10月の日本選手権リレーで日本一に輝いた早大4×400メートルリレー(マイル)チーム。春の関東学生対校選手権(関カレ)で7位に沈んだ後、日本学生対校選手権(全カレ)での悔しい2位を経てつかんだ念願の頂点。初戦からメンバーの入れ替えをせずシーズンを駆け抜けた4人、新上健太(人3=東京・早実)、竹内彰基(スポ3=愛知・瑞陵)、藤好駿太(スポ3=福岡・修猷館)、眞々田洸大(スポ2=千葉・成田)はこの1年をどのように振り返るのか。全員が現3年生以下のチームが語る来年に向けての抱負とは。今年度の大会を終え、冬の鍛錬期を迎える4人に迫った。
※この取材は10月27日に行われたものです。
笑顔で話す4選手。左から眞々田、藤好、新上、竹内
――まず、順番に隣の人の他己紹介からお願いしたいと思います。藤好選手、眞々田選手の紹介をお願いできますか
藤好 競技面では、練習も真面目にやっていて……。何を言えばいいのかわからないです。
一同 (笑)。
眞々田 嫌われてるのかな。
藤好 練習以外のところでは、見た目通り、好青年感がにじみ出るような感じです。
――他の選手から見て、眞々田選手の競技においての強みや良さはどのようなところに感じますか
竹内 一個下なのですが、練習でちゃんと一個上の代について練習できていて、僕らにとっても練習では怖い存在というか、切磋琢磨できる存在の1人です。
――続いて、新上選手から、藤好選手の紹介をお願いします
新上 藤好は、高校時代からずっと強くて、僕や竹内は、入学した時は藤好のライバルと言えるほどの実力では無かったので、目標とする存在でした。今は、一緒にマイルも走れるようになって、3走の時点でほぼ先頭で持ってきてくれるので、そういった点で頼りにしています。私生活の部分は、見た目は怖いんですけど、いろいろな趣味があって、その趣味にしっかり時間もお金もかけているのが、オンオフしっかりしていてすごく良いなと思います。
――次に、竹内選手から、新上選手の紹介をお願いします
竹内 新上くんは練習から、練習の時から周りを良く見ていろいろアドバイスしたり、練習の終わりに集合して練習のまとめを言ってくれたりして、短長だけでなく短距離ブロックの士気を高めてくれます。そのおかげで、マイルメンバーは個人の力が伸びたのかなと思います。陸上だとリーダーシップをとっているのですが、私生活では、抜くところは抜くというか、ずっとリーダーシップという感じではなくて、遊ぶところは遊ぶみたいな、絡みやすい、楽しい人です。
――最後に眞々田選手から、竹内選手の紹介をお願いします
眞々田 競技面では、今年一年で一番タイムを更新して、対校戦で個人でも入賞して、自分としては、去年は自己ベストが勝っていたので、今年負けたくない相手ではありました。この一年は竹内さんの中でも試行錯誤したり、練習も、自分の考えを曲げないで練習したりしているなという印象があったので、その結果として成績につながったのかなと思っています。決めたものからは目を逸らさず頑張る印象です。競技以外では、同部屋だったのですが、結構オフの日はあまり電気が点かず、暗闇の中で過ごしていました。あとは、結構差し入れしてくれます。
竹内 親からの仕送りが結構あって、要らないものとかをあげると喜んでくれるので(笑)。
眞々田 ありがたいです(笑)。
――ご自身の競技においての強みや、他の3人に負けない、というところを教えてください
新上 強みと言えるかはわからないのですが、外さないというか。合わせた試合ではベストだったり、選考で勝つだったり、という感じで今のところは外したことがないのでそこが強みかなと思います。
竹内 僕は、自分の世界に入り込むというか、自我が強い方なので、メニューとか、自分のやりたいことをどんな意見を言われてもやるところです。そのおかげで、全カレは4走で抜かされてしまったのですが、自分の考えを持って少ない期間しっかり追い込めたおかげで修正でき、日本選手権リレーでは4走としての役割を果たせたと思います。
