夏前最後の実戦は明暗分かれる結果に

陸上競技

 東京が真夏日を迎える頃、比較的涼しい気候である北海道を舞台に開催されるのが、ホクレン・ディスタンスチャレンジ。道内計5箇所で順々に開催されるこの大会。今年は北見大会に中谷雄飛(スポ4=長野・佐久長聖)が、千歳大会には中谷を含む5人が出場した。北見で足を痛めた中谷は千歳を途中棄権。一方、菖蒲敦司(スポ2=山口・西京)は唯一自己ベスト更新を果たした。

(記事 布村果暖)

★中谷、アクシデントに苦しむ(北見大会 男子5000メートル)

 チーム内で唯一、北見大会にエントリーしたのは中谷。短期間に2大会にエントリーした意図として、1万メートルを見据えて「安定して高いアベレージを出せるように」と語った。前週の3000メートルで自己新をたたき出し、狙い通りの好走の気運も高まっていたが、この北見のレース中盤に他選手と接触するアクシデントが発生。不運にも、痛みに耐える走りに終始した中谷は、自己記録からも大きく離れたタイムでレースを終えた。

  イエゴン・ヴィンセント(東国大)が速いペースで好記録をアシストする展開になると、中谷もその流れに乗り、前方で走る。しかし、2000メートルを過ぎたところでアクシデントが発生。他選手と足が絡まり、大きく体勢を崩してしまう。ここで「気持ちが切れてしまった」と振り返る中谷は、そのアクシデントによる痛みを感じながら走ることに。大きくペースダウンすることはなく、何とかゴールまでたどり着いたが、タイムは13分51秒13と「中途半端」(中谷)な結果に終わった。

 昨冬1万メートルで27分台を出し、今トラックシーズンも学生界を代表する選手として活躍が見込まれた中谷。しかし、今大会もそうであったように、失敗とまでは言えないまでも、「不完全燃焼」や「最低限」の走りとレース後に語る場面が多かった。そんな中谷が次に見据えるのは、日本学生対校選手権(全カレ)である。1カ月以上間が空くことになるが、最後の対校戦、そしてその先にある駅伝シーズンに向けてまずは不安材料を消し去り、立て直していきたいところだ。

(記事 青山隼之介)

★北海道で『熱い』レース! 『勝負師』菖蒲が1着ゴールで自己ベスト(千歳大会 男子5000メートル)

組1着でゴールする菖蒲

 まるで沖縄のような強い日差しが照りつけた北海道・千歳。うだるような暑さに多くの選手が苦しめられる中、それをはねのける熱いレースを見せたのは菖蒲敦司。5000メートルのラスト1周で強烈なスパートをさく裂させ、ダントツでゴール。自己ベストも更新し、トラックシーズンを充実した内容で締めくくった。 

 千歳大会男子5000メートルに、早大からは5人の選手が出場した。最初に登場したのは菖蒲。スタート後、集団中央で息を潜めて淡々とレースを進めると、2800メートル付近で4番手に浮上する。中盤は集団のペースが落ちたものの、「僕自身もきつかったので、集団が落ちてくれたのは良かった」と必死に食らいついた。そして、ラスト400メートル手前で先頭に立つと、「今シーズン極めてきた」スパートをさく裂。鐘が鳴った瞬間から他を寄せ付けない。そのままゴールまで駆け抜け、13分52秒46で自己ベストも更新した。「1番で帰ってくる」。菖蒲は見事に有言実行し、『勝負』強さを存分に示した。 

 一方、他の選手は苦しい走りに。辻文哉(政経2=東京・早実)は集団後方に、井川龍人(スポ3=熊本・九州学院)は前方に位置取ったが、中盤で集団からは離れてしまう。伊藤大志(スポ1=長野・佐久長聖)は落ち着いてレースを進めていたが、「(3000メートル以降の)ペースアップに対応できなかった」。それぞれ苦しい展開となり、不完全燃焼に終わった。また中谷は4000メートル手前でレースをやめ、足を気にするそぶりを見せた。

