日本選手権が今年も大阪・ヤンマースタジアム長居で開幕した。大会1日目には男女100メートルや400メートルなどの予選と、5000メートルの決勝が行われた。早大からは4種目に5人が出場。予選種目では早大選手全員が準決勝以上に駒を進めることはできず、男子5000メートル決勝に出場した2人も悔しい結果に終わった。
(記事 及川知世)
★昨年早大記録を更新した鷺は予選敗退に終わる 稲毛は棄権(男女100メートル)
昨夏の東京五輪代表が集結した男女の100メートル。早大からは女子100メートルに鷺麻耶子(スポ2=東京・八王子東)が出場した。一方、男子100メートルに出場予定だった稲毛碧(スポ3=東京学館新潟)は棄権した。
鷺は昨年の日本選手権100メートル予選で早大記録を更新しており、今年も活躍が期待された。しかし、スタート直後から児玉芽生(ミズノ)や青木益未(七十七銀行)らを相手に遅れをとる。後半巻き返したものの、12秒02で予選敗退に終わった。
鷺は大会3日目から行われるU20女子200メートルにも出場予定だ。今シーズン200メートルでは度々自己記録を更新しており、好調を維持している。今日の悔しさを晴らす走りに期待したい。
女子100メートル予選でゴールする鷺
(記事 加藤志保、写真 湯口賢人)
★2度目の大舞台、シーズンベストも決勝には届かず(男子400メートル)
男子400メートルには、今年男子短長ブロックから唯一の日本選手権出場者となった藤好駿太(スポ3=福岡・修猷館)が出場。今季学内トップの47秒05をマークしたが、決勝には届かず、2年連続の予選敗退となった。
藤好は、OBの伊東利来也(住友電工)らに先駆け、予選第1組に登場。今シーズン序盤は「前半スピードに乗り切れずにそのまま終わってしまうというレースが多かった」というが、このレースでは、45秒台の自己ベストを持つひとつ外側のレーンの川端魁人(中京大クラブ)を追うかたちで前半から積極的な走りを見せる。第3コーナーまで食らいつき、ホームストレートでも粘りを見せたが、最後は実業団選手らにかわされ、4着でフィニッシュした。
昨年はシーズン序盤に46秒台のベストを叩き出したが、今シーズン前半は47秒台中盤〜48秒台のレースが多く、「昨年のような勢いはない」と冷静に語る。しかし、今回の日本選手権ではシーズンベスト。「前半がかみ合ったのは良かった」と一定の成果も口にした。「この感覚を忘れないように」、秋に控える日本学生対校選手権に向け、夏に鍛錬を積む。
男子400メートル予選のレースを走る藤好
(記事 及川知世、写真 湯口賢人)
★初めての日本選手権は予選敗退 リベンジを誓う(男子1500メートル)
男子1500メートル予選には間瀬田純平(スポ1=佐賀・鳥栖工)が出場した。今回のレースは自身初の日本選手権であり、U20世界陸上への出場もかかった重要なものであった。序盤は順調に進めていたものの、終盤で失速。8着でレースを終えた。
内側レーンからスタートした間瀬田は先頭から4番目でレースを繰り広げる。2周目に入ってからは集団がペースアップし、集団が横に広がったものの、焦ることなく先頭との距離を堅持した。最終周では更にスピードが上がり、レースは混戦状態に。間瀬田は最後のカーブで、外側に弾き出され、内側レーンを走る選手に先行を許してしまう。ゴールまでの直線でスパートをかけたものの、余力が残っておらず、8着でフィニッシュした。
初めての日本選手権は苦い結果に終わったが、大学1年でこの舞台を経験できたことは大きな糧になっただろう。来年こそ、日本選手権で躍動する間瀬田の姿を見ることができるはずだ。
男子1500メートル予選、最後の直線を走る間瀬田
(記事 湯口賢人、写真 及川知世)
★伊藤と山口が出場も、日本トップレベルとの差を感じる結果に(男子5000メートル)
男子5000メートルには、2年連続となる伊藤大志(スポ2=長野・佐久長聖)、関東学生対校選手権(関カレ)にも出場の山口智規(スポ1=福島・学法石川)が出場。序盤、2人とも集団の中で落ちついてレースを進めるも、最後は日本トップレベルとの差を見せつけられ、伊藤は14分02秒60でゴール。山口も終盤に粘りをみせたものの、14分05秒47のタイムでのフィニッシュとなった。
本大会で世界陸上代表に内定した遠藤日向(住友電工)らを中心に進められたレースは、最初の1000メートルを2分42秒で通過。二人は集団後方に位置付け好機をうかがう。2000メートルを5分3秒で通過すると、すぐに集団がばらける。そこで実業団選手の作るハイペースについていくことができず、伊藤は第2集団後方、そして山口は第3集団へ。その後も、1000メートル毎のラップが2分42秒前後で推移するハイレベルなレースに対応することができず、さらに後退。「(後半に備えて)足に余裕を持たせることができなかった」という伊藤、山口ともに追い上げはならず。タイムもともに14分台と奮わず、悔しいフィニッシュとなった。