眞々田 若干短所っぽくなってしまうのですが、波に乗れたらしっかりそれに乗り切れるのかなと。自分の調子もそうですし、チームの流れにも少しは乗れるのかなと思っています。自分に与えられた設定をクリアしていくごとに、自分の課題をちょっとずつ消化していけるので、今年の夏くらいから自己ベストが出たりして、作ってきた波をいい方向でつなげられました。シーズン前半はその波がまだ少し浅いのですが、後半シーズンになっていったら、自分のやりたい動きができるようになっていくかなと思います。
藤好 400メートルだと強みはそんなに見つからなかったのですが、マイルだとそんなに外さないかなと。マイルだとちゃんと走れるというところが強みかなと思います。
前半シーズンについて
関カレ決勝のゴール後、悔しい様子の4人
――シーズン前半について伺っていきます。個人の競技とリレーについて振り返るといかがですか
眞々田 個人から振り返ると、冬に若干ケガしていたというのもあって、シーズンインが他の選手よりも遅れて、復帰してから試合に出ても48秒後半とか49秒かかったりして、本当にこのシーズンどうなっちゃうんだろうかという心配がありました。前半シーズンはズタボロな結果で終わってしまったなというのが、個人のレースです。リレーも、六大学(東京六大学対校)からリレーのメンバとして監督から起用していただいたのですが、個人の結果が振るわなかったというのもあり、正直不安があった中でのマイルの1走スタートでした。個人の調子と同様にマイルも前半シーズンは思うような走りができないままでした。
藤好 僕は、前半シーズンはタイムに波があったのですが、後半になると大きなタイムは出なかったけど47秒前半で安定したかなというのはありました。
新上 前半はユニバ(ワールド・ユニバーシティ・ゲームズ)の標準と、学生個人(日本学生個人選手権)の優勝を目標にやっていました。学生個人の結果は7番だったのですが、大学で初めて全国大会の決勝に行けたので、その点は評価できると思います。その後にグランプリや日本選手権があったので、そこに挑戦しようということで、関東インカレ前にものすごく練習を積んだのですが、その結果が悪い方向に働いて、調子を合わせきれずに関東インカレを迎えてしまいました。個人も予選落ちでしたし、マイルも、今だったらもっとまくれたであろう展開でまくりきれずにあの結果だったので、そう言った意味で、春先は良くもあり、悪くもあるみたいなかたちでした。でも悪い部分も理由が明確だったので、夏前にそこを改善しようとした結果も出て、最終的に全カレ標準を前半シーズンの終わりに切ることができました。関カレで上手く行かなかったことがあったから切れたと思ったので、悪かった部分を、うまくプラスに変換できたかなと思います。
竹内 僕は、冬季練習終盤から走りがよくなりました。今まで対校戦の選手にはなれなかったのですが、六大学で始めてエンジを着ることができて責任感というものを久しぶりに感じることができました。おかげで、これから関東インカレとか日本インカレとかで戦えるようになりたいなという気持ちがよりしっかり芽生えて、自分の弱点であるスピードの部分を克服でき、自己ベストを更新することにつながりました。
――シーズン前半の練習で意識していたことや監督、コーチ陣から言われていたことはありましたか
眞々田 前半シーズンは自分がいい結果を出せていなかったので、監督や先輩方からいただいたアドバイスをまずは聞いて消化していこう、課題に向き合っていこう、というのは意識していました。練習メニューとかも少しずつ変わってきて、最初効果は感じられなくても、それをしっかり意識してやり続けることで結果につながってくるのではないかなと信じて練習していました。
藤好 400メートルの前半のタイムが遅いと後半も遅くなってしまうというのがあったので、日本選手権あたりからその前半をしっかりいこうと意識して、そこぐらいからタイムが安定しだしたかなと思います。