 この試合をもって、トラックシーズンは一旦幕を閉じる。3000メートル障害で、レースの度に記録を更新する菖蒲をはじめとして、春先からさまざまな活躍が見られたシーズンであった。これからは鍛錬の夏に入る。さらなる強さを身につけた先に、また『熱い』レースが待っている。

(記事 朝岡里奈、写真 布村果暖)

結果

【北見大会】

▽男子5000メートル

中谷雄飛 13分51秒13(A組10着)

【千歳大会】

▽男子5000メートル

菖蒲敦司 13分52秒46(D組1着)自己新記録

伊藤大志 14分08秒83(A組22着)

井川龍人 14分14秒88(B組22着)

辻 文哉 14分23秒26(C組18着)

中谷雄飛 途中棄権

コメント

【北見大会】

中谷雄飛(スポ4=長野・佐久長聖)

――練習再開はいつでしたか

 ちょうど6月1日から走り始めました。ですが、その時も9割方治ったという感じで、完全に癒えたわけではありませんでした。少し走りながら、回復していった感じです。

――現在は完全に癒えている状態でしたか

 はい。ですが、レース中にいろいろアクシデントがあって。走っている時に、ほかの選手と足が交錯した場面があって、かかとをがっつり踏まれるかたちになってしまいました。それで体勢を崩して、転倒しかけたなかで、うまく持ち直そうと思いましたが、左足に負荷がかかってしまって、それで痛みが出てしまいました。今も、左のふくらはぎが痛くて、千歳も様子見てどうしようかという感じです。

―2つエントリーした意図は

 記録をしっかり出すことももちろんですが、安定して高いアベレージが出すことも目標にしていて、今後1万メートルで結果を出すためには、5000メートルでの走力向上に加えて、それを揃えることも目標にしていました。1万メートルを見据えて、という感じです。

――先週の3000メートル7分台は、どのような影響をもたらしましたか

 もともと練習量がそこまで積めていなかったので、どうなるかなという感じでしたが、思ったよりも走れて、目標も最低限で達成できたので、感覚としては悪くなかったという感じです。ですが、振り返れば疲労も少し残ったのかなと思います。もちろん抜いてきたつもりでしたが、芯の部分でまだあったかなと、北見のレースを終えてみて感じました。

――当日の現地のコンディションは

 気温は少し高めでしたが、走りやすいコンディションで、久しぶりにいい気候のなかで走ることができました。

――北見での目標は

 まずは最低限自己ベストを更新できればいいなと思っていました。ですがアクシデントがありましたし、最後は追い込むよりかは走り切る方向にシフトチェンジしたので、タイム的にも中途半端でしたし、出し切れたレースではなく、不完全燃焼でした。もったいないなと思っています。

――余裕はどこまでですか

 2000メートルぐらいまでです。ですが、そのあたりで交錯してしまいました。スパイクで皮膚をグサッといかれてしまったので、そうした外的な痛みと転倒しかけたことによってふくらはぎを痛めたというアクシデントがあったので、自分のリズムを崩してしまいました。気持ちも切れかけてしまい、もったいなかったです。そこも含めて自分の実力が不足してしまいました。後半は、その意味で余裕はなかったです。

【千歳大会】

菖蒲敦司(スポ2=山口・西京)

――今日のレースの目標は何でしたか

13分45秒切りというのが目標だったのですが、会場に入ってみたらかなり暑かったので、とりあえず1番で帰ってくるというのを目標にしました。

――組の中での順位は意識していましたか

そうですね。

――レースプラン、位置取りは考えていましたか

後半にかけて前に上がっていって、どうしてもラスト1000(メートル)の勝負になると思っていたので、ラスト1000までにはスパートできる位置に位置取ってスパートしようというのを心がけていました。

