたるんでいたわけではないのですが、どこかしら今年も大丈夫だろうという慢心があったんだろうなと思って。それに全日本の結果を受けて僕達チーム自身が気づかされたというか。そのおかげで練習の中でみんなひとつひとつの練習に緊張感を持って取り組めているなと思います。
――出雲、全日本の結果についてどのように捉えていますか
自分は走りでは関わりませんでしたが、1年生から4年生までみんな活躍していました。ただ、チームは三大駅伝全てで3位以内を目標に掲げていたので、そこからしたら少し物足りないかなという気持ちはあります。
――駅伝シーズンに入り、練習で特に意識するようになったことはありますか
駅伝シーズン前の練習は一つ一つの練習が自分の実力やチームのレベルアップにも繋がります。その練習をやっているメンバーがみんな横並びだったら、次の駅伝で誰を走らせるかの選考の対象にもなるので、毎回の練習に試合のときのような緊張感を持っています。
――同じ鎌倉学園高校出身の選手の活躍に影響を受けることもありますか
今年は特に、先輩も含めてかなりの人数が予選会や三大駅伝で活躍しています。焦る気持ちもあるにはありますが、自分も頑張らないとな、という刺激にもなっています。
――改めて、ご自身の走りの強みを教えてください
ハーフは1時間を超える長いレースなので、苦しい場面だったりキツイなと思う場面もあるのですが、その中でも「ここは耐えよう」としっかり粘る走りができることが自分の強みかなと思います。
――箱根ではどのようなところでチームに貢献したいですか
チーム内では往路を走るメンバーは固まってきているので、もし自分が走るなら復路かなと考えています。自分の粘り強さや安定感というのは、監督やチームにとっても「宮岡ならしっかり走ってくれるな、ここを任せられるな」というひとつの安心材料にもなるかなと思います。なのでそのような安定感のある走りでチームに貢献できればいいな、という気持ちがあります。
――希望する区間はありますか
一番の欲を言えば地元を通る8区ですが、今年は自分の実力がメンバーの10人に入るか否かの瀬戸際だと思っています。やはり8区は遊行寺の坂などがあって復路の中でも重要な区間なので、今年については8区にこだわらず監督に任された区間を走れればなと思っています。
――ご自身の走りをどのような人に見てもらいたいですか
箱根は自分の地元を走る駅伝ですし、陸上を始めた中学生の頃からの憧れの舞台なので家族はもちろん、今までお世話になった中学高校の先生や地域の方など、たくさんの人達に応援して貰えたらいいなと思っています。
――それでは最後に、箱根に向けての目標と意気込みをお願いします
区間は決まっていませんが、与えられた区間の中で10位以内、区間1桁の順番で走りきることが自分の今年の目標です。
――ありがとうございました!
(取材・編集 髙杉奈々子)
◆宮岡凜太(みやおか・りんた)
2003(平15)年10月7日生まれ。166センチ。神奈川・鎌倉学園高出身。商学部2年。最近は寮での生活にもすっかり慣れて、寮のメンバーとの会話や、サウナや露天風呂で休むことが息抜きになっている宮岡選手。「入間の湯」がお気に入りだそうです!