【連載】駅伝シーズン直前特集 第2回 太田直希×中谷雄飛

陸上競技

 昨年、1万メートルで27分台を出した太田直希(スポ4=静岡・浜松日体)と中谷雄飛(スポ4=長野・佐久長聖)。最上級生として、またエースとして、チームを引っ張る2人の現在の様子に迫った。

※この取材は9月8日に行われたものです。

「雰囲気的に絶対怖いなと思っていた」(中谷)

笑顔を見せる太田(左)と中谷

――お二人は一緒に取材を受けるのが初めてということで、まずは他己紹介をお願いします

中谷 一番僕が苦手なやつですけど…。直希はオンオフの切り替えがうまいかなという感じです。僕は練習でそこまでぱちっと切り替えるタイプではないので。

太田 中谷は普段結構マイペースでのんびりな感じですけど、陸上に関しては強気な部分が見えますね。そこはギャップがあるかなと思います。

――普段の太田選手はいかがですか

中谷 前までのイメージだと、結構ゲームをしているイメージがありました。今は、半澤(半澤黎斗、スポ4=福島・学法石川)と直希が同じ部屋なので、普段の生活は半澤の方が知ってると思うんですけど、イメージはゲームやってるという感じですね。今でもあまり極端には変わってないです。

太田 ゲームはやってるにはやっていますが、最近はそんなに、めちゃくちゃというわけではないです。ずっと同じゲームしていると飽きますよね。ゲームにも陸上と一緒でモチベーションがあるんですよ。モチベーションないときはゲームでも面倒くさいってなります。

――ゲームが面倒になったときは何をしているんですか

太田 YouTubeを見てます。最近はローランドにハマって、ずっとローランド見ています。僕らからは考えられないこと言ってるんですけど、そういう人間もありなのかなって。

――中谷選手は時間があるときはどんなことをしていますか

中谷 YouTubeを見ることもあれば、寝てることがほとんどかなという感じですね。あんまり外に出たりとかはしないので、今のコロナの状況とか以前に、出ないんですよ(笑)。

太田 ずっと部屋真っ暗ですよ。

中谷 ずっと引きこもって休みは大概寝てますね。無限に寝れます。

――お二人の関係性としては、初めて会った時と印象は変わりましたか

中谷 はい。高校の時に初めて見たんですが、絶対怖いなと思いました(笑)。半澤とか千明(千明龍之佑駅伝主将、スポ4=群馬・東農大二)は話したことありましたが、直希は高校の時は一回もしゃべってないんですよ。雰囲気的に絶対怖いなって(笑)。でも大学に入ってからはイメージが壊れました。今は変なイメージは全然ないですね。

太田 怖いとはよく言われるので、もう慣れましたけど。高校の時は怒らないといけないポジションで、大学入ってもそういうポジションになっていたので、そう捉えられても仕方がないとは思います。でも4年目になってすごく優しくなりましたね。

――中谷選手に対してのイメージの変化はありましたか

太田 僕も高校の時は一方的に知ってはいましたが、そんなに話したこともなかったので、どういう人か分からなかったです。でも結構カリスマというか、ポテンシャルを持ってるなという雰囲気はありました。それは今も変わらずすごいなと思います。

――お二人がよく一緒にいる選手はどなたですか

太田 僕は半澤とよく一緒にいます。

中谷 僕は小指(小指卓也、スポ3=福島・学法石川)ですかね。小指の部屋にずっといます(笑)。

――この2人で一緒にいることは少ないんでしょうか

中谷 そうですね。みんなで集まるときはそうなんですが、千明とか半澤とか僕らも、自分のリズムで動くことも多いので。みんなそんな感じです。

「焦っていた部分があったのかな」(太田)

――続いてこれまでのシーズンを振り返って、中谷選手はいかがでしたか

中谷 左足のアクシデントがずっと続いていて、自分の力を出し切れたレースがあまりなくて、不完全燃焼だった印象があります。夏合宿入ってからまともに走れるようになったという感じです。箱根(東京箱根間往復大学駅伝)が終わって、学生ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)があったので、その準備をしたくて練習量を一気に増やしたら脚が痛くて。そういう脚の痛みがあってレースを繰り返していて、関東インカレ(関東学生対校選手権)で左足肉離れみたいになってしまいました。1カ所だけではなく左足を何カ所かという感じですね。そういうのがずっと続いていました。

――それでは100パーセントの練習はできていなかったのでしょうか

中谷 できるときとできないときの差が結構あり、脚の状態と相談しながら結構ギリギリを攻めてやっていました。今は比較的順調というか、夏合宿に入る前に治せるところまで治したので、それがよかったかなと思います。

――あまり万全ではないときは、痛みと相談しながらのレースだったのでしょうか

中谷 アクシデントがなければ十分勝負できるかなという感じでは毎回臨んでいたのですが、レースが始まるとやっぱり痛みが出るのもあって、なかなか万全の状態でレースを終えられないことが多かったです。