今大会で感じた日本トップレベルとの差と、各々の現状を今後のトラックレース、そしてリベンジを誓う駅伝シーズンへの糧にできるか。日本最高峰の戦いで「ベースは確実に上がってきている(伊藤)」、「やるべきことは明確(山口)」という収穫も得ることができた二人に注目だ。
男子5000メートル決勝でゴールする伊藤
(記事 戸祭華子、写真 及川知世)
※同時開催のU20日本選手権の結果は別記事にて掲載いたします。
結果
▽男子100メートル
予選
(7組3着+3)
稲毛碧(スポ3=新潟・東京学館新潟)棄権
▽男子400メートル
予選
(3組2着+2)
藤好駿太(スポ3=福岡・修猷館) 47秒05 (1組4着)
▽男子1500メートル
予選
(2組5着+2)
間瀬田純平(スポ1=佐賀・鳥栖工) 3分47秒97 (1組8着)
▽男子5000メートル
決勝
伊藤大志(スポ2=長野・佐久長聖) 14分02秒60(22着)
山口智規(スポ1=福島・学法石川) 14分05秒47(25着)
▽女子100メートル
予選
(5組2着+6)
鷺麻耶子(スポ2=東京・八王子東) 12秒02 (+0・8)(1組5着)
コメント
▽男子400メートル
藤好駿太(スポ3=福岡・修猷館)
――まず、今シーズンの調子からお聞かせください
今シーズンは、昨年ベストを出した静岡国際なども出場しました。ですが、前回ほどの記録が出なかったりだとか、全体的に昨年のような勢いはないと感じています。
――その原因はどこにあると考えていますか
あまりまだ分かっていないです。今回も47秒0台で走れたのですが、46秒台は出せずという感じで、微妙なラインで止まってしまうような調子という感覚があります。
――関東学生対校選手権(関カレ)では決勝進出とはなりませんでした。そこからの切り替えはどのようにしましたか
特に気持ち的には落ち込むタイプでは無いので、精神的に切り替えようと頑張ったところは無いです。レースプランとしては、関カレの時も心がけた前半から行くという所ができるような練習をしていました。今回のレースでもそこを念頭に置いて走りました。
――この大会に向けての調子はいかがでしたか
特別良いという感じではなかったのですが、前日練習の刺激でも思ったより動けているという感覚はありました。
――前半から積極的にレースを進められていました。レースを振り返っていかがですか
ひとつ外のレーンに川端さん(川端魁人、中京大クラブ)がいて、川端さんが前半から行くと言うのは知っていたので、前半からついて行けたら後半も流れに乗って行けるかなというのをレースプランとして持っていました。前半走ってみて、200通過したときにそれほど距離が開いていなかったのですが、300メートルを抜けたあたりで少し動きが止まってしまい、最後は47秒台になりました。
――シーズンベストですが、タイムを振り返ってどうですか
シーズンベストを出せたという点ではうれしいです。ですが、競技場も良いところなのでやはり6秒台に乗せたかったです。
――2回目の日本選手権ですが収穫を教えてください
前半から積極的に行くというのが今シーズンの課題点でした。昨年も少し実践をしていたのですが、今シーズン最初らへんのレースでは、前半は楽に行くという意識をしすぎて、前半スピードに乗り切れずにそのまま終わってしまうというレースが多かったです。そういう所からも今回は(積極性を)より意識しました。実際、前半200のタイムは今シーズンでいちばん良かったので、そこがかみ合ったのは良かったと思います。
――最後に、今後への意気込みをお願いします
今回、前半の入りは良かったので、この感覚を忘れないようにして、後半もしっかりもたせることが出来るような練習を全カレ(日本学生対校選手権)などに向けてしっかり積んでいきたいです。
▽男子1500メートル
間瀬田純平(スポ1=佐賀・鳥栖工)
――今日のコンディションとどのくらい練習が積めていたのかを教えてください
コンディション的には調子も上がってきて、練習も良い流れでできていたので、結構自信があったのですが、ラスト勝負になるとシニアの選手たちとスピードやキレの違いを見せつけられました。
――今回のレースの目標順位とタイムは
今回は決勝進出が目標で、予選でハイペースになると予想していたので、タイムは(3分)45秒を切りたいところでしたが、レースになってみると2周目からラップが落ちてしまい、スローペースな展開で流れてしまって、ラスト勝負に持っていかれたので、ペースを自分が出て上げられるレースができていれば理想的でしたが、力不足でした。
――どのようなレースプランを想定していましたか
ハイペースになると予想していたので、ハイペースのままうまく流れていって、何とか着順ギリギリかプラスで上がれれば、理想的な感じだったのかなと思います。
――序盤では余裕を感じていましたか