新上 僕は大前さん(大前祐介監督、平17人卒=東京・本郷)や岳さん(欠畑岳短距離コーチ、平27スポ卒=岩手・盛岡第一)から、悪いときにも一貫してレース展開を意識した練習をしようと言われていました。そう言ってくださっていたこともあって、僕らが悪い結果だったから見捨てるというのではなくて、僕たちをずっと信じてくれていた感じがあって、やるべきことをただやるだけっていうような方向性を示してもらっていました。個人としては、シンプルに走りの技術というか、速く走るというのはどういう事かっていうのを明確にしようと意識してやっていました。
特に関東インカレは自分の走りが全くできないみたいな状態だったので、三浦さん(三浦励央奈、スポ4=神奈川・法政二)や卒業した松本さん(松本朗氏、令4スポ卒)とか、短短の走りを僕たちに置き換える例で考えてくれる人がいるので、そういった人たちに相談していました。速く走るためには何をするかってことよりも速く走るとはどういうことか、という走りの本質を考えて、それを再現するための練習というのをやっていました。
竹内 今シーズンを通して大前監督とコミュニケーションを深くとって、練習メニューで設定タイムをしっかり作っていただく中で、それを目指して頑張るということを意識していました。でも、そのメニューをこなしながら関東インカレでは新上と僕が個人で48秒5出してしまったのですが、見捨てず信頼してマイルで使ってくださりました。そのおかげで僕たちも期待に応えようっていう気持ちが強くなって、練習でも設定タイム以上のレベルで走ることができるようになってきたので、後半シーズンも期待に応えることができたのかなと思います。
夏前の記録ラッシュ
7月の早稲田大学競技会で自己ベスト(当時)の47秒05をマークした新上。6月の千葉県選手権での眞々田の自己ベストを発端に、自己ベストが続出した
――6月以降は自己ベストが続出しました。今おっしゃった練習メニューやトレーニング以外で記録が出始めた要因などは何かありますか
眞々田 6月以降ベストラッシュがあって流れが来ていたのもありますし、大前監督が僕を信じてマイルの1走に使ってくださっていた部分が大きいと思います。大前監督は「個人のタイムを上げるためにも1走でお前を使っている」っていうのをシーズン序盤からずっと言ってくださっていました。なので、なかなか自分で納得いかない結果の時でも大前監督がそのように自分を使ってくれていたことで、マイルの1走の走りが個人の走りにつながってきているというのはありました。また、タイムが出ない時に自分で少し考えたのが、私生活を少し見直そうということでした。東京ラビッツの大会で49秒5ぐらいのタイムで走った時に何がダメだったかをすべて書き出したのですが、その2週間後にベストが出ました。睡眠とか、授業で習ったことをせっかくなので生かして食事面も気を使って、お菓子とか炭酸を控えるとかもしました。どん底に落ちたのでそういう競技以外のアプロ―チもやらなきゃいけないなという考えに至って、私生活を改めました。
新上 僕は先ほども言ったのですが、先輩にしっかり走りを見てもらう機会を設けました。松本さんは最初は向こうから連絡をもらったのですが、その後も継続して試合の後に動画を送っています。大前監督や岳さんは他の部員も見ていて常に僕たちにはフォーカスできないので、他の人からフィードバックもらう機会を自分で能動的に作っていくというのは意識していました。
竹内 僕は私生活とのオンとオフを1、2年生の頃より多く持つように心がけました。1、2年生の時は部活休みの日でも陸上のことを考えて遊びに行かなかったり、授業とかだけやっていたりしたのですが、3年生になってからは陸上する日はしっかり陸上に集中して、部活休みの日は自分買い物とかが好きなので買い物に行ったり、友達と遊んだり、調整の日は温泉に行ったりしていました。陸上とはまた別の世界に入って、一旦陸上から離れてオンとオフの区切りをしっかりつけられたのは良かったかなと思います。
今年の日本選手権に短長陣で唯一出場した藤好。予選敗退ながら、当時チーム内トップの47秒05をマークした
――6月以降の自己ベストラッシュの中で短長陣の雰囲気はいかがでしたか
新上 結構バチバチしてたよね?