――太田選手は、レースで練習の成果が出せないことが続いてましたが、振り返っていかがですか

太田 僕は去年うまくいった部分があって、そこで自分も結果を出さなければいけないと焦っていた部分があったと感じています。練習の溜めが大事なのですが、うまく溜めが作れなかったり、目の前の試合に合わせようと急ぎすぎて、試合を捨てるではないですけどそこができず、調子の悪さをずるずる引きずってしまったかなと思います。

――以前は、関カレや日本学生対校選手権(全カレ)で表彰台に上がることを目標にされていましたが、その点に関しては

太田 入学した当初から目標には掲げていて、それをずっと目標にやってきたつもりではありました。でも4年目になってなかなかうまく走れないという状況で、自分の中でも焦っていましたし、悔しさもありました。

「(合宿の)手応えは非常にあった」(中谷)

ホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会に出場した中谷

――所沢から妙高までの合宿はそれぞれどんなことをテーマに取り組んできましたか

中谷 所沢の合宿では、僕は立ち上げの段階だったのでスタートだけ慎重にしつつ、走り込みなど練習量を少しずつ上げていき、長期的な練習をしていました。菅平と妙高に関してはアップダウンがあったので、それを使いながらしっかり走り込むことをテーマに練習していました。あとは、なるべく起伏の多いコースを使いながら脚づくりなどを意識して練習していました。

太田 僕は所沢合宿がケガ明けで、そんなに量をたくさん積めるわけではなかったのですが、所沢では暑さに慣れる意味で、暑い時間に運動していました。菅平からは、アップダウンのあるコースや芝生などでちゃんと脚づくりをしようと思い、二次合宿から走行距離などを意識し始めて、二次合宿の前半はかなりいい感じで練習できたので、充実した合宿ができたのではないかと感じています。

――実際の練習の出来や手応えはどうでしたか

中谷 手応えは非常にあったと思います。特に菅平や妙高の合宿は距離走が多く、30キロを超える距離走を3回くらいしました。(それまで)僕が30キロを超える距離走をしたのが大学1年生の時だけで。3年間で1回しかしていないことを今年は3回もできたので、充実していたと感じています。今までは20キロくらいの距離走でも脚が疲れていたのですが、最後は30キロまで走ってもしっかり脚が残っている状態で終わることが多かったので、取り組みの成果が少しずつ出ていると実感できました。

太田 僕はケガ明けだったのですが、所沢でいい練習を積めたのか、菅平に入っても比較的走ることができました。ポイント練習もできたので、比較的早めに復帰できたことにはかなり満足して、充実した合宿になったと思います。僕も距離走が久しぶりだったのですが、35キロ走った後も余力があったことと、最後にペースを上げることができたことに関しては、昨年、おととしよりはいい練習ができたと感じています。

――所沢に戻ってきてからはどんな練習をしていますか

中谷 少しずつスピードを取り戻していく段階に入っています。僕は全カレの5000メートルに出場する予定なので、それに向けて少しずつ、スピードを出しつつも距離はある程度保って練習している状況です。

太田 僕はインカレに出ないので、次の月末の記録会とやはり出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝)に向けてまだ溜めを作る時期、脚づくりをする時期です。スピードを出しつつ、距離も稼ぎつつという感じです。

――現在の調子から、秋以降への手応えはありますか

中谷 良くも悪くも、いつも通りという感じです。一次、二次の合宿で走り込んだ疲労が少しずつ取れてきて、ようやく体がシャキッとしてきました。合宿の疲労もあってスピードがなかなか出せなかったのですが、今は出せるようになってきました。インカレまではあと10日くらいしかないですが、調子はここから上がってくるのかなと感じています。まだまだ上り途中のような感じですが、インカレではしっかり表彰台を目指して頑張っていきたい、というのが目先の目標の一つでもあります。

太田 万全ではないですが、走れば走れると思います。出雲駅伝まであと1カ月ちょっとで、チームとしては最初の駅伝であり、3冠という目標を掲げている以上、一つ目の駅伝から全力で戦わないといけないと思っています。そこにピークが合うよう、練習をうまく計画していきたいです。

――今個人的に課題に感じている部分、強化している部分はありますか

中谷 今まで少しスタミナに不安な部分があったのですが、それを克服するために今年はずっと取り組みを変えながらアプローチして、少しずつ克服できているかなと感じています。ここからもう1、2段階上のステージに上がるためには、もっとスタミナが必要だと思うので、意識して取り組んでいます。なので1回のジョグの量を多めにしながらアプローチしています。

太田 出雲駅伝は短い距離でスピードが求められると思うので、スピード持久力というか、(1000メートルを)2分45秒くらいで押していけるような力が必要だと思っています。スピードを出し始めてはいますが、もっと上げていかないといけないので、スピード練習では余裕をもって走ることや、全力を出さないといけない練習以外は腹八分くらいで余力を作りつつ、うまく調子を合わせていくような練習を今はしています。

「結果で恩返ししたいという思いを背負って、全力で走りたい」(太田)

