小竹、田中がともに自己ベスト更新も「最低限の走り」/デンカチャレンジ

陸上競技

 6月6日に開催された日本グランプリシリーズの新潟大会、デンカアスレチックスチャレンジカップ(デンカチャレンジ)。同日に行われていた布勢スプリントでの男子100メートル日本記録誕生に陸上界が沸く中、デンカチャレンジには男子走幅跳の橋岡優輝(富士通)などの有力選手が集い、盛り上がりを見せた。早大からは小竹理恩(スポ4=栃木・佐野)と田中天智龍(スポ2=鹿児島南)が出場。両者とも先月に続いて自己ベストを更新したが、目標としていた日本選手権出場の基準となる記録には届かず。悔しさの残るレースとなった。

 

4月の東京六大学対校大会400メートル障害でハードルを越える田中

 まず男子400メートル障害に登場したのは田中。「あまり(調子が)上がってきていなかった」という中でも好スタートを切る。「5、6、7台目でタイムを落としてしまった」と中盤の走りに課題をのぞかせながら、ラスト100メートルでは大きくスピードを落とすことなく2着でゴール。記録は50秒97と、わずかながら自己ベストを更新した。だが目標としていたタイムは日本選手権申込資格の50秒50。「最低限のことはできたが、ゴール後も悔しさしかなかった」と振り返った。

 

六大学対校大会で400メートルを走る小竹

 続いて男子400メートルには小竹が出場した。2週間前に行われた関東学生対校選手権で同種目3位に入った小竹。持ち味である前半の大きな走りでリードするが、200メートルから300メートルでは「ピッチを上げすぎてしまった」と力みが出てしまう。それでも最後はストライドを伸ばし、46秒92でフィニッシュ。自身初の46秒台をたたき出した。走りについては「大崩れすることなく1周をまとめられた」と及第点をつけたものの、こちらも目標だったのは日本選手権が確実に狙える46秒7台。「手放しで喜べる記録ではない」と肩を落とした。

 自己ベストを更新しながらも、全く浮ついた様子を見せなかった小竹と田中。しかし短いスパンでもレースごとに自己記録を塗り替え、確実に成長している姿が見られる。また、グランプリシリーズというハイレベルな大会で走れたことについても「競技場を歩いているだけで楽しかった」(田中)、「出場した中で最もレベルの高い大会で、普段と違う緊張感の中でできた」(小竹)と有意義な経験となった。地に足をつけ、二人はさらに上を目指し続ける。

(記事 朝岡里奈、写真 布村果暖)

結果

▽男子400メートルグランプリ タイムレース決勝

小竹理恩 46秒92(1組3着)自己新記録


▽男子400メートル障害グランプリ タイムレース決勝

田中天智龍 50秒97(1組2着)自己新記録

コメント

小竹理恩(スポ4=栃木・佐野)

――最近の調子はいかがでしたか

関東インカレ(関東学生対校選手権)で結構疲労がきていて。足というよりは全身という感じだったのですが、少し休んで動き始めたら走りの調子自体はそこまで大崩れしていなかったので、同じような感じでレースできるかなと思っていました。

――レースの目標は

最低46秒台で、46秒7台以下が出せればいいかなと思っていました。日本選手権の参加が24人なので、そこに入れるのが大体7台かなと。

――200メートルと400メートルにエントリーされていましたが、400メートルに絞った理由は

タイムテーブルがはっきりしていなくて、2日間に分かれていたら200メートルも出たいなと思っていたんですが、競技が隣り合っていたので、本種目である400メートルを優先しました。

――200メートルに出場する目的というのは

練習の一環というわけではなく、200も記録を狙いたくて、どこかで20秒台を出したいと思っています。

――実際のレースを振り返っていかがですか

流れとしては、想定範囲内というか及第点くらいかなと思います。

――その中でも良かった点は

特に大崩れすることなく1周をまとめられている点は、再現性はすごく高く、同じようなレースが何本もできているなという印象はあります。

――逆に改善したい点はありましたか

今回は少しピッチが上がりすぎていた感じがしたので、余力という点では、ラスト100メートルにもう少し余力があったら良かったかなと思っています。そのためにはもう少しストライドで前半から300(メートル)地点までを楽にいくことが重要だったかなと思っています。

――ピッチが上がりすぎていたというのは

200から300のコーナーのところで。関東インカレの決勝ではそこで逆にピッチが落ちてしまったことで先行を許したので、それを改善したくて。レースに反映はできたのですが、いっぱいいっぱいまでとはいかずとも、いい流れでラスト100メートルいくことはできなかったかなと思います。

