全日本大学駅伝対校選手権(全日本)から2週間が経ったこの日、日本体育大学長距離競技会が開催された。男子5000メートルには半澤黎斗(スポ2=福島・学法石川)、井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)、中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖)ら4人が出走。井川と中谷が13分台を出し、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)に向け着実と調子を上げていることを示した。
まだ日が少し残る16時過ぎ、22組に半澤が出場。ケガ明けの半澤は序盤、集団の真ん中で様子を伺う。2500メートル付近で集団が広がると、先頭から遅れずに付いて行った。結果は目標としていたタイムを15秒上回り、「自分が感じていたよりも、復帰のペースが速い」(半澤)と、前向きな言葉を口にした。
けがからの復帰戦となった半澤。箱根に向けて準備を進めていくつもりだ
「全日本の後から練習の取り組みを変えた」という井川は、自己ベストを狙う積極的な走りを見せる。1800メートル付近で一旦先頭に躍り出ると、ペースを上げた。そのまま順調に進んでいたと思われたが、ラストスパートでは後ろから来る選手たちに抜かされてしまう。「スピードを出す練習が全然できていなかった」(井川)。好記録であったが、持ち味を生かせなかったことに悔しげな表情を見せた。
自身2度目の13分台をマークした井川
早大のエース・中谷は最終組に出場。外国人選手も多く出走する中、自分のペースを守りながらレースを展開した。2600メートル過ぎでは集団の後方を走り、3500メートル付近では複数の日本人選手に離される。脇腹を押さえる姿も見え、表情も苦しくなってきた。しかし、ここから見事なスパートを見せる。ぐんぐんと前にいる選手たちを抜かし、自己ベストに3秒迫る13分48秒52でゴール。「まだ調子を上げることはできると感じている」(中谷)。この日の結果を認めながらも、さらに上を目指せると確信していた。
中谷はシーズンベストで今季のトラックレースを締めくくった
箱根まで残り1カ月半。この先の練習の密度は今まで以上に濃くなっていくだろう。今年は予選会もあり、例年とは異なるメニューでここまで進んできた。来たる集中練習では各自足りないところを補い、一回りも二回りも皮がむけた姿で正月を迎えたい。
(記事 今山和々子、写真 布村果暖、宅森咲子、斉藤俊幸)
結果
▽男子1万メートル(16日)
井上開登(法1=東京・早実)31分51秒56(3組14着)
▽男子5000メートル(17日)
遠藤凌佑(人1=山形南) 15分51秒84(10組26着)
半澤黎斗(スポ2=福島・学法石川)14分24秒20(22組7着)
井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)13分59秒00(26組7着)
中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖)13分48秒52(27組14着)
コメント
中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖)
――全日本大学駅伝対校選手権から2週間、どのように調整してきましたか
ポイント練習2回と刺激を前日に入れて、という感じできょうを迎えました。
――久々の13分台となりました
3000メートルまで良いタイムで走れていたので(日本選手権標準記録である)13分43秒ないし自己ベストで走れるかなという感覚があったので悔しい気持ちがあります。後半スタミナがもたなくて記録を出すことはできませんでした。久々に13分台が出てホッとした気持ち半分と、まだまだ頑張らないといけないなという気持ち半分ですね。
――表情的にも途中まで余裕を持って走っているように見えましたが、キツさを感じたのはどの辺りからですか
3000メートルの地点で今まで走ってきた5000メートルよりも早いタイムで入っていて、そこでタイムを見た時にキツさを感じてしまった部分がありました。
――昨季同様、この時期に調子が上がってきたように感じます。ご自身の感覚はいかがですか
今年に関しては練習期間が短かった割には走れたなというのが正直なところで、まだまだこれから練習を積むことができればまだ調子を上げることはできると感じています。きょうに関しては悔しい気持ちもありますが、継続した練習をしていくことでこれから箱根(東京箱根間往復大学駅伝)やそれ以降の来シーズンの初めから自己ベストで走って今年の悔しさを晴らすことができればいいなと思います。
――ゴール後、なかなか動けませんでしたがどのような思いがありましたか
やはりタイム的な悔しさもありましたし、久々に走っていて良い感覚を持ちながら走ることができたのでその喜びと、今後もっと頑張らないと、という思いと色々な想いがありました。