眞々田 してましたね(笑)。僕が1番最初に47秒0だして、そこで一気に結構まくり上げたみたいな。そこからですよね?
新上 藤好がその前に47秒05を出して、西(裕大、教3=埼玉・栄東)も東京選手権で47秒1台を出していたので、眞々田が47秒0台を出した同じ日に僕も県選で標準突破しないといけないという状況になっていました。確か、僕はその時にB標準を切っていたので眞々田が切らなければ僕は一応(全カレに)出られるみたいな状況の中で、眞々田が47秒0台を出したから、(チーム内の)標準が実質47秒2じゃなくて47秒0になったみたいな(笑)。確か、県選で切れなくて、急いで間に合う早大競技会にエントリーしてみたいな感じでわちゃわちゃしていました。
眞々田 うわー。苦しかったですね。
竹内 自己ベストラッシュがあって、みんなA標準を切ったので日体大競技会の順位で決めようってなってそこはもうバチバチでした。
新上 タイムでいうと眞々田より僕の方が0・01秒速かったんだっけ? 竹内も46秒台出したのですが一発だったので、シーズンを通して言ったら多分安定性という部分では…。
竹内 不安要素だった。
新上 そう。僕たち自身もどうやって全カレの3人決めるんだろって話していて、その中で大前監督の方から、選考レースをやろうっておっしゃってくださったので、嫌でも白黒つくっていう状況にしてくれたのは気持ちの面でも、なんというか。
眞々田 平等というか。
新上 公平にね。
竹内 めちゃめちゃ緊張した。
眞々田 バチバチというか。
新上 なんか変な感じだったよね。
「関カレの時とは違う悔しさ」。「複雑」な全カレ2位
全カレ決勝のレースで、ゴール後天を仰ぐアンカー竹内
――個人種目、リレーを含めて、調整の段階から全カレに対する自信はどのくらいありましたか
竹内 僕は関カレで負けてから挑戦者という気持ちでいました。慢心せずにというか、ずっと挑戦者として下剋上してやるという感じで挑んでいたので、いい緊張感の中で練習や調整ができていたのではないかと思います。
眞々田 練習とか合宿での消化率が全員高い状況だったので、一回悔しい思いをしていたということで、常に上を目指そうという固い気持ちがありました。それに対して練習でもその意識を継続できる動きをずっとできていた感じはあったので、もちろん順位をとらなければという焦りや怖さはあったのですが、それを超えることができるような自信は少しずつつけることができていたのかなと個人的に感じています。
新上 3人はベストを更新していて、藤好は(シーズンベストが)47秒0(台)ということで、目に見えてアベレージがシンプルに上がっていたので、この状態でマイルを走ったらどこまで行けるのかという楽しみがありました。関カレの時は不安でマイナスな感情の方が強かったのですが、全カレは僕も竹内も個人でベスト更新しましたし、どちらかというと早く(今の力を)試したいというか走りたいという雰囲気はあったと思います。
藤好 僕は自信を持ったことがなくて。マイルの時も個人の時も絶対勝てるというような気持ちを正直持ったことがなくて、本当にいつもどおり挑戦者の気持ちでいるといった感じでした。
――結果、全カレではマイルは準優勝となりました。個人の結果も含めて今振り返ると全カレはどのような大会でしたか
眞々田 僕たちも関東インカレの時より順位も記録も取りたいという意識がすごくありました。2位と言う結果は、シーズンを通して少しずつ自信がついてきた中で、目標を達成できず、とてつもなく悔しかったという感じがあります。関カレの時とは違う悔しさでした。関カレの時は個人としても状態が良くなかったので、まだダメなんだという感情だったのですが、全カレの時は戦えると思って臨んでいたので、狙っていた分勝ち取れなかったという悔しさが関東インカレに比べて大きかったと感じています。