そうですね。ラスト200メートルのところまで、行けるかなと思っていたのですが、ラスト100メートルに差し掛かるあたりで足が重くなってしまい、追い付けなかったというのもありました。位置取りは良い感じでしたが、1200メートルを通過して、一気にペースが上がった際に、置いていかれたので、そこに付いていければ、順位は変わっていたのかなと思います。
――社会人とのレースでしたが、収穫や課題はありましたか
大学1年生で日本選手権を経験できたのは今後の練習で生きてくると思いますし、日本トップクラスの選手たちの強さを肌で感じられたので、自分もそこに近づけるように練習で頑張っていこうと思いました。来年は標準を切らなければ出られませんが、来年も必ず戻ってきて、リベンジできるようにしたいです。
――U20世界陸上の標準切りも意識されましたか
U20は決勝に行くことができたら、あるかなと思っていましたが、落ちてしまったので、U20を狙える位置までまだまだだなと感じたので、また練習を頑張っていきたいです。
――初の日本選手権でしたが、緊張などはありましたか
緊張は本当になくて、初めてにしては落ち着いて、レースに入ることができたのですが、いざスタート地点に立ってみると大きな舞台だったので、少し怖いというか大丈夫かなという心配はありました。
――次回に向けての目標をお願いします
まず1500メートルをメインにやることは今シーズンでは(もう)ないと思うので、ここから練習で距離を増やしていき、5000メートルや1万メートルのような長い距離に対応できるようにしていきたいです。
▽男子5000メートル
伊藤大志(スポ2=長野・佐久長聖)
――関東学生対校選手権(関カレ)が終わってからの練習で意識していたことはありましたか、切り替えはどのようにしましたか
関東インカレは練習が積めていない中での結果だったので「まあこんなものか」とすぐに切り替えることができました。あまり間の期間がなかったので練習は欲張らずに必要なことにのみ集中して行いました。
――調子は上がっていましたか
日ごとに調子が上下してコンディショニングが比較的難しかったのですが、ここ数日はかなり調子が上がっていました。
――どのようなことを目標に掲げて挑みましたか
先頭集団で勝負すること、自己ベストの更新です。
――レースプランは立てていましたか
前半は集団の中で様子を見ながら3000メートル以降に前に移動するというところです。
――後半、集団がばらけてからの走りはご自身ではどう評価していますか
本来であればそこまでに余裕をもち前に着いていかなければいけない状況でしたがそこまでに足に余裕を持たせることが出来ませんでした。強さが必要なレースだっただけにもったいないし悔しいです。
――結果について率直にどう感じていますか
前半に位置取りで必要以上に消耗させてしまいました。反省すべきはGGN(ゴールデンゲームズinのべおか)での成功体験に執着しすぎてしまったことだと思っています。やはり記録を狙う試合と順位の着く試合では勝手が違うので、やはり勝つべき試合で勝ちきれることが大切だと実感しました。
――昨年から成長したと感じる部分はありましたか
強いて言うなら、悪くても14分フラット〜1桁でまとめることができているのでベースは確実に上がっていると感じています。
――今後への意気込みをお願いします
もう一度体と脚を作り直してトラックでもロードでも勝ちきれる強さを身につけたいです。
山口智規(スポ1=福島・学法石川)
――最近の調子はいかがでしたか
調子自体は良かったですが、練習が積めていなかったので不安な状態でした。
――関東学生対校選手権(関カレ)が終わってからの練習で意識していたことはありますか
関カレの悔しさを忘れずに、日本選手権に向けて高い意識で練習に取り組むことができていました。
――この大会はどのようなことを目標にして挑みましたか
念願叶っての出場でしたが、記念で出るだけではなく、後悔のないように積極的に勝負していこうと思っていました。また、あんなにすごい選手たちと走れることを楽しもうと思って臨みました。
――ご自身の走りを振り返って率直にいかがですか
全く後半は勝負できませんでしたし、出場した大学生の中で最下位と、反省しなければならない点が多いレースでした。
――結果についてはどう捉えていますか
もちろん歯が立たなかっことはとても悔しいですが、日本トップとの差を肌で感じ、現状を把握できたことはとても良い経験ができたと思います。
――初のシニアの日本選手権だったと思いますが、終えてみて感想としてはいかがですか
日本選手権までの過程を見ると、後半苦しいレースになることは分かりきっていたことだったので、現実は甘くないことを痛感させられました。しかし、あのメンバーの中で走り、感じたことはこれからの取り組みにつなげていかなければならないと思いました。
――今後への意気込みをお願いします
関東インカレ、日本選手権と、覚悟や意識の差を感じさせられ、自分をもっと変えていなければならないと感じました。やるべきことは明確になっているため、少しずつトップレベルの選手との差を埋められるように頑張っていきたいと思います。