――絶妙なバランスが必要な区間なのですね

そうですね、そこは少しやりすぎたというか、微妙なところなので、少し必要以上だった部分もあるかなと思います。

――今後課題となってくるのはやはり200メートルから300メートルの部分になるでしょうか

そうですね。そこのレースをちゃんと固めるのを含めて練習していけたらいいかなと思います。

――タイムについてはいかがですか

あのコンディションならばもう少し、46秒中盤くらいまで出したかったなというのは思うところでした。

――46秒台が出た喜びはあまりなかったのですか

逆に今になってしまったなという思いはあります。過信しているつもりはなかったですが、特に今シーズンはいつ出ても(いい)という状況ではあったので。ベストが出せたというのはひとまずいいかなとは思うのですが、手放しで喜べる記録ではないなというのも思っています。

――グランプリシリーズの出場については

去年北九州(北九州陸上カーニバル)に出たのですが、400メートルでグランプリに出たのは初めてでした。それとデンカチャレンジは、200、400、ヨンパー(400メートル障害)で日本選手権に決勝に残ったり、代表になっている選手が多く出場している大会で、中でも400メートルは僕が今まで出場した中で最もレベルが高い大会だったので、普段とは違う緊張感があったなというのを、今回初めて経験して思いました。

――普段はあまり緊張されないのですか

緊張は元々しますが、楽しもうとか、やってきたことを出そうと思考を転換しています。でもグランプリシリーズで自分よりも格上の選手がたくさんいる中で、レース前の振る舞い方やウオーミングアップの時点から、自分をどう出すかというのと、自分のレースをどうつくるかということを、少しずつ考えながら大会に臨みました。少し普段とは感覚が違う部分もありました。

――自分をどう出すかという点では、再現性とおっしゃっていたように、評価できるものでしたか

そうですね。あと結果的には楽しくレースに臨めたかなと思いました。組は違いますが、伊東さん(利来也、令3スポ卒=現三菱マテリアル)と同じ規模の大会に出場するのがおそらく初めてだったので、そこがすごく自分の中でうれしかったというか、光栄で、やりがいがありました。

――次戦の予定は

日本選手権の出場資格を待っている段階で、それ以降は決めかねています。やっぱり全日本インカレ(日本学生対校選手権)でインカレとしては有終の美を飾りたいなと思っていて。僕のレベルではそこが中心になるかなと考えています。

――先ほど200メートルで20秒台を狙っているとおっしゃっていましたが、その点についてはいかがですか

それもはっきりとは決定していないですが、上位大会で、学生個人(日本学生個人選手権)もデンカチャレンジと被っていて棄権になってしまって。大きな大会はあまりないと思うのですが、全日本インカレでは400メートルで標準が切れているので、それまでのスピードを上げていく段階としてどこかに出場できたらと思っています。

田中天智龍(スポ2=鹿児島南)

――今大会までの調子はいかがでしたか

あまり上がってきていない感覚がありました。関東インカレ(関東学生対校選手権)も失敗して予選落ちしてしまったのですが、そのとき前半攻めきれなかったという失敗は今回修正できたかなとは思います。

――レースを走る前にも不安はあったのですか

少し不安ではありました。ただ競技場がいい競技場だったので、レースの流れだけ意識して臨みました。

――今回の目標は

日本選手権の申込資格である50秒50を切るのが目標でした。それには及ばなかったので、また練習をしっかり積んで、秋に切れるようにしたいです。

――今回のレースプランは

リラックスしながら攻めるのを重要視していて、その中でも前半攻めつつ後半しっかり上がっていく展開を意識しています。今回は前半いけて、関カレよりは後半もいけたのですが、5、6、7台目で少しタッチダウンのタイムを落としてしまったので、そこが今後の課題です。

――前半と後半は及第点という評価ですか

そうですね、前半と後半は良かったと思います。

――タイムは50秒50を目標としていましたが、結果についてはどう捉えていますか

最低限のことはできたかなという感じですが、ゴール後も悔しさしかなかったです。もう一回練習を積み直さなければいけないと思いました。

――自己ベストとはいえ、うれしさはなかったのですか

そうですね。最低限はできて良かった、というくらいです。

――初のグランプリシリーズでした

画面で見る有名な選手ばかりで、競技場を歩いているだけで楽しくて。今回こういう経験ができて良かったと思います。

――今季は何度もベストを更新していますが、その要因は何でしょうか

練習から、山内さん(大夢、スポ4=福島・会津)は頭一つ抜けていますが、後藤さん(颯汰、スポ3=長崎・五島)や同期の新井(公貴、スポ2=神奈川・逗子開成)と競いながらできているので、すごくありがたい環境で練習させてもらっているなと思います。今回も後藤さんが自己ベストを更新して、ちょっと悔しいですが、やっぱりチームメートとしてすごくうれしいなと。ただ負けてはいられないので、後藤さんと新井と一緒に頑張っていけたらと思います。

――次戦に向けた意気込みをお願いします

7月の鹿児島県選手権に出ます。秋の全カレ(日本学生対校選手権)前の一番大きい試合なので、全カレに向けて弾みをつけられるように、50秒50、前半を出すというのを目標にしたいと思います。