新上 正直僕はレース後複雑な感情でした。関カレ7番から順位、記録ともに確実に成長しているというのは結果にしっかり出たので、うれしいとまでは言わないですが、その結果を良く捉えようとする自分がいました。一方で、全カレという勝たなければいけない場面で僅差で負けてしまった悔しさも感じ、正直一言で表せられない感情でした。でも、表彰式の直前、控室で三浦さんに「いいレースだったんじゃない? 」と言ってもらえて、もちろん悔しさや反省しなければいけない点はたくさんありますが、あの瞬間にそれぞれが出せる最大の力を出しての2番だったので、それはそういったふうに受け止めてもいいのかなと感じています。
竹内 僕は個人として全カレの時も自己ベストも出て過去一走りの状態も仕上がっていたのでが、なかなか3日間というスケジュールをこなせる自分がいませんでした。個人では、予選で自己ベストが出て、決勝はタイムを落とし6番目ということで、自己ベストを更新してれば表彰台というところで乗れませんでした。2日目のマイルも動き的にはいいのですが、疲労とかもあり、(3日目の決勝では)一番で渡してもらったのにも関わらず、4走としての役目を果たせず2番になってしまったので、そこで次4走を任せてもらったら絶対同じミスはしたくないという、反省や悔しさの方が大きかったです。
それぞれの全カレ後
全カレ翌週の関東新人選手権で優勝を飾った眞々田
――全カレ後も早慶戦(早慶対抗競技会)や日本選手権リレーと試合が続きました。気持ちの持っていき方や保ち方で意識したことありますか
新上 僕は、早慶戦は日本選手権やグランプリの標準を切るためのタイムが欲しくて、慶應には豊田(兼)選手がいて引っ張ってもらえると思って出ました。全カレが自分の限界じゃないと思っていたので、(タイムを)狙っていこうと思っていたのですが、体が結構追いついていない部分があり、保てていなかったというのが正直ありました。8継も走らせてもらったのですが、ラップタイムも良くないですし、そこはもっと上手くやっていかないとなと感じています。来年も同じようなスケジュールで、4年生という立場だとそれが引退ということになってくるので、上手く走るためにももっとやりようを見つけないといけないと思いました。
眞々田 僕は全カレが終わってから関東新人(関東新人選手権)、早慶戦、日本選手権リレーと毎週のように試合が続きました。日本インカレの悔しさがあった中で自分のタイムだけで見たら日本インカレのラップタイムはラップベストだったので、1回個人のレースに切り替えました。すると、関東新人も400とマイルで2冠でき、久々に勝ちきれたことで自分の中で勢いづき、収穫がありました。早慶戦は良い調子をさらに1段階上げて、新上さんと同じように日本選手権の標準や46秒台狙おうということで出たのですが、結局(関東新人から)上げることができず、47秒3くらいの良くない意味で安定したタイムでした。全カレの時に日本選手権リレーで勝ちたいと強く思ったので、関東新人と早慶戦で掴んだものをしっかり日本選手権リレーに活かしたかったので、気持ち的な面では日本インカレからどんどん日本選手権リレーに向けて上げていくことができたと感じています。
竹内 僕は、全日本インカレが3日間終わって、体的にもきつくて、メンタル的にもすごく落ちこみました。今でもマイルの決勝とかの動画は怖くて見れていなくて、陸上から離れたいみたいな気持ちにもなってしまいましたが、それより絶対日本選手権リレーではリベンジしようと思って練習を再開しました。早慶戦で慶應の人に「日本選手権リレー応援しています」みたいなことも言われて、逆に陸上への士気も高まり、絶対優勝してやるぞという気持ちで日本選手権リレーは挑めたと感じています。
藤好 全カレでマイル2位になって、悔しい気持ちがあって日本選手権リレーでは勝ちたいという気持ちが大きかったので、全カレが終わってからは日本選手権リレーだけをゴールとして、練習していました。
切磋琢磨の1年間
日本選手権リレー決勝で1位でゴールした後、Wポーズをする4人
――マイルのメンバーは確定してないといった話や、予選がメンバー選考だった、という話が年間を通して多く聞かれましたが、練習はどういった雰囲気でしたか
