【連載】『Infinity』第1回 短距離 島田開伸×千田杜真寿

陸上競技

 今春、早大競走部に入学した2人のスプリンターをご紹介する。2020年全国高校200メートル2位、100メートル3位の島田開伸(スポ1=静岡・浜松湖東)と、2019年U18ポーランド選手権200メートル2位、100メートル5位という実績を持つ千田杜真寿(スポ1=茨城キリスト教学園)だ。早大の未来を担うであろう2人の「これまで」と「これから」を伺った。

※この取材は4月22日に行われたものです。

入学から約1カ月

丁寧に質問に答える島田

――お互いが知り合ったのはいつですか

島田 大学入寮後です。それまでは大会のプログラムを見て、「なんて読むんだろう」と、なんとなく名前は知っていたぐらいです。

千田 僕も名前は知っていたぐらいでした。

――お互いの第一印象はいかがでしたか

島田 意外とクールだなと(笑)。もう少ししゃべる感じなのかなと思っていましたが、そうでもなかったです。

千田 思っていたよりも身長が…(笑)。あとは、筋肉がすごいなと。

――入寮はいつですか

島田・千田 3月末ぐらいです。

――入寮後、お互い印象は変わりましたか

島田 クールというのは変わりませんが、意外とこんなこと言えるんだって感じです(笑)。面白いです。好きなアニメの話になると盛り上がります。

千田 最初は静かな人なのかなと思っていましたが、結構しゃべる感じでした。

――寮生活はいかがですか

島田 当番のための早起きがしんどくて。まだ慣れていなくて疲れが少しあります。

千田 自分は割とすぐ慣れることができたかなと思います。あまり寝られていないですが(笑)。

――どなたと同部屋ですか

島田 平川さん(巧、スポ3=静岡・磐田南)と野口さん(友希、スポ3=神奈川・横須賀)と和田(悠都、先理1=東京・早実)です。静かですが、たまに平川さんのところに3年生が来て、その時は結構賑やかになります(笑)。

千田 長距離の小指さん(卓也、スポ3=福島・学法石川)と菖蒲さん(敦司、スポ2=山口・西京)と一緒です。小指さんのところに長距離の4年生がスイッチをやりにきます。

――授業はいかがですか

島田 ダンスの授業が楽しいです。あまり踊れませんが、何か楽しいです(笑)。友達に誘われてコマが空いていたので履修していますが、次の授業も楽しみです。

千田 英語の『Basics of Technical Writing』が一番楽しいです。統計学や社会学も楽しいです。

――英語はずっと得意ですか

千田 いや、中学の時は大嫌いで。高校の時に少しがんばったら、楽しくなってきたぐらいです。

――オフの日にはどんな息抜きをされますか

島田 部屋でごろごろしてアニメ見るか、少し近場に外出する感じです。この前狭山湖に行ってみましたが、思ったより綺麗な場所でした(笑)。

千田 実家にいる時から自転車に乗ることが好きだったので、サイクリングします。あとは部屋に漫画がたくさんあるのですが、それを読むこともします。

――陸上を始めたきっかけは

島田 母親の職場の同僚の方がマスターズの陸上をされている方で。その方から母親経由で地元の陸上クラブに入らないかという誘いが小学4年の時にありました。小学校のクラスメートや友達が結構入る感じだったので、自分もつられて、流れに任せて入会したことがきっかけです。

千田 自分は高校から本格的に始めたのですが元々サッカー部に所属していました。他の人たちと比べて足が速かったので、サッカーを引退してからクラブに入って始めることになりました。

――千田さんはポーランドと関わりがあるということで、日本とポーランドには競技面でどのような違いを感じていますか

千田 陸上に限った話ではなく、向こうの国はスポーツ教育に力を入れているなと感じました。クラブに所属していれば、競技場やジムやジャグジーなどを無料で使えて、自治体がかなり支援してくれるので、スポーツするには困らない環境だったかなと思います。

