新世代の台頭へ 田中がまたもPB更新!/アスレチックスチャレンジ

陸上競技

 アスレチックスチャレンジカップが新潟で開催され、有力選手が多く集まる中、早大からは13名の選手が出場した。男子400メートル障害で田中天智龍(スポ3=鹿児島南)と金本昌樹(スポ2=東京・日大桜丘)が自己ベストを更新し、女子200メートルでは鷺麻耶子(スポ2=東京・八王子東)が3位入賞を果たすなど新たな世代の成長が垣間見られた。

表彰式で賞状を掲げる田中

 本大会で最初に行われた女子800メートルではタイムレースが2組行われ、早大からは新田望(スポ1=神奈川・法政二)が1組目に出場。新田の隣には先週の早慶対抗競技会で競り負けた細井衿菜(慶大)が入り、早くもリベンジの機会が訪れた。序盤は後方寄りにポジションを取った新田。スピードを変動させることなく前半の400メートルを走り切る。500メートルに差し掛かる際にスピードを上げ、残り100メートルで4番手に躍り出る。その後もスピードを緩めることなく、ゴール前で細井をかわして組3着でフィニッシュ。リベンジを達成する形となった。

 2日目の女子400メートルでは、年が離れた選手たちの中でのレースとなった新田。スタート時に実業団の選手に大きく離され、最後尾となったが、懸命な走りを見せ、ホームストレート入口で青木りん(東邦銀行)の背中を捉える。しかし、ゴール直前で振り切られ、組最下位の6着でレースを終えた。

800メートルのレースを走る新田

 女子400メートル障害(ヨンパー)決勝には、川村優佳(スポ3=東京・日大桜丘)、津川瑠衣(スポ3=東京・八王子)、 大川寿美香(スポ1=東京・三田国際学園)が出場。大川は組4着、津川は組8着。そして、先月の全カレで6位入賞を果たした川村は組2着でシーズンベストのタイムを記録した。

 1組目に登場したのは大川。高校時代のU20日本選手権3位など、実績を持って入学した大川だったが、春はなかなかタイムが上がらず苦戦。シーズンが進むにつれて徐々にタイムを上げ、挑んだのが今回の大会だ。安定したスタートで飛び出した大川は、徐々にスピードを上げ一時は1位を争う。競り合いの終盤に粘ることができずに失速したものの、60秒台のタイムでゴール。シーズン終盤にかけて実力が発揮できるようになってきた大川の健闘を称えたい。

 2組には津川と川村が出場。序盤少々遅れをとった津川は後半にかけて追い上げを見せるも、ハイスピードのレース展開に着いていけず、残念ながら8着に終わる。一方の川村は全カレでの反省を活かし「前半(スピードを)出しつつ、力感を抑えて、後半しっかり走る」というレースプランのもと、今回のレースに挑んだ。プラン通り、前半は落ち着いた走りを見せる。後半も最後までスピードを落とさずに力強い走りで2着でゴールし、表彰台に輝いた。タイムは、自己ベストに肉薄する、シーズンベストだった。

 シーズンベストをたたき出した川村だが、「もう少し詰まりをなくしたり、ハードルを飛ぶ際の浮きをなくせば、もっとタイムが出た」とレース後に悔しさをにじませた。まだ残された課題は多いが、着実に克服していこうとする選手たちの姿は非常に印象的だった。

スタート直後のカーブを走る川村

 全カレでの田中の優勝を皮切りに勢いを増した早大ヨンパー勢。男子400メートル障害A決勝に出場した田中は自己ベストを上回る記録で優勝をつかみ取った。B決勝には新井公貴(スポ3=神奈川・逗子開成)、金本昌樹、盛岡優喜(スポ1=千葉・八千代松陰) が出場。金本が51秒01の自己ベストで4着にゴールし、盛岡と新井はそれぞれ5着、7着でレースを終えた。

 B決勝に登場した新井は、ケガ復帰後の初レース。序盤から勢いある流れを作り果敢に攻め、51秒89のシーズンベストでフィニッシュし、復帰レースとは思えない走りを見せた。また、全カレの選考試合ぶりとなる直接対決となった金本と盛岡。前回盛岡に一歩及ばず、全カレの出場権を逃した金本はリベンジに燃え、「絶対勝ちたい」という気持ちでレースに臨んだ。結果、盛岡に勝利するだけでなく、自己ベストも更新し、来シーズンへの期待を膨らませた。盛岡は惜しくも敗れたが、安定した実力のある走りで51秒24を記録し、5着となった。