――今後は箱根に向けて、ということになると思いますが今年はどのようなテーマを持って臨みたいと考えていますか
基本的なアプローチは昨年と変わらず考えています。ただ、昨年は個人的に駅伝で全て中途半端な走り、結果になってしまったので、今年は残り箱根しかないのでそこで区間賞を狙った走りをして、チームの流れを変えられるような、流れをつくれるような走りをしたいと思います。まずはその準備をしっかりしたいと思います。
半澤黎斗(スポ2=福島・学法石川)
――けがをしたのはいつ頃ですか
2次合宿中にけがをしてしまって、そこから2カ月半くらい走れなかったので、少し長い間故障していました。10月の終わりくらいから走り始めました。
――上尾シティマラソンではなく日体大長距離競技会を選んだ理由をお願いします
ポイント練習も回数できなかったので、まずは体の調子を見るということで5000メートルにしました。これからしっかり練習できる体がつくれたので、集中練習をしっかり混ざってやれば箱根には間に合わせられるかなと思います。
――最近の調子はいかがでしょう
走り始めてからはすごくいい感じで走れています。けが明けだからきついという感じはあまりなかったです。
――きょうのレースプランを教えていただけますか
約半年ぶりのレースだったので、レース勘を取り戻すことと、復帰明けで体がどれくらい戻っているかというのを見るレースでした。3000メートルまではいつも通り集団の中でしっかり走って、残り2000メートルで先頭集団に勝負できるかというところでした。
――目標のタイムはありましたか
14分40秒くらいでいけたらいいかなと思っていたのですが、思ったより走れたので良かったです。
――実際のレースに臨んでいかがでしたか
自分が感じていたよりも復帰のペースが速かったので、これからもう少しピッチを上げて箱根に向けて準備していければいいかなと思います。
――4000メートルごろまでは表情にも余裕がうかがえました
いや、結構もう2000メートルくらいからきつかったです。顔がきつくなったらもうダメだなと、ずるずるいってしまうなと思ったので、顔だけは余裕そうに走っていました(笑)。
――結果を受けていかがでしょうか
とりあえずきょうは今までの練習の過程から見ると最低限かなと思います。
――最後に、箱根に向けてお願いします
予選会(東京箱根間往復大学駅伝予選会)と全日本(全日本大学駅伝対校選手権)をみんながしっかり走ってくれて、箱根までこのチームでつなげることができたので、それは感謝しています。自分が走らなければいけないステージで、スタートラインにすら立てなかったという部分で申し訳なさがあるので、箱根ではしっかり走って貢献できるように……。箱根までの期間、集中してもう一度ギアを上げて頑張りたいと思います。
井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)
――レースを終えた感想はいかがですか
やっと本来の走りに近づいてきた感じがしました。
――記録の目標は
最低でも自己記録を出すというのと、(13分)40秒台に入れたら、という気持ちを持って走りました。
――調子はいかがでしたか
全日本(全日本大学駅伝対校選手権)の後から少し練習の取り組みを変えて、しっかり流しをやったり、補強トレーニングを取り入れたりしました。全日本に比べたら練習での動きからキレが増してきていたので、上り調子で来ていました。
――レースでは途中は先頭で引っ張る場面もありました。その狙いというのは
ペースが落ちてきているのを走っていて感じていて。(他選手と)足が詰まる感じもあって、すごく走りにくかったです。なので、誰も出ないなら一度自分が(ペースを)上げて走りやすくしないとタイムも出ないし、走りにくい状況がずっと続きそうだったので前に出ました。
――得意のラストに関してはいかがでしたか
夏合宿あたりから距離を踏むことをメインにやってきていて、スピードを出す練習が全然できていませんでした。それもあってラストのキレは思っていたよりも出なくて。蹴ったまま脚が戻ってこないというイメージが強く残っています。これからも距離走などがメインとなるとは思いますが、しっかりキレを増せるように、各自でダッシュ系のメニューなどを入れていこうと考えています。
――13分59秒00の記録については
自己ベストでなかったことはすごい悔しいんですけど、久々に13分台で収めることができたので、最低限ではあるのかなと思いました。
――今回の収穫と課題はありますか
収穫は全日本が終わってから取り組んできた補強メニューや流しなどから、走っていて動きがよくなっていたところです。課題としてはラスト1周でスピード負けしてしまったところで。僕の持ち味はスピードだと思うので、箱根(東京箱根間往復大学駅伝)ではラストスパートでのスピードで負けないように上げていきたいと思います。
――今後は集中練習が控えています。目標などはありますか
しっかりとこなして、体を長距離用の体型にしていくというのと、キレを出していきたいと思います。