島田 いいな、それ(笑)。

――昨シーズン、コロナの影響はいかがでしたか

島田 地元の静岡県で総体が行われる予定だったのでそれまでは学校がなくてもずっと練習していましたが、中止が決まった時はかなり落ち込んで、なかなか練習に身も入らなくなりました。でも段々と代替の大会が決まってきたので、逆に色んな経験ができたシーズンだったのかなと思います。

千田 自分は総体で勝つというような目標がなくて、自分のタイムを伸ばすことしか考えていなかったので、特に落ち込むこともなく普通に練習していました。

――そうした状況下で、島田さんはセイコーゴールデングランプリのドリームレーンに出場されました

島田 そのレースはうまくいきませんでしたが、日本のトップ選手と走ることができたことで、こうした舞台でまた戦いたいなという気持ちが芽生えました。それがいいモチベーションとなって、その後の練習にもつながりました。

――総体の代替大会にはどのような意気込みで臨みましたか

島田 静岡総体で優勝することを目標にやってきたので、その大会でも100メートルと200メートルで2冠することを意識していました。あと1歩届かずということで、とても悔しい思いをしました。

――高校3年間を通じて印象に残っているレースはありますか

千田 自分は、高1の福井国体4継の決勝で、山縣(亮太、セイコー)さんと一緒に走ることができたのが一番印象に残っています。アップ場から、レースのことあまり考えずに山縣さんの近くにいました(笑)。

島田 僕もずっと山縣さん外から見ていました(笑)。あと僕が印象に残っているのは、2年時の東海総体かなと思います。準決勝で敗退してしまったのですが、それが一番悔しいという意味で印象に残っています。

 

 

千田「(将来は)陸上のクラブを作りたい」

 

勉強や将来について語る千田

 

――どんな経緯で早大に進学されましたか

島田 高校の顧問の先生が競走部出身の方で。それで元々早大に興味を持っていたというのもあって、先生とも話し合いましたが割とすぐ決めました。

千田 自分は自己推薦入試の出願締め切りギリギリで受験を決めました。もちろん陸上競技も大切でしたが、大学で一番したかったのは勉強だったので、その点で早大に決めました。経済学に興味があって高校の時から独学していました。スポーツ科学部でもスポーツマネジメント関連で経済系も学べるので、両立できる環境があるかなと思いました。

――それは将来を意識したことですか

千田 言ってしまえば何でもやりたいのですが、金融系も気になっていますし、あとは陸上のクラブをつくりたいなと思っていて。ただのクラブではなくて英語で指導するようなクラブです。というのも、ポーランドに行った時に親戚の友達と話す機会があって、自分はポーランド語が喋れないので英語で会話したのですが、向こうは文法とか単語のレベルというよりコミュニケーションが活発で。何で日本人は英語話せないのかなと考えたときに、アウトプットする場が少ないのかなと思って。それで自分の陸上クラブでアウトプットの場を提供しようと思っています。

――初めて早大の練習に参加した時の感想は

島田 その時は各自の練習だったので(全体の)雰囲気がよく分からなくて。集合などでもどう動けばいいのか戸惑った記憶があります。練習に関しては、色々自分の頭で考えなければならないという印象を持ちました。

千田 高校の時から自分で考えて練習をやってきたので、その面でいえばあまり変わらないなと。あとは結構礼儀などに重きを置いているイメージはあります。

――今はどんな練習を

島田 メインメニューは出されてプラスアルファを自分たちでやるのですが、補強系がメインです。

千田 僕はメニューによって変えています。速い動きをやったときはウェイトをしたり、持久的なメニューであれば動きづくりとか反復する動きを行っています。

――高校での競技を引退してから入寮まではどんな練習をしていましたか

島田 高校で練習をしていました。後輩と一緒にやっていたので基礎的なところ、土台作りに重きを置いてやってきました。

千田 顧問の先生に許可をいただいて家の前の競技場で1人でやっていました。自分も基礎を大事にして、自分に合った動きを探していました。

――お二人が考える基礎的な練習について教えていただけますか

島田 僕はサーキットトレーニングやウェイトトレーニングによって基礎的な体力を作ることがそれに当てはまるかなと思います。高校の時は、そうしたメニューを野球部の投手陣や、消防や警察に行く人達と一緒にやることがありました。