3月末の早大競技会で5000メートルを走る太田

――お二人から見て、今のチームの雰囲気や状態はどうですか

中谷 ケガや故障で大きく出遅れている選手があまりいないですね。例年であれば何人か長期離脱していたり、復帰途中の選手がいたのですが、今年はそういう選手があまりいないです。そこはすごくいい材料というか、いい雰囲気につながっているかなと感じています。ここから出雲駅伝に向けてやっていくぞという雰囲気があると感じています。

太田 昨年だと、千明がケガで走れなかったり、誰かが走れなそうだから代役を立てたりという状況だったのですが、今の時点では走るべき人が走っているので、例年以上にポイント練習などを見ていても雰囲気は上がっているなと感じます。ここからもっともっと、チームの力、団結を高めていかないといけないと感じています。

――今調子がいい、練習が積めていると思う選手はいますか

中谷 僕は伊藤大志(スポ1=長野・佐久長聖)くんを推します。同じ高校なので(笑)。きちんと継続して練習もできていますし、僕の1年の頃の練習量より多いです。現段階での僕の練習量よりも多いです(笑)。すごくタフというか、練習量もきちんとこなして、かつポイントもしっかりやっているので、すごく秋が楽しみな選手だなと思っています。

――夏は距離を踏む練習が多かったと思うのですが、そういう練習も行えているのですか

中谷 そうですね。チームでまとまってやることが多いので、そういう流れをうまく利用してきちんと練習しているイメージです。

太田 僕は辻(辻文哉、政経2=東京・早実)で。辻は今いいですよ、多分(笑)。辻は責任感がありますし、やるときはかなりしっかりやっているイメージがあるので。この合宿も結構距離を踏みつつ、ポイントなども積極的にやっていますし、声出しもしています。辻の中でも手応えはあるのではないかと思っているので、秋の駅伝シーズンに期待しています。

――今後の駅伝シーズンに向けて、現時点で走りたい区間はありますか

中谷 そうですね…。出雲は最終6区で、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)も最終8区。

太田 箱根も最終10区?(笑)

中谷 箱根も最終10区。

一同 (笑)

中谷 箱根は1から5区までだったらどこでもいいかなという感じですね。出雲に関しては、やっぱり一番自分の力が発揮できるのは10・2(キロ)の区間かなというのと、単独走が比較的得意なので6区かなと。全日本に関しては、僕は3年連続3区を走っていて、3区ももちろん重要ではあるけど、今年は長い距離でしっかり勝負できるくらいにはならないとだめだよねと、ずっと話をされてきた部分はあったので、全日本は7、8(区)がベストかなと思っています。

――最高学年になり、駅伝に対する思いは強くなっているのでしょうか

中谷 駅伝は駅伝で楽しいなと思いますし、せっかく今年狙えるチャンスがあるのに狙わないというか、消化試合みたいに終わらせるのはどうなのかなと思っていて。勝てるチャンスがあるなら、やれるだけのことをやって臨みたいというのはあります。高校時代も最終学年の時に高校駅伝(全国高校駅伝)で優勝したのもあって、大学に入ってからも駅伝で勝ってみたい思いもあったので、今年は今までより気合が入っていると思います。

――太田選手は現時点で走りたい区間はありますか

太田 僕は希望区間が特にないので、任された区間を全力で走るだけですね。

――箱根では往路、復路どちらがいいなどあるのですか

太田 できれば往路がいいです。

中谷 僕もそうですね。チームの主力として見られていると思っているので、往路の方が、強い選手が集まる中でしっかり結果を残さなくちゃいけないという思いがあります。また、自分のところでしっかり流れを作って復路につなげないといけないのかなと思うので、そういうのも含めて往路ですね。

――中谷選手は全カレに向けて、目標や意気込みをお願いします

中谷 全カレはうまくいかないことが多くて、結果が残せていないので、今年はしっかり結果を残せるよう頑張りたいと思っています。欲を言えば、しっかり表彰台を狙って、先頭争いができるようにしたいです。

――最後に、これからの駅伝シーズンに向けて、個人の目標と意気込みをお願いします

中谷 まずはしっかり3大駅伝で区間賞を獲得したいのが一つと、自分の区間で良くも悪くもしっかり流れをつくって加速させる走りができたらいいなと思っています。しっかり見せ場をつくれるように、ちょっとでも多くテレビに映れればいいかなと思って頑張ります。

太田 最後の駅伝なので、区間賞争いをして、チームの優勝に貢献したい思いがあります。このチームで4年間お世話になったので、相楽さん(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)はじめ駒野さん(駒野亮太長距離コーチ、平20教卒=東京・早実)などいろいろな方にお世話になったので、やっぱり最後だからというのはありますが、結果で恩返ししたい思いもあります。そういう思いを背負って全力で走りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 朝岡里奈、堀内まさみ)

和やかな雰囲気で進んだ対談。写真撮影も笑顔で終わりました!

◆太田直希(おおた・なおき)(※写真左)

1999(平11)年10月13日生まれ。170センチ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部4年

◆中谷雄飛(なかや・ゆうひ)

1999(平11)年6月11日生まれ。169センチ。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部4年