竹内 確定されていない分、自分がどこかで集団から出なきゃなという感じでいて、みんなもそう思っていたと思うので、切磋琢磨という言葉どおり、お互い極め合い続けられたと思います。
――それは良い方向に作用しましたか
眞々田 結果的によかったのかなと思います。予選はとりあえずこのメンバーで行くというのはいつも言われていました。僕はこの4人の中だったら持ちタイムは一番下だったので、先輩方より早く走りたいというのはマイルでもすごく思っていました。控えている人たちはタイムも実績も持っている方だったので、僕はどの大会でも決勝を走りたいという思いで、交代したくないという怖さもあって、燃えていたので、熾烈(しれつ)なメンバー争いをあまりストレスに感じずに選考に臨めたと思います。
新上 実際僕は結構性格的にも正直走れると思って練習していたけど、実際みんなどう?
竹内 僕は怖かったな。少しでもミスったら落とされるなという感覚がありました。予選から緊張感を持って走ることができたから僕は結果的には良かったのかな。
眞々田 僕は、交代しないでしょみたいな考えは全くなくて。特に日本インカレの決勝とかは走りたかったので、予選でラスト100メートル入った時に横に天智龍さん(田中天智龍、スポ3=鹿児島南)が走っている感じがして。練習でもよく天智龍さんと一緒に走って前に行かれることが多かったですし、ヨンパー(400メートル障害)で活躍もされていたので、交代されるのではないかという怖さがあって、見えないものが見えたりしました(笑)。
新上 語弊があった気がするので、訂正したいんですけど、正直走れるというか、状態が良ければ僕を使わない選択肢を与えないくらいの良い状態にしようと捉えていました。状態が悪くて外されるというのはもちろん当たり前ですが、そうじゃなくて、逆に状態が良くて走れていれば外されないので、そういう状態に持っていけば走らせてもらえるという逆の安心材料がありました。
――400メートルの方にお話を伺っていると、監督やコーチ陣への感謝の言葉が特に多く出てきます。指導陣に教わったことや言われた言葉で印象的だったものが有れば教えてください
眞々田 1年通して大前監督が使い続けて下さったのは本当に自分の実力につながりました。シーズンが終わってから振り返りの文章を送るのですが、それに対するコメントで、使い続けたことに対してよく応えてくれたという評価をいただいて、マイルを走り始めた時は大前監督や岳さんも僕に対して不安要素もあったと思うので、結果に対して応えられたというのはよかったです。そう言っていただいたことは頑張ろうというモチベーションになります。
竹内 印象的というよりは要所要所なのですが、調整とかの時に期待から「絶対何秒出るじゃん」みたいな感じで言ってもらえて、それがプレッシャーとかではなくて、出るかもしれないという自信につながっていました。ずっと調整期間に言ってもらえたので、ずっと更新し続けることができたのかなと思っています。本当に感謝です。
新上 僕らに対して言ったことではないのですが、大前さんが度々「挑戦した結果できなかったらしょうがない」みたいなことを言っていて、それはこれまでの競走部になかったことかなと思います。結果が全て、ではないですけど、そこを追求しなきゃしなきゃと思っていた部分があったので、やった結果ダメならしょうがないって言ってもらえたのは、やるためのモチベーションにもなるし、やってダメだった時のことを考えなくなったというのもありますし、結構印象的かなと思います。
藤好 僕も竹内とかが言っていた感じで、良いじゃんみたいに言ってくれるので、それがすごく良いのかなって思えて走れました。あとマイルメンバーで使っていただいたというのは感謝です。
日本選手権リレー表彰式で金メダルを掲げる4人
――今シーズンを振り返るとどんなシーズンでしたか
