例年7月に北海道で行われる中、長距離の記録会、ホクレン・ディスタンスチャレンジ。7月2日から始まる全5戦のシリーズに先駆け、今年は、オレゴン世界陸上の参加標準記録の期限である6月26日を前に、20周年の記念大会が行われた。
早大から唯一の出場となった井川龍人(スポ4=熊本・九州学院)は、日本選手権上位者や長距離界のトップ選手が数多く集まった1万メートルに出場。ハイペースに付いていけなくなった選手が次々と集団から遅れていく中、振り落とされることなく集団の中でレースを進め、終盤には日本人トップに。最後は、今大会で世界陸上参加標準切りを狙っていた日本選手権3位の市田孝(旭化成)に交わされ日本人2位となったが、堂々のレースを見せた。
集団の中でレースを進める井川
5月の日本選手権1万メートルでは調子が悪かった中、集団から離れた後も粘りの走りを見せ16着。翌々週の関東学生対校選手権ではラストスパートで惜敗したものの2位に入るなど、今季は1万メートルを主戦場に、着実に力を上げてきた井川。27分59秒74の自己記録の更新を目標に挑んだ今レースでは、28分のペースで行って出す27分台よりも攻めて行った結果の27分台の方が収穫はある、と世界陸上の参加標準切りのペースに設定された先頭集団に果敢に付いていく。
1キロ2分42秒程度で進んだレースは、序盤から日本選手権上位者が次々と集団から脱落していく波乱の展開に。そんな中、井川は「キツイと感じるところは無く、流れに乗って走れた」と徐々に集団の中での位置を上げていく。集団の人数が絞られて行ってもしっかりと外国人のペースメーカーについていき、8000メートル付近で日本人トップに。その後ペースメーカーとも離れ単独走となり、ペースが1キロ3分程度まで落ちたが、終盤まで粘り切り、日本人トップのままラスト1周へ。最後は猛追した市田孝に交わされたが、日本人2位の4着でゴール。タイムは28分15秒95のサードベストだった。
日本人2位でゴールする井川
昨シーズンはケガや疲労等でトラックシーズンに安定した成績を残せなかった井川だが、今年は充実した練習が積めていると語る。夏以降に向けては「27分台が8割くらいの力で、練習の一貫で出せるくらいの選手になる」という目標を掲げた。世代トップの成績を提げて早大に入学した井川もついに大学ラストイヤー。前半シーズンの好調を夏以降にも維持することができるか。秋のトラックレースと、最上級生として迎える駅伝シーズンでは、学生長距離界トップを争う活躍に期待だ。
(記事 及川知世、写真 「中大スポーツ」新聞部提供)
結果
▽男子1万メートル
井川龍人(スポ4=熊本・九州学院) 28分15秒95(4着)
コメント
井川龍人(スポ4=熊本・九州学院)
――目標タイムは
自己ベストの更新と(27分)40秒台というのが一つの目標でした。
――自信はありましたか
練習もしっかり積めてきていたので、出せるのではないかなというふうには思っていました。
――調子も良かったですか
はい。
――昨年のトラックシーズンは調子が安定しない印象でしたが、今年調子が良い理由は何かありますか
監督が変わって、練習の内容や質が変わったので、それが一つ、今結果が残せている要因なのではないかなと思っています。
――練習の質自体が上がった感じなのですか、それとも練習の相性の問題なのでしょうか
どうなんですかね。質が上がっていますし、もしかしたら合っているのかもしれないです。
――周りも含めチーム全体として練習が積めている感じなのでしょうか
そうですね。周りもそう感じているのではないかなと思っています。
――レースについてお聞きします。序盤のペースはどう感じていましたか
一人になったところ以外、誰かの後ろについて走っていたので、キツイと感じるところは無く、流れに乗って走れているという感じがずっとしていて、気持ち良く走れていました。
――前半で集団に付いていけなくなる選手も多くいましたが、その中で最終盤まで前方で走ることができた要因は、その流れに乗れた、というところなのでしょうか
そうですね。本当にその辺は楽で、なんでみんな離れるんだろうという感じで、残りの距離のことを考えてみんな落としているのかなとか思いながら走っていました。
――走り始めてからも調子の良さは感じていましたか
はい、感じていました。
――8000メートル以降単独走になってからの走りはどのように振り返りますか
単独になったからが、風を感じたり、思ったようにペースが上がらなくなったりですごくキツい時間でした。
――市田孝選手(旭化成)と一緒に走る時間があったかと思いますが、引っ張り合ったりはしましたか
1回僕が前に出て、何周か引っ張ったくらいで後は市田さんが引っ張ってくれたという感じでした。
――日本人トップは意識していましたか
レースが始まる前までは、(日本人)3位以内だったら良いかなと思っていたのですが、途中からやはり日本人トップというのは意識していました。
――後続との差は気にしていましたか
後ろを振り返る余裕も最後の方は無かったので…(笑)。あとは、28分で引っ張るペースメーカーがいたはずだったので、それを途中待っていたのですが、一向に来なかったので、それがちょっと計算違いだったなと思いました。
――給水も取っていましたが、暑かったですか
暑く感じたのと、一人になっている場面で何かを変えないとずるずる落ちそうだったので、気持ちを切り替えるという意味でも水を取りました。
――最後後ろから市田選手が追い上げているのは感じていましたか
周りからの声などからでも感じてはいました。
――最初から速いペースについていき、終盤耐える、という展開のレースは近頃あまり無かったかと思うのですが、そういった部分での対応具合はいかがでしたか
今回は2つペース設定があって、28分のペースと、世界陸上標準の2つで、どちらで行こうか結構悩んでいたところはあったのですが、28分のペースで27分台を出すより、攻めて行って、攻め切れず終わって27分台の方が、まだ収穫はあるのかなという風に感じていたので、攻める走りができたのは収穫ではあるかなと思います。
――悩んでいたというのは走り始める前ですか
そうですね。走り始める前に、人数も少なかったので、1列集団になると思ったので、その後方に付ければ前半は余裕を持っていけるのかなと考えていました。
――実際には序盤で集団の前方に行ったと思うのですが、それは動きに余裕があったからなのでしょうか
はい。
――レース全体としての収穫や反省点を教えてください
攻めた走りができたというのは評価できる部分で、反省点として挙げるなら、ラスト3、4周くらいが1番キツくて気持ちが折れそうになったというところと、後ろから来た市田さんに、ハンデがありながらも、ラスト1周の勝負で負けてしまうという勝負強さが無かったというところです。あとは技術的な面になるのですが、キツくなった時にストライドを生かせずにピッチで幅が狭くなってしまっているというところが今後の課題かなと感じています。
――Twitterで「まだまだいけた」とおっしゃっていましたが、もっといけたというのはやはり終盤の走りですか
27分台が連発するくらいのレースを予想していたので、もっと集団になって人の力を借りることができたらもっといけたのではないかなと思っていて、少し勿体無かったなとは思います。
――もっとタイムが出そうな感覚はありますか
全然出ると思います。
――夏の目標を教えてください
1万つながりで言えば、駅伝シーズン前の秋あたりに、27分台が8割くらいの力で、練習の一貫で出せるくらいの選手になろう、というのを花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)とも話したので、それを一つ目標にするために夏合宿は質も量も上げて、故障をしないようにやっていかないといけないと思いました。