 続いて行われたタイムレースA決勝では、前年度に全カレを制した山内大夢(令4スポ卒=現東邦銀行) が田中の隣レーンに出走。早大の全カレ覇者対決に観客の熱い視線が集まっていた。序盤は前の選手に食らいつく田中だったが、第3コーナーを抜けるとエンジンをかけ、一気にトップに。記録更新に期待をかけ、さらに後ろを引き離し勝負を決定づけた。本人の目標記録である48秒台には届かなかったものの、49秒07と全カレに引き続き自己ベストを更新。今シーズン飛躍的な進化を遂げた田中は既に世界へ向け走り出している。田中率いる早大男子ヨンパー勢が、来シーズンの早大チームを盛り上げていくのは間違いないだろう。

ゴールし、ガッツポーズをする田中

 女子200メートル決勝には鷺麻耶子(スポ2=東京・八王子東)と山越理子(人1=東京・富士)が出場した。「前半から突っ込んで、出し切れる流れを意識した」(鷺)という言葉通り、両者共に序盤から勢いのある走りを見せる。最終的に鷺が3着、山越が4着と連続でフィニッシュ。表彰台に立った鷺だが、「上を目指して、冬季練習に取り組みたい」と更なる高みへと意気込んだ。

表彰式で賞状を掲げる鷺

 早大を背負う対校戦がひと段落し、個人レースに焦点を当てる機会となった本大会。各人が自身の走りを見つめ直し、課題を再確認することができたはずだ。これから迎える冬季期間で力を蓄え、来シーズンは更にパワーアップした選手たちが見られるに違いない。

(記事 湯口賢人、草間日陽里、川上璃々 写真 湯口賢人、川上璃々)

結果

▽男子

▽200メートル

B予選

千田杜真寿(スポ2=茨城キリスト教学園)
21秒23(+0・6) (2組2着)B決勝進出

寺澤大地(スポ1=京都・洛南)21秒45 (+0・6)(2組3着)

B決勝

千田 21秒24(+0・6) (4着)


▽400メートル障害

タイムレースA決勝

田中天智龍(スポ3=鹿児島南) 49秒07 (3組1着)自己新

B決勝

金本昌樹(スポ2=東京・日大桜丘) 51秒01 (1組4着)自己新

盛岡優喜(スポ1=千葉・八千代松陰) 51秒24 (1組5着)

新井公貴(スポ3=神奈川・逗子開成) 51秒89 (1組7着)



▽女子

▽200メートル

決勝

鷺麻耶子(スポ2=東京・八王子東)24秒26 (+2・4)(3着)

山越理子(人1=東京・富士)24秒34 (+2・4)(4着)


▽400メートル

タイムレース決勝

新田望(スポ1=神奈川・法政二) 57秒06 (2組6着)


▽800メートル

タイムレース決勝

新田 2分9秒05 (1組3着)


▽400メートル障害

タイムレース決勝

大川寿美香(スポ1=東京・三田国際学園) 60秒28 (1組4着)

川村優佳(スポ3=東京・日大桜丘) 58秒27 (2組2着)

津川瑠衣(スポ3=東京・八王子) 60秒68 (2組8着)


▽走高跳

決勝

山田実来(人4=神奈川・桐光学園) 記録なし

コメント

 

▽男子400メートル障害

田中天智龍(スポ3=鹿児島南)

――今日のレースの目標は

全カレで49秒2台が出て、もう一本49秒前半で走ることが一番の目標でした。対校戦は勝ちに行くレースをしましたが、今回は対校戦ではないので攻めてタイムを狙うレースを考えていました。

――調子はいかがでしたか

全カレが終わって一回調子が落ちました。そこから、もう一度体作りとかを見直し、スピード系の練習を入れて、また戻ってきた感じです。

――自己ベスト更新の結果については

フィニッシュタイマーが一瞬48秒9で止まって、うれしくてガッツポーズが出たのですが、49秒07でした(笑)。うれしかったですが、悔しさもちょっとありました。目標は達成できたのですが、(48秒台に)届きそうだったってところで、今日は本当に条件も良かったので悔しい気持ちはあります。48秒台を出しているのと、出してないのでは大きく違うと思うので、来年頑張りたいです。

――隣レーンには山内大夢選手(令4スポ卒=現東邦銀行)がいらっしゃいましたが意識はされていましたか

北麓(富士北麓ワールドトライアル)で一緒に走れるかなと思っていたのですが、走ることができなかったので、「デンカで勝負かな」とは山内さんから言われていて、絶対勝とうと思っていました。ワクワクもあり、絶対勝ちたいなという思いもありって感じでしたね。結果的に勝ててうれしいです。

――今シーズンも終盤ですが、今年を振り返っていかがですか

今シーズン前半は苦しくて、結構不調でケガもありました。そんな中でも応援してくれる人もたくさんいてチームメイトや早稲田の友達から「大丈夫だよ」とか「絶対復活できるよ」などと声をかけてもらっていました。本当にそれがなかったら今こうやってタイムは絶対出てないですし、やはりそういう人たちがいたので、走りで、結果で返すっていうのが練習でも中心にありました。そのおかげで気持ちを切らさずにずっと毎試合やれているのかなと思います。