藤好 僕は個人のレース的には、自己ベストも出なかったし、自己ベストから0・5秒くらい遅いタイムで安定みたいな感じだったので、全然うまくいかなかったのですが、マイルで見ると、全カレ2位、日本選手権リレー1位と、関カレの時には全然思っていなかったようなタイムも結果も出て、マイルで見ると良かったかなと。次のシーズンにちゃんと流れを作って終わることができたかなと思います。
眞々田 先ほども言ったのですが、大前さんが「マイルで1走を走らせるのは個人でも走れるようにするためだ」っていうのを春からずっとおっしゃってくださっていて、その言葉通りにマイルの経験を積ませてもらえたことで、1年間シーズンを通して自分の実力を確実に上げられたなと思います。得られたことの方が今年は多かったなと思っているのですが、まだその中でも、前半シーズン全然走れないとかそういう課題はあったりするので、その残った課題に対してどうアプローチできるのかな、それをどう冬季練習につなげていけるのかなと感じています。得られたことをもちろん自信にできますし、残ったことを今後の練習につなげていけるという発見がたくさんできた年だったなと思います。
竹内 僕は今シーズン通して成長できたなという面もあるのですが、逆に成長して高いレベルで戦うことができるようになった分、責任が重くなって結果も求められるようになったし、結果に対する悔しさも変わってきました。けどその悔しさを味わうことができたのもまた自分が成長できたおかげなのかなと思って、成長できた分、違った悔しさを味わうことができて、人生という中においていい経験をしているなと思います。
新上 僕は、あまり一言では言えないのですが、400メートルという競技に対する見方が変わったシーズンでした。僕は中2から400を始めたのですが、今まで見えてなかった部分が結構見えたというのもあって、来年で競技をやめるとしても、この感覚というか見方をできて終えられて良かったと思うんだろうなとも思うし、新しい角度から見えているからこそやりたいこともいっぱいあります。シーズンが終わった直後はこれが4年生の最後のシーズンじゃなくて良かったなと思ったことも結構あったので、うまくこのシーズンを最後のシーズンにつなげていけたらなと思っています。
――最後に、冬季練習や来年に向けた意気込みをお願いします
眞々田 今シーズンは、春先に立てた個人の目標が達成できなかったので、来シーズンは確実に目標を達成して、タイム的に言ったら46秒50で日本選手権出場、対校戦で個人出場、リレーでも対校戦2冠、という目標を立てました。それを実現するために冬季練習は、自分の弱いところに向き合うというか、苦手なことからちょっと逃げちゃう癖があるので、そんなことからも目を背けずに苦手なことにも挑戦したいです。あとは悩みとかを1人で考え込まずに、分からなくなったら監督だったり、先輩方や後輩からも聞いたり、自分の考えからしっかり改めて、来シーズン誰よりも走って誰よりも練習したいなと思います。なので今まで以上に気合の入る冬季練習にしたいなと思います。
藤好 来シーズンは200メートルも挑戦したいと思っているので、冬季練習は400系よりも200系のスピードを重視したような練習になると思います。練習の状況が変わってもしっかり練習して、(400メートルは)今の持ちタイムが47秒05なので、日本選手権もこのままでは出られないので、とりあえず日本選手権に標準を合わせて、ベストもしっかりシーズンの前半で狙えるような練習をしていきたいなと思います。
新上 僕はどれだけ残せるかというか、僕たち今の3年生の代がマイルメンバーにいることで、マイルを経験できていない後輩もいますし、でも僕たちが抜けた後はそういった後輩たちがしっかり選手権リレーや全カレ、関カレの勝ちに挑戦していかないといけないので、それを踏まえて、色々な経験をさせてもらった分それをどれだけ伝えていけるか、というのをこの冬からしっかりやりたいなと思っています。今までは自分が強くなることがチームに対する最大の貢献だと思っていたので、自分が強くなることは最低条件として、それ以上に、短距離ブロック長になったというのもあるのですが、今までコミュニケーションを取っていなかった人ともしっかりコミュニケーションを取って、どうやったら短距離ブロックがもっと強くなるかというのにもしっかりフォーカスしてやっていきたいなと思っています。