――連戦でしたが最近の調子はいかがでしたか

連戦だったので足を痛めたりしていたのですが、いい感じに練習も継続できていたので、それは良かったです。

――3000から4000メートルで集団のペースが落ちましたが、そのあたりはいかがでしたか

僕自身もきつかったので、集団が落ちてくれたのは良かったです。逆にあそこでそのまま押されていたら、自分も離れていたと思うので、集団が落ちてくれたのは僕にとって良かったです。

――暑さも影響しましたか

そうですね、かなり暑かったのと、日本選手権から連戦が続いて走り込めていなかったので、3000から4000はもともとの課題ではあったのですが、そこが落ちるという形にはなってしまいました。

――最後のペースアップは想定通りいけましたか

相楽さん(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)からはラスト800からと言われていたのですが、足が残っていなくて、ラスト400からになってしまいました。今シーズン極めてきたスパートが最後見せられたので良かったです。

――タイムと結果についてはどのように捉えていますか

タイムはもうちょっといきたかったなという思いはあるのですが、暑い中だったのでしょうがないと思います。順位はしっかり1着で帰ってこられたので、自信にはなりました。

――次の目標は駅伝ですか

次のメインは出雲(出雲全日本大学選抜駅伝競走)になってくると思います。

――秋以降の駅伝への意気込みをお願いします

とりあえず連戦だったので、いったん休ませてもらって、8月入ったくらいから足腰を作り直します。出雲では6人という少ない人数ですが、そこに割って入れるような力をつけて、チームの優勝に貢献できるように頑張りたいです。

――夏合宿での目標はありますか

いったんは落としたいなという気持ちがあるので、とりあえずやりすぎないというのを根底に置いて、そこから余力がある範囲で少しずつやっていこうかなと思います。

伊藤大志(スポ1=長野・佐久長聖)

――レースの目標は

一番はやはり自己ベストを更新できればなと考えていたのですが、一週間くらい前からあまり調子は良くなかったです。なので現実的にはいければ13分40秒台、セカンドベストくらいまでいきたいなと思っていました。あとだいぶ速いペースになると思っていたので、できるだけそれについて経験を積めればと思っていました。

――最近調子はあまり良くなかったのですね

ここ一週間くらい所沢もだいぶ暑くなってきて、足の調子というより体全体の調子が良くなかったなと思います。

――高校時代まで過ごした長野とはだいぶ違うのでしょうか

そうですね、だいぶ違うと思います。7月中旬でもこんなに暑くなくて、所沢の暑さにはだいぶびっくりしました。

――レースについて振り返っていかがですか

いつもは突っ込んでできるだけ体を動かして、レースの流れに乗りながら前に前にというレースをしていました。しかし今回は2000(メートル)までは落ち着いて、後ろの方から動いていこうという感じでした。実際それをできて、レースの展開的にもレース勘は100パーセントの状態まで戻ってきているかなと思ったのですが、3000まで8分11秒くらいで予想通りでいけたのですが、そこからは集団のペースアップに対応できず、そこが課題かなと思います。

――体が動かなかったのですか

そうですね、走りがそのペースに対応できないというか、残り1600くらいからもがくような感じになってしまいました。やはり基礎的な体力だったりフィジカル面も、大学に入って少しずつブレない走りはできてきていると思っているのですが、自分の求めるタイム相応な体はまだできていないかなと思います。

――結果についてはどう捉えていますか

レースの展開としての評価はこんなものなのかなと、相対的に見たらこのレースは内容的にレベルアップできたのかなとは思います。ですが絶対的に見るとやはりパーソナルベストには及ばない走りが続きましたし、今回も3000以降がもたないという不甲斐ないレースになったので、そこはまだまだ乗り切れていない、100パーセントを出せる状態にはできていないなと感じます。

――これから夏合宿も始まりますが、秋以降に向けてどう過ごしていきたいですか

夏はやはり練習量を上げていきたいのが一番です。ここまで段階的に練習量を上げている状態なので、そこからもっと、今回の5000メートルのように自己新を狙えるようなレースに対応できる体だったり、走力といった体力面を夏合宿でつけていきたいです。またシーズン通してずっと課題になっているフィジカル面も鍛えていきたいなと思います。