千田 体力面での基礎と走りの基礎といった感じで2種類あるかなと思っています。体力面ではサーキットやウェイトをして、走りの方では、基礎的なドリルを正確に行うことを一から見直してやっていました。(1人でやることに対しては)特に難しさは感じませんでしたが、やはり考えが凝り固まることもあるかなと思うので、そこは気を付けていました。

 

今後に向けて

 

――今の調子はいかがですか

島田 僕は上がってないです…。どう走るべきか悩んでいる感じで、どうすれば改善できるか、少し考えなければならないと感じています。

――アドバイスを貰ったりしますか

島田 先輩方やコーチに相談しています。

――よくお話する先輩はいますか

島田 寮内の先輩は結構。意外と長距離の先輩方も話す機会はあります。

千田 (最近の調子は)ここ数日でいい感じに動けてきているので、ここに来た当初よりは良くなっているなと思います。

――早大競技会で2本レースを走られていますが、感触はいかがでしたか

島田 試合に対してブランクがあって、自分の動きがあまりできなかったという印象です。タイム的にも良くなかったです。

千田 自分も人と走るのが久しぶりで、試合勘もそうですし、まだ良くない結果だったなと思います。

――普段の練習は高校の時と比較していかがですか

島田 先輩方も強いですし、よりディープなところを追求しているので質が上がっていると思います。

千田 他の人と練習するということで、やはり質は高いですね。

――スプリンターとしてご自身の走りの強みはどのような点ですか

島田 僕はピッチが速いところかなと思います。

千田 後半が強いのでその強みを生かしてレースプランを組んでいます。

――100と200メートルはどちらがメインであるかは定めていますか

島田 僕はどっちがメインとは考えていませんが、タイムがいいのは200メートルですね。

千田 僕は200が苦手なので100メートルですかね。

――目標や憧れの陸上選手はいますか

島田 同郷の飯塚翔太選手(ミズノ)です。国体やセイコーゴールデングランプリなどでお話をする機会があったのですが、人として本当に完璧な方だなと思っていて。そんな選手になりたいと憧れています。

千田 自分は、2019年の世界陸上200メートルで優勝したアメリカのノア・ライルズ選手です。走りのスタイルが(自分と)似ていることや、その選手は、親のために高卒でプロになって実際に成功しているということで、バックグラウンドも尊敬しています。

――今シーズンの目標をお願いします。

島田 6月にあるU20日本選手権を目標にしています。去年の全国大会では2位と3位だったので、優勝を狙っています。また、高校の顧問の先生のタイムである10秒24と20秒57をずっと目標にしているので、それに少しでも近づけるようにしたいです。

千田 僕もその大会で決勝に残って、タイムを残せればいいなと思います。まだ標準をギリギリ切れていないので、今後しっかり切れるようにしたいです。また10秒3台をシーズン中に出せれば、成功と言えるかなと考えています。

――最後に大学4年間で成し遂げたいことはありますか

島田 高校3年間で達成できなかった日本一を目標にやっています。

千田 日本代表かポーランド代表で世界大会に出場できればなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 青山隼之介、杉﨑智哉)

『人間力』を大切にする島田選手。そしてなんと数式を書いてくださった千田選手。『おそく』見えても『速』い走りを目指しているそうです!

◆島田開伸(しまだ・かいしん)(※写真左)

2002(平14)年11月25日生まれ。164センチ。静岡・浜松湖東高出身。スポーツ科学部1年。1学年上である秀島来選手(スポ2=千葉・東海大浦安)には、普段からお世話になっていて、練習などで行き詰まった時はアドバイスを頂くそうです。また、先日は地元の静岡国際でエンジデビューを果たしました!

◆千田杜真寿(ちだ・とます)

2002(平14)年4月11日生まれ。176センチ。茨城キリスト教学園高出身。スポーツ科学部1年。色紙には、ご自身の好きなアニメに登場する「E=mc^2」という等式を書いた千田選手。これはアインシュタインにより発見された、質量とエネルギーの関係を表す等式で、千田選手のあらゆる持ち物に記名のごとく書いてあるそうです。寮内のパスタのケース、自転車に貼ってあるとの目撃情報があります。