竹内 僕は、結果だけで言ったら個人で全国6番、マイルで日本で1番になった訳ですけど、個人だったら優勝を目指さないといけないし、マイルだったら連覇で追われる立場になるので、やっぱり初心は忘れずに冬季練習に励んで、先輩たちが残してくれたように、僕たちの代も来シーズン後輩たちに何か残すためにも冬季練習をしっかり頑張っていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 及川知世、加藤志保、川上璃々、戸祭華子)
◆眞々田洸大(ままだ・こうだい)(※写真左)
2002(平14)年7月26日生まれ。179センチ。千葉・成田高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:400メートル47秒06。マイルリレー1走。首をよく痛めるという眞々田選手。解散期間中に遊びに行った富士急ハイランドで、FUJIYAMAに乗った時にも首を痛めてしまったそうです。今回の対談のメンバーで唯一の2年生でしたが、会話を仕切る場面もあり、対談を引っ張ってくださいました!
◆新上健太(しんじょう・けんた)(※写真左から2人目)
2001(平13)年8月20日生まれ。180センチ。東京・早実高出身。人間科学部3年。自己記録:400メートル46秒91。マイルリレー2走。人間科学部の知識情報科学というゼミに所属していて、解散期間中も課題が忙しかったという新上選手。チーム内でもリーダーシップを取る存在ですが、眞々田選手の外出中に眞々田選手の布団で勝手に寝ていた、などのお茶目なエピソードもあるそうです!
◆藤好駿太(ふじよし・しゅんた)(※写真右から2人目)
2001(平13)年11月1日生まれ。175センチ。福岡・修猷館高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:400メートル46秒50。マイルリレー3走。アイドルが好きだと言う藤好選手。路上ライブに行こうとしたら、行く途中に外国人に道を聞かれてしまい、案内していたらライブの開始に間に合わなかったそう。そんな藤好選手の好きなスイーツはシュークリームだそうです!
◆竹内彰基(たけうち・あきのり)
2001(平13)年9月11日生まれ。180センチ。愛知・瑞陵高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:400メートル46秒65。マイルリレー4走。対談中にカメラを向けるとピースサインしてくれるなど撮影にも興味津々の竹内選手。最後の色紙の撮影の際は早スポのカメラを使って自ら3人の写真を楽しそうに撮影されていました!
2022年男子4×400メートルリレー
▽東京六大学対校(4月9日)
眞々田―竹内―藤好―新上 3分09秒89(1着)
▽関東学生対校選手権
予選(5月21日)
眞々田―竹内―藤好―新上 3分07秒96(2組3着)
決勝(5月22日)
眞々田―竹内―藤好―新上 3分07秒27(7着)
▽トワイライト・ゲームズ(8月7日)
眞々田―新上―藤好―竹内 3分08秒31(1着)
▽日本学生対校選手権
予選(9月10日)
眞々田―新上―藤好―竹内 3分07秒56(1組1着)
決勝(9月11日)
眞々田―新上―藤好―竹内 3分04秒79(2着)
▽日本選手権リレー
予選(10月1日)
眞々田―新上―藤好―竹内 3分05秒05(1組1着)
決勝(10月2日)
眞々田―新上―藤好―竹内 3分05秒23(1着)
※11/15 追記
記事内、日本選手権リレーの記録に誤りがございましたので、訂正いたしました。
謹んでお詫び申し上げます。