――来シーズンに向けて意気込みをお願いします

来シーズンは最終学年になるので、個人としては48秒台、48秒50っていうのを目指したいです。ブダペストの世界陸上の標準が48秒70なのですが、今日49秒0台が出てるので、僕は前半が課題というか、最大スピードが足りないので、そこの区間のタッチダウンタイムを0・1秒ずつあげていくと、48秒5は出るという考えなので48秒を目指して冬は走力を上げるために取り組んでいきたいです。チームとしては今年トラックが(全カレ)総合2位で、多分優勝できたと思っています。やはり先輩たちの悔しい表情とかを見たので次は僕がチームを引っ張っていって、トラック総合優勝をみんなで目指していきたいと思います。


金本昌樹(スポ2=東京・日大桜丘)

――今日のコンディションは

レースで練習通りの走りができた感覚だったので、いつも通りだったと思います。

――今回のレース目標は

50秒台を出すことが目標でした。

――自己ベスト更新の結果を振り返っていかがですか

結構練習を詰めていたので自信はあったのですが、全カレ(日本学生対校選手権)のメンバーには入れなくて、関東新人(関東新人選手権)も直前のケガで出場できませんでした。でも、それまで結構夏に練習を詰めていたので、ベストは出るなという感覚ではありました。

――今日のレースまでそのケガの立て直しはすぐにできたのですか

今日は心肺機能の面で不安はあったのですが、それまでの練習で自信があったので、大丈夫かなという感じでした。

――新井公貴(スポ3=神奈川・逗子開成)選手、盛岡優喜(スポ1=千葉・八千代松陰)選手と同じ組でしたが、意識していたことはありますか

3人とも後半型の選手なので、最後の直線で見えると思っていて、絶対に負けないという気持ちでいました。特に、盛岡には全カレ選考で隣で負けてるというのがあったので盛岡には絶対勝ちたいという気持ちでした。

――来シーズンに向けて目標をお願いします

まずは全カレのメンバーに入ることです。しっかり決勝に行って得点を入れるというのを目標にして頑張りたいです。


▽女子200メートル

鷺麻耶子(スポ2=東京・八王子東)

――今日のコンディションはいかがでしたか

早慶戦から1週間の中で身体の疲労感はないものの、足の疲労感が残っていて万全な調子ではありませんでした。

――本大会での目標を教えてください

エントリー選手が減り、一発決勝になったため、しっかりと前半から突っ込んで出し切れるような流れを意識しました。

――意識していた選手はいらっしゃいますか

兒玉さん(芽生、ミズノ)が内側のレーンからすぐに来て抜かされるということはわかっていたのですが、特に意識して自分のレースに影響が出るのは困るのであまり考えていませんでした。

――全カレから変えたことなどはありましたか

特にありません。日によって走りの感覚が違い迷走してしまうので、そこの微調整や身体のコンディションを自分で理解できるように考えながら練習をしました。

――今日のレースから何か課題は見つかりましたか

前半の100メートルと後半の100メートルのタイム差をもっと減らすことと、200メートルの走り方のパターンを安定させていきたいです。

――今後の目標を教えてください

今シーズンは思うような結果が出せなかったので、来シーズンは頭から記録を狙い、出場できる試合を増やして、上を目指せるように冬季練習に取り組んでいきます。


▽女子400メートル障害

川村優佳 (スポ3=東京・日大桜丘)

――今日の調子とレースプランを教えてください

今日はアップから(体が)動いていていました。マネージャーさんにタッチダウンタイムを取ってもらうのですが、それも結構落ち幅も少なく、スピードも速かったので、今日はタイムが出そうだなというイメージでした。レースプランは、全カレで前半(スピードを)出しすぎて、後半しっかり走れなかったので、今回は前半(スピードを)出しつつ、力感を抑えて、後半しっかり走ろうというレースプランでした。

――結果に関してはいかがですか

結果はシーズンベスト、セカンドベストで良かったですが、レースを終わって振り返ると、少し詰まりがあったり、ハードルを飛ぶ際に浮いてしまったりとかで、もっとタイムが出たと思うので、少し悔しい思いはあります。

――意識していた選手はいますか

みんな速く、その中でも梅原さん(紗月、住友電工)が2週間前の全日本実業団選手権(全日本実業団対抗選手権)で、57秒台前半で走っていたので梅原さんは意識していました。

――全カレ後のレースとして今回のレースをどのように挑んだかなどあれば教えてください

全カレでは早稲田を背負っていたので結構気負っていた部分もあったのですが、今回は自分のタイムや結果に集中することができたので、いい意味で気楽にできたかなと思います。

――今後の目標を教えてください

今年全カレで悔しい思いをしたので、来年は全カレでの優勝とマイルでの優勝を目指して頑張っていきたいと思います。